宮本浩次
60周年記念公演 さあ、ドーンと行くぜ!/2026年6月12日(金)/ぴあアリーナMM
宮本浩次、記念すべき六十歳の誕生日に開催されたバースデイ・コンサート。今年も無事にチケットが取れました。
今年は遅刻もしなかったし、席もまあまあよし。花道を左手の真横から眺める一階スタンド席。最高とはいえないまでも、宮本の姿が肉眼で追える距離だから、十分にいい席だった。われらがチケット運、いまだ衰えず。
さて、還暦を迎えた宮本が、六十代最初の一曲に選んだこの日のオープニング・ナンバーは『I love 人生!』。
それもスタートはステージではなく楽屋から。あの曲のイントロのドラムループに乗せて、これからステージへ向かおうとする宮本の姿をカメラが追う映像がスクリーンに映し出される。まっすぐステージに向かわず、ところどころにおふざけを挟む、おちゃめな六十歳の一挙一動に湧く客席。
ようやくステージの袖に到着ってところで映像は途切れ、いざ登場ってシーンでは、左右に配置された縦型のスクリーンに、この日の主役の全身像がドーンと映し出される。
黒のスーツにダークレッドのシャツ。首にはシャツと同じ色のスパンコールのマフラー。でもって黒い中折帽をかぶり、帽子に上から手をあてて、ポーズを取っている。それを見て思いました。
マイケル・ジャクソンかよっ!
あとで聞いたら、うちの奥さんもそう思ったらしい。まぁ、僕らの世代にとっては共通認識だろう。あのファッションとポーズを見て、マイケル・ジャクソンを思い出さない人のほうがおそらく少数派だ。
いやしかし、宮本を見てマイケルかと思う日が訪れようとは……。
【SET LIST】
[第一部] |
この日は還暦祝いってことで、その後の衣装もずっと赤を基調にしていた。
第二部では黒いロングシャツの脇腹あたりに縫いつけられた赤いシフォンのスカーフみたいなやつがひらひらと靡いていた。
終始クラシックなデザインのものしか身につけない宮本にしては随分と珍しい衣装だなと思ったら、やっぱ着ていて落ちつかなかったのか、二曲ぐらいで着替えて、ふつうの黒の上下に戻ってたのがおかしかった。そのときもネクタイは赤だった。
でもってアンコールは全身赤! 赤いスーツに赤いシャツ、赤いネクタイ。ただ靴だけが黒い(京極堂の憑き物落しの衣装と逆!――なんて思うのはエレカシファンで俺だけ?)。靴もエナメル製で、光を反射してぴっかぴかだった。
さすが六十周年。いままでにないお色直し四回は――趣味のよしあしはよくわからないけれど――過去最高にレアだった。
その一方で音楽自体に関しては、とてもオーソドックス。二曲目に『漂う人の性』を持ってきたときには、エレカシの曲を積極的に取り入れたキャリア総決算的なステージになることを期待したのだけれど、終わってみればレアだったのはそれとラストナンバーくらい。あ、あと「実は歌手デビュー五十周年です」という説明につづけて、縦型サイネージに映し出されたアニメの少年と並んで歌った『はじめての僕デス』くらい(ふたたびこの曲を生で聞くとは思わなかった。こうなると将来的にまだまだ聴く機会がありそうな……)。
いずれにせよ、それらを除くと、あとはソロのド定番って感じだった。バースデイ・ライブでここまでスタンダードな宮本を感じるセットリストって逆にレアかもって思った。六十歳になった最強の自分を見せたいという意識の表れだったのかもしれない。
バンドは小林武史、名越由貴夫、玉田豊夢、須藤優というお馴染みの面々。なので音作り的にもおなじみの安定感。宮本がアコギを弾く曲がいつもより多かった気がしたけれど、でも最初だけ弾いてあとは放り出しちゃうパターンがほとんどで、実質的には弾いてないも同然だった。ギターはもっとちゃんと弾いて欲しいぞ。
新譜『I AM HERO』が出たばかりなので、そのアルバムに収録された新曲がどれだけ聴けるかも注目ポイントだったわけだけれども、初披露された新曲は『愛を抱きしめろ』一曲だけだった。公演終了後にアリーナ・ツアーのスケジュールが発表されたので、新曲はそちらで聴いてくださいってことだろう。
ちなみにこの曲は第二部の二曲目(『夜明けのうた』の次)に演奏された。宮本には珍しいジャングル・ビート(それともセカンド・ライン? 違いがよくわからない)のこの曲のイントロが鳴った途端、座っていたうちの奥さんがすっと立ち上がった。最近は腰が悪くて率先して立ったりしないのに珍しいなと思ったら、本人曰く、あのイントロを聴いたら身体が勝手に反応しちゃったんだそうだ。ニューオリンズ愛あふれててすごいなって思いました。
すごいといえば、『over the top』だったかの映像演出――割れたガラスの万華鏡みたいなやつが回転しながら大小様々なサイズで宮本の姿を映し出すやつ――もすごいと思った。さすがAI時代。リアルタイムであの映像を作る演算能力って、もやは理解の範囲外だ。プログラマとしての引退の日近し。
あと、アンコールの最後だったか、スクリーンに『I love 人生!』のアートワークを模した六十本の蝋燭が映し出されて、それを宮本がオーディエンスと一緒に吹き消す(ふりをする)というフレンドリーな余興があった。ステージを横から眺める形だったせいか、映像系の演出に関しては、印象に残っているのはそれくらい。
物理的なステージセットだと、第二部の始まりの『夜明けのうた』で、花道のサブステージが一メートルくらい持ち上がったのがレアだった。最近のアーティストではありがちだけれど、宮本もいまやこういう演出しちゃうんだって思った。
でも宮本さんの場合、複数のスポットライトに照らされたそのステージから、歌の途中で降りてしまう。無人のステージでマイクスタンドだけがスポットライトを浴びている風景は、なんかちょっと間違っている気がした。でもまぁそういう自由気ままなところも、らしいっちゃらしい。
そういや、この日のライヴはいちばんステージに近い席が三万円もしたので(お土産に虎屋の羊羹がもらえたらしい)、そのことに対するお礼の意味を込めてか、宮本が客席に降りていって、花道のまわりを徘徊するシーンが二度三度あった。まぁ、前にもやっていた気はするけれど、今回はちょっと多めな気がした。
前回、前々回はいまいちだったようなことを書いてしまったけれど、今回は最初から還暦祝いという特別な回だったので、こちらのご祝儀気分も手伝って、とくに不満に思うこともなく、楽しく観させてもらった。今回は『rain』の口パクにもつべこべいわない。
でもって、なによりよかったのがラスト・ナンバー。
アンコールで『冬の花』、『P.S. I love you』という、〆の定番中の定番って二曲を聴かせて、これで終わりかと思ったそのあとに。この日はもう一曲やってくれた。
それがなんと――エレファントカシマシの『RESTART』~!!!!
六十歳になったその日の最後に「再出発!」って歌って終わるというね。
こんなカッコいい締め方ってある?
やっぱ宮本浩次は六十になってもなお特別だと思わせてくれた最高の一曲だった。
宮本、お誕生日おめでとう!
(Jun. 24, 2026)

















