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2026-01-21宮本浩次@日本武道館 New!
2026-01-18『猿』
2026-01-15RADWIMPS@有明アリーナ
2026-01-12『ストレンジャー・シングス シーズン5』
2026-01-08『高校のカフカ、一九五九』
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宮本浩次

tour 2026 新しい旅/2026年1月10日(土)/日本武道館

 新年のライブ初めは今年もエレカシ!――ではなく、宮本浩次@日本武道館。

 『新しい旅』と題された今回のツアー、なにが驚きだったかってその内容。

 去年『俺と、友だち』をやった直後だし、このタイトルだし、当然その流れをくんで、新しい仲間たちとツアーをまわるんだと思い込んでいたら、そうじゃなかった。

 開演前に、以前にも聴いたことがあるような、ふわっとした環境音楽みたいなのが流れてるのを耳にした時点で、あれ、もしかしたら? とは思ったんだよなぁ……。

 キーボード、小林さんじゃん……。

 ギター名越由貴夫、ドラム玉田豊夢、ベース須藤優に、キーボードが小林武史って。

 『ロマンスの夜』のときのバンドと一緒じゃん!

 まぁ、メンバーは一緒でも、やっている内容が激変しているというのならばともかく、あまりに代わり映えしなくて逆にびっくりだった。

 いや、『さらば青春』とか『ハローNew York』とか、エレカシのレアなシングル・カップリング曲が聴けたり、エレカシだと嬉しくない『彼女は買い物の帰り道』がソロだと妙にしっくりきちゃったりするのは一興だったけれども。

 それでもあとは基本、これまでに観たソロ・コンサートと同じ。映像なしだった前回とは違い、今回はスクリーンも三面ちゃんとある。『木綿のハンカチーフ』が電車のガタンゴトンという効果音のあとで始まるのとか、『ハレルヤ』で手書きの歌詞が出たりする演出とか、前とまったく一緒じゃん!

 宮本にとっては、レコーディングに小林さんが絡んでいない『風と私の物語』と『I AM HERO』をこのバンドで初めてやることに意味があるのかもしれないけどさぁ。

 でも、それをもってして『新しい旅』とか言われてもなぁ……。

 あぁ、なるほど。『新しい旅」ってのは、つまり「新年ツアー」を言い換えただけってことだったのか……ってがっかりした。

 でもまぁ、前述したエレカシの三曲を含む第一部はそれでもけっこうよかった。『光の世界』から始まってすぐに『Do you remember?』でがっと盛り上げる感じとか、緩急のつけかたが巧みで、選曲の意外性もあって、いい出来だと思った。『化粧』、『風に吹かれて』、『sha・la・la・la』、『風と私の物語』、『I AM HERO』など、個人的に愛着のある曲や、新曲が並んでいたこともあって、お、きょうのコンサートはけっこういいかもと思った。

【SET LIST】
    [第一部]
  1. 光の世界
  2. Do you remember?
  3. さらば青春
  4. 化粧
  5. over the top
  6. ハローNew York
  7. 彼女は買い物の帰り道
  8. 風に吹かれて
  9. 今宵の月のように
  10. sha・la・la・la
  11. 風と私の物語
  12. I AM HERO
    [第二部]
  13. Woman "Wの悲劇"より
  14. 異邦人
  15. 哀愁につつまれて
  16. 悲しみの果て
  17. rain -愛だけを信じて-
  18. 昇る太陽
  19. ハレルヤ
  20. 俺たちの明日
  21. Today -胸いっぱいの愛を-
  22. 木綿のハンカチーフ
  23. close your eyes
  24. P.S. I love you
    [Encore]
  25. 冬の花
  26. 夜明けのうた

 くじけたのは、この日も第二部――とくに『rain -愛だけを信じて-』以降。

 前回同様、この曲のサビの口パクパートでどっちらけてしまう。

 本当にあそこでテープを使うのはやめて欲しい。もしくは使うならば、低いパートを録音にして、高いパートを生で歌って欲しい。なまじ耳に残るパートが口パクなので、気分が萎えることはなはだしい。

 基本的にソロの場合はセットリストではエレカシに遠く及ばないのだから、せめて宮本の歌声の気持ちよさを心から楽しみたいわけですよ? なのに、なぜに楽しめなくなるようなパフォーマンスをしてみせるかな? まったく理解できない。

 この日は第二部の四曲目という比較的早い時間帯にこの曲が持ってきてあったので、そこから先がずっとダウナーな気分のままになってしまった。

 あと、首を傾げたくなったのが、『Today -胸いっぱいの愛を-』の演出。『ハレルヤ』と同じように、宮本の手書きの文字で「Today、イエイエーエェー」みたいなのが表示されていたけれども、なにあれ?

 『ハレルヤ』は「幸あれ~」というポジティブなメッセージの曲だから、まだわかるんだけれど、「イェイ、イェイ」みたいな歌詞を見せられて、いったいどうしろと?

 ユーモアのつもりだったとしたら、ズレすぎている。そもそも字も汚いしなぁ……。宮本の手書き文字を見られて嬉しいって喜ぶオーディエンスばかりだと思ってんだろうか。なに考えてんだかさっぱりわからない。

 とにかくさ、もう余計な演出なんていらないんですよ。宮本はただ歌ってるだけで十分にカッコいいんだからさ。全力で歌っている姿が見られれば、それだけで僕らは満足なんだから。下手な演出は逆効果だってことに気がついて欲しい。

 去年のバースデーコンサート以来ずっと歌われている『哀愁につつまれて』とか、思ったよりいい曲かもって気がしてきたし、最初の二番くらいまでは小林さんのキーボードだけで、そのあと玉田豊夢のドラムがドコドコと入ってくる『木綿のハンカチーフ』のミニマムなアレンジとかはけっこう好きなので、なにもかもが悪かったとまでは思わないんだけれども。

 でもやっぱ、なにより『rain』が駄目。なまじ曲自体はいいので、それが中途半端なパフォーマンスのせいで楽しめなくなってしまっているのがもどかしくて仕方ない。

 あと、やっぱ本編の締めが『P.S. I love you』ってのがなぁ……。

 僕はいまだに「愛してる」を連呼する宮本浩次に慣れることができないでいる。

 アンコールのラストが『夜明けのうた』だったので、前回と比べればいくらかあと味はよかったけれども、そんなこんなで今回も満足したとはいい切れない、残念無念な宮本の新春公演――ではなく最新ツアーの初日だった。

 あぁ、せっかくの武道館なんだから、もっとがっつりと楽しみたかったよ……。

(Jan. 21, 2026)

京極夏彦/KADOKAWA

猿

 京極夏彦の作品では、たまに冒頭からうんざりさせられることがある。

 ぱっと思いつくところでいえば、『人でなし』や『塗仏の宴 宴の始末』。最初から登場人物のネガティブな内的独白がつづいて、うへーって気分になる。

 この作品もそんな系列のひとつ。

 物語は一組の夫婦のやりとりから始まるのだけれど、旦那のほうが新型コロナの後遺症で引きこもりになってしまったという設定で、ぐちぐちしていることこの上ない。内縁の妻である主人公の祐美ゆみは、そんな夫の言動を受け流しつつ、冷凍庫の整理とかしている。愚痴っぽい上に会話がかみ合ってない感じが読んでいてつらい。

 この先、この調子でつづくといやだなぁと思っていると、さいわい不幸の元凶である旦那の出番はその最初のパートだけで、その後、祐美が岡山に移動してから、ようやく物語が動き出す。

 彼女は見ず知らずの曾祖母から遺産相続を受けたとのことで、その説明を受けるために、これまた会ったこともない従姉妹と弁護士に会うために、岡山へと出かけてゆく。曾祖母の暮らしていたのは、地図にもない山奥の村――。

 というような横溝正史っぽい設定で、ちょっと不気味なムードが漂うのだけれど、でも終始論理的な語り――というか会話劇――ゆえに、あまりおどろおどろしい感じがしない。雑誌『怪と幽』に連載されたものとのことなので、ホラーとして書かれたのだろうけれど、どことなく不気味な空気が漂っている? くらいの感じ。

 この作品は珍しく章分けがされていないのだけれど、祐美と夫の隆顕たかあきとのやりとりが第一章、祐美が岡山で従姉妹の芽衣と会ってからが第二章、弁護士チームと合流して、女性パラリーガルの尾崎から相続にまつわる特殊な事情を聞かされるのが第三章というような構成になっている。

 祐美があまりしゃべらないので、話は隆顕、芽衣、尾崎による一方的な会話を中心に進んでゆく。でもって最後に相続先の村でのクライマックスに至る。猿、出てはくるけれど、あまり物語に関係なし。

 印象としては、ホラーというよりも「恐怖とはなんぞや?」に関する知的考察が物語の体裁を取ったような作品だと思った。でも、残念ながらとってつけたような結末のせいで、いまいち読後感がすっきりしない。

 「不思議なことなどなにもない」といっていたはずの京極夏彦が、ホラーだからといって、説明不可能な不思議に逃げて物語を幕引きしたのには、どうにも釈然としない気分になってしまった。

 人にはお薦めできない京極作品があるとしたら、『南極』の次がこれかも。

(Jan. 18, 2026)

RADWIMPS

RADWIMPS 20th ANNIVERSARY LIVE TOUR/2025年12月27日(土)/有明アリーナ

あにゅー

 2025年最後のライブは、RADWIMPSの二十周年ツアー最終日@有明アリーナ。

 前回RADWIMPSを観たのは2019年のことだから、これがじつに六年ぶり。気がつけばずいぶんと間が空いてしまっていた。

 まぁ、その前に観たのが十周年ツアーファイナルなのだから、この十年に関しては、ほぼ観ていないも同然だったことになる。

 ラッドが好きだといいながら、あまりライヴに足を運んでいないのは、彼らのライブが僕にとってはいささかアウェイだから。

 ラッドのファンの人たちって、本当によく歌う。アンコールの待ち時間に『もしも』を合唱するルーティーンはいまだに現役だったし(誰かの「せーの!」ってかけ声で始まったのには驚いた)、洋次郎が率先して要求するからっていうのもあるけれど、ライブ本編でもあたりまえのように歌う。どの曲でどう歌うかとかが、ちゃんとオーディエンスのあいだで共有されている感がある。

 そういう参加型のライヴって、はいり込める人にとってはこの上なく楽しいんだろうけれど、残念ながら僕はそういうタイプの人間ではないので、その手の和気あいあいとした輪の中にはまず入れない。結果いまいち居心地の悪い思いをすることになる。

 『おしゃかしゃま』での即興バトルとかも、定型化されすぎていて僕はあまり好きではないんだけれど、まわりはやんやと囃したてて、嫌だなんていえない雰囲気がある。

 あと、なぜだかラッドのライブでは環境に恵まれないことも多くて、オールスタンディングのときには前の人が大きくてよく見えなかったり、規制退場では最後まで残されたり、退出の雑踏にのまれて立ち往生したり、フェスではそばの人のおしゃべりに悩まされたりと、いつもなにやら楽しくない目にあっている。

 この日も終演後に退出ルートを制限されて、来たときとは違う道を歩かされて、駅までやたらと遠回りさせられた。なぜ毎回そんな目にばっかあうんだか。なんかすごい巡り合わせというか相性が悪い気がする。

 そんなこんなの積み重ねが、僕の足を遠ざけている要因。あとはうちの奥さんが聴かない(お気に召さないらしい)というのも大きい。エレカシやずとまよのチケットは彼女が率先して取ってくれているのに、ラッドは自分で取らないといけないので、不精な僕はついチケット争奪戦にめげて、最初から諦めてしまうことになる。

 でもまぁ、RADWIMPSというバンドが好きなのは本当なので、いまいち馴染めないと思いつつも、それでもたまにはライヴが観たくなる。今回は二十周年という区切りだし、うちの子がチケットを取ってくれたので、一緒に観にいくことができた。

 で、いざ観てみれば、アニバーサリー・ツアーということもあって、セットリストはファンならば文句のつけようのないサービス・メニュー。『ふたりごと』で始まり、『有心論』で終わるという、『おかずのごはん』の曲多めのセットリストは、あのアルバムでラッドを好きになった者としては、こたえられないものがあった。

【SET LIST】
  1. ふたりごと
  2. まーふぁか
  3. NEVER EVER ENDER
  4. ます。
  5. ワールドエンドガールフレンド
  6. Tummy
  7. me me she
  8. 賜物
  9. 棒人間
  10. 告白
  11. おしゃかしゃま
  12. DARMA GRAND PRIX
  13. DASAI DAZAI
  14. 三葉のテーマ ~ スパークル ~ グランドエスケープ [メドレー]
  15. トアルハルノヒ
  16. 筆舌
  17. 有心論
    [Encore]
  18. 正解
  19. 25コ目の染色体
  20. いいんですか?
  21. 会心の一撃

 そのアルバムから五曲、あと新譜『あにゅー』からも五曲というのが、たぶんアルバムとしては最多。せっかくの新譜なんだから、『あにゅー』からもっと聴けたら嬉しかったけれど、でもまぁ、二十周年記念という性格上、そういうわけにもいかなかったんだろう。とりあえず、この日は朝からずっと頭の中で『まーふぁか』が鳴っていたので、その曲が聴けたのは嬉しかった。でもその一方で、まさか『命題』が聴けずに終わるとは思わなかった。

 意外性があったのは、『三葉のテーマ』から入って、『スパークル』をワンコーラスだけ聴かせて、『グランドエスケープ』へとつないだ新海サントラメドレー。そこまでいったら『すずめの戸締まり』の曲もやるかと思ったのにやらなかった。

 ラッドのファンの人たちは元気に歌うだけあって歓声もすごくて、男の子が「よーじろー、愛してるよー」みたいなことを叫んで笑いを取ったりしていた。でも、そんなおふざけのあとに『筆舌』がしんみりと始まったのは、いささか決まりが悪かっただろう。お気の毒さま。

 ラッドのライブって本編最後はバラードで終わって、照明が落ちて真っ暗になり、挨拶もなしにメンバーが姿を消すってイメージだったんだけれど(少なくても僕が観た過去のステージはみんなそんな感じだった)、この日は最後が『有心論』で、洋次郎たちはちゃんと挨拶してステージから去っていった。そんなところの変化も、あぁ、二十年の節目のツアーなんだなぁって思わせた。

 そういや『棒人形』で洋次郎が冒頭の歌詞を間違えて歌い直したりしたのにも、あぁ、彼ももう四十代だもんなぁって思った。歳をとるとどうしたって間違いや物忘れが多くなるのは致し方なし。

 この日のライヴでなにが特別だったかって、そのあとのアンコールにスペシャルゲストが登場したこと。

 それがなんと山口智史だっ!!!! おお~! 場内騒然!!

 『25コ目の染色体』一曲だけとはいえ、まさかふたたび彼がドラムをたたくRADWIMPSを生で聴ける日が来ようとは……。僕みたいなすちゃらかファンがそんな貴重なライヴを観させてもらってしまって、なんとなく申し訳ない気分。

 山口くんはVXDという、ボーカルでバスドラの音を鳴らす特殊なドラムセットで演奏していたらしいのだけれど、遠くてそんなことはまったくわかりませんでした(ちなみに僕らの席はステージ向かって右手のスタンド四階の二番目くらいに遠いあたり)。

 バンドはラッドのふたりに、ドラムが森瑞希と繪野匡史という人のツイン・ドラムで、ギターが白川詢という新人の五人組。もともとツイン・ドラムのところに山口くんが加わったので、『25コ目の染色体』ではトリプル・ドラムという激レアな構成になっていた。

 いやしかし、十周年のツアーは山口くんの活動休止後で、二十周年の今回は桑原くん脱退後というのも、なんか不幸な巡り合せだ。三十周年ツアーは無事に洋次郎と武田、ちゃんとふたり揃って迎えて欲しい。

 でも、そのころには僕ももう七十近いので、さすがにもう観にゆけそうにない。

(Jan. 15, 2026)

ストレンジャー・シングス シーズン5

ザ・ダファー・ブラザーズ制作/ウィノナ・ライダー、デイヴィッド・ハーパー、ミリー・ボビー・ブラウン/2025年/アメリカ/Netflix(全8話)

 海外の配信作品では年末一の話題作って感じだった『ストレンジャー・シングス』の最終シーズン。

 残念ながら今シーズンはシリーズでもっとも出来が悪いと思った。つまらなかったとまではいわないけれど、ひっかかるところが多すぎて、どうにも楽しみ切れなかった。

 このドラマはいたいけな子供たちやふつうの人々が、未知のモンスターに襲われて右往左往しながらも、なんとか事態を切り抜けてゆくスリリングさが魅力だったのに、今回は主要キャラがやたらと暴力的なのがとにかく駄目。

 彼らはホッパーとエルを中心にしたアンダーグラウンドのゲリラ勢力みたいになっていて、ホッパーはアーミーに対して平気で銃を乱射したり、手榴弾を投げつけたりする。ナンシーまでライフルを撃ちまくる展開においては、なんだそりゃだ。人を殺すことに対してなんの躊躇も逡巡もないところに違和感ありまくり。

 終盤でダスティンやスティーヴがランボーみたいな服装をしているので、『ランボー』に代表される八十年代のアクション映画へのオマージュのつもりなのかもしれないけれども、だとしたらちょっとピントがずれすぎではと思う。

 モンスターと戦うのならばともかく、同じ人間どうしで殺しあっちゃ駄目でしょう? 己の信じる正義のためならば他人の命を奪うのもやむなしという発想には、最近のベネズエラ侵攻に通じるアメリカの自分勝手さを感じる。普段ならそれほど気にならなかったのかもしれないけれど、観たのがちょうどその軍事侵攻の直後だったので、なおさら駄目な気がした。

 たかがエンタメ、されどエンタメ。政治と娯楽がともに他人の命を奪うことになんの罪悪感も覚えていないようなアメリカ人の倫理観には疑問しかない。

 このドラマに関しては、新型コロナウィルスや業界のストライキによる中断期間が挟まったために、主演の子供たちが成長してしまったのが最大の痛手だったように思う。

 子供のままだったら、もうちょっと節度のある展開が期待できたかもしれないのに、なまじ大人になってしまっただけに(まぁ、物語の中ではいまだ高校生という設定だけれども)イージーなアクション任せなシナリオになってしまった気がする。

 あと、ラスボスを前作で登場したヴェクナにしてしまったのも個人的には失敗だと思った。もともと人間だったキャラを倒せば世界が救えるという展開にはどうにも説得力がない。最後にそのキャラの首を落として終わりという残虐さについても、なんでそうなるのと思わずにいられなかった。

 最終話では二時間という映画並みの尺をとってクライマックスを描いたあとに、後日談として平和になった世界をたっぷりと見せてくれているけれども、それまでの展開があんまりだったものだから、どうにもハッピーな気分になれない。

 とにかく、アメリカという国が潜在的に持つ暴力性が、エンタメとして悪い形で噴出してしまったような完結編だったと思う。残念。

(Jan. 12, 2026)

高校のカフカ、一九五九

スティーヴン・ミルハウザー/柴田元幸・訳/白水社

高校のカフカ、一九五九

 前作同様、原書が厚すぎるという理由で、日本での出版事情を鑑みて二分冊になったスティーヴン・ミルハウザーの最新短編集・其の一。

 内容はいつも通りのミルハウザーだ。超常的なことはほとんど起こらないけれど、それでいて現実感を欠いた不穏な感触の物語ばかりが並んでいる。

 たとえば冒頭の短編では、どこかに電話をして「係の者がまもなく対応いたしますので、電話を切らずにそのまましばらくお待ちください」という自動応答メッセージを聞かされた女性が、待たされたことで記憶を刺激されて、電話口にいもしない話し相手に対して、若いころの異性にまつわる思い出を延々と聞かせる。

 ある男性は親密な関係にある恋人に、正面から向かいあうことを拒まれているし(精神的な意味ではなく肉体的に)、最後の短編では主人公の青年が、恋人の母親となにやら微妙なひとときの夕べを過ごすことになる。

 そういうミニマムな個人の物語の一方で、マクロな視点に立って、位相がずれた社会現象を描くのもミルハウザーの得意技。

 ある町では犯罪者に対して斬首刑が採用されて、広場でギロチンによる公開処刑が行われ、ある町ではマイホームに立てかけた梯子でどこまでも高く昇ってゆくのが流行って、転落死が社会問題になる。ある町では影芝居のブームが人々の生活を変えてゆく。

 もっともボリュームがある表題作『高校のカフカ、一九五九』は、カフカという男子高校生の日常を断片的に描いたもので、それだけならば普通の青春小説という印象だけれども、ところどころに同級生たちのインタビューがインサートされるのが味噌。

 それがあることで、その子が将来なんらかの形で有名になるんだろうなって読者の僕らは勝手に想像する。ただし、カフカくんが将来どんな大人になるのかは明かされない。偉くなるのか、悪いことをするのか。真相は藪の中。おかげでこの作品はふつうの青春小説とはひとあじ違った不思議な感触を残す短編に仕上がっている。

 そんなふうに物語性や会話劇ではなく、その小説の語りのみで世界を構築してゆく。スティーヴン・ミルハウザーほど、小説という表現形態によってどんなことができるかを突き詰めて考え、作品として形にしつづけている小説家も珍しいと思う。

 その存在は唯一無二。でもそれゆえに読むとちょっと疲れるので、年末の慌ただしい時期に読んだのをちょっと後悔した。不本意ながら今回は二分冊にしてくれて助かったかもと思ってしまった。

(Jan. 08, 2026)



【相棒】
しろくろや

【Shortcuts】
音楽 作品 / ライブ / 会場 / 購入 / エレカシ
作品 / 作家 / 翻訳家 / 出版社 / 読了 / 積読
映画 作品 / 監督 / 俳優 / / シリーズ / ドラマ
蹴球 鹿島 / Jリーグ / 日本代表 / W杯

【新譜】
01/23Somebody Tried To Sell Me A Bridge / Van Morrison
01/30Wormslayer / Kula Shaker
02/06Tenterhooks / Silversun Pickups
02/20Prizefighter / Mumford & Sons
02/27The Romantic / Bruno Mars
02/27Hen's Teeth / Iron & Wine
03/04二人称 / ヨルシカ
03/11禁じ手 / 椎名林檎
03/13Play Me / Kim Gordon
03/20The Mountain / Gorillaz
03/25形藻土 / ずっと真夜中でいいのに。
03/27Honora / Flea
06/10I AM HERO 「俺と、友だち」盤 / 宮本浩次
06/10I AM HERO 「最高の日、最高の時」盤 / 宮本浩次

【コンサート】
02/28ずっと真夜中でいいのに。@日本武道館
10/28BUMP OF CHICKEN@有明アリーナ

【サッカー】
02/07[J1百年構想L 第1節] F東京-鹿島
02/14[J1百年構想L 第2節] 鹿島-横浜FM
02/21[J1百年構想L 第3節] 鹿島-柏
02/28[J1百年構想L 第4節] 浦和-鹿島

【新刊書籍】
02/26『書簡型小説「二人称」』 n-buna
02/27『サリンジャー初期短篇全集』 柴田元幸・訳

【準備中】
01/13村上朝日堂 はいほー!
01/17リコリス・ピザ
01/17バウムガートナー

【過去のコンテンツ】
Coishikawa Scraps Bootleg 2.0