小石川近況
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更新履歴
2023-04-01 | 映 | 『トップガン』 New! |
2023-03-28 | 本 | 『ホーム・ラン』 |
2023-03-25 | 映 | 『メタモルフォーゼの縁側』 |
2023-03-22 | 蹴 | J1 第5節・横浜FM-鹿島 @日産スタジアム |
2023-03-20 | 映 | 『ナイブズ・アウト:グラス・オニオン』 |
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トップガン
トニー・スコット監督/トム・クルーズ、ケリー・マクギリス/1986年/アメリカ/Netflix
続編の『トップガン マーベリック』がやたら大好評なので、やっぱ先に前作を観とくべきだろうってことで、いまさらながら初めて観ました。トム・クルーズ主演、トニー・スコット監督の大ヒット作。
いやー、オープニングでかかったケニー・ロギンスの『デンジャラス・ゾーン』を聴いて、あぁ、この曲が主題歌の映画なのか~って思った。懐かしい。でもって、なるほど、これは観ようと思わないよなぁとも思った。どうにも80年代の映画って苦手だ。性格が暗いもんで、イケイケなムードが肌にあわない。
とはいえ、十代のころに『エリア88』が大好きだった身としては、F-14トムキャットなどの戦闘機の飛行シーンにはなかなかぐっとくるものがあった。オープニングの空母からの離発着のシーンとか、まるでミュージック・ビデオのようでカッコいい(ケニー・ロギンスはとくに好きじゃないけれど)。
出演者については、トム・クルーズのライバル役がヴァル・キルマーなのに、おーっと思った。そうか、これが出世作だったんだ。なるほど、若いっ。
その他のキャストに関しては、これだけの大ヒット作なのに、ヒロインのケリー・マクギリスという人をはじめとして、ほとんど有名人がいないのが、いまとなるとちょっと不思議だったりする。戦闘機を撮るのにお金がかかりすぎて、キャスティングに回す予算がなかったんでしょうかね?
あ、そうそう、そういやメグ・ライアンが出てました。ヒロインなのかと思ったら、主人公の親友の奥さん役。出番の少ない思わぬ端役だったので、あぁ、このころはまだブレイク前なのかーって思いました。人に歴史あり。
いやしかし、これの続編がアカデミー賞の作品賞にノミネートされたとか、にわかには信じがたいな。どんな映画なんだか、逆に興味津々だ。
(Mar. 25, 2023)
ホーム・ラン
スティーヴン・ミルハウザー/柴田元幸・訳/白水社
スティーヴン・ミルハウザーの最新短編集・其の一。
原書はこれと次の『夜の声』あわせて一冊なのだそうだけれど、日本の出版事情ではそれはいささか厚すぎるということで、柴田さんと編集者が相談した結果、二分冊になったのだそうだ。
僕個人はあまり分冊が好きではないので、できれば一冊で出して欲しかったところだけれど、まぁ、ミルハウザーの作風でこの倍のボリュームがあると、それはそれで相当歯ごたえがありそうだから、半分ずつにしてもらって正解かもしれない。とりあえず、僕は二冊つづけて読むことにして、『夜の声』も現在読書中(なかなか終わらない)。
収録作でもっとも印象的だったのは、冒頭の『ミラクル・ポリッシュ』。訪問販売員から鏡磨きを買った男が、それで磨いた鏡に映る自分や恋人の姿に魅了され、うちじゅうを鏡だらけにしてしまうという偏執狂的な話。
なぜかとか説明もなく地味なミラクルが起こって、ひとりの男の人生を破綻させてしまう。訪問販売の鏡磨きクリームなんて平凡な道具仕立てから、こんなに不穏でスリリングな話が生まれてしまう。その着想と表現力がすごい。
その作品に限らず、ミルハウザーの短編はありふれた事象の位相をずらすことで、僕らの暮らすこの世界と地続きの異世界を垣間見させてくれる。
今回は自殺者の多発する街の報告やら、なにやら不穏な入居施設の話など、死にまつわる陰鬱な空気感をまとった作品が多めな気がした。ブッダを主人公にした――ということを僕は柴田さんの解説を読むまで知らなかった――『若きガウタマの快楽と苦悩』にしても、ファンタジー色強めなのに世界観は暗い。
唯一明るめなのは最後に収録された表題作の『ホーム・ラン』だけで、これは超特大ホームランボールが宇宙まで飛んでいってしまいましたというホラ話。要するに松本大洋が『花男』の最後で描いたホームランが地球を一周しちゃうやつ、あれと同じことをミルハウザーならではの言葉の技巧を凝らして、より大きなスケールでやってみせた短篇(内容が内容だけにわずか五ページ)。
おそらくお互いのことを知らないであろう日米の奇才が似たような着想で世界の果てまで飛んでゆくホームランを描いているというのがおもしろいなと思った。
(Mar. 25, 2023)
メタモルフォーゼの縁側
狩山俊輔・監督/宮本信子、芦田愛菜/2022年/日本/WOWOW録画
マンガ原作の日本映画ってだけで、いつもはまったく食指が動かないのだけれど、これは原作の存在を知らなかったこともあり、宮本信子と芦田愛菜が縁側でマンガを読みながら談笑している予告編をみて、即座に観たいと思った。BLが縁で出会った老人と女子高生の友情を描いたハートフルなコメディ映画。
僕が原作のマンガの存在を知ったのは映画の予告編をみたあとだったのだけれど、結局映画よりも先にそのマンガを無料で読める範囲(五分の四)で読んでしまったので、物語はほぼ把握済み――ってまぁ、最後までは知らないわけだけれども(先週全巻読んだ)。
それでもその知識の範囲内でいうならば、この映画は僕が原作でもっとも重要だと思うエピソードをはしょってしまっている。そこがなにより残念なところ。
そのシーンというのが、主人公ふたりが同人誌イベントに客として参加するくだり。
宮本信子さん演じる市野井さんが客として同人誌販売会に参加して、「こんなお年寄りが?」という驚きを周囲にあたえたのちに、改めて出店者側になるという段取りを踏むところが原作のいいところなのに、この映画版にはその前段となるイベントへの参加シーンがない。
おかげで、一度もコミケに行ったことがなければ、マンガさえ書いたことがないうらら(芦田愛菜)がいきなりコミケにエントリーしてしまうという展開が、僕にはまったく腑に落ちなかった。その展開はいささか、いきなりすぎる。
しかもコミケ参加シーンもちゃんと描かないし。コミケをきちんと撮ろうとすると、膨大なエキストラが必要だから、予算的に無理だったのかもしれないけれど、それにしてもねぇ。
そこだけだ。そこだけ。二度のイベント参加シーンをもっとちゃんと表現してくれていれば、僕は文句なしでこの映画が好きになれたかもしれないのに。
祖母と孫――いや、もはや曾孫?――くらいに年が離れたふたりがマンガを絆に友情をはぐくむという部分は大好きだし、主演のふたりも見事なはまり役なので――まぁ、マンガと比べるとうららが可愛すぎるきらいはあるけれど、それでもここでの芦田愛菜は彼女の国民的ステータスを考えると嘘みたいに冴えない腐女子のJK役を演じている――そこだけがまじで残念だった。
(Mar. 12, 2023)
横浜F・マリノス2-1鹿島アントラーズ
J1・第5節/2023年3月18日(土)/日産スタジアム

今月からDAZNの月間プランの利用料が3,700円になった。
まぁ、極端に値上がりしたのは月間プランだけで、年間プランは月額にすると一ヵ月あたり2,500円で、これまでとさほど変わらないから、要するにオフシーズンに解約するユーザーを減らして収益を安定させたいって思惑なんだろうけれど、それにしても高い。いまやJリーグを観るにはDAZNと契約するしかないのをいいことに、やりたい放題だ。
だからってじゃあこれを機にサッカーを観るのをやめるかといわれると、なかなかそうもいかない。今後どうなるかはわからないけれど、現時点ではまだサッカーは大事な趣味のひとつなので。今年から日本代表を観ないと決めたいま、僕の世界では「サッカー=Jリーグ」なので、DAZNとは契約せざるを得ない。
だからといってそのまま素直にDAZNと契約するのも釈然としない。もしかしてauのDAZNが観られるコースを契約した方がお得なのでは?――と思って調べたら、auのDAZN込みのコースは、実質的にDAZNの年間プランとほぼ同額だった。ちっともお得じゃないじゃん!
――とは思ったものの、でもau経由で契約すれば、通信量が60ギガも使えるようになる。それだけあれば、今後は外出中の通信費はいっさい気にしなくてよくなる(現在はテレワークのせいで毎月1ギガも使ってないんだけれど)。同じ金額を払うならば、そっちのほうが断然お得だなぁと。
ということで、DAZNの年間プランが三月途中で切れるので、三月に入るのを待って、いざauの契約を変更しようと思ったら、なんと新プランへの変更が適用されるのは翌月からだという。おいちょっと待て。
つまりいまから変更手続きをしても、DAZNが観られるようになるのは四月からで、三月の残りの試合を観るには、別途DAZNの月額利用料を払わないとならない。
それで何試合か観られるのならばまぁ仕方ないと諦めるんだけれど、三月の後半に代表ウィークがあるせいで(こんちくしょうめ)、その半月のあいだに開催されるJ1の試合はこの日の一試合のみ。
つまりこの試合だけのために3,700円を払えと?
いやいやいや。さすがにそれはあり得ないでしょう。
かといって、これ一試合だけ見逃すのも嫌だ。
――ってことで、最初はもうリアルタイムで観るのは諦めて、四月に入ったら見逃し配信で観れるだろうから、それでもいいかと思ったんだけれど、考えてみたら、この日の対戦相手は横浜F・マリノスで、開催地は日産スタジアムだった。
それってふつうに観に行けばいいのでは?
新型コロナのせいですっかり出不精になってしまい、スタジアムからすっかり足が遠のいていたけれど、このタイミングでこのシチュエーション――DAZNの契約が切れたのが試合の前日で、アウェイ席のチケット代はDAZNの月額料とほぼ同額で、しかも折よくこの試合からマスクの着用が個人の判断にゆだねられた――というのは、これはもうサッカーの神様が「いいもの見せてやるから、テレビの前にへばりついていないで、スタジアムに足を運びなさい」といっているも同然なのでは?
――と、こねなくていい理屈をこねているうちに、すっかり前置きが長くなってしまったけれど、というわけでひさびさにサッカーを生で観てきました。
スタジアムでのサッカー観戦はじつに四年ぶり。そういや、ぼっちでサッカーを観るのもやたらひさしいなと思って調べたら、2008年に埼玉スタジアムに行ったのが最後だから、じつに十五年ぶりだった。日産スタジアムは一度サザンのライブで来たことがあるだけで、今回が二度目の訪問。つまりサッカー観戦はこれが初めてだ。
この日はあいにくの雨だったけれど、そういや、サザンのときもカッパを着ていた。日産スタジアムでは降られるのってがジンクスなのかも――って、いや、別にここに限らなかった。前述の埼玉スタジアムでも降られたし、それ以前にも国立で降られた記憶がある。決して多くはない観戦歴でここまで降られるのって、俺はもしかしたらサッカー限定の雨男なのかもしれん。
まぁ、この日は日産スタジアムの広さを体感しようと思って――あとやっぱ人混み嫌いなので空いている席がよかったので――あえて二階席のいちばん天辺に近い席――まうしろが屋根の柱という席――を取ったので、まったく雨に悩まされることがなかったのは幸いだった。
ただとても寒かった。寒くなるから気をつけろと天気予報でいっていたのに、数日前に開花宣言があったから大丈夫だろうと油断して防寒対策不十分でいったら、本当にむちゃくちゃ寒かった。二階席は風通りがよくて、雨で濡れたジーンズが風に吹かれて体温を奪うから、寒いったらありゃしない。三月だというのに、この冬でいちばん寒い思いをした。いやはや、花冷えにもほどがある。
試合のほうも寒い結果に終わってしまったけれど、でもまぁ、内容は決して悪くなかった。前半には相手よりも多くのチャンスを作れていたし、あとはフィニッシュの精度だけ。去年ダブルをくらった前年度王者相手にほぼ互角に戦えていたので、今年はそれほど悲観的にならなくてもいい気がする。
スタメンは前節で退場した佐野にかえて土居を入れた形。でもって途中出場は荒木、松村、カイキ、中村亮太朗、染野の5人だった――らしいのですが。
不覚にも僕は途中出場の選手がいつ出てきたのか気がつかなかった。中村に至っては出ていたのさえ知らないていたらく。
じつは斜めうしろにいた人たちの話し声が大きくて気が散ったので、後半からイヤフォンをつけて音楽を聴きながら観ていたせいで、途中交替の場内アナウンスを聴き洩らしてしまったんだった。
僕が最近お気に入りのソニーのLinkBudsというイヤフォンは、穴の開いた奇抜な構造が特徴で、穴が開いているため外音を遮断しないから、つけたままで歩いていても自動車がくればわかるし、音楽を止めれば、つけたまま外さないでも普通に人と会話ができる優れモノなので、音楽を聴きながらサッカーを観ても、ある程度音が聞こえるから問題ないかと思ったら、さすがにそうはいかなかった。やっぱ生観戦はしっかり現場の音が聞こえないと駄目だなと。またひとつ勉強しました。
試合は前半をスコアレスのまま折り返し、後半にマリノスが松原健の豪快なミドルで先制する展開。鹿島の左サイドにぽっかりとあいたスペースに走り込んできて、ダイレクトにどかんと打った松原のシュートが敵ながら見事だった。まぁ、あそこにスペースを空けてしまって、先に走り込まれた時点で負け。
マリノスの2点目は常本のオウンゴール――なのだけれど、僕の席からは遠い側だったこともあり、現地ではアナウンスもリプレイもなかったので、誰のミスかわからなかった。常本はマリノスが右から入れてきたクロスをクリアしようとして、びっくりするくらい見事に自軍のゴールに蹴り込んでしまった。でも、自らミスに突っ伏した彼に、早川がすぐさま檄を入れて前を向かせたのはいいなって思った。
この2点目で展開的には苦しくなってしまったけれど、そのまま2-0で負けなかったのがこの日の収穫だ。追撃の1点は途中出場の松村が右サイドを崩して入れたクロスに優磨がボレーであわせたもの。これも素晴らしいゴールだった。このゴールを目の前で観られたのがこの日いちばんよかったこと。
逆に悪かったのは、そのあと終盤になってラフプレーが増えて――やっぱ冷たい雨が降る中での激闘は両軍にとってストレスだったんだろうか――あげくの果てにピトゥカが二枚のイエローをもらって退場になってしまったこと。それもロスタイムに入ってから、わずか一分間に二枚のカードをもらっての退場劇。これも遠くてなにが起こったのかよくわからなかったけれど、いやぁ、勘弁して欲しかった。
優磨のゴールで高まった追撃ムードもさすがにこの退場で勝負あり。今回も川崎、横浜の二強には黒星スタートとなってしまい、本当に残念だ。
でも、どちらの試合も去年よりは内容がいいのが救い。後半戦ではぜひとも雪辱を果たしてくれますように。
(Mar. 19, 2023)
ナイブズ・アウト:グラス・オニオン
ライアン・ジョンソン監督/ダニエル・クレイグ、ジャネール・モネイ/2022年/アメリカ/Netflix
ひきつづき『ナイブズ・アウト』の続編で、去年公開されたシリーズ第二弾。
前作はふつうに劇場公開されたのに、これはNetflixオリジナル。劇場でスタートしたシリーズの続編がNetflixでしか観られないというのはどうなんだと思わないでもないけれど、まぁ、いまや映画ファンならばNetflixは避けて通れないだろうし、契約している身としては新作が即座に観られてありがたい。
今作の舞台は沖の孤島。エドワード・ノートン演じるIT富豪が毎年親しいセレブの友人らを招いて開いているパーティーへの招待状が、なぜか今年は名探偵ブランも届く。さらには富豪のかつてのパートナーであり、その後の彼の裏切りにより、いまや敵対関係にある女性(ジャネール・モネイだっ!)までもが乗り込んできたことで、リゾート島での楽しいはずのバカンスが一転して不穏な雰囲気に……。
世間から隔離された沖の孤島での殺人事件!
――というその設定だけで、これまた本格ミステリへのオマージュであることがあきらかな本作なのだけれど。
舞台がリゾート地ということで、ダニエル・クレイグのファッションがカジュアルすぎて、まるで名探偵には見えないのがこの映画の残念なところ。
沖の孤島での殺人事件は『そして誰もいなくなった』などへのオマージュだろうし、リゾート地での殺人事件というのも『ナイルに死す』などに通じるところがあるのだけれど、なぜか前作よりもクリスティーっぽく感じられないのは、クレイグの服装のせいのみならず、架空の新エネルギー発見にまつわるSF的な設定が入っているせいかもしれない。
まぁでも、これはこれで決して悪くないです。あいかわらずブランは名探偵っぽくないけれど、ミステリとしてはちゃんと提示された謎が解明されて大団円に至る。やや結末が派手すぎる嫌いはあるけれど、僕は今作もそこそこ楽しめた。
キャスティングでは、そのほかに『あの頃ペニー・レインと』のケイト・ハドソン(すんごいひさしぶりに見た)、『ガーディアン・オブ・ギャラクシー』のドラックス役のデイヴ・バウティスタ(全身タトゥーが同じ感じ)等が出演している。あと、イーサン・ホークやヒュー・グラントが顔見世程度のちょい役で出てます。
イーサン・ホークはサングラスをかけているせいもあって、キャスティングで名前をみてもなお、どこに出ていたかわからなかった(冒頭で波止場にやってきて、メンバーの喉に薬を打ち込むアシスタント役だそうです)。
ヒュー・グラントは一目でわかったけれど、いつの間にかずいぶんと更けてて、おまけにあまりの端役すぎて驚いた。
(Mar. 10, 2023)