U-23ナイジェリア5-4U-23日本
リオ・オリンピック/2016年8月4日(木)/アレナ・アマゾニア(ブラジル)/NHK総合(録画)
まったくなんちゅう試合をしてるんだか。
五輪代表のリオ・オリンピック本番の第一試合、ナイジェリア戦。
相手のナイジェリアは移動のトラブルで試合の7時間前にようやく現地に到着したという話なので、コンディション的に有利な日本がまさかここまでぶざまな試合をするとは思ってもみなかった。
いきなり開始わずか6分に左サイドをたやすく崩されて失点。
でもその3分後に南野がもらったPKを興梠が決めて同点。
ほっと胸をなでおろす間もなく、その1分後にまた失点。
で、またその2分後に南野のゴールで同点って。
なんなの、この試合?
開始わずか10分ちょいで両軍あわせて4ゴールの乱打戦。
いったんはそれで落ち着いたものの、前半の終了間際にまたもやミスからピンチを招き、植田が痛恨のクリアミスから3点目を献上。
さらに後半に入ってからも2ゴールの計5失点。そのうち4点は8番のエテボという20歳の選手だ。そんな若い選手に4ゴールも許す日本のディフェンス力って……。
大事なこの初戦のスタメンは、GKが櫛引(お~!)、DFが室屋、塩谷、植田、藤春、MF遠藤航、原川、大島、FW南野、中島、興梠という11人だった。
直前のブラジル戦ではスタメンをはずれていた大島が復帰。あれ、でも原川もいるじゃん、はずれたのは誰?……と思ったら、矢島だった。おいおい。
大会の直前に仮にも背番号10を託していた選手がこの大一番でサブですか?
大事な試合だから慎重に入りたかったのはわかる。だからより守備力の高い原川を起用してトリプル・ボランチで臨んだんだろう(矢島は途中出場)。
でも結果的にはそんな手倉森采配がいちばんの敗因だったと思わざるを得ない。
そもそも5失点には、4バックの全員が絡んでいる。
1点目は藤春が相手FWにいともたやすくかわされてクロスをあげられた。
2点目は室屋がヘディングの目測をあやまったクリアミスから。
3点目は植田のクリアが短すぎ、こぼれ球をシュートされた。
4点目は塩谷のファールによるPK。
5点目は櫛引がペナルティエリアの外まで出てきてクリアしたボールを拾われた。
以上、失点の場面でいちばん目立った人の名前だけを書いたけれど、5失点のうち、4失点にオーバーエイジで呼んだ2人が絡んでいる。藤春は浅野の得点をアシストして、いくらか名誉挽回したとはいえ、左サイドのディフェンスがゆるすぎる。
もうひとりのOA選手である興梠も、PKこそ決めたものの、流れからは一本のシュートも打てずに終わっている。途中出場の浅野と鈴木武蔵──そういや久保は結局不参加と決まって、かわりに武蔵が招集された──がともに1点ずつ決めているのに、OA枠で呼ばれた興梠がシュートゼロではなぁ……。
結果論だけれど、これでは完全にOAの人選ミスでしょう。
べつに僕はこの3選手が嫌いなわけではない。とくに興梠は元アントラーズの選手だから、悪く思えるはずがない。
とはいえ、彼らがOA枠を使って呼ぶにふさわしい選手かというと、さすがに疑問を感じざるを得ない。なぜって、3人がそろいもそろってA代表ではボーダーラインを越えきれない選手たちだから。対するナイジェリアの10番ミケルがチェルシーのレギュラーだというのと比べれば、その格の違いはあきらかだ。
手倉森はチームにフィットするという理由で彼らを呼んだようだけれど、オリンピックという舞台で戦うのに必要なのは、現在のチームにどれだけフィットするかとよりも、むしろ世界の舞台でどれだけ戦ったことがあるかという経験値だったのではないかと思う。
この試合でもっとも印象的だったのは、ナイジェリア人の身体能力の高さに対するとまどいだった。日本代表は、こと一対一ではすべてといっていいほど負けていた。高い位置でボールをもたれると、まったく止められなかった。
チームにひとりふたりならばいざ知らず、全員がそういうレベルの選手ばかりというチームとの対戦経験など、Jリーグにいたのでは絶対に望めない。そして今回のOA枠で選ばれたのは、代表歴も少なく海外経験のない選手たちばかりだ。要するに彼らにしたってこの試合は初めての経験といっていい内容だったわけだ。それではこの大一番で十分に力を発揮できなくても致し方ない気がする。
まぁ、そういう意味でいうならば、指揮官である手倉森監督にしたって国際経験はまったくないわけで。Jリーグの感覚で世界にのぞんでこっぱみじん。そんな感じの試合だったと思う。
守備の破たんについては、自分たちの守備力を買い被っていたところもあるんじゃないかという気もする。
だって、振り返ってみれば、手倉森は大会前の数少ない親善試合のほとんどに、守備の要である遠藤航を招集していない。おまけにこの大会では──故障者が多くて気の毒な部分もあるにしろ──4バックの2枚にOAを使っている。
要するに守備的なポジションの選手たちに関しては、この半年ばかりで一緒に実戦でプレーした時間がきわめて短いわけだ。そりゃ連係だってそうスムーズにはいかないだろう。Jリーグやアジアの舞台ならばそれでもどうにかなるのかもしれないけれど、一歩世界に出たらまったく通用しないんだって。この日の結果はそんな現実を突きつけられたも同然だった。
日本が世界で戦ってゆくには、選手のみならず監督も、もっともっと国際経験を豊富にしてゆかないと駄目なんだろうなあって。そんなよくある意見の正当性を痛感させられた惨敗だった。スコア上は1点差とはいえ、コンディション不十分な相手に5失点もしたら惨敗と形容せずにはいられない。
次の相手がグループ最強のコロンビアということで、この大会ははやくも敗退がほぼ確定って状況になってしまった。あぁ……。
(Aug 06, 2016)