小石川近況
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2023-09-30 | 本 | 『復讐の女神』 New! |
2023-09-26 | 蹴 | J1 第28節・鹿島-横浜FM |
2023-09-24 | 本 | 『百鬼夜行 陽』 |
2023-09-22 | 本 | 『百鬼夜行 陰』 |
2023-09-19 | 蹴 | J1 第27節・鹿島-C大阪 |
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復讐の女神
アガサ・クリスティー/乾信一郎・訳/クリスティー文庫/早川書房/Kindle
クリスティーが生前に発表したミス・マープルものの最後の一編。
『カリブの秘密』のマープルさんのセリフに「復讐の女神(ネメシス)」という言葉が出てきたときには「へー、こんなところで既にこの言葉が使われていたんだ」と思ったものだったけれど、あれがまさかこの作品への伏線だったとは。
あちらは1964年の作品で、これが1971年発表だから、その間およそ七年。あいだにマープルもの一編を含む六作品を挟んでいる。
それなのにまさか『カリブの秘密』を書いた時点で、すでにこの続編の構想があったんだろうか? だとしたらほんと恐るべしだわクリスティー。決して傑作というほどの出来ではないけれど、でも『カリブの秘密』との姉妹作として、独特の味わいがある。これを書かずして断筆にならなくてよかったと思う。
内容はあの作品でマープルさんの相棒役をつとめたラフィール翁の訃報から始まる。
新聞で故人の記事をみつけて、カリブでのその人との親交を思い返していたマープルさんのもとへ弁護士からの連絡が届く。氏からの遺言でマープルさんに頼みたい仕事があるという。
ただ弁護士に会って話を聞いてもなお、その仕事の内容というのがわからない。マープルさんになにかをして欲しいらしいのだけれど、肝心のその「なにか」が明記されていない。
そんな遺言ってあり?――と思いつつも、氏の性格と自分との関係からして、それは犯罪絡みであるだろうとあたりをつけたマープルさん。ラフィール氏の知人をあたって、過去に未解決の事件がないか探り始める。するとそこへ追加のヒントあり。氏から〈大英国の著名邸宅と庭園〉巡りツアーへの招待状が送られてくるのだった。
かくしてそのツアーに参加したマープルさんは、同行者のなかにいたラフィール氏ゆかりの人物たちと知り合い、過去の未解決事件の謎へと導かれてゆく。
ヒントも出さずに勝手に事件を見つけ出して謎を解けって、そんな馬鹿な話、実際にはあり得ないとは思う。でもこの作品はそれこそが肝だ。
無茶ぶりする故人のひねくれたユーモアと悲哀。それに真摯に答えようとするマープルさんの献身。そして明かされる事実の苦さ。いろいろと一筋縄ではいかない癖のある一編だった。
(Sep. 25, 2023)
鹿島アントラーズ1-2横浜F・マリノス
J1・第28節/2023年9月24日(日)/カシマサッカースタジアム/DAZN
ジ・エンド。
優勝を狙うならば絶対に落とせない2位と3位の直接対決で、せっかく先制しながらの逆転負け。これでF・マリノスには2年連続でシーズン・ダブルだ。首位ヴィッセルとの勝ち点の差は9に広がってしまったし、さすがにこれはもう勝負ありだろう。あぁ、残念無念……。
この日のスタメンは出場停止のピトゥカの位置に柴崎を入れただけであとは一緒。途中出場はカイキ、土居、須貝、名古、エレケの5人だった。
試合は前半15分にCKから優磨のヘディング――深いところにいた彼の頭に当たったボールが絶妙なループシュートになった――が決まって先制するまでは文句なしの内容だった。F・マリノスはこのところ不調で、リーグ戦でもカップ戦でもACLでも勝っていないという話だったので、これはもらったのではと思った。
ところが、だ。
前半34分。そこまで防戦一方だった横浜が獲得した初めてのCKから同点ゴールが生まれてしまう。ショートコーナーかと見せて、そこからのキッカーのヤン・マテウスへと戻して、改めて入れたクロスにアンデルソン・ロペスが反応。DFラインの裏につま先を突き出すようにして打ったシュートが、早川の手を弾いてゴールラインを割ってしまった。
で、いったん同点になったあとは試合内容が一変。すっかりマリノス・ペースになってしまう。
マリノスはヤン・マテウス、アンデルソン・ロペス、エウベルというブラジル人トリオの3トップが強力だった。前線にほとんどボールが入らなかった序盤は「ん、見た目のわりにはたいしたことない?」とか思っていたのだけれど、ここから先は厄介この上なかった。
この夏に加入したというトップ下のナム・テヒという韓国人はいまいちよさがわからなかったけれど、中盤の底の渡辺皓太、山根陸という若いボランチ・コンビはちゃっちゃとパスを回すし、最終ラインはキャプテンマークをまいたエドゥアルドと角田涼太朗のCBコンビに、永戸、松原の両サイドがしっかりと守る。そういや松原には前回と同じような形でゴール前に切り込まれるシーンがあった。今季2ゴールの選手がなぜにアントラーズ戦になるとそんな素敵なプレーを……。
さらには途中後退で宮市、西村、水沼、喜田ら、レギュラー級の選手が出てくるの、反則じゃなかろうか。
ということで、前半こそなんとかしのいでさぁ後半勝負と思ったら、開始わずか5分で波状攻撃を受け、ふたたびアンデルソン・ロペスに2ゴール目を決められてあっさり逆転。結局それが決勝点となって、鹿島は上位対決に敗れて5位に後退した。ディフェンディング・チャンピオンはやはり強かった。ちくしょー。
まぁとりあえず、復帰後初スタメンの柴崎と、故障明けの名古とエレケのプレーが観られてよかった。――そう思うことにする。
(Sep. 25, 2023)
完本 百鬼夜行 陽
京極夏彦/講談社ノベルス
百鬼夜行シリーズ二冊目の短編集。備忘録のつづき。
一話目の『青行燈』(あおあんどう)は『陰摩羅鬼の瑕』に出てきた由良奉賛会の平田謙三が主人公。
この人は本編ではちょい役すぎて、僕のみならず大半の人の記憶に残っていないだろうと思われる。でもいきなり京極堂が登場して、由良邸の書籍処分を任されるという展開で、シリーズの外伝としてはとても貴重な一編。
『大首』(おおくび)も『陰摩羅鬼の瑕』の端役(にして『邪魅の雫』の主要キャラ)である大鷹篤志の話。
『屏風闚』(びょうぶのぞき)の主役は『絡新婦の理』の連れ込み宿のお婆さん・多田マキ。こんな端役にわざわざ脚光をあてる京極夏彦がすごい。
『鬼童』(きどう)は『邪魅の雫』の江藤徹也。
『青鷺火』(あおさぎのひ)は『狂骨の骨』の宇田川崇先生。
『墓の火』(はかのひ)は『鵼の碑』の前日譚その一。主人公は寒川秀巳。
『青女房』(あおにょうぼう)は『魍魎の匣』の寺田兵衛。
『雨女』(あめおんな)は『邪魅の雫』の赤木大輔。
『蛇帯』(じゃたい)は『鵼の碑』の前日譚その二。蛇が大嫌いな桜田登和子の話。
最後の『目競』(めくらべ)はなんと榎木津礼二郎の独白。薔薇十字探偵社の命名にいたるまでの若き日の榎木津の葛藤を描いている。
以上、前作と同じくこちらも全十話。
内訳は『魍魎の匣』『狂骨の夢』『絡新婦の理』が一編ずつ、『陰摩羅鬼の瑕』『邪魅の雫』『鵼の碑』が二編ずつ。で、榎木津のやつは分類不可。あえていえば『姑獲鳥の夏』の前日譚ってことになるんだろう。
その榎木津の話を始めとして、今作では妖怪の名前をタイトルに据えて、その妖怪の属性を作品のモチーフに据えてはあるものの、妖怪談としてのおどろおどろしさが希薄な作品が前作より増えた気がした。
いずれにせよ、一話目で京極堂が出てきて、最後は名探偵の思い出話で終わるという。でもってこの時点ではまだ未発表だった『鵼の碑』につながる話がふたつもあるという時点で、これは京極ファンにとっては、なかなかのサービスメニューだったのではと思います。
(Sep. 19, 2023)
完本 百鬼夜行 陰
京極夏彦/講談社ノベルス
百鬼夜行シリーズの文庫本四冊が思ったより早く読み終わって、『鵼の碑』の発売までちょっとあいだが空いたので、積読にある短編集二冊も読んでしまうことにした。
なんたって『百鬼夜行 陽』には『鵼の碑』につながる短篇二編が収録されている。それなのにその内容をすっかり忘れてしまっているのだから、これはもう必読でしょうと。で、それを読むのだったら、この『陰』も読まないわけにはいかない。
ただ、どちらも『定本』を読んだときの駄文が残っているので、今回は備忘録がわりに全短篇の登場人物をざっと紹介しときます。
ということで、この本の収録作品と各主人公は以下の通り。
一話目の『小袖の手』(こそでのて)の主人公は『絡新婦の理』の杉浦隆夫。彼と『魍魎の匣』のあの娘とのなれそめが描かれる。
『文車妖妃』(ふぐるまようび)は『姑獲鳥の夏』の久遠寺涼子の話。
『目目連』(もくもくれん)は『絡新婦』の平野祐吉(精神科医は降籏よね?)。
『鬼一口』(おにひとくち)は『魍魎の匣』の前日譚。主人公の鈴木敬太郎って誰?――という謎は後日別のシリーズで判明する(彼を戦場で助けた軍人が誰なのかが気になる)。あと初読時には気づかなかったけれど、この話には『塗仏の宴』の宮村加奈男が薫紫亭という屋号で出ていた。
『煙々羅』(えんえんら)の棚橋祐介はこの本唯一の一見さん。話は『鉄鼠の檻』の後日談。
『倩兮女』(けらけらおんな)の主役は『絡新婦』の山本純子。
『火間虫入道』(ひまむしにゅうどう)は『塗仏の宴』の岩川真司警部補。
『襟立衣』(えりたてごろも)は『鉄鼠』の円覚丹。
『毛倡妓』(けじょうろう)は木場修の後輩の木下圀治。
『川赤子』(かわあかご)は関口巽の語りによる『姑獲鳥の夏』の前日譚。
以上、全十話。十人十色の妖怪話が収録されている。
内訳は『姑獲鳥の夏』につながる話が二編、『魍魎の匣』が一編(『小袖の手』も入れれば二編)、『鉄鼠の檻』が二編、『絡新婦の理』が三編、『塗仏の宴』が一編。木下くんの話はどこにカウントしていいかわからない。娼婦絡みだからか、ウィキペディアでは『絡新婦』のサイドストーリーとされている。
巻末には京極夏彦自身の手による妖怪画も収録。それが『完本』と銘打ったゆえんかもしれない。
(Sep. 19, 2023)
鹿島アントラーズ1-0セレッソ大阪
J1・第27節/2023年9月16日(土)/カシマサッカースタジアム
代表ウィークをはさんで二週間ぶりとなったJ1。対戦相手はセレッソ大阪。
この試合に関しては、前半25分のピトゥカの一発レッド、これがすべてだった。
確かにリプレイで見ると超危険なイメージだったから、レッドカードも致し方ないと思った。リプレイを観たあとは。
でもファールを受けた喜田陽はその後も後半途中で交替するまでプレーしている。つまり大事には至らなかったわけだ。足裏で相手のふくらはぎを踏みつけたピトゥカのプレーはそりゃ危険には見えたけれど、レフェリーが目の前で見ていてイエローも出さなかったプレーにVARが介入してレッドにしてしまうのってどうかと思う。
いや、もしかしてあれはレフェリーが最初からイエローを出していれば、そこでおしまいだったのかな。出さなかったから、VARもそのまま放置はできなくて、レッドカードではという話になったのか。まぁ、あのリプレーを見たら放っておけないだろうしなぁ……。
いやはや、なんにしろ不幸なレッドでした。
その後しつこく抗議した岩政にイエロー、侮辱行為があったということで通訳の人にレッドカードまで出てしまったし。右サイドから再三の突破をはかるカピシャーバというブラジル人とも、度重なる接触プレーで一発即発な印象だったし、これ以降は試合が荒れた感じになってしまった点でも残念だった。
不幸中の幸いはその退場劇の前に先制していたこと。
前半12分に鈴木優磨が相手の隙を見逃さず、最終ラインまで下がってボールを受けたボランチ喜田からボールを奪取、GKと一対一のチャンスを得て、これを落ち着いて決めた。
レッドにつながるファールを受けたのも喜田だったし、よくも悪くも彼はこの試合のキーマンだった(マリノスの喜田の親戚とかではない模様)。
まあなんにしろ、鹿島はよく守った。ひとり少なくなってからは防戦一方。たまにカウンターから惜しいチャンスを作ることがありはしたけれど、それも二、三度で、あとはずっと守りっぱなしだった。二度くらい崩されてあわやというピンチもあったけれど、なんとか凌いで、最後は昌子を入れて3バックにして、そのままウノゼロで勝利。これぞ鹿島の伝統って感じの、しぶとい一勝だった。
この日の出場選手はスタメンが早川、広瀬、植田、関川、安西、海舟、ピトゥカ、樋口、松村、垣田、優磨、途中出場がカイキ、柴崎、須貝、昌子、聖真という計16名。出場停止の仲間にかわって松村がスタメンで出た。
柴崎が復帰後リーグ戦初出場だったけれど、なにせ防戦一方だったので、あまり彼のよさが生きる展開ではなかったかなと。ピトゥカがいない次節のF・マリノス戦は確実に彼がスタメンだろうから、大一番での活躍に期待している。
セレッソはキム・ジンヒョンが故障中とのことで、ヤン・ハンビンという別の韓国人がゴールマウスを守っていた。あと、代表帰りの毎熊がなるほどいい感じだった。香川もフル出場していたけれど、決定的な仕事はできず。清武はいまだ不在だった。
ということで、勝ち点2の差で上にいた4位のセレッソに勝って、順位は逆転。しかも上位陣が今節も勝ち点を取りこぼしまくりで、鹿島の順位はなんと3位!
もしかして奇跡を期待してもいいのか?――って感じになってきた。
(Sep. 18, 2023)