小石川近況
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更新履歴
2024-07-27 | 本 | 『覗き小平次』 New! |
2024-07-24 | 音 | 『ヨルシカLIVE「月光」』 |
2024-07-22 | 蹴 | J1 第24節・鹿島-F東京 |
2024-07-20 | 本 | 『嗤う伊右衛門』 |
2024-07-18 | 蹴 | J1 第23節・横浜FM-鹿島 |
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覗き小平次
京極夏彦/角川文庫
京極夏彦の江戸怪談シリーズ第二弾。題材は山東京伝の『復讐奇談安積沼』。
この三部作はどれもギスギスした人間関係が最後に凄惨な結末を迎えるものばかりで、心安らぐところがほとんどないので、おもしろいとは思うものの、なかなか大好きとまではいえない。
そんな中、あえてどの作品が好きかと問われれば、僕はこれと答える。
まぁ、序盤はちょっとつらい。小平次は押入れの中にこもったまま、内縁の妻のお塚に一方的にののしられてばかりだし、多九郎、玉川歌仙、動木運平らの脇役も誰ひとり共感を呼ばない。そんな人たちが繰り広げる愛憎劇(?)が楽しいわけがない。
でも後半。登場人物全員の運命を左右する事件がまき起こり、その結果として小平次の幽霊話が持ち上がったところから、物語が急激に展開する。でもって、意外性あふれる事件の真相があきらかになり、血みどろのクライマックスに帰結する。
この作品の場合、事件の中心にいる小平次が幽霊の役しかとりえのない大根役者だというのがポイントだ。
『嗤う伊右衛門』の伊右衛門と『数えずの井戸』の青山播磨はどちらもが侍だったから、クライマックスで彼らの白刃が事件の幕をひく展開には必然性があった。
でもこの作品は違う。能なしの小平次には事件の幕引きなど、
さてこれでどう決着させるのか?――という疑問に、京極夏彦はとりあえず納得のゆく形で答えてみせた。
『嗤う伊右衛門』では民と伊右衛門の最期があいまいだったし、『数えずの井戸』でも菊と綺羅の最期がきちんと描かれていなかったため、すっきりしない読後感が残ってしまったのに対して、少なくてもこの作品のカタストロフには疑問の余地がない。その点がほかより読後感がよい理由のひとつだと思う。
なおかつ、主人公一家のお家断絶で終わる他の二作品と違って、この作品では最後に生き残って、その後も生活を営む人たちがいる。決して救われた話ではないのに、それだけでもなんとなく救われた気分になる。
基本殺伐とした話なのに、小平次の幽霊話にはどことなくとぼけた味があるのもよい。悲劇の中に混じった、ほんのわずかなユーモアの感触。それが僕にとってのこの作品の最大の魅力だった。
巷説百物語シリーズとしては、幽霊話の仕掛け人(?)が事触れの治平であり、なおかつ治平と又市との出会いが語られている点で、意外と重要な作品ではと思います。
次の『数えずの井戸』については昔書いた文章が残っているので、巷説百物語の再読シリーズもこれにておしまい。次はいよいよ『了巷説百物語』だっ!
(Jul. 21, 2024)
ヨルシカLIVE「月光」
ヨルシカ / 2022
いまさらだけれど、二年前に出たヨルシカ通算二枚目のライヴ映像作品。
新型コロナ下でリリースされた前作の『前世』は水族館を舞台に無観客で収録されたイレギュラーな作品だったのに対して、今回は観客を入れた2022年のツアー映像を収録したもの。
つまりヨルシカのライヴが普通に観られる初の映像作品ということになるのだけれども――。
このライヴがちっとも普通じゃなかった。
いきなりn-bunaの詩の朗読から始まり、随所に同じような詩の朗読をインサートしつつ、最後も詩の朗読で締めるという構成。
まさに詩人n-bunaの趣味性が全方位で解放された内容だった。
語られているのは『だから僕は音楽を辞めた』と『エルマ』の二枚のアルバムで描かれたエイミーとエルマの物語。それを音楽とポエトリーリーディングのコラージュで再現してゆく。
言葉を大事にする詩人としての姿勢は映像表現にも反映されている。
全編にわたり、suisの歌に合わせてn-bunaの手書きらしき歌詞がずっと表示されている。ある部分はスーパーインポーズで、ある部分はステージの演出映像の一部として。それがランダムに入れ替わりながら、suisの歌に寄り添って、その歌の解像度を高めてゆく。
顔出しNGで、n-bunaとsuisのみならずバンドメンバー全員、映るのはシルエットのみなのに、音楽と朗読と映像が混然一体となった演出の妙で、まったく飽きさせない。
いまや時の人といった感のあるキタニタツヤが一度も素顔をさらさないまま、一介のベーシストに徹しているのもレア感を煽ってくる。
すでに何度もライヴを観てきたずとまよと違って、いまだにヨルシカは一度も生で観たことがないこともあって、隅々まで丁寧に演出が施されたそのライヴ映像はとても刺激的だ。おかげで何度も繰り返し観たくなる。
いま現在もっとも映像作品のリリースが楽しみなバンドはヨルシカかもしれない。
この秋に出る次の映像作品『月と猫のダンス』も楽しみにしてます。
(Jul. 24, 2024)
鹿島アントラーズ2-1FC東京
J1・第24節/2024年7月20日(土)/カシマサッカースタジアム/DAZN
チャヴリッチがひさびさにスタメン出場!――と喜んだのもつかの間。
前半わずか10分たらずで足を痛めて途中交替。あぁ、サッカーって得てしてこういうもんだよねぇ……。
ということで、そこから先は仲間を入れて、前節と同じメンバー構成で戦ったFC東京戦。いきなりトラブルで始まった試合だったけれど、結果的には2-1で勝ててなによりだった。
先制点は前半30分の名古。柴崎のスルーパスを受けて中央でフリーになった優磨がドリブルで攻め上がり、左サイドの仲間へと展開。仲間からの折り返しのクロスを優磨がスルーして師岡がシュート。その跳ね返りを名古が右サイドの角度のないところから落ち着いて決めた。キャプテン柴崎が起点となって、攻撃的なポジションにいた全員が絡んでの見事なカウンター攻撃だった。
でも先制してもそのままでは終わらないのが今季の鹿島。この日も前半残り5分で同点弾を浴びてしまう。
ロングボール一本でDFラインの裏を取った遠藤渓太が、こちらも角度のないところから思い切りよく打ったシュートが植田にあたって微妙にコースが変わってゴールイン。このところ前半の終わりに失点することがが多いのは今後の課題だ。でもまぁ、あれは積極的にシュートを打っていった遠藤が偉かった。
勝ち越しゴールは後半すぐ。安西のロングボールが起点となったカウンターから、最後はゴール前の混戦に絡んだ濃野が見事に沈めた。
濃野は今季6ゴール目で、柳沢が持っていたルーキーの最多ゴール記録を更新したとかなんとか。この分だと来年あたり海外からオファーが来ちゃいそうだよなぁ……。
移籍といえば、FC東京は海外移籍が決まった松木玖生がチームを離脱したばかりで、レンタル移籍中の荒木も出られないし、若きチームの柱をふたり欠いた東京には最初から分が悪い試合だったんだろう。
そのほかだと小泉慶がキャプテンマークをつけていたのがちょっとしたサプライズ。あと、残り5分を切ってから3枚替えで、森重、長友が出てきたのにも驚いた。負けているのになぜDFのてこ入れ? クラモフスキーの謎采配だった。
一方の鹿島にとってのサプライズは、後半28分に柴崎にかわって三竿健斗が出てきたこと(そのほかの途中出場は樋口、藤井、徳田)。先週移籍が発表されたばかりでもう彼のプレーが観られるとは思わなかった。
チャヴリッチが離脱したことで、なおさら三竿の存在意義が高くなった気がする。そういやミロサヴリェヴィッチも故障したまま戻ってこないしなぁ……。パレジも出番が少ないし、今年は鹿島の新外国人にとって外れ年みたいだ。
試合の翌日には松村の東京ヴェルディへのレンタル移籍も発表された。あぁ、期待の若手が次々と流出してゆく……。
(Jul. 22, 2024)
嗤う伊右衛門
京極夏彦/角川文庫
『了巷説百物語』を読み始めたら、一話目がいきなり『数えずの井戸』の後日談だったので、こりゃいかんと思って、急遽こちらの長編三部作も読んでおくことにした。
ということで、有名な怪談を京極ワールドに再構築してみせた江戸怪談シリーズ第一『
お題は四谷怪談で、ヒロインは病気のため顔面に醜い疱瘡のあとが残るお岩さん。彼女の父親・田宮又左衛門から娘の縁結びを頼まれた又市が、知りあいの浪人・伊右衛門を斡旋したことから悲劇の幕があく。
各章には登場人物の名前がつけられていて、それぞれの章でそのキャラの人となりや事件への関わりあいが描かれてゆく。でもって、物語の進行に従って、既出の人物名がべつの肩書や苗字を冠されて再登場する。
その第二章のタイトルが『小股潜りの又市』であり、最後から二番目の章が『御行の又市』だった。
そう、これこそが小股潜りの又市が初登場する巷説百物語シリーズの原点――ヒロアカ風にいえば「オリジン」――なのだった。そんなこと、すっかり忘れていた。
まぁ、とはいえこの作品の時点では、いまだ巷説百物語のシリーズが始動していないこともあって、本作の又市は怪談話の仕掛け人というよりは、自分が絡んで起きた悲劇に翻弄されるただの関係者っぽい。
もしかしたら後日、裏で手をまわして民谷家で起こった事件を怪談に仕立てたりしたのかもしれないけれども、この作品中にはとくにそれらしい説明はない。
ということで、又市こそ出てくるけれど、巷説百物語シリーズとの結びつきはそれほど深くなかった。
それでも又市の過去にまつわるエピソードが描かれているし、『了巷説百物語』にもわずかばかりだけれど、この事件に関する言及があるので、いちおう読みなおしておいてよかったとは思う。
四谷怪談を京極夏彦が独自の解釈により再構成したら、いびつな愛と殺戮の物語になりましたと。――そんな作品。
(Jul. 20, 2024)
横浜F・マリノス4-1鹿島アントラーズ
J1・第23節/2024年7月14日(日)/日産スタジアム/DAZN
やはり佐野海舟が抜けた穴がでかいのか――。
という文章を書こうと思っていたら、その海舟が性的暴行容疑で逮捕されてしまった。いったいなにをしているんだか……。
この試合に勝って連敗を止めたにもかかわらず、キューウェル監督は解任されてしまったし、試合のあと3日ばかりサボっていたら、世界の様相がずいぶん変わってしまったみたいな気分になっている。
いやしかし。マリノスは4連敗中だというのでシーズン・ダブルのチャンスかと思っていたのに、やっぱJリーグはそんなに甘くなかった。先制したのにこてんぱんにされてしまった。
この日のスタメンは、早川、濃野、植田、関川、安西、柴崎、知念、師岡、仲間、名古、優磨の11人。つまり先月の固定スタメンから移籍した海舟をはずして、かわりに柴崎を入れた形だった(途中出場はチャヴリッチ、藤井、樋口)。
現時点ではこれがもっともポポヴィッチが信頼できるイレブンなんだろうから、期待できるかと思ったのに、残念ながら駄目。
まぁ、セットプレーから知念がヘディングで今季初ゴールを決めて先制したときにはお~、ようやく知念が決めた! これはいけるか!――と思ったものの、先制しても守り切れないのが今年の鹿島。この日も前半のロスタイムに同点弾を浴びてしまう。
早川がゴール前に放り込まれたロングボールをジャンプして弾きだそうとしたところ、ボールが敵にあたってゴール前に詰めてきていた天野に渡ってしまった。これを天野がきっちりと決めて同点で前半終了。
リプレイでみると、早川が触っていなければ、そのままゴールラインを割っていたっぽいので、まぁ、早川のミスといえばミスかもしれない。でも今季は彼のファインセーヴに救われたシーンも多いので、ああいうプレーで彼を責める気にはなれない。まぁ、アンラッキーだったということで。
そういう意味では後半7分に許した逆転ゴールも同じ。敵の右CKからニアのエドゥアルドが頭でワンタッチしてファーに流し込んだボールがポストにあたってゴールインしてしまった。あんなの狙ったってできない。守りようもない。
まぁ、ここまでの2失点は運がなかったから仕方なし。
駄目なのはそのあとの2点。エウレルに個人技で決められた3点目はあまりにあっけなかったし、後半ロスタイムのラストプレーでマイボールをロストしたところからフィニッシュまで持っていかれた4点目も無駄すぎる(決めたのは途中出場の植中という選手)。この2点に関してはチームとして集中力を欠いていた感が否めない。
今季ここまでノーゴールだったエドゥアルドとエウレルに初ゴールを許して、前半後半のアディショナルタイムに1点ずつ奪われるって……。
なにそれ? 伝統の鹿島が泣いているぜ。
ここまで守備が脆いとやっぱり海舟の抜けた穴が……って気になる。海舟と柴崎のトレードオフだったら守備力が下がるのは致し方ない。あとはどれだけ攻撃力のアップが見込めるか、だけれども、残念ながら現時点ではプラマイでマイナス寄りの印象。
まぁ、三竿健斗の復帰が発表されたので、彼が戻ってくれば守備面はそれなりに改善されるんだろう。あとは柴崎がこの先キャプテンらしい活躍を見せてくれることを願うばかりだ。
(Jul. 18, 2024)