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2025-11-22『スクール・デイズ』
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シーズ・ガッタ・ハヴ・イット

スパイク・リー監督/トレイシー・カミラ・ジョンズ、トミー・ヒックス、ジョン・カナダ・テレル/1986年/アメリカ/Netflix

She's Gotta Have It

 一時間半くらいと短めだったこともあり、せっかくだからつづけてこれも観てしまうことにした。スパイク・リーの監督デビュー作がこちら。

 これも昔観たときにはぴんとこなかったんだけれど、『スクール・デイズ』とは違い、今回はよかった。スパイク・リーの父親、ビル・リーの手掛けるジャズのサウンドトラックと、白黒のスタイリッシュな映像の組み合わせがぴったりで、観ていてとても心地よかった。この気持ちよさにはジャン=リュック・ゴダールの作品に通じるものがあると思った。

 内容は、性的に奔放なひとりの女性(トレイシー・カミラ・ジョンズ)と、彼女とつきあう三人の男性――トミー・ヒックス、スパイク・リー、ジョン・カナダ・テレル――とのいびつな関係を、彼らへのインタビューで描きだすという疑似ドキュメンタリー風のコメディで、物語的にはそれほど惹かれないんだけれど、映画としての質は高いと思う。これが日本ではこれまでVHSでしかパッケージ化されていないのって、いささかひどいのでは?――と思ってしまった。ネトフリが配信してくれててよかった。

 この映画には『スクール・デイズ』と同じくスパイク・リーの妹ジョイ・リーのみならず、父親のビル・リーも出演していた(主人公の父親役)。そんな風に家内手工業的なキャスティングでもって、こういうスタイリッシュな映画を撮ってみせた若き日のスパイク・リーの才気が溢れる逸品。

 エンドクレジットで、彼ら出演者がそれぞれ自分たちの名前が書かれたガチンコを持って自己紹介するのも素敵でした。

(Nov. 24, 2025)

スクール・デイズ

スパイク・リー監督/ラリー・フィッシュバーン、ジャンカルロ・エスポジート/1988年/アメリカ/Apple TV

スクール・デイズ (字幕版)

 スパイク・リーのファンを自称しながら、僕はとんでもない勘違いをしていた。

 いまのいままで、この『スクール・デイズ』が彼のデビュー作だと思い込んでました。

 『シーズ・ガッタ・ハヴ・イット』のほうが先かよ……。

 まぁ、この初期の二作品については、正直あまり思い入れがなくて、これまで一度ずつしか観ていないし、たぶんどちらも同時期に観て、それきりだったので、記憶が改ざんされてしまったらしい。内容的にもこれのほうが『シーズ・ガッタ・ハヴ・イット』よりも若気の至りな感が強いし。

 黒人大学での寮生どうしのバカ騒ぎとセックスを描いたこのコメディ。学校とか集団行動が苦手な僕は、残念ながらまったく楽しめなかった。もしもこれが最初に観たスパイク・リー作品だったとしたら、もしかしたら僕は彼のファンを公言していないかもしれない。最近だと『シャライク』が同系列の作品で(それゆえ僕は駄目だった)、あれはこの続編だったんじゃないかって気がする。

 この映画で(やや誇張して?)描かれるようなアメリカの大学のカルチャーって、なんか違和感がはんぱない。こんな世界には絶対に馴染めない。なんでジャンパー着ているシーズンに、ダンスパーティーで水着になるのかもわからない。風俗的にも苦手な八十年代が舞台だし、個人的には好きになれる要素がほとんどなかった。

 まぁ、あえていうのならば、ミュージカルと呼んでもいいくらい、音楽シーンがたくさんあるので、八十年代末のブラックミュージックのショーケース的な見方をすると、いくらか楽しめそうな気もする。あと、ジャンカルロ・エスポジート(今回初めて名前を認識しました)をはじめ、ビル・ナンやサミュエル・L・ジャクソンら、スパイク・リー作品の常連さんたちがたくさん出ているので、そういう人たちの若き日の姿が観られるのは貴重かもしれない。

 主演のラリー・フィッシュバーンって誰かと思ったら、ローレンス・フィッシュバーンのことだった。若いころはスリムでカッコよかったんだ。

 そういや、スパイク・リーが演じるキャラが字幕では「ボーヤ」と呼ばれているのに違和感があって、英語だとなんと言っているのか調べてみたら「Half-Pint」だった。「半パイント」しかない小さなやつというスラングらしいので、それだったら「ボーヤ」より「チビ」のほうが自然じゃん? と思ったんだけれど、もしかしていまや「チビ」は差別用語扱いで使えないのか。「でぶ」とかも駄目なのかな。いろいろ面倒臭い時代だなぁと思う。

(Nov. 22, 2025)

あにゅー

RADWIMPS / 2025

あにゅー

 RADWIMPSの今と昔が交錯する会心の一枚!

 桑原彰の脱退から一年。デビュー二十周年ということもあり、野田・武田の二人体制になっての再出発の意味を込めて『あにゅー』と名付けられた新譜。

 『あにゅー』ってなに?――と思ったら、英単語の「anew [ən(j)ú:] -adv. 改めて; 新たに, 新規に.」(リーダーズ英和辞典)だそうだ(英語力に難のある男)。まさしくその名にふさわしいフレッシュな内容になっている。

 なにかとサプライズの多いこのアルバム。まずは発表済みの曲が『命題』と『賜物』の二曲しかないことに驚いた。

 CDには朝ドラ『あんぱん』の最終回で使われた『賜物』のオーケストラ・バージョン、配信バージョンには『大団円』の新録バージョンがボーナス・トラックとして収録されているけれど、それらを含めても三曲。残りの十曲はまっさらの新曲。

 配信リリース済み曲をコンパイルしてアルバムを出すのがあたりまえになってしまったこのご時世に、これだけの新曲を一気に聴けるのがとても嬉しい。やっぱアルバムってこういうのがいいよなぁとしみじみと思った。まぁ、いまだにそれを毎回あたりまえのように行っているaikoという超えらい人もいますが。

 発表済みの二曲にしても、『命題』はRADWIMPSの王道中の王道といえる曲ながら、初期のアルバムに収録されていてもおかしくないようなその歌詞の世界に、こういう曲がいまさら生まれてきたことにも驚かされた。

 朝ドラの主題歌として賛否両論を巻き起こした『賜物』は、初めて聴いたときに、その構成の複雑さにびっくりした。これ一曲に三曲分くらいのメロディと歌詞をぶち込んだ感がある。朝ドラではその一部だけを切り取ってしまったことで不評を買った感が否めない。まぁ、ちゃんと一分半で朝ドラの世界を表現できてないのが嫌だってことならば、それはそうかもしれないけれど……。

 でもふつうに音楽が好きな人ならば、この曲に込められた熱量の高さは否定できないでしょう? だってこんな曲書ける? ダンサブルな曲調をストリングス・アレンジで聴かせるのはラッドとしても新機軸だし、そういうところにもちゃんと朝ドラ主題歌としての配慮はされていると思う。

 新海映画のサントラとかを聴けば、野田洋次郎がいかにも朝ドラにふさわしいマイルドな曲を書けるのはあきらかだ。でも彼は今回、あえてそういうわかりやすい曲ではなく、こういう全方向にとことん尖った楽曲を持ってきた。それがやなせたかしという人の人生を表現する正しい方法だと信じたからだろう。

 かつてアマチュア時代にライブハウスの支配人から「こんなことしてたら売れないよ」と言われても折れることなく、ミクスチャーなスタイルを貫いてデビューを果たした反骨心はいまも変わってないんだなぁって思った。

 ラッドにとっては王道ともいうべき『命題』と破格の『賜物』。この二曲をリードトラックにして、このアルバムには十二曲(+先程書いたボーナストラック一曲)が収録されている。

 印象的なのは『命題』から始まる前半部分の初々しさ。そこにはメジャーデビュー当時に戻ったかのような、適度にキュートな感触がある。昔のラッドはよかったよねって。そういって離れていったファンを力づくで呼び戻せそうなフレッシュさがある。

 でもそんなアンチエイジングな魅力だけが売りではないのがこのアルバムのよいところ。バラードが多めになる後半、『筆舌』には洋次郎が四十代になったからこそ歌える苦みがあるし、『成れの果てに鳴れ』のサウンド・デザインは『新世界』などの最近のラッドの最新型だ。

 決して懐古趣味に走って若ぶってんじゃないぜって。これぞ二十年に及ぶキャリアのなかで培ってきた抽斗の多さの証明。そんなアルバムに仕上がっていると思う。

 もう絶賛されてしかるべき傑作だと思うんだけれど、そんな中で画竜点睛がりょうてんせいを欠くの感があるのが『ピリオド。』

 曲自体の出来が悪いとかではなく、問題はその歌のテーマ。

 「まじでいらねぇ」「はよ消え去って」と(おそらくバンドを抜けた彼に向けての)嫌悪をむき出しにして歌うこの曲の救われなさときたら……。

 かつての問題作『五月の蠅』を思い出させる曲だけれど、とことんヘビーだったあの曲とは違い、楽曲があっけらかんと明るい分、なおさら救われない。

 この曲を聴いて、今回のアルバムに『人間ごっこ』や『KANASHIBARI』が収録されていない理由がわかった気がした。再出発を誓うこのアルバムには「桑原彰」のクレジットを入れるわけにはいかなかったんだろう。だから『大団円』も新録なわけだ。

 これほど素晴らしいアルバムが、そんな仲間との決別という哀しい事件の結果としてもたらされたという事実には、どうにもやりきれないものがある。

 でもまぁ、いまさらそんなネガティブなことをいっていても詮方なし。その一点をのぞけば、本当にこのアルバムは素晴らしいのだから。

 ほんとRADWIMPSというバンドが好きでよかった。

 ――これ一枚でも十分そう思わせてくれていたのに、さらにもう一枚、おまけでとっておきのプライズがあろうとは(つづきは後日)。

(Nov. 19, 2025)

黄昏の狙撃手

スティーヴン・ハンター/公手成幸・訳/扶桑社BOOKSミステリー/Kindle(全二巻)

黄昏の狙撃手(上) (扶桑社BOOKSミステリー) 黄昏の狙撃手(下) (扶桑社BOOKSミステリー)

 ボブ・リー・スワガーを主人公にしたシリーズは『極大射程』から『狩りのとき』にいたる三部作のあと、アール・スワガー三部作を挟んで、『四十七人目の男』で再開するまでに、九年のインターバルがある。

 イメージとしては『狩りのとき』で切りよく三部作がまとまっているので、本当はそれ以降は書くつもりがなかったんじゃないかという気がする。『四十七人目の男』がなんだこりゃって内容の――いってみれば蛇足的なイメージが強い(失礼)――作品だったため、なおさらそんな気がする。その辺の事情がわかる解説がついていてくれると嬉しいのに、残念ながらついてない。これだから電子書籍はなぁ……。

 いずれにせよ前作でシリーズはリブートした。再開後のいちばんの違いは、その間にボブ・リーが年を取っていること。

 歴戦の英雄も六十を過ぎて、まわりからの扱いはすっかりお爺さん。前作での死闘で得た心身のダメージのせいで、頭は白髪がめだつようになり、脚を引きずって歩くようになってしまった彼は、今作ではずっと老人扱いされている。

 今作の魅力はそんな「おいぼれ」が、じつはいまでもすごいんだぜって。そのギャップ。ずっと若い人たちからなめられっぱなしの老人が、最後にその伝説的な戦闘能力を発揮して、悪党たちをやっつける。そんな水戸黄門の印籠的なシーンの到来が待ち遠しくて、ページをめくる手が止まらなくなった。

 あと、この小説は導入部も秀逸。大学を卒業して新米記者となったボブ・リーの娘ニッキが、謎のドライバーに襲われて交通事故を起こし、昏睡状態に陥ってしまう。ボブは愛娘の回復を祈りながら、にっくき敵を探して自ら捜査に乗り出してゆく。そして彼もまた命を狙われるようになる。

 さすがのストーリーテラー。話の運びが上手い。悪役の人物造形も抜群。

 まぁ、出来映えは初期三部作には及ばないけれど、それでも十分なおもしろさだった。ある種マンガ的な楽しさがあったもんで、途中でやめられなくなって、『四十七人目の男』は上下巻で一ヵ月以上かかったのに、こちらは休日を丸一日費やし、一週間ちょいで読み切ってしまった。大変おもしろうございました。

 いやでもこの先、年を取る一方のボブ・リー・スワガーがどうなってしまうのか予断を許さなくて、いまは続編への期待と不安が半々だったりする。

(Nov. 17, 2025)

キングの身代金

エド・マクベイン/井上一夫・訳/ハヤカワ・ミステリ文庫/Kinlde

キングの身代金 87分署シリーズ (ハヤカワ・ミステリ文庫)

 スパイク・リーの『天国と地獄 Lowest 2 Highest』の原作だというので読んでみた、エド・マクベイン87分署シリーズの第十作目。

 エド・マクベインを読むのはこれが初めて――ではないかもしれない。若いころにこのシリーズの第一作『警官嫌い』を読んだような気がしなくもないんだけれど、読んだとしてもまったく記憶に残っていないから、実質的にはこれが初めて。

 87分署シリーズはニューヨーク市警(NYPD)をモデルにした架空の警察署を舞台にして、「警察小説」というジャンルを確立したシリーズとのことだけれど、この作品に関しては、誘拐事件の被害者と加害者、その両方を描くのが主体で、刑事たちの活躍の場面は控えめ。そういう意味では、シリーズの中では、ややイレギュラーな作品っぽい。

 とはいえ、このシリーズにおいては、おそらく警察とか犯罪とかは主役ではなく、メインはニューヨークという都市の全体像を、小説という形で再現することなのではないかなって気がした。ニューヨークをモデルにしたアイソラという街の風景やそこに生きる人々の姿を描きだす作者の筆は、それくらい生き生きとしている。五十作品を超える長大なシリーズを生み出した原動力は、ニューヨークという街への深い思い入れにあるのではと思った。

 映画との違いで意外だったのは、映画では終盤まであきらかにならなかった誘拐犯たちの正体が序盤から明かされて、そこから先の物語では犯人側も主役級であること。その点は今年観た『新幹線大爆破』の新旧版と同じだった。リメイクにあたって犯人を隠してミステリっぽさを高めたがるのは、世の習いなのかも。

 身代金の受け渡しをクライマックスとして、それ以降もドラマがつづいた映画とは違って、原作では受け渡しの顛末でハプニングがあって、犯人たちの計画が破綻して、あっさりと事件が解決してしまう。その点、スパイク・リーの映画は、原作よりもむしろ黒澤版を踏襲した部分が多そうな感じだった。

 とりあえず、これを読んでみて、やっぱ黒澤版は観とかなきゃ駄目だなと思った。あと、エド・マクベインの文体にけっこう好感を覚えたので、このシリーズも第一作にさかのぼって読んでみてもいいかなと思った。

(Nov. 15, 2025)



【相棒】
しろくろや

【Shortcuts】
音楽 作品 / ライブ / 会場 / 購入 / エレカシ
作品 / 作家 / 翻訳家 / 出版社 / 読了 / 積読
映画 作品 / 監督 / 俳優 / / シリーズ / ドラマ
蹴球 鹿島 / Jリーグ / 日本代表 / W杯

【新譜】
12/10I [Single] / BUMP OF CHICKEN
12/10TOUR 2024 Sphery Rendezvous at TOKYO DOME [BD] / BUMP OF CHICKEN
12/10HAYABUSA JET II / 佐野元春 & THE COYOTE BAND
03/20The Mountain / Gorillaz

【コンサート】
12/22ずっと真夜中でいいのに。@東京ガーデンシアター
12/27RADWIMPS@有明アリーナ

【サッカー】
10/30[J1 第37節] 東京V-鹿島
12/06[J1 第38節] 鹿島-横浜FM

【新刊書籍】
12/01『高校のカフカ、一九五九』 スティーヴン・ミルハウザー
12/03『赤く染まる木々』 パーシヴァル・エヴェレット
12/17『バウムガートナー』 ポール・オースター
01/07『消失』 パーシヴァル・エヴェレット

【準備中】
11/11草の竪琴
11/11薬屋のひとりごと16
11/22[天皇杯・決勝] 町田-神戸

【過去のコンテンツ】
Coishikawa Scraps Bootleg 2.0