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2025-06-28『マネーボール』 New!
2025-06-26『めぐり逢えたら』
2025-06-24J1 第21節・町田-鹿島
2025-06-21宮本浩次@ぴあアリーナMM
2025-06-19『薬屋のひとりごと14』
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人生なんて、そんなものさ カート・ヴォネガットの生涯 マルドゥック・アノニマス9 (ハヤカワ文庫JA)

最近の五本

マネーボール

ベネット・ミラー監督/ブラッド・ピット、ジョナ・ヒル/2011年/アメリカ/Amazon Prime

マネーボール

 セイバーメトリクスという統計情報をもとに、MLBの貧乏球団を地区優勝に導いたオークランド・アスレティックスのゼネラル・マネージャー、ビリー・ビーンのバックネット裏での戦いを描いた伝記映画。

 前から気になっていた作品で、たまたま『数学者たちの楽園 「ザ・シンプソンズ」を作った天才たち』という本を読んでいたら、シンプソンズにこの映画をモチーフにしたエピソードがあるというので、いい機会だから観ることにした。といいつつ、アニメの放送はこの映画よりも前だそうだから、映画というよりは原作本が元ネタなのかもしれない。

 ブラッド・ピット演じる主人公が、金持ち球団に主力選手を引き抜かれて窮地に陥り、窮余の策でセイバーメトリクス(この映画の少なくても字幕にはこの言葉は出てこなかった気がする)をつかったチーム作りを断行する。

 野球は塁に出てなんぼという考えから、移籍金は安いけれど出塁率が高い選手たちを獲得してチームを再編成。当初は成績が低迷して周囲の非難を浴びるも、その後は奇跡的な追い上げでリーグの連勝記録を更新、ついには地区優勝を成し遂げる。

 ブラッド・ピット以外の出演者は、セイバーメトリクス専門家の太っちょ補佐役がジョナ・ヒル(前にも見たこのとのある俳優さんだけど、なんの映画かは忘れた)、ビリーの元妻が『フォレスト・ガンプ』のロビン・ライト。あと、ビリーに引き抜かれて捕手から一塁手に転向する選手役を『ガーディアン・オブ・ギャラクシー』のクリス・プラットが演じている。でも残念ながら、いまいち野球が上手そうに見えない。

 金にものを言わせる強者に、弱者が知恵と勇気をふりしぼって勝つ話!――ということで、期待通りのおもしろさ。MLBに詳しくなく、アスレチックスがどこまで勝ち上がったのか知らなかったので、終盤の優勝争いの展開は先が読めず、実際にゲームを観ているかのようにはらはらした。

 ただ僕の趣味からすると、音楽や演出はややシリアスで大仰すぎ。もうちょっとユーモアを効かせてくれていれば最高だったのに。いい映画だとは思うんだけれど、無条件で好きとはいえないのが惜しい。

 あと、主人公のビリー・ビーンは実名だけれど、ジョナ・ヒルが演じた補佐役はポール・デポデスタという人をモデルにした架空の人物で、本人の許可が降りなかったため、ピーター・ブランドという別名となったのだそうだ。

 実物はその後ドジャーズのGMやメッツの副社長まで昇り詰めたという人物なのに、この映画のジョナ・ヒルは――味のある演技を見せてくれてはいるものの――どちらかというと最後まで主人公の引き立て役に徹していて、そんな明るい未来を感じさせる風格がない。そんな大物ならば、名前を貸したくなかったのも当然かもと思った。

 どうせならば主演をダブルキャストにして、デポデスタ氏の業績をしっかりと浮かび上がらせるようなシナリオになっていれば、本人の許諾も撮れて、もっといい映画になっていたかもしれないのに。そう思うとなおさら惜しい。

(Jun. 28, 2025)

めぐり逢えたら

ノーラ・エフロン監督/トム・ハンクス、メグ・ライアン/1993年/アメリカ/Apple TV

めぐり逢えたら (字幕版)

 メグ・ライアンの代表作といえば、『恋人たちの予感』かこれでしょう。

 で、僕はどちらかというとこちらの作品のほうが好きだった――はずなのだけれども。

 ひさびさに観たら、これはいまとなるとどうなんだ?――と思ってしまうような作品だった。

 そもそも、婚約したばかりの女性が、ラジオで見知らぬ男性の話を聞いて――「一目惚れ」ならぬ「ひと聞き惚れ」して――恋に落ち、婚約者を放り出して、その男性に走ってしまうという展開があんまりだ。婚約者役のビル・プルマンに同情を禁じ得ない。

 まぁ、この映画の彼はあまり人好きのするタイプではないとはいえ、のちに『インディペンデンス・デイ』では大統領にまで昇り詰める男優に対してあまりの仕打ち。だったら最初から婚約なんてするなよって話だ。

 主演のトム・ハンクスへのアプローチもすごい。彼女は新聞記者という立場を利用して、ラジオ局から個人情報を聞きだし、興信所に頼んで身元調査までして、ついには自宅を訪ねてゆく。いまの時代だったらストーカー扱いじゃなかろうか。不倫やコンプラ違反で芸能人が次々と職を追われる昨今、許されざる倫理観なのでは。

 そのほか、子供は子供で、親のクレジットカードを使って航空券を取って、年齢を詐称して、ひとりでニューヨークまで行っちゃうしなぁ。主人公の親友(その後グラミー賞の司会を二度も務めるロージー・オドネル)は反故にしたラブレターを勝手に送っちゃったりする。もうなにそれな行動だらけ。

 まぁ、そういうことにめくじら立てず、笑って受け流せる九十年代だからこそ成り立った、幸せな時代の能天気なロマンティック・コメディなんだろう。

 初めからそう割り切って観れば、ふたりの出逢いを最後までひっぱる脚本は気が効いているし、ジャズ・ボーカルの小粋なサントラをバックに、大人どうしのボーイ・ミーツ・ガールを描いた物語として、それなりに楽しく観られる。脇役の女の人の「ハイエナみたいな笑い方」がおかしくて好き。

 なんにしろ、かつてはかわいいと思っていたはずのメグ・ライアンの映画を観て、胸のときめきを覚えるかわりに、そんな風にあれこれ考えてしまう自分に、年相応の衰えを感じた一本。十年くらいしたらまた観なおして、印象が変わるか確認したい。

 ちなみに『Sleepless in Seattle』(シアトルの眠れない男)という原題が『めぐり逢えたら』という少女マンガ的な邦題になっているのは、恋人たちがバレンタインデーにエンパイア・ステート・ビルの展望台で待ち合わせをするというシチュエーションが、『めぐり逢い』という映画をモチーフにしているから。

 この作品の中では男性には魅力がわからない映画として散々ジョークのネタにされているので、本当にわからないものか、観てみたくなった。

 まぁ、いずれ機会があれば。

(Jun. 26, 2025)

町田ゼルビア2-1鹿島アントラーズ

J1・第21節/2025年6月21日(土)16:00/町田GIONスタジアム/DAZN

 J1昇格2年目の町田は、序盤戦こそ首位につけたこともあったけれど、その後は勝ち点が伸びず、最近は10位前後を行ったり来たりしている。

 理由は明確。去年はリーグ最少失点を誇った堅守が綻び、前節までに24失点しているから。つまり毎試合1失点はしている計算になる。得失点差は±0だし、それではなかなか上位には食い込めない。

 でも、去年から失点が増えたからといって、守備力が下がったかというと、そんなこともない。GKは日本代表の谷晃生だし、昌子、菊池流帆、岡村大八という3バックは間違いなく強固だ。

 対する鹿島も失点の少なさはリーグ2位。そんな堅守を誇る両チームの対戦だけあって、1点を争う固い試合になるのは必至――かと思わせておいて。

 こういう試合に限って、今年の鹿島は意外と早い時間帯に得点が入っちゃうんだよなぁとか思っていたら、やはり予想通りの展開になった。

 ただし先制したのは町田。前半6分に鹿島のミスから生まれたチャンスを相馬がきっちりと決めて勝ち越した。なんか今年は鹿島にいたことのある選手にやられる比率が高い気がする。

 この日の鹿島は樋口・三竿のダブルボランチに、ターレス・ブレーネルがトップ下という布陣だった。

 樋口は故障明け後は初のスタメンだったのに、失点につながる致命的なミスをおかしたのは彼だった。自陣の中盤深い位置で、浮き球を処理しようと右足のアウトサイトで変なキックをして、攻めあがってきていた敵三枚の前にボールを落としてしまう。

 あれはなんだったんだろう? 詰めてきていた植田へのバックパス? なにをしようとしたのかさっぱりわからない謎のプレーだった。相手にとって得点につながる絶妙なパスとなった点では、ある意味オウンゴールに近かった。

 その後に2点目を許してさらなる劣勢となったこともあり、懲罰というわけではないのだろうけれど、樋口は前半だけで交替。後半からは船橋が出てきた。

 町田の2点目は、前半34分。ロングスローかと思ったスローインを普通に入れてつながれ、最後は下田北斗からのクロスを岡村がヘディングでズバッと決めた。こちらは完璧にマークがずれて、なすすべなしだった。あれがスローインからワンセットでデザインされたプレーだったとしたら黒田監督あっぱれだ。

 後半の鹿島は溝口、樋口、ブレーネルをさげて、小川、船橋、濃野をいれ、チャヴリッチを右に移して反撃に出た。

 この日のベンチには、前節と同じDF4枚と、柴崎、知念、船橋のボランチ3人、あとは松村しかいなかった(加えてGKの梶川)。どうやら荒木、田川が離脱中らしい。要するに控えのFW勢が全滅。それゆえDFが4人もベンチ入りしているわけだ。

 ということで、その後にチャヴリッチと交替でピッチに立った知念は、ひさびさにFWとしてプレーすることになり(移籍後初?)、惜しいヘディングを一本打っていた。あれが枠に飛んでいればなぁ……。最後の交替はレオ・セアラ→松村。

 交替カードをすべて使い終わった後半40分、優磨がしてやったりのプレーで菊池のファールを誘ってPKを獲得。これを自ら決めて1点差としたときには、このまま同点、逆転も狙えるかと期待したものの、残念ながら反撃もそこまで。そのまま町田に逃げ切られた。

 まぁ、首位には立っているものの、毎試合出来はいまいちで、厳しい戦いを強いられているので、この日みたいに相手のプレーがうまくはまれば、黒星も致し方なし。

 町田は前述の選手らのほかにも、前、望月ヘンリー、西村なども存在感があったし、途中出場で中山雄太なんかが出てくるのも侮れない。優勝争いに絡んでこられると面倒だから、このまま順位表の真ん中あたりに留まっていていただきたい。

 なんでも、この日の来場者数13,828人は、スタジアムの最多入場者数の新記録なのだそうだ。そう聞いて驚いた。えっ、それしか入んないのか!――って。

 でも、気になって調べたら、柏、湘南、横浜FC、岡山のスタジアムもどっこいどっこいだった。カシマスタジアムって立派なんすね。

 とはいえ、町田は仮にも首都・東京を本拠とするクラブなんだから、このままJ1で戦いつづけるのならば、もうちょっとなんとかした方がいいのでは――とか思ったけれど、まぁ僕なんかが心配するまでもなく、関係者はいろいろ考えているんだろうな。

(Jun. 24, 2025)

宮本浩次

Birthday Concert 最高の日、最高の時/2025年6月12日(木)/ぴあアリーナMM

Today -胸いっぱいの愛を- / over the top (通常盤)

 ごめん、せっかくのお誕生会に遅刻した。

 宮本浩次、五十九回目の誕生日。ぴあアリーナMMで開催されたバースデーコンサート『最高の日、最高の時』(タイトルをいったら娘に笑われた)。

 会場の最寄り駅であるみなとみらいに開演の三十分前に着くようにうちを出たにもかかわらず、トラブルつづきで間に合わなかった。

 まずは、うちの奥さんが一ヵ月前に自転車で転んで膝の骨にひびが入ったので、いつもならば歩く最寄り駅までバスを使ったのが間違い。そのバスが渋滞で遅延して、乗るつもりだった電車に乗れなかった。これでおよそ10分のロス。

 で、次の便に乗ったら乗ったで、途中地下鉄のドアに荷物を挟まれて出発を遅らせる女性がいたりする。

 極めつけは、隣の駅で乗客どうしのトラブルがあって、非常停止ボタンが押されたとかいって、自由が丘で15分も待たされる始末。勘弁してくれ。喧嘩だか痴漢だか知らないけれど、まだ明るいうちから電車止めてんじゃないよ。

 結果「みなとみらい駅」に着いたのが開演時間ジャストだった。

 会場までは徒歩10分足らずだから、開演が押してくれれば間に合うかと思ったけれど(昔は10分押しでの開演とか、ざらにあった)、残念ながら間に合わず。急ぎ足でデジタルチケットを提示して館内に入ると、すでに演奏が始まっていた。閑散としたエントランスにいるのは男女ともに黒スーツのスタッフばかり。

 あわてて階段を上がる僕らの耳に聴こえてきたのは――『冬の花』。

 意表を突かれて、おぉっと思った。この曲で始まるのは史上初だし、何度も書いているように、僕ら夫婦はそろってこの曲が好きではないので、見逃した一曲目がこれってのは、不幸中の幸いだった(ひどい)。

 あと、今回もチケット運に恵まれて、席がよかった。ステージに近いという意味ではなく、席が見つけやすいという意味で。

 この日のチケットは二階席(ぴあアリーナはアリーナ席が一階扱いなので、実質一階相当)の一番後ろの隅だった。おかげでチケットに記載された入場口の扉を入るとすぐに席が見つかり、ほかのお客さんに迷惑をかけずに着席できた。

 でもって、ファースト・インプレッションもすごかった。

 扉を開いて場内に入った途端、どーんと目に飛び込んできたのは、赤い花びらが舞うステージと、スクリーンにドアップで映し出される宮本の姿。黒に赤い花柄の刺繍が入ったゴージャスなコート姿で、ステージの左右はカーテンが開いた状態になっている。このザ・歌謡ショーか、はたまた宝塚かといったビジュアルがインパクト大!

 まぁ、最初から観ていてもそれなりに感銘を受けたのかもしれないけれど、なまじ途中で入ってきて、いきなりこれを見せられたせいで、なおさら強烈だった。遅刻も意外と悪くないかもと思った(いや、遅れないに越したことなし)。

【SET LIST】
    [第一部]
  1. 冬の花
  2. ハロー人生!!
  3. TEKUMAKUMAYAKON
  4. 化粧
  5. 異邦人
  6. 夜明けのうた
  7. 今宵の月のように
  8. 悲しみの果て
  9. あなた
    [第二部]
  10. Woman "Wの悲劇"より
  11. ロマンス
  12. passion
  13. 昇る太陽
  14. ハレルヤ
  15. 俺たちの明日
  16. over the top
  17. close your eyes
  18. Fight! Fight! Fight!
  19. コール アンド レスポンス
  20. rain -愛だけを信じて-
  21. P.S. I love you
  22. Today -胸いっぱいの愛を-
  23. オレを生きる
    [Encore]
  24. サムライ
  25. 哀愁につつまれて

 さて、そんなわけで遅れて到着して、一曲目の途中から参加した宮本のお誕生日ライブ。

 今回入場してすぐに――それこそステージを見るより先に――驚いたのは、PIXMOBを渡されたこと。まさかエレカシ関係でこの電光リストバンドをつける日がくるとは思わなかった。

 ただ、せっかくのPIXMOBだけれど、そこはさすが宮本、それほど活躍しない。第一部(九曲と短め)で光ったのは『テクマクマヤコン』だけだったと思う。それも控えめ(色は黄色)。

 第二部に入ってからは、一曲目の『Woman "W"の悲劇より』を筆頭に、大半の曲で光ってたので、あとから驚かそうと思って、最初はあえて温存してたのかもしれない。なかでは、青とピンクの二色のライティングに合わせて光った『ロマンス』と、フラッシュライトのように激しく点滅した新曲『over the top』が印象的だった。

 PIXMOBって、人やブロックごとに違う色やタイミングで光ったりするのを見て、(いちおうIT業界人の端くれなもので)いったいこれってどうやって制御してんのかなぁと、その技術的側面に思いを馳せて、肝心のライブへの意識がおろそかになったりするし、そもそも僕は腕をあげたり振ったりしない協調性のない客なので、つけてるだけ無駄な感もあって、もらうと毎回なんかごめんって気分になる。

 まぁ、今回は二階席だったので、アリーナ全体や左右のスタンドが視野に入ったこともあり、PIXMOBによる演出はとても綺麗で目に鮮やかだった。それもこの席でよかったと思った要因のひとつ。ステージから観た風景はさらに綺麗なんだろう。これはきっと来年の還暦記念のバースデイライブにも引き継がれるとみた。

 ちなみに、ほかのアーティストだと、終演後にもPIXMOBがランダムに点滅していて、帰り道が楽しげだったりするのに、宮本のPIXMOBは消灯したきり、まったく光らなかった。せっかく配ったんだし、これが初めてという人も多そうだったから、終わったあとに光らせてくれればいいのに……。

 バンドは小林武史、名越由貴夫、玉田豊夢、須藤優(ずっと「すどう」と濁るのだと思っていたら、濁らない「すとう」と紹介されていて、あ、そうなんだと思った)の四名。さらに今回はサプライズで、サックスの山本拓夫氏とトランペットの西村浩二氏が途中から登場した。

 あと、メンバー紹介では、僕が最初にこのバンドを観たときに疑問に思ったステージ隅の人(マニピュレーターの吉田さん?)の存在にもちらりと触れていた。

 山本・西村両氏は、新曲『Today -胸いっぱいの愛を-』のレコーディングに参加しているとのことなので、その流れなのだと思う。

 理由はどうあれ、これまでソロでは頑なに五人での演奏にこだわってきた宮本が、ほかのサポートメンバーを加える気になったのは、けっこう重要な心境の変化だと思った。いっそ還暦を迎える来年は、金原さんのストリングスなんかも加えて、さらに豪華なステージを見せてくれたら嬉しい。

 山本さんたちの登場は第二部の前半(たしか『passion』の前)、宮本が自らハッピーバースデーを歌うコーナーの伴奏からで、「ハッピーバースデー、ヒロジさ~ん」と自分で自分を祝福した宮本は、そのあと花道の先に用意されたバースデーケーキのろうそくを吹き消してみせた。さらには自撮り棒につけたスマホで記念写真を撮りまくる。『最高の日、最高の時』というタイトルからしてそうだけれど、自ら率先して自身の誕生日を祝うスタイル。終始楽しそうでなによりだ。

 ということで、PIXMOBとホーンセクションの導入が今回の二大サプライズだった。

 その他にも、おっと思うポイントがけっこうあった。

 二曲目で早くもエレカシの曲――それも『ハロー人生!!』と『テクマクマヤコン』というレア・ナンバー!――をかましてきたのにはびっくりしたし、第一部が九曲で、第二部が十四曲といういびつな構成や、第二部の序盤に『昇る太陽』と『ハレルヤ』という、これまでのライブでクライマックスを飾ってきたナンバーをさっさとやってしまう構成も意外性があった。

 『冬の花』も最初にやっちゃったし、このあとどうすんだと思ったら、ライブの後半は前日リリースされたばかりのニューシングルの二曲を含む、最近のシングル曲を中心とした内容。そこに加わるのがライブ初披露の『Fight! Fight! Fight!』(うちの奥さんからは歌詞がつまらなさすぎる宮本くんの曲ナンバーワンと酷評されている)と、エレカシ屈指の暴言ナンバー『コール アンド レスポンス』というのもびっくりだった。

 『Fight! Fight! Fight!』はタイトルや「I LOVE YOU」という歌詞を七十年代風のカラフルなグラフィックアート的レタリングで映し出した演出が、先月見たずとまよに通じるスタイルでおもしろかった(趣味のよしあしは問わない)。映像的な演出では『over the top』でのひし形が重なる幾何学的なやつも印象的だった。

 『コール アンド レスポンス』はイントロのギターリフこそハードだったけれど、それ以降は小林さんの電子ピアノの柔らかな音色が前に出た、角の取れたアレンジで、「死刑宣告だあ~」という過激な歌詞とのミスマッチがおもしろかった。

 演出でいちばんよかったのは『夜明けのうた』。夜明けの映像をバックに、昇りくる太陽の位置に配したスポットライトが、逆光となって宮本の影法師を浮かび上がらせる。花道に長く伸びる影がとても抒情的でカッコよかった。

 本編最後は『rain -愛だけを信じて-』に『P.S. I love you』と、最近の宮本のお気に入りソロ・ナンバーをつづけたあと、締めは意外や『Today -胸いっぱいの愛を-』――タイトルの時点で拒否反応を示してしまい、あまりちゃんと聴いていなかったんだけれど、ライブで聴くとさすがにいい曲だったりする――かと思わせておいて。

 そのあとにもう一曲ある。

 ステージが暗転したあと、しばらくして曲が始まる。スクリーンにはステージ裏を走り回りながら歌う宮本の姿。

 歌うはなんと、『オレを生きる』!!

 おぉ~!――って。素直に盛りあがれたら、よかったのだけれど。

 エレカシの『Wake Up』の最後に収録されたこのナンバー、あまりにレアすぎて、その存在を忘れてました。最後まで聞いて「あ、これはなにかのアルバムの最後の曲だ」と思ったけれど、それまでは「もしかして昔書いたお蔵入り曲でも引っ張り出してきたのか?」とか思ってしまうレベル。あぁ、ファン失格。

 いやでも、このエンディングはよかった。ステージ裏のスタッフをあいだを走り回っていた宮本は、そのままアリーナ席の右手最前列あたりから出てきて、左手まで移動して歌い終わったあと、深々とお辞儀をしてから姿を消した。キラキラしたライブの最後がこういうアングラ感のある曲と演出で締められたのにぐっときた。

 その後のアンコールは二曲で、最初は『サムライ』!

 この曲もサプライズあり。宮本はいつの間にか客席に紛れ込んでいて、女性客のとなりに座ったまま歌いだす姿がスクリーンに映し出された。近くにいた女性たち騒然。

 ちょっと前に藤井風が横浜スタジアムで同じことをやっていたけれど、まさかあの宮本まで同じようなことをするとは……。

 そういや『ハレルヤ』かなんかでも客席に降りて行っていたし、この日はけっこう積極的にオーディエンスとの交流をはかっていた。おそらく自分の誕生日を祝いに集まってくれた人たちに感謝の気持ちを伝えたいってことだったんだろう。

 とかいいつつ、通りすがりに手を出して触ってくる人たちにちょっと迷惑そうなしぐさもあったけれど。そこはまぁご愛敬。

 そのあとのアンコールの最後の曲は、シングル『close your eyes』のカップリング曲『哀愁につつまれて』……だったのだけれども。

 すみません。あまりに趣味じゃなかったもので、この曲の存在自体が記憶から抜け落ちていた。『サムライ』のあとだったし、これもてっきり誰かのカバーだと思って「終わったら「哀愁につつまれて」って歌詞でググって、誰の曲か調べなきゃ」とか思っていた。まさかオリジナル曲だったとは……。

 いやでも、エレカシの新春ライブでは、数少ない新曲である最新シングルのカップリング曲をはしょった宮本が、ソロライブの最後をそんなレアトラックで締めくくるとは思わないじゃん。いやはや、完璧にノーマークだった。

 ということで、遅刻はするわ、曲は知らんわで、いまやファンを名乗るにはおこがましいかもと思ってしまった宮本くんの五十代最後のバースデイ・ライブでした。

 いろいろごめん。

 ばちがあたって来年のチケットは取れない気がする。

(Jun. 21, 2025)

薬屋のひとりごと14

日向夏/ヒーロー文庫/主婦の友社/Kindle

薬屋のひとりごと 14 (ヒーロー文庫)

 猫猫マオマオとともに表紙のイラストを飾っているのは、緑青館の三姫のひとり女華と、医局での猫猫の同僚である天祐ティンユウ

 このふたりがともに華佗という人物の末裔だった(前巻であきらかになったんでしたっけ?)ということで、それに絡んだ過去の秘密が解き明かされ、ひと騒動が巻き起こる。

 あと、ヤオに言い寄る駄目男が登場して――どこかに名前が書いてあったけれど忘れた。猫猫による呼び名は「恋文男」――この人が、羅半兄に負け、馬閃に負け、最後は壬氏ジンシにまで叱られと、ことあるごとに醜態をさらしている。おそらく今後の出番はなさそうだけれど、この人が今回のキーパーソン。

 一方で彼と一緒に登場した卯純ウジュンという男(里樹リーシュの異母兄だそうだ)は、どうやらサブレギュラー化するらしい。医局には更紗チャンシャという後輩たちが入ってきたし、西都からついてきた虎狼フーランも壬氏の部下として再登場している。薬屋ワールド順調に拡大中。

 主役の猫猫はというと、今回は羅半に連れられて変人軍師一家とともに名家の会合に出席したり、李白の馬に乗って泥棒が入った緑青館に駆けつけたり、壬氏ご一行の狩りに同行したりと、やたらとあちこちに引っぱりまわされている。でもって、ゆく先々で謎を解いている。

 最後は火事にあった小屋のなかに貴重な医学書があるかもと聞いて、水をかぶって火の中に飛び込もうとして、壬氏らに制止される始末。医学絡みのことになると途端に目の色が変わる猫猫がおもしろおかしい。

(Jun. 19, 2025)



【相棒】
しろくろや

【Shortcuts】
音楽 作品 / ライブ / 会場 / 購入 / エレカシ
作品 / 作家 / 翻訳家 / 読了 / 積読
映画 作品 / 監督 / 俳優 / 公開年 / シリーズ
蹴球 鹿島 / Jリーグ / 日本代表 / W杯

【新譜】
07/25Going Down To The River...To Blow My Mind / Luke Haines & Peter Buck
08/08No Rain, No Flowers / The Black Keys
09/05Antidepressants / Suede
09/05Who Is The Sky? / David Byrne

【サッカー】
06/28[J1 第22節] 鹿島-岡山
07/05[J1 第23節] 川崎-鹿島
07/20[J1 第24節] 鹿島-柏

【新刊書籍】
06/26『草の竪琴』 トルーマン・カポーティ/村上春樹・訳

【準備中】
06/18数学者たちの楽園
06/23ガラスの街
06/24マルドゥック・アノニマス9

【過去のコンテンツ】
Coishikawa Scraps Bootleg 2.0