2002 FIFAワールドカップ Korea/Japan (6)

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Index of After Semi-Finals

  1. ドイツ1-0韓国
  2. ブラジル1-0トルコ
  3. 韓国2-3トルコ
  4. ドイツ0-2ブラジル

ドイツ1-0韓国

準決勝/2002年6月25日(火)/ソウル・ワールドカップ競技場/日本テレビ

 やはり中二日はきついのか、それともここまで勝ち上がって来たことで満足してしまったのか、はたまた世界中から疑惑の目を向けられて臆したのか。韓国からは前の二試合ほどの勢いが感じられなかった。まあ、ここまで来た時点で出来すぎという印象だし、この試合に負けて決勝まで行けなかったところで、もう一試合、三位決定戦を自国で戦えるとなれば、気分的に気が抜けてしまう部分もあるだろう。それでもドイツ相手にほぼ互角の戦いができていたと思う。多分、ひとつ前に当っていたら勝っていたんじゃないだろうか。負けはしたものの、それくらい今の韓国は強く感じられる。誤審か八百長か知らないけれど、そのせいで真の力が評価しにくくなってしまったのがとても残念。
 対するドイツはいつもどおりサイドやロングボールを多用したシンプルな攻めから韓国ゴールを襲うものの、自慢の高さが十分に生かせない。高さで競り勝っているくせに、きちんとボールが捕らえられない。イージーなパスミスも目立ち、あまり強豪国って感じがしなかった。
 ただ、ドイツにはカーンがいる。前半8分、韓国のイ・チョンスが放ったシュートを横っ飛びで押えたプレーは見事のひとこと。一瞬、手が伸びたかと思った。今大会一の長身チームにこんなGKがいるんだから、ディフェンスが鉄壁なはずだ。驚いたことに今大会ここまでの失点は、アイルランド戦でロスタイムに許したあの一点だけ。恐るべし。
 試合の方は後半途中にノイビルからのクロスにバラックが合わせ、一度はGKイ・ウンジェに止められたものの、跳ね返って来たボールに素早く反応してゴール。この虎の子の一点を危なげなく守り切ってドイツが決勝進出を決めた。
 これで決勝戦はワールドカップ史上初となるブラジルとドイツの対戦が見られる可能性が高くなった。まあブラジルがトルコに負ける可能性だってなきにしもあらずだけれど、僕はこの前の試合を見てトルコというチームが気に入ったので、それならばそれでもいいかなと思っている。でもやはり本命はブラジル。
 ドイツは今日の試合でバラックとノイビルという、この試合の決勝点に絡んだ攻撃の中心選手二人がイエローカードをもらってしまい、累積警告で次の試合は出場できない。それでなくても得点力不足のドイツにはこれは致命的だろう。まあ、二人がいたところで今のドイツがブラジルに太刀打ちできるとは思えないけれど、それでも大会最小失点のディフェンス力を振り絞って守り切れれば、勝機がないでもない。
 さあ、ドイツの対戦相手はブラジルか、トルコか。明日の試合がとても楽しみだ。負けた方が韓国と戦う三位決定戦も結構楽しみ。韓国がブラジル相手にどれくらい戦えるのか見てみたい気もするし、日本を破ったトルコを相手にどういう戦い方をするのかにも興味がある。トルコ相手の方が韓国は燃えるんだろうな。日本を負かしたチームに勝って大会を終えるなんて、あちらにしてみれば最高だろう。やれやれ。
(Jun 26, 2002)

ブラジル1-0トルコ

準決勝/2002年6月26日(水)/埼玉スタジアム/NHK

 準々決勝の戦いぶりですっかり僕のお気に入りとなったトルコが、現時点でもっともワールドカップに近いポジションにいるブラジルに挑む一戦。
 トルコは日本戦と同じように固く守ってくるかと思ったら、意外や序盤から攻めて出る。得意のパス回しから森島似の10番バシュトゥルクと、謹厳{きんげん}な修行僧のようなスキンヘッドの11番ハサンを中心としてさかんに攻めたてる。でも。
 やっぱりこの試合でも決定力を欠きまくっている。ゴール前の惜しいところまではボールを運べるのに、それがシュートに結びつかない。わはは、どこぞの国のようだ。
 ブラジルはといえば、そんなトルコとは反対に、相手陣地に入ると誰も彼もがゴールしか見ていないようなプレーをする。恐いったらない。前半途中までのボール支配率はトルコの方が高かったような気がするけれど、その後はブラジルの強力な攻撃力の前に終始押され気味。全然トルコに勝ち目はないように見えた。それでもなんとか前半は0-0のまま終了。ファイン・セーブを連発してブラジルの猛攻を塞ぎ止めたGKリュストウの存在が大きかった。
 後半はどうにかして早いうちにトルコが先制してくれないだろうか、そうすればおもしろくなるのにと思っていたのに。
 後半早々、ロナウドがやってくれた。左寄りからドリブルでゴール前に切り込んだと思ったら、その流れの中から不意をつくようなタイミングでトゥー・キックのシュートを放つ。GKリュストウが触るもコースを変えられず、ボールはゴールネット右隅に突き刺さった。決して強いシュートではなかったけれど、打ったタイミングが抜群だった。一瞬のシュート・チャンスを逃さずに、最善のシュートを放つあの感覚こそが一流のあかしだろう。これでロナウドは今大会6点目。得点王に限りなく近づいた。
 試合の方はこのゴールでどうも勝負があった気がした。今日のトルコではブラジルに追いつけるとは思えなかった。終盤にハカン・シュキュルの惜しいボレーシュートがあったり(彼のシュートを見たのは初めてのような気がする)、前の試合でゴールデンゴールを決めたイルハン(この試合でも途中出場)が、何度かフリーでシュートを打てるチャンスを得ながら、打ちそこなったり、ミスったりという場面がいくつかあったものの、残念ながらゴールを奪うには到らなかった。結果は順当にブラジルの勝利に終わった。
 今日の試合はトルコを応援しながら見ていたのだけれど、こうして敵として見るブラジルというのはさすがに憎たらしいくらいに強い。個々の選手のスキルがずば抜けている。スコアは1-0だけれど、内容的にはそれ以上の開きがあったような気がした。でもトルコはトルコでとてもいいチームだと思う。負けはしたけれど僕は好きだ。
 これで決勝はワールドカップ史上初となるブラジルとドイツの対戦に決まった。両方とも大会前はやたらと評価が低かったのに、ライバル国が次々と脱落する中、対戦カードに恵まれて無難に決勝まで勝ち残ってしまったという印象がある。それでも地味だった大会の最後にこういう初物の大物対決が実現してよかった。3R対カーンの対決(なんだかこう書くとスターウォーズ対スタートレックみたいだ)を楽しみに待とう。おっと、その前に韓国対トルコもある。
(Jun 27, 2002)

韓国2-3トルコ

三位決定戦/2002年6月29日(土)/大邱総合競技場(デグ) /フジテレビ

 自国開催のワールドカップで破格の大躍進を見せた韓国と、その共催国・日本をワールドカップから葬り去った国トルコとの対戦。両チームの実力からしてかなりの好ゲームが期待できるだろうと思っていたのだけれど。
 いきなり──。
 開始十何秒でトルコが先制してしまう。キックオフのボールをバックパスで下げた韓国に対し、そのボールを追ったトルコ。中央でボールを受けたホン・ミョンボがもたついた隙を逃さず、ボールを奪ったハカン・シュキュルが、いとも簡単にゴールを決めてしまった。なんてイージーな。そりゃないだろうという失点だった。苦笑もんだ。
 それでも今の韓国はそれくらいでは負けていない。9分にはイ・ウルヨンの見事なFKで同点に追いつく。そんないいプレイスキックが蹴れる選手がいたのかとびっくりするくらい見事なFKだった。
 これで同点においつき、韓国はもしかしたらこの試合もいけるのかと思わせた。ところがそのわずか数分後にハカン・シュキュルとイルハンのコンビネーションから失点を許してしまう。ファール気味のプレーからのこぼれ球を、笛もならないのにファールだと判断して追わなかったのが失点につながってしまった。これまで散々判定に助けられてきた韓国が判定に泣かされるなんてちょっと皮肉だ。それでもミスはミス。この2失点は、内容が悪過ぎた。32分にはイルハンに2点目のゴールを決められてしまい、勝負あったという感じだった。
 今日のトルコはハサンを怪我で欠いていた。それでもハカン・シュキュルとイルハンのツートップが上手く機能したのに加え、韓国ディフェンス・ラインが集中力を欠いていたのに助けられた感じだった。ようやくハカン・シュキュルが仕事をするのを見られただけでも、三位決定戦まで進んだ甲斐があるんじゃないだろうか(ひどい言いよう)。
 後半は韓国が終始ゲームを支配して積極的にゴールを狙う展開だったけれど、惜しいシュートを何度もGKリュストウのファインセーブに阻まれて得点に到らない。リュストウは本当にいいゴールキーパーだった。さすがカーンと並んで今大会のベストGKに選ばれるだけのことはある。
 後半の韓国が圧倒的に攻めながらも得点できないという展開は、まるで日本代表と同じような感じだった。それでもフィニッシュの形が作れずに完封負けを食らった日本とは違い、韓国は終始シュートを放ち続ける。その成果が出たのだろう。最後の最後、ロストタイムに1点を返してみせた。結局2-3で破れてベスト3は逃したものの、トルコ相手に2点を奪った攻撃力はさすがだった。試合終了後は両チームの選手が肩を組んでウイニング・ランをして、真っ赤に染まったスタンドの大歓声を浴びていた。
 しかし今日の韓国は……。2点を返したことは評価するものの、それよりも前半の3失点はいただけない。取られ方が悪過ぎる。本当に強いチームならば、どんなに状態が悪くてもそんな取られ方はしないだろうという失点だった。やはり実力的には欧州との間にシビアな差があることを感じさせてしまった一戦だったと思う。
(Jun 29, 2002)

ドイツ0-2ブラジル

決勝/2002年6月30日(日)/横浜国際総合競技場/NHK

 今大会最後の一戦。リバウド、ロナウド、ロナウジーニョの3Rの攻撃力が勝つのか、守護神カーンを擁するドイツの守備力が勝つのかというこの一戦。勝負を決めたのは、変な髪形(大五郎カット?)のロナウドだった。
 試合は予想外にも、前半からドイツが支配する展開となった(そう言えば前の試合でイエローをもらってこの試合バラックとともに出場停止だろうと思われたノイビルは、その前のイエローの判定が取り消されたとかでスタメンに名を連ねていた)。
 ベルギー戦でもトルコ戦でもそうだったけれど、今回のブラジルは中盤に司令塔タイプの選手がいないせいか、結構相手にボールを自由に持たれている印象が強く、いまいち強そうには見えなかった。それでも優勝できてしまったのは、ひたすら復活を遂げたロナウドを始めとする3Rの決定力に負うところが大きかったと思う。今日のリバウドなんて大半の時間、どこにいるのかわからないようなプレーをしていた。それなのにいざという時にはロナウドの先制ゴールにつながる貴重なシュートを打ったりする。いくら相手にボールを持たれてもかまわない。肝心のところで点を取るために必要なプレーができること。大切なのは、いかにボールを回すかではなく、いかにゴールマウスにボールを放り込むかだという、とてあたり前のことを今回のブラジルは教えてくれた。
 ゲームの方は、ドイツが得意のサイド攻撃から攻め込みながらも、いまひとつ決定機を演出できずにいる中、ブラジルが時おり個人技から惜しいチャンスを生み出しては、カーンに阻まれるという、前のブラジル-トルコ戦と同じような展開で、0-0のまま前半を終了。この試合でのドイツは、中盤でのプレスが非常に良く効いていた。
 ゲームが動いたのは後半なかば。ドイツDFがゴール前でもたついた隙を逃さずにボールを奪ったロナウドが、リバウドにパス。リバウドはドカンと強烈なシュートを放つ。シュート・コースはカーンの真正面だったのだけれど、リバウドのパワーが勝ったのか、痛恨、これをカーンがはじいてしまう。そこにロナウドが、リバウドにパスを出した後、ちゃんと走りこんでいる。さすが一流、チャンスは逃さない。どーん。ブラジル先制。
 さらにその12分後。今度は15番のクレベルソン(この人はバーをたたく惜しいシュートを放ったりして、この日は結構目立っていた)が右サイドから上げたクロスをリバウドがスルー、そのうしろに走りこんでいたロナウドがまたもや落ち着いて決めて2点目。今大会8得点で得点王のタイトルとブラジルの優勝を確実にした。
 結局ドイツは健闘むなしく完封負けを喫した。試合終了後にゴールポストにもたれたりしながら悔しさを滲ませていたカーンの姿が印象的だった。
 あと、この試合でなるほどと思わせたのがロナウジーニョ。ボールに触る回数こそ少なかったけれど、それでもボールを持った時に出すパスが柔らかくてとても良かった。彼が中心となって活躍するブラジルというのはぜひ見てみたい。今年のチームよりもずっとおもしろいサッカーを見せてくれそうだ。2006年のドイツ大会ではロナウドに通算得点の記録更新の期待もかかる(今までの最多得点は西ドイツのミュラーの14点)。次回大会のブラジルは最初から優勝候補として登場してくれることを祈っている。
 組織的で守備的なチームの健闘が目立った今大会において頂点に立ったのは、そんなものお構いなしに奔放な個人技で勝ち上がってきたブラジルだった。とはいえ気がつけばブラジルも7試合で4失点しかしていないし、もしかしたら結構ディフェンスがいいチームだったのかもしれない。いずれにせよサッカーの基本は守りからということを感じさせ、それでも最後の最後はゴールへの意欲が勝る方が勝つということを知らしめた大会だった。
 これで日韓共催ワールドカップはおしまい。2006年、ドイツ大会での日本代表の活躍を夢見つつ、また再来週からはJリーグだ。
(Jul 01, 2002)