2002 FIFAワールドカップ Korea/Japan (5)

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Index of Round of 8

  1. イングランド1-2ブラジル
  2. ドイツ1-0アメリカ
  3. スペイン0-0韓国(PK3-5)
  4. セネガル0-1トルコ

イングランド1-2ブラジル

準々決勝/2002年6月21日(金)/静岡スタジアム/NHK

 この大会、最初で最後のビデオ録画観戦。結果のわかっている試合は、いかに事実上の決勝戦とまで言われる好カードといってもいまいち面白みに欠ける。
 イングランドの守備力対ブラジルの攻撃力が焦点のこの試合、まずはブラジルDFのミスからオーエンがゴールを決め、イングランドが先制しておもしろい展開になった。ところが前半ロスタイムにブラジルのロナウジーニョが個人技で中央突破、最後は右手のリバウドに完璧なラストパスを送る。これをリバウドが難なく決めて同点に追いついてしまう。
 後半開始5分には、またもやロナウジーニョ。FKを直接ゴールに放り込む。イングランドGKのシーマンが不意を突かれたように見送るしかない、なんでそれが決まっちゃうのって感じの、不思議なゴールだった。
 僕はイングランドが勝つとしたらば虎の子の一点を守り切る形しかないと思っていたので、前半終了間際の同点劇でブラジルの勝利は決まったと思っていた。それでも後半途中にこの試合の立役者だったロナウジーニョが一発レッドで退場してしまう。この人数的なビハインドでおもしろくなったと思った。でも結局試合はその後も動かず。ワールドカップでブラジルと3回対戦して、いまだ勝ち星なしというイングランドは、今回も雪辱ならなかった。
(Jun 22, 2002)

ドイツ1-0アメリカ

準々決勝/2002年6月21日(金)/蔚山文洙サッカー競技場(ウルサン)/NHK

 準々決勝まで来て初めて見るチームがあるというのも珍しい。この大会3週間目にして、初めて見るアメリカの試合。これまでは巡り合せが悪く、昼間の試合が多かったり、夜でも同時刻に韓国やポルトガルの試合があったために放送されなかった。母国ではサッカーに対する関心が極めて低いというけれど、やはりそうした無関心さも、サッカー界におけるこの国の影を薄くしているんだろう。アメリカという国がこれほど存在感のないスポーツも珍しいと思う。
 とはいえ展開するサッカーの内容は決して悪くなかった。非常に組織的で連係がよく、それでいて時おり、個人のひらめきも感じさせるそのスタイルは、濃紺のユニフォームとともに日本にも通じるところがあって、かなり好感が持てた。高さにものをいわせて、サイドアタックとセットプレーで点を取り、堅く守るばかりの、いかにも質実剛健といった感じで、面白みのないドイツのサッカーよりもよっぽど好きだった。
 とはいってもやはり勝つのはドイツ。前半39分にツィーゲのFKからバラックが頭に合わせてあげた先制点を守り切ってベスト4進出を決めた。やっぱりドイツはでかい。決勝ゴールのシーンも、そのでかさを遺憾なく発揮していた。平均身長184センチ以上というあの高さはどのチームにとっても脅威だろう。困ったもんだ。
 とりあえず今日の試合で一番印象に残ったのはアメリカの攻撃に大いに貢献していた21番の選手ドノヴァン。まだ二十歳の選手だそうだから、次の大会ではきっとアメリカの中心選手として活躍していることだろう。いや、その前にオリンピックがあるか。そういえば前回のオリンピックでは日本はアメリカに負けて敗退したんだった。ああいう選手がいるようだと、次に当る時にも気をつけないといけなさそうだ。
 そうそう、あと大会ナンバーワンGKと言われるドイツのカーン。この試合まではそれほど活躍する場面もなかった印象だったけれど、今回はファインセーブを連発し、その凄みをこれでもかと見せてくれた。カーンの個性的な風貌は結構好きだ。
(Jun 22, 2002)

スペイン0-0(PK3-5)韓国

準々決勝/2002年6月22日(土)/光州ワールドカップ競技場(クワンジュ)/NHK

 日本の敗退で気が抜けたのか、それとも中休みがあったせいでテンションが下がってしまったのか。どうも昨日の試合といい、今日のこの試合といい、いまひとつ集中し切れなかった。だから僕が悪いのかもしれないけれど、正直言ってこの試合はおもしろくなかった。日本人としてやっかみ混じりで見ていた可能性もあるけれど。
 前の試合でイタリアを激闘の末に破った韓国は、中三日で疲れが取れていないのか、いまひとつぱっとしたプレーがない。対するスペインもエースのラウルを肉ばなれで欠き、精彩を欠いている。もとよりどちらのサッカーもそれほど好きではないので、そんな不出来な2チームの対戦がスコアレスドローで終わってしまえば楽しくないのも当然。
 とりあえずスペインのホアキンは試合中の活躍がめざましかっただけに、PKを止められてしてしまったのが可哀想だった。120分の戦いがかなり足に来ていたんだろう。PKでのキックはスローモーションでも見ているようで、僕にも止められそうだった。
 対する韓国ではパク・チソンがこの試合でも惜しいシュートを放った場面が強く印象に残っている。彼はホントいい。Jリーグにいるというのに今まで知らなかったのが恥かしい。それと(あまり好きではないけれど)前の試合でゴールデンゴールを決めたアン・ジョンファンはこの試合でもいい動きをしていたように見えた。
 それにしても。
 一部で審判の買収が噂される韓国だけれど、残念ながらこの試合でも判定に助けられていた印象がある。スペインのシュートがゴールネットを揺らすシーンが何度かあったにもかかわらず、そのたびにファールやらオフサイドやらゴールラインを割ったやらと、笛を吹かれて無効にされていた。そのうちのいくつかは、テレビで見ていてもそりゃないだろうという判定だった。
 まあ、でも基本的に今回の大会は全体的に審判団のレベルが低いような気がするし、なんたってスタンド全体が韓国贔屓を促すムードで充ち充ちているのだから、レフェリーも人の子、間違いを犯すこともあるだろう。証拠もないのに韓国が不正を働いたと決めつけるわけにはいかない。それにたとえ実際に韓国有利の笛が吹かれたとしたところで、韓国というチームにある程度の実力がなければ今の成績は望めないわけだし。いかに相手チームの出来が悪かったとしても、ポルトガル、イタリア、スペインという強豪国に続けて勝つなんてことが弱いチームにできるわけがない。特に今回は退場者がいたわけではないのだし(際どい判定は多々あったものの)。
 ということで韓国がPK戦でスペインを破り、アジア勢としては初のベスト4入りを決めた。スペイン相手に互角の勝負を繰り広げたことには感心するものの、この大会まで勝ち点3さえあげられなかったチームがベスト4に残ってしまうという結果には複雑な気分だ。韓国を疑う以前に、今大会の優勝候補国の不甲斐なさは問題じゃないだろうか。彼らにしてみれば一番の問題はジャッジにあるということになるのだろうけれど。
(Jun 22, 2002)

セネガル0-1トルコ(延長前半)

準々決勝/2002年6月22日(土)/長居スタジアム/TBS

 本当は日本代表がベスト4を目指して戦うところが見られるんじゃないかと期待していたこの時間帯に、よりによってセネガル対トルコとは……。正直なところ、なんて地味なカードを見ることになってしまったんだろうと残念に思っていたのだけれど。
 これが「失礼しました」と謝りたくなるくらいおもしろい試合だった。
 試合前は驚異的な身体能力を誇るセネガル有利というのが大方の予想だったように思う。ところがいざ試合が始まってみると、終始ゲームを支配するのはトルコの方だった。中盤での小気味よいパス回しからバラエティに富んだ攻撃を仕掛けるその姿は、まるで日本戦とは違うチームのようだった。
 一番の違いは多分MFのエムレという選手の存在だろう。インテルのレギュラーだというこの21歳の選手が中盤の基点となり、素晴らしいプレーを見せてくれていた。こんな選手が日本戦では累積警告で出場停止だったなんて。それなのに勝ちを逃してしまうなんて。なんて惜しいチャンスを逃したことやら。
 とにかく彼が加わったことでトルコのパスはおもしろいように回っていた。森島似の10番のバストゥルクも今日はかなり効いていた。中盤にそうした優れたプレーヤーがいるおかげで、ツートップの攻撃力も日本戦の比ではない。何度となくセネガルのゴール前を脅かし続ける。けれどしかし。
 エース・ストライカーのハカン・シュキュルが絶不調だった。いや、日本戦ではほとんど存在感がなかったことを思えば、あれだけチャンスに顔を出していたというのは逆に調子がよかった証拠なのかもしれない。それにしても今日の彼は打てなさ過ぎた。ゴール前の決定的チャンスでパスをもらいながら、前代未聞のトラップミスをしてみたり、あと一歩伸ばせば届きそうなボールを見逃してみたり。とにかく上手いことゴール前には入り込むものの、肝心なところでボールに{さわ}れない。あまりに惜しいチャンスを逃しまくるので、いつの間にかトルコ贔屓な応援をしていた僕は、なんだそれはと憤慨すること{しき}りだった。
 トルコが日本戦とは見違えるようなパフォーマンスを展開していた一方、対するセネガルは前回のスウェーデン戦で出場停止だった10番ファディガ、15番ディアオという中心選手が戻って来たにもかかわらず、ディウフらが前の試合で見せたあの驚くような切れ味は影を潜め、受身、受身の試合運びになってしまっていた。このセネガルならば開幕戦と同じ印象だ。それを見ていて、もしかしたらこのチームは中盤でのボール回しを得意とするチームは苦手なんじゃないだろうかと、ふと思った。だとしたら日本だって結構善戦できたかもと思うと、それがまた無念で仕方ないのだけれど……。
 ま、そうは言ってもセネガルはやはりセネガル、球ぎわのスピードにはものすごいものがある。ゴール前での混戦からこぼれるようにゴールマウスへ転がったトルコのシュートに、瞬時に追いついてクリアした2番ダフのプレーには、思わず笑ってしまった。アナウンサーも絶叫していたけれど、本当にどうしてあれがクリアできるんだ?
 そんな風に、終始トルコが組織的な攻撃で攻めたて、時おりセネガルが個人技の切れで反撃を見せるという展開の中、時間はあっという間に過ぎ去っていった。こんなに90分が短く感じられたのは、日本代表の試合を除くと初めてかもしれない。僕にとっては今大会のベスト・マッチのうちのひとつだった。
 結局試合はスコアレスのまま前後半を終わってしまう。熱戦の決着は意外とあっけなく、延長戦の前半4分にやって来た。途中交替で出場していたトルコの6番アリフが右サイドをドリブルで駆け上がる。これをセネガルがつぶすものの、そのこぼれ球を日本戦で決勝ゴールをあげたモヒカンヘアのダバラ(なんとACミランの選手だそうだ)が拾って、ドリブルで攻め上がり、斜めにクロスを入れる。このボールを、後半途中からシュキュルに替わって出場していた17番のイルハンがダイレクトボレーでゴールへ流し込み、ゴールデンゴール! 長髪を頭の上で結わいた可愛い顔のFWが、不発だったシュキュルの替わりに見事な活躍を見せ、トルコが初のベスト4進出を決めた。
 しかしまあ、おもしろい試合だった。日本代表の試合が見られなかった無念をある程度晴らしてくれる素晴らしい試合だったと思う。これでトルコはグループリーグで負けたブラジルと、準決勝で再戦することになった。今日の出来を維持できるようだと、またおもしろい試合が期待できるだろう。こりゃ楽しみだ。
(Jun 23, 2002)