2010 FIFAワールドカップ South Africa (5)

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Index of After Quarter-finals

  1. オランダ2-1ブラジル
  2. アルゼンチン0-4ドイツ
  3. ウルグアイ2-3オランダ
  4. ドイツ0-1スペイン
  5. オランダ0-1スペイン(延長)

オランダ2-1ブラジル

準々決勝/2010年7月2日(金)/ポートエリザベス/NHK

 ベスト4をかけての準々決勝ともなると、さすがに今大会屈指の好カードがつづく。まずはオランダとブラジルという超豪華対決。
 いやしかし、前半の出来を見て、ブラジルが90分以内に負けるなんて結果は想像もできなかった。開始わずか10分で、たった1本のパスで先制点をあげたのはブラジルだ。5番のフェリペ・メロがセンターライン手前からオランダ陣地のど真ん中をつらぬく芸術的なスルーパス。その先に走り込んだロビーニョがノートラップでシュートを放ってみせた。あまりの見事さに笑ってしまったくらいの名ゴールだった。
 対するこの日のオランダは、前半はロッベンの出来がいまいち。せっかく得意のエリアでボールを受けたのに、シュートまで持ってゆけずに終わるシーンが多かった。エースが本調子でない上に先制まで許したとなると、こりゃオランダも終わりかと思わせた。
 ところがどっこい。後半になって思いがけない展開でオランダに同点弾が舞い込む。なんとセットプレーからのブラジルのオウン・ゴール。それもこのミスを犯したのが、先制点のアシストを決めたメロだった。セットプレーからのディフェンスでGKと交錯した彼の背中にあたったボールはそのままゴールへ。まるで油でも塗ってあったんじゃないかと思うくらいの滑らかさで、ボールはするりとブラジル・ゴールへと吸い込まれていった。
 (追記:そんなゴールだったせいか、それともその後のレッドカードに配慮してか、このゴールは試合後に、キッカーであったスナイデルのゴールと訂正されたらしい。もしもオランダが優勝するようなら、MVPはスナイデルで当確っぽい)
 おもしろいもんで、前半は押されまくりだったオランダが、この1点で息を吹き返す(ロッベンも心なしか動きがよくなった気がする)。そしてその15分後には逆転ゴールを叩き込んでしまう。ロッベンの右CKからニアでカイトがワンタッチしてペナルティエリア内に流し込んだボールを、最後はスナイデルが頭で決めた。すごいスピードのあるボールをダッダッとツータッチでゴールに突き刺してみせた、じつに見事なセットプレーだった。
 さらにこの逆転ゴールの5分後には、先ほどのフェリペ・メロがロッベンへとファールの際に、相手を踏みつけてしまい、一発レッドカードで退場というアクシデント。前半は見事なスルーパスで先制点のお膳立てをしたヒーローが、後半は一転、最大の悪役に……。まさに天国と地獄の両方を見てしまったメロだった。
 そういや、このレッドカードを出したこの試合のレフェリーは、なんと西村雄一さん。日本代表がたどりつけなかった準々決勝の舞台で日本人レフェリーが笛を吹いている──それもレッドカードを切って、ドゥンガのブラジルを絶望の淵に突き落とす──ってのは、なんともいえないものがあった。
 とにかくこの退場劇で勝負あり。その後のブラジルは王者とは思えないあせりの見えるプレーぶりで、(W杯での?)対オランダ戦では36年ぶりという黒星を喫した。
 ドゥンガが監督をつとめた今回のブラジルは守備的なチーム作りで国内外で批判を浴びて、優勝以外には許されないというムードだったという噂なので、ベスト8で姿を消してしまっのはなんとも残念だった。これに勝てば決勝進出はまず確実って感じだっただけに、できれば勝たせてあげたかった。
 それにしてもさすがに優勝候補同士のガチンコ勝負は見ごたえがある。ボール保持率はほぼ互角だし、パスの成功率もともに70%を超えている。それに比べて、日本代表のパス成功率は平均60%。ひどい試合では53%とくる。えれえ違いだ。
 さらに調べてみたら、日本のこの数字は参加32ヶ国中最低だった。あぁ、なんてこった。それはつまり北朝鮮やニュージーランドより低いってこと? チームとしての完成度が低かった分、うまくパスが通らなかったという部分はあるにしろ、まだまだ世界との差は歴然としているってのが、数字で証明されてしまっている。ちょっと悲しい。

 この日の準々決勝のもうひと試合では、ウルグアイがPK戦の末にガーナを破って準決勝進出を決めた。こちらの試合も最後がすごかった。
 この試合、僕は後半途中からしか観ていないのだけれど、試合は1-1のままガーナやや優勢という感じで延長戦に突入。で、その延長でも決着がつかず、もう試合終了かという後半ロスタイムの最後のプレーで、ウルグアイがゴール前でガーナの猛攻を受けた際に、9番のスアレスがガーナのシュートを両手ではじき出してPKの判定を受けてしまう。
 当然スアレスにはレッドカード。状況的にゴールが決まっていれば即敗退決定って場面だったから、あそこで手が出たとしても致し方ないけれど、それにしても、バレーボールかい!って突っ込みたくなるくらいに見事なハンドだった (リプレイで見たら、彼がハンドのあと、なにもなかったかのように素知らぬふりでプレーに戻ろうとしていたのもおかしかった)。
 しかし結果として、このレッドカードがウルグアイに幸運をもたらすことになる。なんとガーナのキッカーのギャンがこのPKを失敗してしまうのだった。おかげで試合はPK戦にもつれこみ、結果としてウルグアイが40年ぶりという準決勝進出を果たしたのだから、スアレスのレッドカードには、まさに歴史的な価値があったわけだ。ハンド自体は決して誉められた話ではないけれど、こういうドラマもまた、サッカーの魅力のひとつだと思う。
 いやしかし、延長戦のPKがバーをたたいて失敗に終わったあと、ウルグアイのGKが興奮のあまり、ゴールを阻止したバーに投げキスで感謝をささげていたのがおかしかった。スアレスといい、この人といい、ウルグアイ人って、意外とチャーミングかもしれない。
(Jul 03, 2010)

アルゼンチン0-4ドイツ

準々決勝/2010年7月3日(土)/ケープタウン/TBS

 あぁ、ブラジルにつづいて、アルゼンチンまでベスト8で姿を消してしまうとは……。
 まあ、相手がドイツなのだから、アルゼンチンが負けたのもサプライズとはいえないけれど、でもさすがにこの4-0というスコアは予想外だ。開始早々3分にドイツの先制点が決まったときには、その後のアルゼンチンの反撃を期待して、すごい試合になりそうだと思ったものだけれど、そんな期待も空回り。終わってみれば一方的なドイツの試合になってしまった。
 試合の行方を大きく左右したドイツの先制点は、シュバインシュタイガーのフリーキックから。素晴らしい軌跡を描いたこのボールを、ニアに駆けこんできたミュラーが頭でかすめてコースを変えると、ボールはGKの右手にあたってゴールマウスに転がり込んだ。いきなりドイツに値千金のゴールが飛び出す。
 これで1点のビハインドを負ったアルゼンチンがすぐさま反撃に乗り出すだろうと思ったらば、そうはならない。ドイツのきびしいプレスに苦しみ、なかなか自由にボールを回せない。頼りのメッシは運動量が少なく、あまりに存在感がなかったし──なんでも風邪で体調が万全でなかったとか?──、とびきりの運動量でボールを追うテベスも孤軍奮闘の様相を呈していた。
 後半の立ち上がりなどにはアルゼンチンの時間帯もあったけれど、結局、同点ゴールは生まれず。反対にドイツが後半なかばにクローゼのゴールで追加点をあげる。これで勝負ありって感じだった。
 その後も個人技頼りのアルゼンチンに対して、ドイツは組織的なカウンターから3点目、4点目をたたき出してみせる。もう完膚なきまでのドイツの圧勝。イングランド戦につづいて、2試合連続の4得点という、すさまじい破壊力を見せつけての快勝だった。
 期待のメッシは、結局5試合ノーゴールという淋しい結果に終わった。この日はボールが彼に収まらないというか、あえて彼には預けない、みたいな感じがあったから、もしかしたらチームメイトからの信頼が十分じゃなかったのかもしれない。なんにしろ、体調がどうであれ、この試合では運動量が少なすぎた。エースがあれくらいしか攻撃に絡めないのでは、アルゼンチンの苦戦も当然だった。
 対するドイツのクローゼはこの日の2ゴールで今大会4ゴール目。W杯通算14ゴールで、ロナルドの持つ大会記録にあと1に迫ってみせた。ベスト4に残れば、準決勝で負けても三位決定戦があるので、あと2試合は確実に戦える。今大会のクローゼの調子からして、おそらくロナウドと並ぶのは確実だろう。大会新記録も十分にあり得えそう。おそるべし、クローゼ──というか、ドイツ・サッカー。
 ドイツの場合、クローゼのこうした大記録も彼ひとりの能力ではなく、組織力の勝利という印象がある。この試合自体が、メッシに代表されるアルゼンチンの個人技がドイツの組織力の前に敗北したって試合なのではないかと思う。組織は個より強し。そこんところは日本も見習わないといけない。
 準決勝でのドイツの相手はスペインに決まった(パラグアイも善戦したけれど、あと一歩及ばず)。なんでもこのカードは2年前のユーロの決勝戦の再現だそうだ。そのときと同じように再びスペインが勝って、W杯で初の決勝戦に駒を進めるのか、それともドイツが雪辱を果たすのか。パラグアイに苦しんだスペインよりも、アルゼンチンに快勝したドイツのほうが有利そうに思えるけれど、さあどうなるんだか。決戦まであと3日。
(Jul 04, 2010)

ウルグアイ2-3オランダ

準決勝/2010年7月6日(火)/ケープタウン/NHK(録画)

 さあ、南アフリカ大会も残すところあと4試合──とはいっても、3位決定戦は地上波での放送がないので、僕が観られるのはあと3試合。で、みんな午前3時半キックオフ。平日にそれをリアルタイムで観るだけの根性はないので、とりあえず準決勝はどちらも録画で朝いちに早起きして観るというパターン。決勝戦はちゃんと3時に観ようかと思っているけれど、5時起きでさえつらいんだから、3時はどうなんだという気が……。ま、その日になったら考えよう。
 なにはともあれ、ウルグアイ-オランダ戦。
 しっかし、ウルグアイはがんばった。前の試合のハンドで準決勝進出を勝ち取ったのにも感心したけれど──世間の風あたりは強いみたいだけれど、僕は単純にすごいと思ったし、個人的にはスアレスのハンドはこの大会の名場面(珍場面?)のひとつだ思っている──、この試合もなかなかすごかった。3-1と負けているところから、後半ロスタイムに1点を返し、このままもしかしたら同点に追いついちゃうんじゃないかという猛攻をみせて、オランダを慌てさせてみせたのだから、あっぱれだ。このウルグアイといい、準々決勝のパラグアイといい、堅守速攻に特化した南米のチームの健闘を見ていると、守備的なカウンター・サッカーもじつは悪くないかなという気がしてきてしまう。
 とはいえ、ウルグアイにはフォルランやスアレスのような得点力のあるFWがいるからこそ、守備的でもいいと思える気もする。ルックス的にもキャリア的にもずいぶんと開きのあるこのふたり、僕は今大会屈指のツートップなんじゃないかと思っている。頼りになるFWがいない日本人としては、うらやましいったらない。あぁ、今大会は森本のブレイクのチャンスかと思っていたんだけれどなぁ。まったく、岡田さんめ……。あ、やや脱線。
 この試合、先制したのはオランダだった。前半18分という早い時間帯に、キャプテンマークをつけた5番のファンブロンクホルスト(この人の名前も覚えられない)が遠めから思いきりよく打った豪快なロング・シュートが決まる。今大会は先制したチームが圧倒的に有利な印象なので、格上のオランダが先制したことだし、これで早くも勝敗は決まったも同然かと思ったのだけれど、その予想をいったんは覆してみせたのが、10番フォルラン。この人の強烈なミドル・シュートで、ウルグアイが同点に追いついて前半を終了してみせる。
 この大会、ここまで3失点しか許していない守備力の高いチームどうしの対決なので、この展開ならば、このままスコアが動かずにPK戦もある得るんじゃないかと思ったのだけれど、この予想も簡単にはずれる(今大会、僕の予想はハズレまくりだ)。後半なかばに、またもやスナイデルのゴールが決まる。特別いいシュートではなかったのだけれど、オフサイド・ポジションでボールに触りかけたファン・ペルシーの動きに惑わされて、GKが判断をあやまった。ファン・ペルシーはボールに触っていなかったけれど、彼がいたからこそ決まったゴールだと思うので、あれがオフサイドでないというのは、やや誤審っぽかった。
 オランダはこれで気落ちしたウルグアイの隙を見逃さず、この3分後にはロッベンのどんぴしゃのヘディングで3点目を加える。さすがにこれで本当に決まりだろうと思ったこの試合が、最後に思わぬ盛りあがりをみせたのは、最後まであきらめずに攻め立てたウルグアイの粘りゆえだった。しかもその時間帯には、すでにエースのフォルランは途中交替でベンチに下がっていたんだから、なおさらあっぱれだ。最終的に勝ったのはオランダだったけれど、ウルグアイのほうが気持ちのこもったサッカーをしていたような気がした。
 というわけで、ちゃんと観たのは2試合だけだったけれど、ウルグアイはこの大会でもっとも印象に残ったチームのひとつだった。まだどこと戦うことになるのかわからないけれど、3位決定戦も観たい気がしてきてしまった。とはいえ、さすがにいまからスカパーに入ろうって気にはなれない。
(Jul 07, 2010)

ドイツ0-1スペイン

準決勝/2010年7月7日(水)/ケープタウン/日本テレビ(録画)

 また予想がはずれてしまった。なんか、この大会は日本代表の3連敗を予想したところから始まって、すべて僕が思ったのと逆の目が出ている気がする(ベスト8が出そろった時点での、僕の決勝戦の予想カードはブラジル対アルゼンチンの南米最強対決)。ということで、絶好調だと思っていたドイツが、出来はいまいちという評判だったスペインに敗れるの巻。これで決勝戦のカードはオランダ対スペインという、初優勝をかけた強豪国どうしの対決に決定した。まあ、これ以上は思いつかないってくらいの好カードになったので、それはそれでよし。きっと世界じゅうのサッカー・ファンが喜んでいることだろう。僕としても当然、興味津々。
 でもまずはその前にこのドイツ-スペイン戦。
 この試合については、とにかくスペインのパス回しがすごかった。なんでも不調のフェルナンド・トーレスをはずして、バルセロナのペドロという選手を入れたことで、魅惑のパス・ワークが復活したんだそうだ。確かにあのドイツにまともにサッカーをさせてない感じだった。ボール支配率こそ最終的にイーブンに収まったみたいだけれど(序盤はスペインが60%を超していた)、観ていてとてもそんな感じはしなかった。なにより、パス成功率が81%って数字はいったいなにごと? パス・サッカーここに極まれり。
 でもスペイン、これだけパスがまわせる割には不思議と決定力がない。結局、この試合だって得点はセットプレーからプジョルのヘディングで決めた1点のみ。決勝トーナメントに入ってからの3試合のスコアはすべて1-0なのだから、なんとなくパス・サッカーというのは、じつはとても効率の悪いものだぞというのを知らしめているような気もする。まあ、対戦したってきたのがポルトガル、パラグアイ、ドイツと、どこも守備の堅いチームばかりだったというのもあるんだろうけれど。
 対するドイツはどうやらここまで4得点のミュラーを出場停止で欠いたのが痛かったらしい。ドイツほどの強国なら20歳の選手がひとり出られないくらい、いくらでも穴が埋まりそうなものだけれど、ミュラーというのはそこまでの大物だったってことなのか(僕にはよくわからない)。なんにしろ、この試合のドイツはこれまでのような小気味よいパス・ワークが影をひそめてしまって、終始受け身にまわっていた。たまに繰り出すカウンターはさすがに迫力があったけれど、それにしたってファースト・シュートが30分過ぎだってんだから、いかにスペインに圧倒されていたかがわかる。クローゼにもほとんどボールが集まらず、ロナウドの記録への挑戦は3位決定戦へと持ち越しになった。
 いやぁ、それにしてもワールドカップ・南アフリカ大会もこれで残るはあと1試合だ。1ヶ月間のサッカー至上主義的生活も月曜の朝でおしまい。そう思うと、寂しいような、ほっとするような……。なんにしろ、最後の最後に残ったとびっきりの一戦をたっぷりと楽しみたい。やっぱがんばって午前3時に起きよう。
(Jul 08, 2010)

オランダ0-1スペイン(延長)

W杯・決勝/2010年7月11日(日)/ヨハネスブルグ(サッカー・シティ)/NHK教育

 僕はスペインのデルボスケ監督の顔を見るたびに、ディズニー・アニメで牡蠣を食っていたセイウチを思いだす (きっとそういう人が世界じゅうにたくさんいるにちがいない)。そんなセイウチ似の監督さんに率いられたスペインが見事世界一に輝いた。ちなみに「セイウチ」と「世界一」は似ている──なんてあぁ、これで最後なのに、いきなりぐだぐだだ。一ヶ月に及ぶW杯期間限定・禁酒生活も終わっちゃったからなぁ……。夏場のビールは本当にうまい(ちょっと酔ってます)。
 それにしてもスペインのパスワークは無敵だった。オランダ相手でなお、ボール支配率57%というんだから恐れ入る。最終的な大会通算でのパス成功率も80%だというし、どんだけうまいんだ、スペイン人。戦っているオランダやドイツが普通の国に見えるもんなぁ。もしも日本がパラグアイに勝っていたら、このスペインとどんな試合をしていたのやら……。あぁ、返す返すももったいない。
 とにかくこの試合のオランダは、そんなスペインのパスワークを、ファール連発で分断しつづけた。両チームに出たイエローカードの総数12枚は今大会最多。これだけイエローが出れば、退場者が出るのはあたり前。だから延長後半にオランダの3番ヘイティンガが2枚目のイエローカードをもらって退場になったのは当然の流れだったと思うし、その結果、延長戦も残りあと5分でイニエスタにゴールが生まれたのも、ある意味じゃ必然だったのだと思う。
 というか、やはり後半にロッベンがGKと1対1になるシーンが2度もあったのに、それをどちらも決められなかった時点で、オランダの運は尽きたんだろう。
 そもそも今回のオランダの快進撃は、ここまで5ゴールで得点王争いをしていたスナイデルの活躍に負うところが大きかった。でも、そのスナイデルのゴールというのが、かなりラッキーなものが多かった。日本戦でのゴールは川島のパンチング・ミスによるものだったし、ドイツ戦でのゴールは相手のオウン・ゴールだった(あとで記録が変わった)。ウルグアイ戦ではファン・ペルシーがオフサイド・ポジションにいたにもかかわらず、オフサイドの判定を受けなかった。つまりスナイデルの5ゴールのうち、半分以上はラッキー・ゴールだったわけだ。
 もちろん、スナイデルが単なるラッキーマンだと言いたいわけではない。そりゃ彼はとてもいいだろう。でも今大会の彼が──そしてオランダが──ツキに恵まれていたのもまた確かなところだと思う。いまにして思えば、日本と同じグループEはどこも調子がいまひとつで、もっとも楽なグループのひとつだったし、決勝トーナメントの対戦相手だって、スロバキア、ブラジル、ウルグアイと、ブラジル以外はあきらかに格下だった。で、唯一の強敵ブラジルはオウン・ゴールから自滅した。
 そんな風にツキにめぐまれたオランダが、「美しいサッカー」という伝統の美学を捨ててまで、泥臭く勝ちにいったのがこの試合だ。だから僕は、きっとこの決勝でもスナイデルが何度目かのラッキーボーイぶりを発揮して、オランダが勝つんじゃないかと予想していた。
 ところが、この試合の彼には、最後までこれという好機がめぐってこなかった。そしてその代わり、後半に2度もビッグ・チャンスをむかえたロッベンは、これをふたつとも逃してしまった(いや、カシージャスに阻まれてしまったというべきか)。そしてさすがに3度目のチャンスはなかった。ジ・エンド……。
 まあ、攻撃的な両国の対戦だし、どちらに肩入れしているわけでもない身としては、もっとゴールが見られるのを期待していたので、延長戦まで戦って1-0という結果は、やや期待はずれだったけれど、それでもさすがに実力のある国どうしの対戦だけあって、とても見ごたえのある試合ではあった。
 そういや、オランダのファンマルバイク監督は、小野伸二がオランダでプレーしていた時の恩師だったそうで。いまだに伸二の実力を高く評価してくれているという噂だし、そうと知ると、なおさら優勝させてあげたかったなと思う。まあ、デル・ボスケのセイウチ顔もかなり好きだったりするんだけれど。

 なにはともあれ、これをもって2010 FIFAワールドカップ・南アフリカ大会も終了。MVPはなんとウルグアイのフォルランだ(おーっ)。得点王はビジャ、スナイデル、ミュラー、フォルランの4人が5点で並んだものの、表彰されるのはいちばんアシスト数の多かったミュラーだとかいう話。最優秀GKはカシージャス(これも納得)。そういや、クローゼは腰を痛めて三位決定戦に出場しなかったため、通算ゴール記録の更新はならなかった。
 いやしかし、四十過ぎての初めてのW杯だけあって、さすがに一ヶ月間、こうやって毎日のように文章を書いているのは、正直きつかった。次回大会はもうやらない(やれない)かもしれない。そのころにまだこんなものを書けるだけの元気があればいいと思う。
 なにはともあれ、次は2014年のブラジル大会。それはそれでとても盛りあがりそうだ。ブブゼラの次はサンバかぁ。
(Jul 14, 2010)