小石川近況
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更新履歴
2023-11-29 | 本 | 『薬屋のひとりごと3』 New! |
2023-11-27 | 蹴 | J1 第33節・川崎-鹿島 |
2023-11-25 | 映 | 『名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊』 |
2023-11-23 | 映 | 『PLUTO』 |
2023-11-21 | 映 | 『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』 |
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薬屋のひとりごと3
日向夏/ヒーロー文庫/主婦の友社/Kindle
現時点でマンガ(スクエニ版)で読めるのがこの巻に収録されたエピソードまでで、そのマンガの切りが悪かったので、その結末を知りたくて――あとそのつづきも気になって――こればっか読んでるのもどうなんだ? と思いつつも、次の四巻までを一気読みした。
前に書いたように、この小説版にはだいたいマンガ四冊分のエピソードが収録されている。物語的にはほとんど一緒なんだけれど、明確に違うポイントは、小説だとそのマンガ四巻分のエピソードがひとまとまりで、連作っぽいつながりを持っていること。
この第三巻では「序話」と題されたプロローグで壬氏(ジンシ)の少年時代の思い出が描かれ、「終話」と題したエピローグで彼の本当の名前があきらかになる。はじまりと終わりが明確に対となっている。マンガにはこういう区切りはなさそうな気がする(マンガではまだこの巻の結末の部分は読めていないんだけれども)。
まぁ、壬氏の正体は第一巻の阿多(アードゥオ)にまつわるエピソードで――猫猫(マオマオ)の推察という形ではあれ――明かされたも同然だったりするけれど、この巻でようやく公式に認められた形になるわけだ。
でもって、クライマックスともいうべき最後の『狩り』編では、そんな壬氏の暗殺未遂事件が起こり、その結果として彼が宦官ではないことを猫猫が知り、ふたりの関係がなにやら艶めかしいことになる。
前の巻では猫猫の出生の秘密が明かされ、この巻では壬氏の素性があきらかになって、ようやくシリーズの主役二人のキャラクター属性と関係性がはっきりとした。
ここでいったんやめると切りがいいかなと思いつつ、ついもう一冊手を出したら、その次の巻がすごいことに――。
(Nov. 26, 2023)
川崎フロンターレ3-0鹿島アントラーズ
J1・第33節/2023年11月24日(金)/等々力陸上競技場/DAZN
今季J1のいちばんのサプライズは川崎の低迷だった。
去年まで無双と呼ぶにふさわしい強さだった川崎が、まさか一度も優勝争いに絡むことなく一年を終えようとは……。
だって前節までの成績が12勝12敗8分。勝率ジャスト5分だよ?
あの川崎がそんなにも負けようとは夢にも思わなかった。
今年も鹿島にとって天敵なのは変わらなかったので、なおさら信じがたい。なんでそんなに負けてる相手に今年もダブルを食らうかなぁ……。
代表ウィークがあったため、二週間ぶりとなったこの試合。
鹿島のスタメンは早川、須貝、植田、関川、安西、海舟、ピトゥカ、松村、仲間、知念、優磨という11人だった。
古巣・川崎との対戦ということで知念のスタメン起用は予想通りだし、願ったり叶ったりだったけれども、あとのふたり、松村と須貝のスタメンは意外性があった。松村はかわりに樋口をはずしての起用だったから、なおさらだ。
松村は五輪代表帰りということで、モチベーションの高さを買ってのことだったのかもしれないけれど、でも樋口のセットプレーは今年のストロング・ポイントだよ? 天敵相手にそれを使えなくしてどうする。
須貝の起用は彼のコンディションが上がってきたからだと説明しているけれど、山梨で前半戦のほぼ全試合に出場している選手が、移籍後にコンディションを崩したとか、ちょっと考えにくいんだけれども。
僕の目には単に岩政が広瀬と彼と、どちらを使うべきか決めかねているだけのようにしか映らない。
結果として難敵相手にスタメンに起用された須貝はミスで2失点に絡んでしまった。二ヵ月近く出番を与えていなかった選手を、こんな難しい相手にいきなりぶつけるのはどうなんだ。連係不足やら試合勘不足で、最高のプレーができなくても仕方ないと思うんだけれど。なのでミスは残念だけれど責める気にはなれない。
後半開始から関川をさげて昌子を入れた理由にしても、試合後のインタビューで質問を受けた岩政は、まともに答えられていないし、彼の采配や言動って、どうにも合理性を欠いている気がして仕方ない。大卒の理論家というイメージにもかかわらず、じつはこの人、すごく感覚的で、あまり頭がよくないんじゃないだろうか。
実際にはどうなのかわからないけれど、そう思えてしまうのが残念だし、本人にとってももったいないよなぁと思う。
対する川崎については、なぜ低迷しているのか不思議だったけれど、この試合でFWの選手たちのスタッツを見て、あぁなるほどと思った。
故障などで出番が少なかったのかもしれないけれど、レアンドロ・ダミアン、マジーニョが1得点ずつ。小林悠も4点だし、チーム最多はFWではなく、MF脇坂の9点だ(この日のPK含む)。このゴール数ではさすがに優勝争いに加われなくても仕方ないかなって思った。
でも、そんな川崎にこの日もアントラーズはこてんぱんにされてしまう。
今季1ゴール(しかもPKのみ)というレアンドロ・ダミアンになぜに2ゴールも許すかなぁ……。それもあんなに見事に。
前半の失点は右サイドの登里からマルシーニョへのパスを、須貝が足を投げ出して止めようとするも触れず。そのままフリーとなったマルシーニョが入れたクロスにレアンドロ・ダミアンがピンポイントであわせた。
後半の2点目もファーからマルシーニョへのパスに、須貝が遅れてチェックにいって足を滑らせてすっころがり、ふたたびフリーでアシストを許してしまう。
まぁ、すべって転んだのはアンラッキーだったけれど、須貝は身体が小さいのでプレーが軽くてフィジカル勝負に弱い印象なのは課題だろう。
駄目押しの3失点目は早川が与えたPK。ペナルティ・エリアの外を向いていたレアンドロ・ダミアンをうしろから倒してしまったのがもったいなかった。
でもまぁ、今年は早川のファイン・プレーに幾度となく助けられているので、いいプレーについてまったく取り上げてこなかったのに、ミスばかり責めるのも酷だ。まだ若いんだし、これも勉強になったろう。
ということで、3失点はどれもミス絡み。試合自体の印象はスコアほどひどくなかったので、結果を分けた差はそんなに大きくないと思う。来年こそはマジで一矢報いてもらいたい。それにしてもこんなに川崎が低迷した年でも勝てないとは、本当に呪われているんじゃなかろうか。
裏ではこの日の試合でF・マリノスが引き分け、翌日神戸が勝って、両チームの勝ち点の差が4に広がったことで、最終節を残してヴィッセル神戸の初優勝が決まった。大迫、おめでとう!
残留争いでは湘南との直接に負けた横浜FCの降格がほぼ決定。17位の柏と勝ち点の差が3だから、最終節で並ぶ可能性はあるけれど、得失点差が12もあるのではいかんともしがたい。しかも最終節の対戦相手は鹿島だし……。
神戸が吉田孝行監督のもとで優勝したのを見て、岩政にももう一年くらい猶予を与えて見守るのもありかもという気がしてきたけれど、彼の去就は最終節の結果いかんかもしれない。最下位の横浜FCにさえ勝てないようだと、小泉社長の堪忍袋の緒もそろそろ限界だろうから。
(Nov. 26, 2023)
名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊
ケネス・ブラナー監督/ケネス・ブラナー、ティナ・フェイ/2023年/アメリカ/Disney+
ケネス・ブラナー監督・主演による名探偵ポアロ・シリーズ第三弾となるこの作品は、シリーズきっての異色作だった。
そもそも『ベネチアの亡霊』ってなにさ? 僕はそんなクリスティーの作品を知らない。
原作は『ハロウィーン・パーティ』だというけれど、原作の舞台はベネチアじゃないよな? そもそも僕が知っている『ハロウィーン・パーティ』は嘘つきの女の子がバケツで溺死させられる話なんだけれども。
この映画で殺されるのは中年女性の降霊術師じゃん!(演じているのは『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』でアカデミー賞を受賞したミシェル・ヨー)
あまりに違いすぎだろー。
意訳がすぎて、これをクリスティー原作と呼ぶのは間違いなんじゃないかってレベル。おかげでどういう事件なのかも、犯人が誰なのかもよくわからない。
いや、終わってみれば犯人は原作と同じだったけれど、でも原作と違ってなぜその人が殺人を犯したのか、僕にはさっぱりわからなかった(酒を飲みながら観ていたせいかもしれない)。
ほんと、なんなんだこの映画?
ハロウィーンの夜のおどろおどろしい雰囲気を背景に殺人事件が起こるという映像作品としてのムードは決して悪くないんだけれど、これをしてクリスティー作品を名乗るのにはちょっと難ありではと思ってしまう。
このシリーズはもとよりリミックス感が半端なかったけれど、今作においてはリミックスが過ぎて原型をとどめていない。いっそ原作とどこが同じかを探しながら観たら楽しいかもしれない。これはそんな作品。
(Nov. 19, 2023)
PLUTO
川口俊夫・監督/原作・浦沢直樹、手塚治虫/2023年/日本/Netflix(全8回)
浦沢直樹が『鉄腕アトム』のエピソードのひとつである『史上最大のロボット』を大胆な解釈でリメイクしたマンガ『Pluto(プルートゥ)』のアニメ版。
僕がこれまでシリーズもののアニメの感想をまったく書いていないのは、全編をきちんと観た作品がほとんどないからで、アニメは食事をしたり、酒を飲んだりしながら、ながらでだらだらと観るのが習慣になってしまっているので(それはそれで失礼な話だとは思うのけれど)、きちんと観てないものについて、つべこべ言っちゃいけないだろうと思ってのこと。
この作品についてはあの浦沢直樹のマンガがアニメでどんな風に再現されるのか興味があったから、配信が始まってすぐ、それなりにちゃんと観たので、とりあえずなんか書いとかなきゃって思った。
まぁ、とはいっても、書けることといったら、浦沢直樹がすごいのひとことなんですが。
だってアトムにせよ、お茶の水博士にせよ、天馬博士にせよ、みんなちゃんとそれらしいのがすごい。アトムの物語世界が、浦沢直樹のあの絵のタッチでしっかり再現されているという、その事実にただひたすら感心してしまう。
ぜんぜん覚えていなかったけれど、ウランの通う小学校の校長役でヒゲ親父が出てきたのにはびっくりだった(マンガ版にも出てましたっけ?)。あー、ヒゲオヤジじゃん! って。ひとめ見ただけでそれとわかる。画風は浦沢直樹のキャラなのにちゃんとヒゲオヤジになっている。すげー。
アニメも気合が入っていて、CGをまじえた第一話冒頭の山火事のシーンとかすごいグレードが高くてよかったのだけれど、いざ物語が始まってゲジヒトの登場シーンになったら、いささか作画の質が落ちて、あれ?って感じになってしまった。
ネトフリがバックについていても、やはり全編にわたって宮崎駿や庵野秀明ほどの作画の質を徹底するのは難しいということなのか……。
僕があまりアニメを好まないのは、そういう作画に対する不満を感じたくないからのような気がする。マンガで読めるならばそっちの方がいいやって思ってしまう。マンガだと絵の粗さも作品の個性になるけれど、アニメだと手抜きに思えてしまう。
まぁ、それでもこのアニメはいい出来なのではと思います。少なくてもこの作品にはデフォルメ三頭身キャラが出てこないのがいい(原作にないのだから当然か)。それだけで最近のアニメのなかではいちばん気持ちよく観られた。
僕がアニメが好きになりきれないのは、自分がアニメーターだったら絶対にやりたくないと思う、マンガ直伝の安直なデフォルメ表現があたりまえのようにまかり通っている現状も大きいんだなと、これを観て思った。
そういえば、最近のアニメには珍しく、主題歌のタイアップがないのも、ロック好きな浦沢直樹らしくていい。俺の作品にいまどきの若者の歌などつけてくれるなという頑固親父の声が聞こえてきそうだ。
(Nov. 19, 2023)
SHE SAID/シー・セッド その名を暴け
マリア・シュラーダー監督/キャリー・マリガン、ゾーイ・カザン/2022年/アメリカ/WOWOWオンデマンド
ニューヨークタイムズがミラマックスの創始者でハリウッドの大物プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインの数知れぬセクハラ被害を暴いたという実話をもとにした作品。
冒頭、キャリー・マリガン演じる主人公がトランプ大統領候補のセクハラ疑惑を追及して果たせず、出産のため休職して……みたいな流れになっていて、その部分が説明不足でいまいちよくわからなかった。あれ、これってハリウッドのプロデューサーを告発する話じゃないの?――って思った。
その後、ゾーイ・サガンという女優さんが演じるもうひとりの主人公がハリウッドのセクハラ疑惑を追うことになり、そのパートナーとしてマリガンが復職したあたりでようやく話についてゆけるようになった。
僕はこの事件をほとんど知らなかったけれど、被害者にはアシュレイ・ジャッド(『恋する遺伝子』)、ローズ・マッゴーワン(『プラネット・テラー』)、そしてグウィネス・パルトロウといった、僕も観たことがある映画の主演女優たちも含まれていたとのことで、そのうちジャッドは本人が出演している。パルトロウは声だけの出演だけれど、電話の声は本人らしい。彼女たちにしてみれば封印したままにして思い出したくもない過去だろうに。勇気をもって出演した彼女たちに敬意を。
男性上位な芸能界の闇に果敢に立ち向かった女性たちの話ということで、監督も女性だし、新しい男女平等の時代の到来をつけるような秀作だとは思うのだけれど、いかんせん、セクハラを受けたり、パワハラで仕事を奪われた女性たちの証言から、クソ野郎の悪行をあぶりだして記事にするところまでを描いて終わるので、観終わったあとにすっきりと気分よくはなれない。悪党をやっつけた痛快さよりも、被害者の味わった苦しみが強く印象に残ってしまう。
勧善懲悪をエンタメとして描いたりせず、淡々と女性たちの苦しみや悲しみをすくいあげている。良心的ではあるけれど、それゆえとても苦味の効いた一本。
(Nov. 19, 2023)