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2026-08-10J1 第一節・横浜FM-鹿島 New!
2026-08-06『ファーゴ』
2026-08-02『夏帆 The Tale of KAHO』
2026-07-29HARRY & THE BIRTHDAY@SGCホール有明
2026-07-25『誰が音楽をタダにした? 巨大産業をぶっ潰した男たち』
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横浜F・マリノス3-4鹿島アントラーズ

J1・第1節/2026年8月7日(金)19:30/MUFGスタジアム/DAZN・フジテレビ

 ついに秋春制に移行したJリーグ、真夏の八月の新シーズン開幕!

 会場はMUFGスタジアムこと国立競技場。対戦相手はオーストラリア人の新監督スティーヴ・コリカ率いるF・マリノス。

 シーズン以降フィーバーで、金曜の夜なのに、観客数63,960人で歴代最多を記録したというこの試合。

 24年ぶりにゴールデンタイムの全国地上波放送もあるというので、せっかくだからその放送を観ようと思ったのだけれど、試合が始まるまでのCMやジョン・カビラのナレーションがうるさくて、つい観慣れたDAZNに戻ってしまった。DAZNもCMは入るけど、視聴率を気にしていない分、余計な演出や煽りがないのがいい。

 でも前半の途中にタブレットで地上波とDAZNを比較したら、DAZNはタイムラグがあって、ずいぶんと映像が遅れていた。だったらばと後半からは地上波で観て、放送終了後に監督のインタビューとか見たくて、ふたたびDAZNに戻るという。そんな落ち着かないテレビ観戦となった開幕戦だった。

 さて、この新シーズンまでの準備期間にアントラーズでは、荒木、濃野、知念、師岡、船橋、溝口が移籍していなくなった。かわりに加わったのはマテウス・ブエノ、ヤン・マテウスと、出戻りの広瀬。でもって安西、樋口のふたりがシーズン前に怪我をして長期離脱中という状況。

 流出六名+故障者二名に対して、新加入はわずか三名。単純に人数だけでプラマイを考えればマイナスだ。百年構想リーグを前年とほとんど変わらないメンツで戦ったのは、このタイミングでの大型補強を考えてのことかと思っていたけれど、そうでもなかったらしい。

 でもまぁ、補強した選手たちは即戦力として十分だし――広瀬もなんだかけっこう頼もしくなった気がする――そもそもいまの鹿島には徳田誉や吉田湊海みなと、元砂晏翔仁アントニウデンバら、ユース世代の日本代表で主力を務めている十代の注目株が多い。今シーズンは彼らに出場機会を与えるためにも、補強を最小限にとどめたのではと思っている――というか、そうであって欲しいなと思っている。

 はたして、この開幕戦、アントラーズのスタメンを飾ったのは、GK早川、DF広瀬、植田、関川、小川、ダブル・ボランチが三竿とマテウス・ブエノ、攻撃的MFは左がヤン・マテウス、右が吉田湊海、でもって優磨とレオ・セアラのツートップという布陣だった。

 期待通り、吉田湊海がプロ初のスタメン出場!――と盛り上がったのもつかのま。

 予想外の活躍を見せたのは、彼よりなお若い若干16歳でF・マリノスの開幕スタメンに抜擢された三井寺眞みいでらしんだった。

 この若者にいきなり開始6分で先制ゴールを決められてしまう。さらにはトリッキーで技ありなトラップから2点目の起点にもなる。

 16歳って、高校一年生だよ?

 なのになに、三井寺のあの高校生らしからぬフィジカルと落ち着いたプレーは? 見た目も吉田よりも大人っぽいし。いやはや、末恐ろしい。

 対する吉田湊海は、ときたまセンスのよさを感じさせるプレーはあったものの、あまり有効にはゲームに絡めず。残念ながら前半だけでお役御免となった。まぁ、これが最初で最後のチャンスってことはないだろうから、これでめげずにがんばって欲しい。

 そんな注目の若者以外だと、マリノスには移籍した知念がいたのもポイント。先制点は彼が持ち味のデュエルの強さを発揮して、優磨からボールを奪い取ったのが起点だったし、いやはや、知念、敵にするとやっかいだわ。

 そのほか、マリノスは喜田やクルークスがベンチスタートってところに選手層の厚さを感じさせた。先制点をアシストした近藤友喜ともき、2点目で見事なダイレクト・クロスを入れた天野、それにピンポイントであわせた谷村、このスリートップに、最終ラインで存在感を放ったキニョーネスあたりが好印象だった。とくにチーム最年長でキャプテンをつとめる天野はあいかわらず鹿島との相性がよくて困りものだった。

 マリノスがなぜオーストラリア人監督にこだわっているのか知らないけれど、この試合を観る限り、今回のコリカという人もどうやら手腕は確かっぽい。まぁ、逆転を許した終盤のゲームマネージメントには若干疑問が残ったけれど、それまでの出来は文句なしだった。

 試合は三井寺に先制されたあと、小川の絶妙なFKからレオ・セアラが同点ゴールを決めて、鹿島が一度は試合を振り出しに戻したものの、そのあとすぐに谷村にゴールを決められてまたもや引き離され、後半に入ってふたたび谷村に追加点を許して、1-3とされてしまう。

 さすがにこの時点で勝負ありかと思った。

 この日の3失点はどれも球際が緩かったというか、プレーが軽かった。百年構想リーグでヴィッセルに5失点したときもそうだったけれど、どうにも植田と関川のペアが、今年はいまだ、まともに機能していない気がする。

 関川には次世代の大黒柱として成長してもらわないと困るんだけどなぁ……。いまの感じだと安心して最終ラインを任せられない。少なくてもキム・テヒョンにベンチを温めさせておいていい状態ではないように思えた。

 とにかく2点のビハインドを負い、これはもう負けかと思った試合の流れが変わったのは、そのあとのことだった。

 具体的には、マテウス・ブエノとヤン・マテウスの両マテウスに替わって、柴崎と林晴己が出てきてから。マリノスもその直後に四人を一気に入れ替えたことで、両チームの勢力図が大きく書き替わった。

 追撃の狼煙となった鹿島の2点目のゴールは、後半から吉田に替わって出場していた松村のクロスから。これにあわせた優磨のジャンピング・ヘッドはポストを叩くものの、その跳ね返りにレオ・セアラが詰めていた。松村も優磨もレオもナイス!

 それが後半36分。そのあと、残り5分という時間帯に、鬼木が最後のカードを切って投入したのは徳田とチャヴリッチだった。でもって、交替で下がったのは――。

 なんと両SBの小川と広瀬とくる。

 え、なにそれ?

 この予想外の交替策からあとは、松村と林をSBにコンバートした超攻撃的な布陣になった。それって守備的に大丈夫なの?――と思ったものの、その時間帯になると、すでにマリノスでは足をつる選手が続出していたから、もやは相手のサイド攻撃を気にする必要はないという判断だったのかもしれない。やっぱ夏場の開幕戦は、選手にはきつかったんじゃなかろうか。まぁ、鹿島の選手たちは最後まで元気だったけど。

 いずれにせよ、この思い切りのいい特攻策がみごとに実を結ぶ。

 徳田らがピッチに立ったわずか1分後。ふたたび松村のクロスに優磨が頭であわせて、またもやポストに嫌われる場面があり(なぜそう何度も)、今度はそのこぼれ球を徳田が押し込んでついに同点!!

 ――と喜んだのもつかの間。このゴールはVARでオフサイドの判定を受けて取り消されてしまった。

 あぁ、これはさすがに詰んだか……と思った試合は、でもまだ終わっていなかった。

 ロスタイムに入って4分。優磨が打った惜しいシュートがマリノスの新GKルベン・ブランコ(Fromスペイン)に止められ、あぁ、きょうの優磨はとことんゴールに嫌われているなぁ……と頭をかかえたあとに――。

 リプレイで優磨のシュートが途中出場のクルークスの右手をかすめているシーンが映し出される。

 いやいやいや、これはハンドじゃん!

 果たしてVARの介入によりオンフィールドレビューでファールが認められて、鹿島が土壇場でPK獲得!

 このPKを蹴ったのが、ハットトリックの可能性があったレオ・セアラでも、ハンドを誘った優磨でもなく、途中出場のチャヴリッチというのがふるっていた。今年は全員でタイトルを獲りにゆくぞというチームとしての意思表明なのかなと思った。

 チャヴリッチがこのPKをしっかりと決めてついに同点――。

 試合はそれで終わらなかった。

 11分という長いアディショナルタイムに、PKでの中断時間を加えたため、試合時間がすでに101分を越えた最後の最後。

 CKの流れから柴崎が蹴り込んだ絶妙のスルーパスにチャヴリッチが反応して、GKとの一対一を股抜きで決めて、ついに大・逆・転~!! つねに劣勢だった試合を最後の最後でひっくり返した。

 いやぁ、すげーわ。僕は33年前のJリーグの開幕戦で、鹿島がジーコのハットトリックを含む5得点で勝つのを観て、よしこのチームを応援しようと思ったわけだけれど、同じようにこの試合を観たことがきっかけで鹿島のサポーターになる人がいてもおかしくないよなって思うような劇的な試合だった。3失点はいただけなかったけれど、試合自体は文句なしのおもしろさだった。

 いやぁ、ほんとたまらない。やっぱ俺らにはワールドカップよりもJリーグだよなぁって思った。

(Aug. 10, 2026)

ファーゴ

ジョエル・コーエン監督/フランシス・マクドーマンド、ウィリアム・H・メイシー、スティーヴ・ブシェミ/1996年/アメリカ

ファーゴ

 世間的な評価ではコーエン兄弟のベスト3に入る作品なのだろうけれど、僕はこの作品がいまいち苦手だった。

 今回ひさしぶりに観てみて、映画としての出来のよさはわかったけれど、やっぱり好きになれなかった。

 だって、最初から最後まで人間関係、どこもかしこもギスギスし過ぎじゃん?

 物語的には金に困った自動車販売店のディーラーが、金持ちの義父から金をせしめようと自分の妻の誘拐事件を計画したところ、実行犯に選んだ悪党たちの暴走により、窮地に陥るという話。

 小市民的なディーラー役がウィリアム・H・メイシー、二人組の誘拐犯がスティーヴ・ブシェミ――変な顔だといわれまってかわいそうだけれど、それゆえインパクト大で、この映画の彼の代表作でしょう――とピーター・ストーメアという人。でもって事件を追う妊娠中の女性警察署長がフランシス・マクドーマンド(若くてけっこうかわいい!)というあたりが主な配役。

 コーエン兄弟らしい悲喜劇で、突発的に発生する殺人事件がどれもばかばかしいから、ジャンル的にはクライム・コメディということになるんだろうけれど、でも登場人物が誰も彼もしょうもなさ過ぎて、なんか笑うに笑えない感じ。そこがいまいち苦手だ。

 ひとりひとりの演技は文句なしだし、広大な雪景色と荘重なサウンドトラックをバックに、しょうもない理由で何人もの人が殺されてゆく不条理な展開には、これぞコーエン兄弟って味わいがある。とはいえ、とにかく前述した通り、その笑うに笑えないって感触ゆえに、観ていてどうにも息苦しさを感じてしまう。そんなところが個人的にはどうにも残念な作品。

 そういや映画の冒頭に「これは実話です」みたいなテロップが出るけれど、あれは嘘だそうです。そんなのあり?

(Aug. 06, 2026)

夏帆 The Tale of KAHO

村上春樹/新潮社

夏帆 The Tale of KAHO

 この村上春樹の三年ぶりの長編小説は、どうにもすっきりしない気分にさせられる作品だった。

 まずは主人公の女性がブラインドデートの相手から「君みたいに醜い相手は初めてだよ」といわれるところから始まる第一章。

 短編『謝肉祭』のアイディアを転用したようなこの始まり自体はまぁいい。実際に醜いのならばそれはそれでどんな醜さか興味が湧くし、醜くないのならばないで、相手はなぜそんな失礼千万なことをいったのか、知りたくなる。

 でも本で村上氏はそのどちらの関心もきちんと満たしてくれない。なんかすごく中途半端な回答でお茶を濁されてしまう。

 しかもその相手の男性はその後は登場しないまま次第に怪しさを増してゆき、再登場するころには、ファーストイメージを裏切る超常的な存在っぽくなっている。

 第一章の時点ではリアリズムっぽかった物語は、第二章のありくい、第三章のシロアリの女王と、超常的な存在の登場でまったく違う様相を帯びてゆき、ついに第四章では非現実の世界において決着をみて、曖昧なまま終わる。

 村上ワールドにおいては、過去の作品でもファンタジー要素がそれなりに重要なポジションにあったけれども、今回のそれはこれまでになくイージーに使われている感じ。そのうえで物語の決着はある種の暴力性によってもたらされる。

 不条理な未知の悪意に対抗するために、勇気を振り絞って立ち向かうという展開は、過去作でも繰り返されている村上作品にとって重要なモチーフだけれど、この作品の場合はその悪意をもたらすのが人間ではないせいで、話がどうにも説得力を持っていない気がした。事件が非現実的な空間での流血をともなわない暴力によって決着をみる展開には、なんともいえないもやもや感が残ってしまった。

 いま現時点での僕自身の嗜好がファンタジーよりもリアリズムに向かっているせいもあってか、残念ながらこの作品はまったく僕には刺さらなかった。

 本人はそんなもの欲しくないよって思っていそうだから、なんの問題もないのかもしれないけれど、このところの村上春樹って、作品を重ねるごとにノーベル賞から遠ざかっている気がする。

(Aug. 2, 2026)

HARRY & THE BIRTHDAY

TOUR 2026 "Gotta Move" FINAL/2026年7月17日(金)/SGCホール有明

 スライダーズが解散してから、はや四半世紀以上。いまごろになって初めてハリーのソロでのライブを観た。

 これまでハリーのライブで観たことがなかったのは、レコーディング作品にスライダーズのころほど惹かれなかったのに加え、途中からは作品がインディーズでしかリリースされなくなってしまい、手に取りにくくなったのが一因。作品をきちんとフォローできていないと、やはりライブって足を運びにくい。

 さらにはライヴの内容も弾き語りとか、ドラムだけとか変則的なものが多くて、絶対に観たいと思うほどではなかったので、観にゆくタイミングがつかめず、今日にいたるという感じだった。

 ここ数年はコンサート・チケットの高騰が著しくて、一枚一万円を超えるのがあたりまえになってきてしまい、僕自身の体力の衰えや腰痛や預金残高の少なさもあいまって、以前のように気楽には足を運びにくくくなってきてしまったので、もうこのままハリーのライブは一度も観ずに終わるのかもなぁと思っていた矢先に発表されたのが、以前に夏フェスで共演したThe Birthdayとのツアーだった。

 チバくんなきあともThe Birthdayとして活動をつづける三人の演奏をバックにしたハリーのライブが観られる!

 もしもこの先ハリーのライブを観るのがたった一度だけだとしたら、これ以上の機会はないのでは? これを観ずしてなにを観る――。

 そう思って先行チケットの抽選に申し込んだものの、豊洲PITでの東京公演は落選。二公演ゆくのは懐具合が厳しいので、日和ってZepp Hanedaは申し込まなかったのが失敗だったか……と思うもあとの祭り。残念だけれど、いままでちゃんとフォローしてこなかった自分が悪い。このまま一生ハリーのライブは観れずに終わるんだろうなって思っていたところへ、追加で発表されたのがこのツアーファイナルだった。

 会場は三月に開業したばかりのSGCホール有明。東京ガーデンシアターに似た造りのホールで、キャパは五千人とあちらよりは少ないものの、すでに東京で二公演を終えたあとの追加公演だ。さすがに今回はチケットが取れました。しかも一階席のステージ向かって左手の、前から十六列目という良席。スライダーズの復活ライブのときよりもステージが近い! まぁ、右手にいたフジイケンジだけは前の人に遮られてよく見えなかったけれど、あとの三人はしっかりと視野に収まっていた。

【SET LIST】
  1. Respectable Performer
  2. Nowhere to Run
  3. 雨ざらし
  4. 針と匙
  5. Whiskey Heads
  6. ALRIGHT
  7. On The Road Again
  8. Uh, Ah, Oh, Ah (HARD DRUNK MAMA)
  9. 壬生狂言
  10. Sweet Pain
  11. Gotta Move [新曲]
  12. You Can't Be Serious
  13. Naked Rhythm
  14. RUIN
  15. 世界の終わり
  16. ROLLしねえ
    [Encore]
  17. カレンダーガール
  18. Tokyoシャッフル
  19. Let's go down the street

 定刻を過ぎてしばらくして客電が落ち、五十年代のオールディーズらしきナンバーがSEで流れるなか、The Birthdayのメンバーが登場~。最後にハリーが出てきて、フジイケンジのギターのイントロからコンサートが始まる。

 一曲目は『Respectable Performer』――というタイトルなのを、サビにそのフレーズが出てきて知りました。ごめん、ハリーの履修が浅すぎた。

 でも馴染みの薄い曲でもなんの問題もなし。とにかくバンドの音がカッコいい~。

 キュウちゃんのドラムとヒライハルキのベースに引っぱられて、ハリーとフジイケンジのギターがノイジーに絡み合う。これこれこれ。こういう音が聴きたかったんだよ~って、まさに僕が望むギター・ロックの理想形。スライダーズとThe Birthdayってどちらも僕にとってはそういうバンドだったので、その両者のコラボは予想以上に最高だった。

 この一曲目ではハリーのボーカルがよく聴きとれないほど音もでかかった。二曲目以降はミキサーの調節がよくなったのか、はたまた単にそこまでギターをかき鳴らさない曲がつづいたからか、そんなこともなくなったけれど、でもとにかく一曲目はとにかく音がでかかった。でもって、それがとても気持ちよかった。

 かつてはエレカシのライヴ帰りには耳鳴りがして、相方の声がよく聞こえないなんてことがあった。最近はそういう経験がすっかりなくなったけれど、この夜はちょっとだけそのころに近いものがあった。やっぱロックはこういうのがいいよなあって思った。もうこの一曲目を聴いた時点で、この夜のライブが最高のものになるのを確信した。このバンドの音を二時間も浴びられるんだよ? これが最高でなければなんだろう?

 ハリーとThe Birthdayのコラボってことで、どのバンドの曲をどんな比重でやるのかも要注目だったわけだけれど、セットリストの中心となったのはハリーのソロ・ナンバーで、それ以外は六曲だけだった。全部で十九曲だったから、約三分の一弱。

 ハリーはソロでもスライダーズの曲をやっている印象だったし、それなりにスライダーズの曲も聴けるだろうと思っていたのに、ほとんどやらなかったのは予想外。演奏されたスライダーズ・ナンバーはわずか三曲で、本編で演奏されたのは『On The Road Again』一曲だけだった。

 でもこの曲がいい。スライダーズの再結成ライブで必ずやるだろうと思っていたのに聴けずに終わったこの曲を、あえてこのツアーでやってくれたことが嬉しかった。それはアンコールの『Tokyoシャッフル』もしかり。いまさらこの曲をツイン・ギターのバンド・サウンドで聴けるのって、嬉し過ぎでしょう?

 本編の大半はハリーのソロ・ナンバーで、いまいち馴染みが薄かったとはいえ、知らない曲はひとつもなかったし、とにかくバンド・サウンドが最高なので、それだけで十分に楽しいところへきて、このツアーではコラボゆえのサプライズがいくつか用意されていた。これがまたたまらない。

 まずは冒頭からソロ・ナンバーをつづけたあと、六曲目に披露されたのが『ALRIGHT』。

 The Birthday初期のEP『プレスファクトリー』の収録曲で、オリジナル・アルバムには未収録のせいで、僕はサビにくるまでThe Birthdayの曲だって気がつかなかった。いまいち馴染みの薄いこのバラードを引っぱり出してくるあたりもふるっている。

 ちなみに「夢をみようぜBady」と歌うこのナンバー。僕にとっては、いやおうなく宮本を思い出させるこの歌詞に、なんで同じことを歌っても、チバくんやハリーのほうがカッコいいんだろうなぁって思いながら耳を傾けていた。

 この曲の次が前述した『On The Road Again』で、ここの流れはこの日の序盤のクライマックスだった。

 二つめのサプライズはライブの中盤に演奏された新曲『Gotta Move』。

 まさかこのツアーのために、ツアータイトルを使った新曲を用意しているなんて思わないじゃん。ミディアム・テンポのブルージーなナンバーで、一聴しただけで記憶に残るようなキャッチーな曲ではなかったから、もう一度聴かせてもらっても同じ曲だとわからない可能性大だけれど、それでもわざわざ新曲を用意してくれた心意気にぐっときた。

 そしてこの夜最大にして最高のサプライズが本編のラスト・ナンバー『Rollしねえ』の前に鳴らされたあの曲――。

 フジイケンジが弾き始めた高速ギターカッティングのイントロを聴いて耳を疑った。

 えっ?

 これって、まさか?

 ハリーのソロにこの曲に似ているイントロの曲ってあったっけ?

 そんなフジケンのギターに、ヒライのベースが加わり、キュウちゃんのドラムが鳴った瞬間に、戸惑いが確信にかわった。そしてぶわっと鳥肌がたった。

 『世界の終わり』だあああぁ~~!!!!

 いやいやいやいや。まさかこの曲をふたたび生で聴く日がこようとは……。

 それもハリーのボーカルで。

 チバくんはThe Birthdayではまったくミッシェルの曲を演奏してこなかったので、フジケンとヒライハルキがこの曲を演奏するのも、おそらく今回のツアーが初めてでしょう? キュウちゃんにとっても、プライベートはいざ知らず、公式ではミッシェルの解散ライブ以来ではないんだろうか。

 The Birthdayとのコラボでなぜこれ?――とは思ったけれど、おそらくハリーにとっては、いまは亡きチバユウスケに対する追悼の意味を込めたトリビュートだったんだろう。スライダーズのトリビュートに参加してくれた返礼として、チバくんの曲をカバーするならば、彼の最高傑作であるこの曲をぜひやりたいと思ったんだろうきっと。ハリーのその思いにミッシェルのオリジナル・メンバーであるキュウちゃんが賛同したからこそ実現したと思われる夢のような衝撃のトリビュート・ナンバーだった。

 ということで、この名曲のあとに『Rollしねえ』を聴かせてもらって本編は終了。

 いまだ『世界の終わり』の余韻さめやらぬ中、最近のライブには珍しくずいぶんと待たされて始まったアンコールの一曲目は、The Birthdayの『カレンダーガール』。

 また意外な選曲を……。

 でもまぁ、チバくんの不在ゆえに、あえて王道をはずした、変化球的な選曲にならざるを得なかったのかもしれないとも思う。

 この曲ではワンコーラス目をハリーが歌ったあと、キュウちゃん、ヒライハルキ、フジケンの順でボーカルをまわして全員が歌うという趣向だった。チバくん抜きのライブでは三人ともボーカルを取っているようなので、そのことに対するハリーからの配慮だったのかなと思った。この曲に限らず、ハリーの歌に三人が持ち回りでコーラスをつけていたのも、このライブのよかった点。

 アンコールはそのあとに前述した『Tokyoシャッフル』があって、最後は『Let's go down the street』で締め。そうだよなぁ、スライダーズのトリビュートでThe Birthdayが演奏したこの曲は外せないよねって思いながら聴いてました。

 フジケンとキュウちゃんはハリーと十才違いだけれど、ヒライハルキとはちょうど二回り離れている。そのせいか、ハリーがThe Birthdayのメンバーを紹介する際の呼び方が、フジケン、ハルキ、クハラだったのも、なんかメンバー個々に対する距離感が伝わってきておもしろかった。年の離れた彼らと一緒に演奏するハリーがとても楽しそうだったのが、この夜もっとも印象的だったことかもしれない。

 あと、ハリーのファンはいかにもって人が多かった。会場へと向かう道すがら、あ、この人はハリー観にゆくんだろうなと思わせるファッションの人たち多数。会場内に長蛇の列ができているから、トイレか物販かと思ったら、列の先にあったのは喫煙ルームだったりするし。いまどき、あんなに喫煙者が多い集団も珍しかろう。

 なんにしろ、最近の宮本のライブは圧倒的に女性ばかりだし、ずとまよはもちろん若者中心なので、こういう年季の入ったロックファン大集合みたいなオーディエンス層って、かえって新鮮だった。

 いやぁ、でも本当にいいライブだった。ハリーのライブを観るのはこれが最初で最後になるかもと思っていたけれど、もしも彼らがふたたび一緒にツアーをする気になったら、そのときにはまた観にいきたくなってしまうこと必至だわ。

(Jul. 29, 2026)

誰が音楽をタダにした? 巨大産業をぶっ潰した男たち

スティーヴン・ウィット/関美和・訳/早川書房/Kindle

誰が音楽をタダにした? 巨大産業をぶっ潰した男たち (早川書房)

 いまやすっかりあたりまえになったデジタル配信を中心とした音楽シーンがいかにして実現したかを三つの側面から紐解いてみせたノンフィクション。

 ひとつめはMP3を開発した技術者たちの話。僕はこれを読むまで、iTunesのファイルフォーマットであるAACをアップルが開発したコーデックだと思いこんでいたので、それがじつはMP3を開発した技術者たちが、MP3の後継規格として開発したものだと知ってびっくりだった。AAC、王道中の王道じゃん。あと、なぜDVDの音声フォーマットにMPEG-2が採用されるまでの覇権争いの話――技術力が政治力に負けるの図――も勉強になった。

 ふたつめは音楽業界がデジタル化の波にもまれる中で、いかに変わっていったかという話。このパートはユニヴァーサル・ミュージックというレコード会社の盛衰記といった内容になっている。ずっとYouTubeでよく見かけるVEVOってなんだろうと思っていたので、それがレコード会社主導で配信ビジネスから広告収入をあげるために生み出されたプラットフォームだとわかったのが有益だった。

 最後の三つめは、音楽をMP3にリッピングしてネットにリークしていた海賊サイトの運営者たちの話。冒頭でこの本の作者が、若いころからそうした人たちによって無料で公開された音楽をダウンロードしまくっていて、音楽は無料で聴くのがあたりまえだと思っていたと語っているのを読んで、著作権を重視する僕としては、あ、これは読んじゃいけない本だったのでは?――と思ったりしたけれど、それでも内容はとても興味深いものだった。

 この本では以上の三つのエピソードが同時並行して語られてゆく。技術的な話はコンピュータを仕事にしている身としては大変興味深かったし、音楽業界の裏話も洋楽ファンならば一読の価値があると思う。でもって海賊サイトにまつわる話には、ある種のクライム・ノベル的なおもしろさがある。

 一粒で二度おいしい――じゃないけれど、これはそんな一冊で三ジャンルが一度に楽しめる良作。僕みたいに著作権法違反者への献金になるのでは……みたいなことを気にしないで済む人にはお薦めの一冊。

(Jul. 25, 2026)



【相棒】
しろくろや

【Shortcuts】
音楽 作品 / ライブ / 会場 / 購入 / エレカシ
作品 / 作家 / 翻訳家 / 出版社 / 読了 / 積読
映画 作品 / 監督 / 俳優 / / シリーズ / ドラマ
蹴球 鹿島 / Jリーグ / 日本代表 / W杯

【新譜】
08/12RADWIMPS 20th ANNIVERSARY LIVE TOUR [BD] / RADWIMPS
08/14Lost Weekend / Phoebe Bridgers
08/21Weezer (The Gold Album) / Weezer
08/21Hazel Eyes / Sam Smith
08/28There Near / Dinosaur Jr.
08/28Timeless / Prince
08/28I Must Be Dreaming / Alabama Shakes
09/11Anatomy Of A Brief Romance / Bloc Party
09/18Ride Lonesome / Beck
10/09Do Not Dare To Dream / Teenage Fanclub

【ライブ】
10/28BUMP OF CHICKEN@有明アリーナ
02/06BUMP OF CHICKEN@東京ドーム
02/11宮本浩次@代々木第一体育館

【サッカー】
08/15[J1 第2節] 鹿島-名古屋
08/22[J1 第3節] 鹿島-福岡
08/29[J1 第4節] 東京V-鹿島
09/02[J1 第5節] 水戸-鹿島
09/06[J1 第6節] 鹿島-浦和

【準備中】
08/--[本] 人間の証明
08/--[映] 名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN

【過去のコンテンツ】
Coishikawa Scraps Bootleg 2.0