2010 FIFAワールドカップ South Africa (1)

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Index of Group Leagues (1)

  1. 南アフリカ1-1メキシコ
  2. 韓国2-0ギリシャ
  3. アルゼンチン1-0ナイジェリア
  4. アルジェリア0-1スロベニア
  5. オランダ2-0デンマーク
  6. 日本1-0カメルーン
  7. コートジボワール0-0ポルトガル
  8. スペイン0-1スイス

南アフリカ1-1メキシコ

グループA/2010年6月11日(金)/ヨハネスブルグ(サッカー・シティ)/NHK

 いよいよ4年に一度のサッカーの祭典が始まった。
 僕にとっては4度目のワールドカップ。でも日本代表に対する期待値は過去最低。ジーコのときも低かったけれど、それでもアントラーズ・サポーターであるがゆえに、恩人の失敗は見たくない、なんとか結果を出してくれないかという、神頼み的な期待だけはあった。
 でも今回はそういうのも皆無。現状の日本代表では、3連敗してあたり前。勝ち点1を上げられれば上出来。それどころか下手をしたら1ゴールもあげられずに終わるんじゃないかという不安さえある。
 4年に一度の晴れ舞台をこんなひどい気分で迎えさせられたってだけで、僕はこの先二度と岡田武史という人を許せないだろうかって気になってしまっている。万が一決勝トーナメント進出を果たしたところで、おそらくこの悪感情は変わらないだろう。僕はいまだに北京オリンピックでの3連敗を根にもって、反町監督を許せないでいるけれど(執念深い)、岡田さんに対しては、戦う前からすでにそれと同じ反感で一杯になってしまっている。
 なんにしろ、そんなわけで今回のW杯に関しては、最初から日本代表にはあまりこだわらずに、サッカーそのものを楽しむ大会だと割り切って観ることにしたい。ここでしっかりサッカーのワールド・スタンダードを見極めて、これからJリーグを応援してゆく上での{かて}にしようと思う。
 ということで、開幕戦となったホスト国、南アフリカとメキシコとの一戦。
 南アフリカとは去年、日本代表が親善試合で対戦しているけれど、それほど強いチームだとは思わなかった(というか、どんなチームだかまるで覚えていなかった)。対するメキシコは小柄な選手ばかりながら、日本代表のお手本にしたくなるような華麗なパス・サッカーを展開して、毎回好印象を与えてくれる実力国。勝負の行方はおのずから明らかだろうと思っていた。これまでのW杯で初戦に負けたホスト国はひとつもないそうだけれど、今回はついにその記録が破れることになるだろうと。
 ……いやはや、浅はかでした。前半こそ予想通りの展開で、メキシコがゲームを支配していたので、そのうちゴールも決まるだろうと思っていたのだけれど、スコアレスのまま突入した後半、先制ゴールをあげたのはなんと南アフリカだった。カウンターからのロング・ボール一本で、左サイドを駆けあがった8番のチャバララ──この名前を聞いて 『ワンピース』 を思い出した人は僕の仲間です(小学生レベル)──が豪快なシュートを突き刺してみせた。あのスピードと破壊力はさすがにアフリカ勢。同じような形でカメルーンに突破を許して日本代表が失点する風景が目に浮かぶようなシーンだった。
 これですっかり形勢が逆転した。8万を超えるキャパシティーを誇る巨大スタジアムの満員の観客のあと押しを受けた南アフリカは、先制した余裕も手伝って、それまでの劣勢が嘘のように、五分以上の戦いを演じてみせる。いっぽう追いかけるメキシコの攻撃は手詰まりの様相を呈しはじめる。こりゃもしや、南アフリカの勝ち点3かと思わせた。
 ただ、さすがメキシコもそのままじゃ終わらない──というか、南アフリカにも最後まで守りきれるだけの集中力がない。残り10分強という時間帯になって、ふと気が抜けたような瞬間があって、メキシコに同点ゴールを許してしまう。
 この場面では、左サイドのCKからの流れでメキシコの選手がアーリー・クロスを上げようとした瞬間に、南アフリカのゴール前にはメキシコの選手が4人もひしめきあっていた。おいおい、なんでそんなに固まってるんだよって感じだった。要するに南アフリカのマークはズレまくり、メキシコの枚数はあまりまくり。そこへきちんとボールが収まれば、ボールを受け取った選手はフリーでシュートを打つだけ。当然の帰結という印象の同点弾だった。
 結局、試合はそのまま1-1で終了したけれど、お互いに最後まで足が止まらず、相手ゴールを脅かしつづける、なかなかおもしろい試合だった。今大会は南半球での開催のため、夏場に行われたこれまでの大会とちがって涼しいから、プレーの質が高くなるのではと言われていたけれど、なるほど。これからも熱戦がつづく予感たっぷりの開幕戦だった。
 メキシコで印象的だったのは、(月並みだけれど)背番号18のドス・サントス。可愛い顔をして、俊敏性とパンチ力を兼ねそなえたいい選手だった。21歳と若い彼と並んで、37歳のベテラン、ブランコが控えているというのもいい。そういや決して守備的ではないのに、フィールド・プレーヤーのうち6~7人がDF登録ってのもすごかった(わけがわからない)。勝てはしなかったけれど、やはり今回もメキシコはおもしろいチームだった。
 南アフリカではプレミア・リーグのエバートンでプレーする10番のピーナールという選手が注目を集めていたけれど、こちらはいまいちその力を出し切れていなかった。
 同じグループAでは、このあとのウルグアイ-フランス戦もスコアレス・ドローに終わったため、4チームが勝ち点1でそろい踏み。南アフリカのがんばりとフランスの不調で、このグループはもっとも難しいグループのひとつって感じになっている。あれだけの人たちが応援しているのだから、南アフリカにはぜひとも決勝トーナメントに勝ち残って、大会をもっと盛りあげて欲しいところだけれど、残る対戦相手も難敵ぞろいだからなぁ。なんにしろ、このグループはこれから先の展開が楽しみだ。
 会場となったサッカー・シティー・スタジアムは、8万人4千人以上を収容できるというその巨大さが圧巻だった。しかもただでかいだけでなく、ちゃんとサッカー専用というところが素晴らしい。やっぱW杯を開催する国は、ちゃんとああいうサッカー専用のスタジアムを作んないといけないでしょう。僕はこのスタジアムを観て、日本が22年のW杯招致に立候補しているのは、勇み足だと思った。サッカー専用のスタジアムがほとんどない国がなにをいわんやだ。
 それにしてもブブゼラがうるせぇこと、この上なし。テレビで観ているだけでもうるさくてたまらないのに、現地ではあんなのが朝から晩まで鳴り響いていると思うと、ちょっとげんなりしてしまう。喜んであれを吹き鳴らしている南アフリカ人って、ある意味すごいかもしれない。
(Jun 12, 2010)

韓国2-0ギリシャ

グループB/2010年6月12日(土)/ポートエリザベス/NHK

 日本よりひと足先に、アジア勢の一番手として韓国が登場。2004年のヨーロッパ選手権覇者、ギリシャを相手に危なげない試合運びで勝ち点3をゲット、順調な第一歩を踏み出してみせた。ああ、うらやましい。
 韓国の先制点は、なんとわれらが鹿島アントラーズのイ・ジョンス。左CKに後方から駆け込んできて決めた、見事なボレーシュートだった。ナイス。
 これが前半7分という早い時間帯だったこともあり、試合はその後、終始韓国ペース。なんでこの人たちはこんなに落ち着いてプレーできるんだろうと、不思議になってしまうくらい余裕しゃくしゃくの試合運びだった。
 まあ、対するギリシャも、こちらはこちらで、この国がどうして6年前のユーロで優勝できたんだろうと不思議になってしまうような出来だった。あれ以来、監督は変わってないそうなのに、なぜ? ほんと、ギリシャにはいいところがひとつもない感じだった。まったく、どちらがアジアで、どちらがヨーロッパのチームか、わかったもんじゃない。
 1-0で折り返した後半も、先に主導権をとったのは韓国だった。今度はキャプテンのパク・チソンに{うな}らされた。
 相手DFが高めの位置でトラップしたボールが大きく跳ねたと見るや、その隙を見逃さず、全速力で寄せていってそのボールをかっさらい、そのままドリブルでゴール前へ──。ボールを奪われたDFがチェックについてきても倒れたりしない。そのままDFを背負いながらドリブルをつづけて、GKの位置を見極め、ここぞというタイミングでボールをゴールへと流し込んでみせた。
 すっげーっ。
 ここでのパク・チソンのプレーは、ボールの奪取からフィニッシュまで、すべてが完璧だった。先月の日本戦で打ったミドル・シュートもさすがだと思ったけれど、この日のゴールはあれの上をいった。いやぁ、この人すごすぎるわ。マンチェスター・ユナイテッド所属はだてじゃない。8年前まで京都でプレーしていたなんて嘘みたいだ。
 ということで、韓国は新旧Jリーガーの活躍で2点を奪い、守ってはギリシャをスコアレスに抑え込んで、なんなく勝ち点3をあげてみせたのだった。
 10番をつけたワントップのパク・チュヨンが何度かの決定機を決めきれなかったりもしたけれど、ちゃんと攻撃には絡んでいたので、印象は悪くなかった。21歳のキ・ソンヨンがスタメンに名を連ねていたり、25歳の選手がお馴染みのイ・ウンジェから正GKの座を奪っていたり、世代交替もちゃんと進んでいるようだし、どうやら日本とは対照的に、韓国の前途にはなんの障害もなさそうだ。韓国の国内で「史上最強」との呼び声があるというのも納得の出来だった。おそれいった。
 日本代表がいまのような状況では、おこがましくて、とても韓国のことをライバルなんて呼べやしない。なんだかわずかのあいだに、すごく水をあけられてしまった気がする。あちらだって韓国人監督なんだけれどなぁ。どうしてこうも違っちゃったんだろうか。あぁ、情けない……。
 そうそう、なんでもギリシャは94年のアメリカ大会以来となる2度目のW杯出場なんだそうだけれど、その大会では1ゴールも上げられないまま、3連敗を喫したんだそうだ。で、今回も緒戦はノーゴールで完封負け。残る2試合の対戦相手がアルゼンチンとナイジェリア(ちなみに94年もこの2チームと同じグループだったというからびっくりだ)なのを考えると、今回も3連敗必至どころか、ふたたび1ゴールも決められないまま、おさらばってことになりそうな……。
 今大会の日本のライバルは、韓国ではなくギリシャだろうって気がしてきた。
(Jun 13, 2010)

アルゼンチン1-0ナイジェリア

グループB/2010年6月12日(土)/ヨハネスブルグ(エリス・パーク)/フジテレビ

 ということで、引きつづき、韓国と同じグループBのアルゼンチン-ナイジェリア戦。
 マラドーナの代表監督就任とメッシのバロン・ドール受賞以来、なにかと話題豊富なアルゼンチンだけれど、騒がれるだけあって、今大会のチームもとてもおもしろい。
 ──というか、本当にメッシがすごい。
 考えてみれば、僕がこの人のプレーをしっかりと見るのはこれが初めてなのだった(前大会で見ているはずなのだけれど、ほとんど印象が残っていない)。噂にはすごいと聞いていたし、サッカー番組で断片的にそのプレーは見ているんだけれど、やはり試合のなかで見るプレーはまた別物。そのすごさに圧倒されてしまった。
 とにかく、こまかなステップのドリブルで相手DFのあいだをすり抜けては、ゴールが見えた途端に正確無比なシュートを蹴り込んでくる。これほどまでの精度で枠を捕らえてくる選手は見たことがない。さすがに後半はばててきたのか、やや精度が落ちてきたけれど、それでもボール一個分ずれた、くらいのレベル。なるほど、こういう人を天才というのかと思った。
 こういう選手がチームにいれば、そりゃバルセロナは強いし、そのサッカーは楽しいだろう。残念ながら相手GKのファイン・セーブもあって、この日はゴールがならなかったけれど、それでも彼のプレーに僕は非常に強い感銘を受けた。
 アルゼンチンはそんなメッシを中心に、テベス、イグアインという強力なFW陣で攻め立てる。中盤の底には今回もヴェロンがいて、抜群の運動量でボールをさばいている。4バックはみんなセンターバックが本職だとかで、ほとんどサイド攻撃はなかったようだけれど、あれだけ攻撃陣が強力だと、それでも十分だってことなんだろう。なんにしろ、個々の力量の高さはあきらかなアルゼンチンだった。
 ただし、まだまだ組織がこなれないんだかなんだか、このチームには妙な不安定さがある。やたらと迫力ある攻撃を仕掛けているわりには、いつ反撃を食ってもおかしくない、あぶなっかしい雰囲気が漂っている。
 だから、セットプレーから6番のDFエインセのヘディングで早々と先制して、こりゃ楽勝かと思わせておきながら、そのあと追加点が奪えないと、だんだん雲行きがあやしくなってくる。なんだかいつ同点にされるかわかったもんじゃないというスリリングさがあって、これがまたおかしい。マラドーナの監督としての手腕に疑問符がつくところが、またそういうあぶなっかしい感じに拍車をかける。
 でも、このチームはそういう安定感のなさもまた魅力のような気がする(まあ、野次馬的な見方をしているからかもしれないけれど)。やたらと強いのに、いまにもポカをしでかしそうな不安定さがある今回のアルゼンチンには、なんだかとても楽しませてくれそうな雰囲気がある。このチームがこの先、どんな風に戦ってゆくのか注目せずにはいられない。
 対するナイジェリアは、そんな風にアルゼンチンに気を取られていたせいで、どんなチームかよくわからなかった。序盤こそアルゼンチンに押されていたけれど、その後は五分に渡りあっていたようなので、なかなか力があるチームなんだろうとは思う。
 なんにしろアルゼンチンには要注目。次の韓国戦ががぜん楽しみになってきた。
(Jun 13, 2010)

アルジェリア0-1スロベニア

グループC/2010年6月13日(日)/ポロクワネ/テレビ朝日

 大会3日目となるこの日の試合はグループCのアルジェリア-スロベニア戦と、グループDのセルビア対ガーナ、ドイツ対オーストラリアの3試合。
 この中でもっとも興味があるのは当然最後のドイツ-オーストラリア戦なのだけれど、これは午前3時のキックオフで、そもそも無料放送がない。
 次点はストイコビッチの母国、セルビアとガーナの試合で、最初はこれを観るつもりだったのだけれど、午後11時キックオフの試合だから、終わるのは午前1時。さすがに平日にそのあと感想を書くのはちょっときつい。それに明日が日本の初戦なのを考えると、今夜はあまり無理をしたくない。
 ということで、以上のような消去法によって(いたって消極的に)観ることになったアルジェリアとスロベニアの一戦。
 しっかし地味なカードだなあとは思っていたけれど、本当に内容まで地味だった。どちらもドイツやフランスなど、ヨーロッパ各地でプレーしている長身の選手ばかりがそろっていて、質が高いのはわかるんだけれど、かといって突出した選手がいるでもなく、華麗なパスワークなどはほとんど観られない。しかも緒戦のせいか、ミスも多い。展開も後半34分まで0-0とくる。
 もとより知っている選手がひとりもいないところへきて、「前半のハイライトです」って放送されたシーンがセットプレーばかりって内容なんだから、さすがにきびしかった。
 あまりに話題がとぼしいせいか、放送では角沢アナが「オシムが絶賛するスロベニアと、ジダンのルーツであるアルジェリア」を連発していて、これがまたうっとおしい。いくらオシムが誉めていようと、ジダンがスタンドで観戦していようと、試合がつまらなくちゃしかたない。
 (ちなみにジダンはご両親がアルジェリアの出身だということで、この試合の観戦にきていた。アルジェリアはアフリカ大陸最北端に位置していて、地中海をはさんで向かいあうフランスの植民地だったらしい。そんな風にヨーロッパに近いこともあり、アフリカとはいっても肌が黒い人がほとんどいなくて、どちらかというと中東の国のような印象だった)
 ようやく試合が動いたのは後半なかば。途中出場したアルジェリアの9番の選手が、わずか15分間のあいだに2枚のイエローカードをもらって退場してしまう(それも2枚目はペナルティ・エリア内へのクロスにあわせようとした際の不必要なハンドだった。いったいなにやってんだか)。これで数的有利となったスロベニアが、そのちょっとあとに8番の選手のミドル・シュートでようやく先制すると、そのまま逃げ切った。
 得点の場面は、とくにいいシュートだったわけではなく、キャッチにいったGKがバウンドを見誤ったもの。今大会の公式ボールはGK泣かせだという話だけれど、まさしくそれが証明されたような形だった。そういや同じグループのイングランド-アメリカ戦でも、イングランドのGKが同じように、まさかというようなミスをして失点を許していた。ともに公式ボールのいたずらが波乱をもらたしたグループCだった。
 とにかくこの大会は強引でもいいからシュートを打つのが最善の策らしい。難しいコースは狙わなくていい。GKめがけて蹴りさえすれば、なにかが起きる──というか、ボールがなにかを起こしてくれる。そういう大会らしい。日本代表もそのことを心にとめて、がんがんシュートを打って欲しい(ないものねだり)。
 まあ、試合は退屈きわまりなかったけれど、スロベニアはこれがW杯初勝利だということで、勝ってとても嬉しそうにしてたのは、なかなか心温まる風景だった。
(Jun 13, 2010)

オランダ2-0デンマーク

グループE/2010年6月14日(月)/ヨハネスブルグ(サッカー・シティ)/NHK

 いよいよ日本戦!――と、その前にとりあえず同じグループEのオランダ-デンマーク戦を敵情視察した。
 しっかし、この両国のレベルが高いっ。オランダはうまいし、デンマークは堅い! ものすごく見事なパス・ワークで強烈な攻撃を仕掛けてくるオランダに対して、デンマークはがっちりと守りを固めて、ゴールを許さない。それどころか、ときおり的確なカウンターで相手ゴールを脅かす。
 現状の日本がオランダの攻撃をしのげるとは思えないし、その攻撃を跳ね返すデンマークのディフェンスを破れるとも思えない。こりゃとてもどちらにも勝てないやと思ってしまった。
 試合は基本的にオランダが支配していたものの、たまに繰り出すデンマークのカウンターもしっかりフィニッシュで終わるので、イメージとしては五分五分という感じ。結局、前半はスコアレスで終わったけれど、とても内容の濃い、おもしろい試合だった。
 ところが後半が始まったとたんに、この均衡が思わぬ形で崩れる。
 オランダ9番のファン・ペルシーがゴールラインを割りそうになったボールにものすごいスピードで追いつき──おいおい、それに追いついちゃうのかよって感じだった──、そこからしぶとく放り込んだクロスが、デンマークの15番、スキンヘッドのポウルセンという選手のクリア・ミスを誘ってオウン・ゴールに……。首を振ってクリアしようとしたボールが思う方向へ飛ばず、味方の背中にあたってゴールに転がり込んでしまうという、ついてない失点だった。
 これで先制したオランダは、以降は余裕の試合運び。対するデンマークはすっかり手詰まりの感あり。やはり守ってカウンターを得意とするチームらしく、無理をして攻めてこなくなったオランダを崩しきれない。
 そうこうするうちに時間は過ぎ去り、残り5分でオランダの追加点が決まって、結局2-0で試合終了。前半の接戦が嘘のように、終わってみればオランダの快勝という印象だった。
 オランダの2点目は、司令塔の10番スナイデルのスルーパスに、途中出場の17番エリアが反応(この人は今回のオランダでは数少ない黒人で、しかもとてもスピードがあっるのが印象的)、DFの裏へ切れ込んでシュートを打つも、これは惜しくもポスト。でもその跳ね返りを7番のカイトが見逃さずに押し込んだ。
 前半を見たときには、この2チームには日本はかなわないやと思ったけれど、この後半で、やや印象が変わった。やはりオランダには敵いそうにないけれど、デンマーク相手ならば、どうにかなるかもしれない。
 若干21歳のFW、ベントナーを頼りにするくらいで、デンマークの攻撃にはそれほど厚みがない。もしもなんとかして先制点を取れさえすれば、カウンターを食う危険性も減って、勝てる見込みが出てくるかもしれない。とりあえずしっかりと守り切れれば、勝てないまでもスコアレス・ドローには持ちこめそうな気がしてきた。
 いっぽうのオランダは駄目でしょう。まるで太刀打ちできる気がしない。エースのロッベン不在でもこの強さなんだからまいった。このグループはすでにオランダの一位抜けが確定したも同然だ。
(Jun 15, 2010)

日本1-0カメルーン

グループE/2010年6月14日(月)/ブルームフォンテーン/NHK

 勝てば官軍というけれど、これはまさにそんな試合だった。岡田さんが理想をかなぐり捨てて採用した守備偏重の現実路線と、カメルーンの思いがけない不出来さがうまく重なって、日本に貴重な勝ち点3をもたらした。
 今回は大会前の準備が最低だったので、ほとんど期待していなかった分、どうも沸点が上がりきらなくて、感動はいまひとつだけれど、それでもこの大舞台で勝ったのはしみじみと嬉しい。これでおとなりの国に余計なジェラシーを感じなくて済むし。岡田さんのやりかたにはいまだに肯定できないものがあるけれど、そんな指揮官のもとで選手たちはよく戦ったと思う。がんばってくれて、ありがとうっ。
 岡田監督が選んだこの日のスタメンは、GK川島、4バックが右から駒野、中澤、闘莉王、長友、MFは阿部、長谷部、遠藤のトリプル・ボランチに、右・松井、左・大久保、でもってFWは本田のワントップという布陣。
 要するに、イングランド戦での布陣をベースにして、怪我をした今野を駒野にかえ、岡崎をはずして本田をワントップにすえ、右サイドに松井を持ってきた形だ(途中出場は岡崎、矢野、稲本)。
 僕は守備的な面では手ごたえのあったイングランド戦のあとで、友達へのメールに「本番ではトリプル・ボランチでしっかり守って、あとは岡崎、本田、大久保のいずれかがワン・チャンスをものにしてくれることを祈るんでしょうね」と書いたんだけれど、まさしくこの日はそういう試合になったわけだ。
 しっかりと守ってカメルーンに得点を許さず、攻めてはFWに起用した本田がワンチャンスをものにして勝った──しかもアシストは、ここ一番で起用してきた松井だってんだから、この日の岡田采配は大あたり。岡田さんの指揮官としてのセンスには大いに疑問を感じるけれど、どうやらこの人が特別な運を持っているのは確かみたいだ。
 今野の怪我が軽傷ですんで、すでにプレーにも参加しているというので、右サイドは今野でくるかと思ったけれど、大事を取ったのか、駒野を起用してきたのは正解だと思う。少なくても僕にはこのほうがしっくりくる(内田篤人の出番がないのは、返す返すも残念だけれど)。
 ビッグ・ゲームで結果を出せない岡崎をはずして、本田のワントップにしたのも賛成(これまで岡崎を引っぱってきたのが不思議だ)。本田がFWとしてふさわしいかは別にして、現状では彼の得点力に期待せざるを得ないのだから、前々からこの形はありだと思っていた。俊輔ではなく松井を起用したのも、結果が出ている以上、結果オーライ(実際プレーもよかったし)。この日の試合に関しては、岡田さんはベストの仕事をしたと思う。
 ただ、じゃあこの勝利で日本代表監督としての岡田さんを肯定できるかというと、答えはノー。僕は初めから日本代表にはこれくらいの試合はできると思っているし、この日の試合ではそのことが証明されたに過ぎない。結局チームとしての攻撃の形はひとつも提示できないまま、大会直前で大きく軌道修正するような人を支持できるはずがない。
 なんたってFIFAの公式記録によれば、日本のボール支配率は45%、シュートはわずか5本、CKにいたっては0という試合だ。守って守って守りきって、個人技頼りでワンチャンスをものにして勝つって、そんなつまんないサッカーを見せてもらいたかったわけじゃない。
 そもそも、この試合に関しては、カメルーンの出来の悪さにも助けられた。
 カメルーンは個々の能力は高いのかもしれないけれど、組織としてのまとまりがちっとも感じられなかった。噂のエトーも低めの位置でプレーしてばかりでは、あまり怖くない。いちばん恐かったのは、ロング・ボール一発でディフェンス・ラインの裏を突かれるようなプレーだったのだけれど、そういうシーンは皆無。世界有数と評されるFWを生かせないんだから、カメルーンの監督も岡田さんといい勝負だろう。
 なんにしろ不出来なアフリカ勢と、守ってばかりでほとんどチャンスの作れないアジア勢の対戦だったわけだ。終盤のひたすら守り切るだけって展開には、非常にはらはらさせられて、ある意味じゃとてもスリリングな試合だったけれど、それは僕が日本代表を応援してたからこそ。両国に関係のない第三者から見たら、きのうのアルジェリア-スロベニア戦よりもさらに退屈な試合だったんじゃないかという気がする。
 ということで、試合内容にはあまり感心しなかったけれど、それでもやはりワールドカップであげる勝ち点3は格別。いやぁ、どんな形にせよ、勝つのってのはいいや。ここんところ、白星から遠ざかっていただけに、なおさら嬉しかった。
 海外のW杯で一勝をあげたことで、ようやく正式に世界の仲間入りができたかなって、そんな気がしている。
(Jun 15, 2010)

コートジボワール0-0ポルトガル

グループG/2010年6月15日(火)/ポートエリザベス/NHK

 大会5日目はメッシと並ぶ今大会最大のスター、クリスチアーノ・ロナウド率いるポルトガルが登場。初戦の対戦相手は、大会前の親善試合で日本を相手に力の差を見せつけたコートジボワール。会場はポートエリザベスのネルソン・マンデラ・ベイ・スタジアム。
 注目のクリスチアーノ・ロナウドは、前半に強烈なミドル・シュートこそ一本打ってみせたものの、そのあとはこれといった見せ場を作れずじまい。得意のFKも一本あったけれど、枠をとらえられなかった。そんな彼がマン・オブ・ザ・マッチに選ばれるくらいだから、(両チームとも力があるのはわかったものの)盛りあがりはいまいちだった。
 公式記録によるとボール支配率はともに50%。枠内シュートはポルトガル1本、コートジボワール2本だそうだから、データで見ても、ほぼ互角の内容。中盤でボールを奪いあっているうちに、ノーゴールのまま90分が経過してしまった──そんな感じだった。
 ポルトガルはC・ロナウドがいるので優勝候補の一角とされているのかもしれないけれど、この日の試合を見るかぎりでは、そこまで強そうには見えなかった(少なくてもアルゼンチンやオランダほどではない印象)。さすがにフィーゴやルイ・コスタがいたころと比べると、中盤の構成力では見劣りする。この試合ではC・ロナウドがイエローカードをもらっているし、彼が累積警告で出場停止になったりすると、かなり苦しいんじゃないだろうか。
 対するコートジボワールは、やはりこれまでに見たアフリカ勢のなかでは、もっとも組織力があって強そうだ。闘莉王との接触プレーで右腕を骨折したドログバも、あれから11日しかたっていないのに、なんとか出場を果たしていた(ただしベンチ・スタート)。やはり右腕に違和感があるせいか、あまり存在感のあるプレーは見せられていなかったけれど、とりあえず出場できてなによりだ。闘莉王もひと安心だろう。
 同じグループGのもう一試合では、ブラジルが2-1で北朝鮮を破っている(おー、北朝鮮、ブラジルから1ゴール!)。どうやらこのグループは予想通りとても厳しそうだ。
(Jun 16, 2010)

スペイン0-1スイス

グループH/2010年6月16日(水)/ダーバン/フジテレビ

 大会前に4連敗していた日本がまさかの白星をあげたと思ったら、反対に、ここんところ12連勝中だったという優勝候補のスペインがまさかの初戦黒星。これがサッカーだよなぁ……と、眠い目をこすりながら思っている水曜日の夜、深夜1時過ぎだ。
 いやだって、前半を観ていて、スペインが負けると思った人はひとりもいなかったんじゃないだろうか。前半15分くらいのテレビ解説によると、その時点でのボール支配率はスペインの76%って話ですよ? 前半終了後に確認したところ、67%まで下がっていたけれど、それにしたって全体の3分の2だ。単純計算すると、45分のうち30分はスペインがボールを蹴っていたことになる。その数字のとおり、前半は完璧にスペインのゲームだった。
 そうそう、この試合は構造的におとといのオランダ-デンマーク戦に似ていた。華麗なパスワークを武器とするチーム対、堅守とカウンターが武器のチームという図式。
 ただ、違っていたのは、デンマークには前半のうちに何度かカウンターのチャンスがあったのに対して、スイスにはまったくなかった点。前半のスイスはまさに防戦一方で、得点の糸口さえつかめずにいた。それくらいにスペインのパスワークは見事だった。同じくパス・サッカーを指向している(していたというべきか)日本代表を応援する身としては、そのあまりにハイ・レベルなパス・ワークに惚れ惚れとしてしまった。ありゃ次元が違う。
 スペインのなにがよかったかって、とにかくパスが攻撃的なこと。前に味方がいれば、相手に囲まれている密集地帯であろうと、平気で縦パスをつないでくる。日本の場合は前に敵がいると、横パスやバック・パスで逃げてばかりだけれど、スペインは果敢に敵陣へとボールを放り込んでくる。そこにしびれた。
 ああいうプレーができるってのは、狭いスペースにパスを通す優れた技術があるってのはもちろんなんだけれど、同時に、もしもミスしてボールを取られても、まわりがフォローしてくれるから大丈夫だという、味方への強い信頼感があるんだろう。スペインというと、シャビとイニエスタのふたりの名前が取り沙汰されることが多いけれど、観ていても彼らが突出して目立っている感じはしない。あらゆる選手がまんべんなくボールを触ってパスを回しているという感じ。そこんところも、とてもよかった。
 ただ、そのスペインにして、唯一「それはどうなの?」と思ったのは、いまいちフィニッシュの精度が低かったこと。たまたまきょうがそうだっただけなのかもしれないけれど、ゴール前まで運んだところで、あと一本パスが余計だったりして、なかなかシュートが枠へ飛ばない。そうこうするうちに、圧倒的に試合を支配していたにもかかわらず、前半はスコアレス・ドローで終わってしまった。
 そしたら後半に落とし穴が。
 スイスのゴール・キックから得点までは、ほんの10数秒だったんじゃないだろうか。GKが蹴り込んだロング・ボールからのカウンター。たった一度のヘディングでゴール前までつながったボールを競りあって、両チームの選手がアクロバティックに交錯し、GKカシージャスまでがすっころがった、その混乱に乗じてボールをゴールへと蹴り込んだのはスイスの選手だった(スキンヘッドの黒人選手、16番のフェルナンデス)。まさかのスイス先制。
 でも、その時点ではまだ後半7分。スペインにはまだまだ反撃の時間が残されていた。なのに、それから後半のロスタイム5分を含めて、40分以上攻めつづけたにもかかわらず、スペインは結局スイスのゴールをこじ開けることができない。結局そのまま試合終了の笛を聞くことになってしまった。
 あぁ、なんてこった。究極のパス・サッカーを展開していたチームが、堅守速攻に徹したチームのワンチャンスの前に沈むという、この現実。これだからサッカーはわからない。そして、たまにこういうことがあるからまた、サッカーはおもしろいんだとも思う。
 いやはや、スイス、見事な勝利でした。いやー、びっくりした。
(Jun 17, 2010)