2006 FIFAワールドカップ Germany (6)

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Index of After Semi-Finals

  1. ドイツ0-2イタリア
  2. ポルトガル0-1フランス
  3. ドイツ3-1ポルトガル
  4. イタリア1-1(PK:5-4)フランス

ドイツ0-2(延長0-2)イタリア

準決勝/2006年7月4日(火)/ドルトムント(録画)

 この準決勝を待つ中休みの2日のあいだに、日本代表にまつわるきわめて重大なニュースが2つあった。ひとつはイビチャ・オシム氏の代表監督就任の内定。もうひとつは中田英寿の現役引退発表だ。
 川淵キャプテンの「史上最大の失言」から始まったごたごたで、もしかしたらこのまま暗礁に乗りあげてしまうのではないかと心配していたオシムさんの代表監督への就任がどうやら無事に決まったらしいと知り、ひと安心と思ったのもつかの間。続けて今度は中田英寿が自らのHPで現役引退を発表した。誰よりもスタイルにこだわる彼のことだから、いったん公言したことを引っ込めたりはしないだろう。
 中田の引退は残念だ。でもこれで日本代表のひとつの時代が本当に終わったということになるんだろう。98年のW杯初出場から続いてきた日本代表の世界への挑戦は、ヒデの引退により確実にひとつの区切りがついた。これからはオシムのもとで心機一転、より高みを目指す挑戦が始まるのだと思うと、それはそれで非常にわくわくする。8月9日に予定されている新しい代表の最初の試合がいまから待ち遠しくてたまらない。
 ──というような話があって。
 心がすでにワールドカップ後の日本代表へと向かっているせいか、いよいよ準決勝だというのに、あまり気分が盛りあがっていない。日本代表はもとより、そのほかに気に入っていたチームがすべて姿を消してしまったせいもあって、僕のなかではW杯はすでに終わったも同然といった感がある。おかげで今朝は起きるのがちょっとつらかった。今まではこれから始まる試合への期待からかアラームが鳴ると同時にぱっと目が覚めていたのに(鳴る前に目が覚めてしまったこともあった)、今朝はベッドを抜け出すのに十分はかかった。正直なところ、残りの試合を見ないで済ませても、たいした後悔はしないだろうと思う。
 ただ、だからといって残りがわずか4試合となると、それを見ないで済ませてしまうという訳には、やはり性格的にいかない。始めたことは最後までちゃんとやりとおさないといけない。コレクター気質がわざわいして、試合を見なかったことよりもおそらく、それについて文章を書くことを途中で投げ出したことを、いつか後悔することになるのがわかり切っているからだ。
 そんな訳で僕は今朝もキックオフから1時間遅れでベッドを抜け出し、ほうっておくと閉じてしまいそうになるまぶたを一生懸命見開きながら、出勤前にドイツとイタリアの試合を観戦した(録画でだけれど)。
 しかしこの試合は本当に眠かった。なんたってただでさえ眠いところへ持ってきて、愛着のないチームどうしの、決定機のきわめて少ないゲームだ。カテナチオの堅牢さに舌鼓を打つ趣味はないし、ドイツには加地を削られて以来、いい感情を持てないでいる(執念深い)。さっさとスコアが動いてくれないかと思うものの、そんな匂いはまるでしてこない。ほぼ予想どおりに試合はそのまま延長戦へ。
 延長が始まってすぐ、イタリアのシュートが2本、ポストとバーに嫌われるという惜しいシーンがあった。ドイツにも(延長だったかどうかは覚えていないけれど)ボドルスキがゴール前でフリーになるチャンスが2つほどあったと思う。けれどもどちらも決められず、試合時間は刻々と進み、これはきっとまたPK戦だろう。まあ、レーマンとブッフォンのPK対決というのも見ものかなと思い始めた、最後の2分で。
 またもやイタリアがやってくれた。セットプレーの流れの中から、21番ピルロがペナルティエリア内でフリーになっていたDFの3番グロッソに絶妙のスルーパス。これをグロッソが鮮やかに決めて、ついにイタリアが均衡を破った。こんな時間帯にゴールが決まるなんて、思いもしていなかったから、びっくりだ。
 さらに驚くのは、そのわずか1分後にお得意のカウンターが炸裂したこと。ともに途中出場のジェラルディーノからデルピエロへつないでの追加点だ。このシュートが決まったあと、プレーは再開することなくレフェリーの長い笛が鳴り、試合終了。トッティのPKで終わったオーストラリア戦と同じく、この試合のラストプレーもイタリアのゴールだった。守りに守って、残り時間がゼロになったところで試合を決める。狙ってできることではないと思うけれど、これこそまさにイタリア・サッカーの真骨頂ともいうべき試合運びだろう。いや、驚いた。
 ねむいねむい2時間ののちに訪れた、まさに「目が覚めるような」という形容がぴったりの、劇的な結末だった。
(Jul 05, 2006)

ポルトガル0-1フランス

準決勝/2006年7月5日(水)/ミュンヘン(録画)

 今回の大会で印象的なのは、FWが従来のように活躍できていないことだ。積極的にスペースをつぶしてゆくプレッシング・サッカーが定着した現在のサッカーでは、FWが最前線でどーんと構えていたのでは、簡単にはゴールを奪えない。ゆえにセットプレーやミドルシュートの重要性がより高くなったと言われる。特にミドルシュートの多さは多くのメディアで指摘されている。
 そうしたサッカーの傾向を反映しているのが、2トップで戦うチームが少ないことなんじゃないだろうか。決勝戦で戦うことになったイタリアとフランスの両チームとも、準決勝でのフォーメーションは1トップだった。ポルトガル、オランダ、スペインといったあたりの3トップも、1トップ+2シャドーのような印象が強いように思う。あのブラジルでさえ、準々決勝ではロナウジーニョを最前線に置き、FWはロナウドのみというフォーメーションを引いてきた。
 それらのことを考えると、やはり日本代表が最後まで2トップで戦ったことは、いかにジーコが現代サッカーに順応しきれていないかを、如実に物語っているように思える。何度も書いているけれど、日本の強みは中盤の人材の豊富さにあった。逆にFWは久保の落選により、頼れるエースを欠き、いっちゃ悪いけれど、どんぐりの背比べといった感があった。それならばいっそ、2トップなどやめて1トップで戦ったらばどうだと、それは僕の友人らのあいだでは、ずっと以前より取り沙汰されていたテーマだった。
 今回のW杯を見ていると、本当にそうしてくれていたならば、日本はもっと機能的なサッカーができていたんじゃないかと思えて仕方ない。1トップにして中盤を厚くして、可能な限り連係を高めてゆけば、少なくてもグループリーグの突破というミッションは、手の届かない難題ではなかったのではないかと思えて仕方ない。
 ところがジーコはそうしてくれなかった。それどころか連係を高める時間さえ放棄した。あまりの得点力不足に業を煮やしたかの人は、ブラジル戦の前日練習をシュート練習だけに費やしたという。いまさら一夜漬けでシュートが上手くなるはずもないだろうに……。この期におよんで高めるべきはシュートの精度などではなく、そこにいたるまでの連係の熟練度だろう。決定力の低さはいまに始まったことではないのだから、それを補うにはチャンスの回数を増やすことしかない。ならばシュート練習よりも、チームとしての連係を高めることが優先だったはずだ。本当にジーコという人のやることはピントがずれていると思えてならない。
 話が逸れてしまったけれど、世界の趨勢が2トップよりは1トップか、それに準じた3トップという形になっている大会で、そうした流れにフィットしやすかったはずの日本代表を、無理やりオールドファッションなブラジル流サッカーにあてはめようとしたのが今回のジーコだったのだと思う。いい結果が得られなかったのもあたり前なんじゃないだろうか。オシムがどのような舵取りを見せてくれるにしろ、同じようなまちがいは絶対にしないだろうと思えるのがなによりだ。
 よく日本サッカー協会が今大会の失敗の反省や分析を怠っているという意見を聞くけれど、僕はジーコの後任にオシムを選んだこと自体が、反省と分析の結果だと思う。「日本代表は決して世界のトップレベルなんかじゃない」と言い切るオシムさんだ。きっと等身大の日本代表を、きちんと正しい方向へ導いてくれるにちがいない。そう信じている。
 すっかり脱線しまくってしまったけれど、ここからが本題の準決勝第二試合、ポルトガル-フランス戦の感想。
 いや、でもこの試合について、僕には書くことがあまりない。前半30分過ぎにアンリがPKを得て、これをジダンが決め、フランスがその虎の子の一点を守り切って決勝へコマをすすめた。そういう試合だ。もう一試合の準決勝と同じく、眠い目をこすりながら見るには、やや地味な試合だった。
 この試合はレフェリーの判定にかなりぶれがあるように感じた。なぜあれがファールでこれがファールじゃない、というシーンが目だった。PKを取られたポルトガルは、そうしたレフェリーの能力に不信を抱いて苛立ち、冷静さを失ってしまった感がある。力まかせに攻め立ててはフランスの高いディフェンス力の前に跳ね返され、結局その壁をくずし切ることができないで終わってしまった印象だった。
 対するフランスもブラジル戦で見せたほどの内容の良さは感じさせなかった。やはり三十代の選手が多いせいか、過密日程の影響で疲れが残っているんじゃないだろうか。守備力の安定性ばかりが印象に残った。本当に先制してからはただひたすら専守防衛に徹していた。GKバルデスが──この人も3大会連続だ──のらりくらりと時間稼ぎをしているのばかり見せられていれば、眠くなるのも当然ってものだ。やれやれ。
 さてこれで決勝のカードはイタリア対フランスと決まった。ここまで6試合の失点はイタリアが1点、フランスが2点。どちらも1点はオウンゴールだそうで、つまりイタリアはまだ対戦相手にひとつもゴールを決めさせていないことになる(ちなみにフランスが許した唯一のゴールを決めたのは韓国のパク・チソン)。今大会でも突出した守備力を誇る両雄の対決だ。決勝戦でのゴールラッシュは望めそうにない。
(Jul 08, 2006)

ドイツ3-1ポルトガル

三位決定戦/2006年7月8日(土)/シュツットガルト(録画)

 日本人には望むべくもない長身選手ばかりをそろえたチーム構成にやっかみ、加地を削られた(まだ言っている)恨みもあって、最初から最後まであまりいい印象を持っていなかったドイツだけれども。こうしてポルトガルに快勝するところを見せられてしまうと、いや、実に見事な成長を遂げたものだと、やはり感心せずにはいられない。大会前に日本との親善試合を戦った時には、ここまでの成績を残せるチームだとはとても思えなかった。けれど始まってみれば、若手を中心にしたチーム構成ゆえにか、見事に勢いがつき、ベスト4まで残る大健闘。この試合もボール支配率はポルトガルの方が高かったらしいけれど、チームとしてはドイツの方がまとまりがあり、いい戦い方をしていたように思った。ホスト国としては大成功だったろう。
 ドイツのクリンスマン監督はこの試合、GKにオリバー・カーンを起用してきた。これまでのドイツ代表への貢献度の高さに対するご褒美ということだ。プライドが邪魔をして、そんなの出られるかと突っぱねたりしないのだろうかと思ったのだけれど、さすがプロ、ちゃんと出場して見事なプレーを見せていた。
 ちなみにこの試合では、決勝トーナメントで笛を吹きたいと語っていた上川さんが、念願かなって主審に選出された。クリスチアーノ・ロナウドのダイヴを冷静に流したりして、なかなかいいジャッジをしていたと思う。前回のベッカムに続いて、ドイツのキャプテンを務めたカーンとも握手できる役得もあったし、この大会で一番いい思い出を作ったのは間違いなくこの人だろう。
 ともかくドイツはカーンをスタメンで起用したほか、バラックが足を痛めているために欠場した。対するポルトガルもフィーゴはベンチスタートだった。やはり三位決定戦では祭りのあとという感じのさびしさは否めない。ま、だから上川さんがチャンスをもらえたという面もあるのだろう。
 とにかくそういう試合だからモチベーションは下がりがちだ。となるとやはり有利なのはホスト国であるドイツだった。前半こそともにスコアレスだったものの、後半になると加地を削った(われながら本当にしつこい)7番シュバインシュタイガーのミドルで先制。そののちも同選手の豪快なFKがポルトガル選手のオウンゴールを誘い、追加点。さらにシュバインシュタイガーがもう一本ミドルシュートを決めて3-0と突き放す。本当にもうこの選手のひとり舞台という展開だった。ここまでやられると、恨み言を言っていても仕方ない気にさせられる。お見事でした。
 対するポルトガルも意地を見せ、途中出場のフィーゴが基点となり、とりあえず1点は返してみせた。けれどもそれが精一杯。結局、追加点を奪えず、4位に甘んじた。チームをここまで導いてきた功労者であるスコラーリ監督が決めたこととは言え、フィーゴの代表でのラスト・プレーがわずか15分足らずというのは、本人もファンも残念だったんじゃないだろうか。少なくても僕は残念だった。
 しかし、出場していればキャプテンマークをつけていたはずのフィーゴ、そしてバラックがベンチスタートだったこの試合を見ていて、僕は日本代表において中田英寿がキャプテンマークをつけなかったことの意味について考えてしまった。
 フランスのジダン、イングランドのベッカム。ブラジルのカフーやイタリアのカンナバーロのように経験値の高いDFが選ばれるケースもあるけれど、いずれにせよ各国のキャプテンを務めていた選手は、チームの顔というべき選手たちだった。コートジボワールならばドログしかり、オーストラリアのビドゥカしかり。
 そう考えれば、日本代表でキャプテンマークをつけるのにふさわしい選手は、知名度においても経験値においても、中田英寿以外にはあり得ないはずだった。けれども中田はキャプテンマークをつけるのを嫌がり、その責任を宮本恒靖に委ねてしまう。ジーコもそんな中田の姿勢を知って、無理強いはしなかった。その結果、日本代表のキャプテンマークは宮本に託されることになり、端的に見れば、彼の存在ゆえに日本は3バックを選択することになり……。
 いまさらだけれど、中田英寿がキャプテンとしての自覚を持ってチームを引っぱっていたら、今大会の日本代表の戦い方も違っていたんじゃないだろうか。そう思えて仕方ない。
 個人主義をつらぬく中田の存在は日本人として異質だ。彼が自分の主義を人に押しつけなくないと思うのもわからなくはない。けれど自らの個人主義の正当性をきちんと集団に還元できず、個人主義の殻のなかに閉じこもってしまう姿勢は、ある意味とても日本人的に思えてしまう。自己主張の必要性を訴える中田が、日本代表という集団の中では十分に自己主張できていないように見えてしまう。結局は中田も日本人の持つ悪しき集団性の呪縛を逃れられていなくはないだろうか。
 中田中心のチームだと言われながら、そのチームのキャプテンマークを別の選手が身につけていたという事実。おそらく日本代表が──敷衍的に言えば日本人全体が──超えてゆかないとならない課題のひとつが、そのことに象徴的に表れていたんじゃないか……。
 この試合でベンチを温めているバラックとフィーゴの姿を見て、僕はそんな風に思った。そしてそれは他人事ではなく、間違いなく僕自身の問題でもあると。
(Jul 09, 2006)

イタリア1-1(延長0-0、PK5-4)フランス

決勝/2006年7月9日(日)/ベルリン

 まる一ヶ月におよぶサッカー三昧の生活もこの試合でついにフィナーレ。FIFAワールドカップ年ドイツ大会は、イタリアの優勝で幕を閉じた。
 試合はいきなりフランスの猛攻で始まる。前の試合ではブラジルに勝って燃え尽きたかのような迫力のない攻撃に終始したフランスだったけれども、この試合はさすがにファイナルということで、気合の入りようが違った。中盤でのボールへの寄せが早いこと。なにごとかという迫力でびっくりさせられた。
 そんなフランスのやる気にレフェリーも魅せられてしまったのかもしれない。開始わずか7分、フランスの7番マルーダがペナルティエリアで倒されたプレーを見て、ためらいもせずにPKを宣言する。ビデオで見ると、マルーダを倒したように見えたイタリアのDF、23番のマテラッツィ──意外やこの人がジダンとともにこの日の主役をつとめることになる──は、ぶつからないように足を止めている。マルーダの見事なシミュレーションだった。
 このPKでキッカーをつとめたのが、この試合を最後に現役引退を表明しているジダン。GKをおちょくるようにちょこんと蹴ったループシュートは、クロスバーにあたって一瞬決まらなかったかと思われたけれど、ちゃんとゴールラインを越えていた。これでフランスが先制。
 しかし試合は前半途中でイーブンに戻る。同点ゴールはPKを取られたマテラッツィのCKからのヘディング。キッカーは前の試合とこの試合と、2試合連続でマン・オブ・ザ・マッチに選ばれることになるピルロだった。
 同点になったことで試合は落ち着いてしまった。その後はとても地味に、ともに負けないような試合運びに終始した感じだった。どちらかというとフランスの方が攻めていたと思う。これまでの試合では右サイドのリベリーばかりが目立っていたけれど、この試合では左サイドのマルーダも非常に前がかりなプレーを見せていた。PKを得たのもそうした積極的なプレーの結果だ。両サイドからの攻撃が有効な上に、真ん中ではアンリが流れるようなドリブルでディフェンスラインを抜き去ってみせたりする。試合前の予想に反して、試合の主導権を握っていたのはフランスだった。
 イタリアは、先発のトッティが不発。ほとんどボールに絡めていなかった印象だった。1トップのトニも、セリエAでのプレーを知らない僕なんかにとっては、この人がなんでスタメンなんだろうというレベルのプレーしかできていなかったと思う。イタリアにはまるで得点できそうな雰囲気がなかった。キャプテンのカンナバーロを中心としたお家芸のディフェンスばかりが目立つ内容だった。
 そのままの内容で最後まで戦っていたらば、もしかしたらフランスの方が有利だったかもしれない。けれどもこの試合では二つの不運がフランスのゲームプランを狂わせた。
 ひとつ目はヴィエリの負傷退場。彼が後半わずか10分で肉離れを起こし、ピッチを退くことになってしまったことは、攻守のバランサーを欠くことになっただけでなく、思わぬ交替カードを切らざるを得なくなった点に置いても、フランスへのダメージは大きかったのだと思う。
 そして延長後半5分に起きた、ジダンの退場劇。マテラッツィとのつばぜり合いのなかで侮辱の言葉をかけられた彼は、かっとして相手の胸に頭突きをくれてしまう。オフ・ザ・ボールでのプレーではあったけれど、これを線審が目撃していたとかで、主審の判定はレッドカード。ジダンにとっては、思いもしない苦いラストマッチとなった。
 この件については、マテラッツィに人種差別発言があったのではないかという憶測が広がり、いまだに議論の的となっている。真相があきらかになりもしなうちから、ジダンの愚行を弁護するような論調が多くなっているのはどうかと思う。疑わしきは罰せずが民主主義の基本だろう。
 なんにしろこのジダンの退場劇により、見ているこちらはすっかりすさんだ気分になってしまった。結局試合は延長もスコアレスのまま、PK戦へと持ち込まれた。
 PK戦はこの大会でこれまでに見たなかでは一番見応えがなかった。ブッフォンもバルデスも予想外しまくりで一本も止められずじまい。結局フランスはトレセゲがクロスバーに当ててしまったのが命取りとなり、優勝トロフィーは5人すべてが決めたイタリアの手へとわたった。
 大会のMVPはジダン。なんでも投票が決勝戦を待たずに始まっていたので、退場劇が影響しなかったらしい。ジダンがいかにサッカー界で大きな存在感を示していたかがよくわかる。
 決勝トーナメント以降で非常に目立ったのが、決勝戦で戦った両チームに顕著だった守備力の高さだったことを思うと、僕としてはMVPは優勝国イタリアのキャプテンをつとめたカンナバーロにあげたかった。なんといっても身長175センチという小柄さでありながら、伝統あるカテナチオの中心をつとめていたという点がすごい。体格に恵まれない日本人だって、世界レベルのプレーができないはずはないと思わせてくれたことに、感謝したいと思う。
 いずれにせよドイツ大会は終わった。次は2010年の南アフリカ大会。南半球の南アフリカはこの時期、秋なのだそうだ。アフリカ大陸での初のワールドカップはどんななのだろう。その大会に日本は無事に出場を果たせるんだろうか。
 日本のグループリーグでの敗退が決まってからすでに半月以上。決勝トーナメントの熱戦を見ながらも、日本代表を愛する僕の関心は、すでに次の大会へと向かってしまっていた。オシム監督がどのようなチームを作るのだろう。Jリーグでプレーする選手たちはこれからの4年間でどれだけの成長を見せてくれるだろう。そんな期待に胸を躍らせつつ、新しい代表チームの初招集の日を待ちこがれている今日この頃だ。願わくば次の大会こそ、日本代表に満足のゆくサッカーを見せてもらえますように──。
 日本代表の躍進を祈りつつ、自らの日々の精進を誓って終わりとする。
(Jul 10, 2006)