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プロジェクト・ヘイル・メアリー 上 日出る国の工場(新潮文庫)

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エミリー、パリへ行く シーズン5

ダレン・スター制作/リリー・コリンズ/2026年/Netflix(全10話)

 前のシーズンではそろそろ終わってくれよと思ったこのドラマ。

 それからしばらくあいたせいか、今回はなんだかふつうに楽しく観れてしまいました(いい加減)。

 前回の最後に話が持ち上がったローマ支社の話は、今シーズンの前半だけであっけなく決着。後半からはふたたびパリを舞台に物語が展開する。エミリーもまたイメチェンした。今シーズンのヘアスタイルはショート。

 あと意外だったのが、ガブリエルが本編から離脱したこと。店のオーナーのアントワーヌ(ウィリアム・アバディー)との意見の相違から店をやめて、なんと大富豪のヨットの専属シェフとして世界旅行に随行することに……。

 かわりに前シーズンでエミリーの恋人になったイタリア人のマルチェロ・ムラトーリ(エウジェニオ・フランチェスキーニ)との関係がシーズン通してメインになっている。仕事も彼が実家から独立して立ち上げる新ブランドの話が中心。

 エミリーの元カレのアルフィーも出てくるけれど(結婚したんじゃなかったでしたっけ?)、すでにエミリーとは友達ということで落ち着いたらしく、今回ふたりのあいだにはなんの波風も立たない。エミリーが三角関係に悩んでいないのって、シーズン初のような気がする。

 ただしそのアルフィーが今度はミンディーに惚れて、彼女と復縁したニコラ(ポール・フォーマン)との三角関係に苦しんだりしている(懲りない)。エミリーの上司シルヴィアは年の離れた若い愛人ができたと思ったら、それが訳ありな青年だったり。脇役たちのドラマもいろいろにぎやかだ。

 そういやミンディーのバンド仲間がどこか行っちゃって一度も出番がなかったけれど、彼女のバンドは解散したんでしたっけ? 断続的にぼんやりと観ているから、いろいろディテールの記憶が怪しい。

 前回マルチェロの登場とともに始まったイタリア・ローマ編は、このあともしばらくつづくのかと思ったら、今シーズンでもってあっさりと終了の模様。世界旅行に出たままシリーズから離脱するのかと思ったガブリエルの復帰がほのめかされて、ドラマは次のシーズンへ――。

 どうやら次回の舞台はギリシャらしい。

(Apr. 05, 2026)

幕末

司馬遼太郎/文春文庫/Kindle

幕末 (文春文庫)

 「暗殺だけは、きらいだ」とおっしゃる司馬遼太郎先生が、あえてその暗殺にまつわる幕末の数々の事件を描いた短編集。

 一遍目の『桜田門外の変』での井伊直弼の暗殺から始まり、清川八郎が殺され、陸奥宗光が坂本龍馬の仇討に加わり、そのほか大半は僕なんかは知らない人たち――でも明治の代に生きながらえて名前を残した偉人たち――による人殺しの話がつづいてゆく。その数、じつに十二編。

 司馬先生の作品って比較的温厚な印象があるのだけれど、これはそんなだからやたらと血生臭かった。

 体裁はフィクションだけど、いちおう史実にはのっとっているわけでしょう? 明治の世がこんな流血沙汰の果てに成り立っていて、しかも人殺したちがそのことで栄誉を得て、伯爵だなんだと持ち上げられていたと思うとなんともいえない。

 司馬文学では歴史的偉人たちがその威厳をはく奪される傾向が強い印象があるけれど、この本では多くの明治の偉人たち――とくに印象的だったのは桂小五郎、伊藤博文、井上薫あたり――が、けんもほろろな扱いを受けている。

 なかでもいちばんめだっているのが田中顕助という人。いくつかの短編に繰り返し登場するこの人――のちの田中光顕伯爵(知らない)――は、たまたま運がよくてに新政府に取り立てられて出世しただけの、とくになんの大義も才能もない凡人、みたいな、とほほな書かれ方をしている。

 こんなこと書いて子孫の人たちの非難を受けたりしないんだろうか?――とちょっといらぬ心配をしてしまった。

 まぁ、司馬先生はその人の残した『維新風雲回顧録』という本に解説を寄せているみたいだから、そこでもしかしたら田中氏本人が自らの人生を自虐的に語っていたりするのかもなとか思ったりした。

 とりあえず血生臭くはあれど、いろいろ興味深い事件が多くて、読みごたえのある本でした。

(Apr. 05, 2026)

水戸ホーリーホック1-1鹿島アントラーズ(PK:4-2)

J1百年構想リーグEAST・第9節/2026年4月4日(土)14:00/ケーズデンキスタジアム水戸/DAZN

 水戸ホーリーホックが昇格してきたので、J1で初めて実現した茨城ダービー!――でも結果はアントラーズのPK負けという、とほほな第9節。

 水戸とは毎年プレシーズンマッチで対戦していて――今年は百年構想リーグの変則日程のためか、はたまた水戸がJ1に昇格したからか、開催なしだった――水戸からすると鹿島はJ1でもっとも戦い慣れた相手だ。プレシーズンマッチの結果も直近の5年だけみれば成績は五分なので、もしかして楽な試合にはならないのかも?――と思ったらまさしくそういう試合になってしまった。

 この日の鹿島のスタメンは早川、濃野、植田、関川、溝口、三竿、柴崎、荒木、エウベル、レオ・セアラ、優磨の11人。途中出場は田川、松村、安西(祝復活!)、知念、樋口の5人だった。

 小川がベンチを外れて、かわりに溝口が左サイドに入った点だけが前節との違い。

 対する水戸のスタメンは知らない選手ばかり――というか、まじでひとりも知っている選手がいなかった。でも先制ゴールを決めた10番でキャプテンの渡邉新太、左SBの真瀬、PK戦でファインセーブをみせたGKの西川(ふてぶてしい顔して23歳)あたりは目立っていた。

 監督は去年新潟を序盤で解任された樹森大介氏。短期間で首になった上に知名度も低いのに、こうして次のチームを託されるんだから、きっとなにか持っているんだろう。実際にこの日は鹿島を相手に善戦してみせた。

 フォーメーションは水戸も鹿島と同じ4ー4ー2。いまどきJリーグでこの陣形どうしが対戦するのって珍しい気がする。

 でもって試合はホームの水戸のほうが断然いい入り方をした。鹿島は自陣に押し込まれてばかり。ようやく反撃をみせて、優磨が見事な崩しでアシストをみせるも、荒木がゴール前でフリーで打ったヘディングはポストに嫌われる。

 あれが決まっていればまた違う試合展開になっていただろうに……。荒木、なぜにあれを外す? 今大会ノーゴールで終わりそうな予感。

 対する水戸の先制点は前半34分。左サイドを崩されて、最後はゴール前にこぼれたボールを渡邊にどーんと決められた。

 前節につづいて関川のサイドを崩されて失点しているのは偶然ではないだろう。この日はキム・テヒョンがベンチ外だったけれど(代表帰りだから?)、次節はキム・テヒョンのスタメンに戻してくれると嬉しい。現状の関川はまだまだ信用できない。

 一方で、こちらも怪我から復帰して、去年の5月以来のピッチに立った安西は、途中出場ながら彼らしいプレーで好機を演出していた。コンディションが上がってくれば、左SBの第一候補に返り咲きそうな勢い。そうなると小川はどうなるんだって話だけれど。選手層が厚いのもなかなか悩ましい。

 1点のビハインドを負ったまま突入した後半は、14分に水戸のDFダニーロが2枚目のイエローをもらって退場になってしまったのがこの試合のポイントだった。どちらのカードもそれってイエロー? って感じだったから、ダニーロはお気の毒さま。

 数的有利になったことで、そこからは当然鹿島の流れにはなったものの、水戸が早々に5バックにして守りに入ったことで、その後は攻めても攻めてもなかなかその壁をこじ開けられない展開がつづいた。

 試合はそのまま後半ロスタイムへ――。

 さすがにこれは負けたか~、今季初黒星だ~、と思った最後の1分。左サイド深くをえぐったレオ・セアラが上げようとしたクロスが、止めに入った水戸のボランチ大崎の腕にあたってPK! これをレオ自身が決めて、最後の最後で鹿島が同点に追いつき試合終了となった。まさかの同点劇。これぞ鹿島というしぶとさだった。

 ただし、PK戦では最初の知念が止められ、次の植田が枠をはずして勝負あり。4本すべてを決めた水戸が勝ち点2をゲットした。

 水戸はPKを与えた大崎に最初のキッカーを任せたのがすごい。重責をものともせず、ちゃんと決めた大崎も偉かった。

 でも鹿島はなんでこんなにPK戦に弱いんだろう。早川、PK戦だといまいち頼りにならない。でもまぁ、内容的には完全に負け試合だったので、それでも勝ち点1を得たのはわずかながらの収穫だった。

 百年構想リーグもこれで一巡して、はやくも半分を消化。全チームと戦って一度も90分間で負けていないのは、東西両リーグ通じて鹿島だけだぜっ!

 この試合の出来は残念だったけれど、ここまでの成績は誇っていいはず。

(Apr. 06, 2026)

二人称

n-buna/講談社

書簡型小説「二人称」 ヨルシカ

 書簡小説はたくさんあるのに、実際に封筒に手紙を入れた形で出版された作品がひとつもないのはどうしてだろう?――と思ったヨルシカのn-bunaくんが、ならば自分で作ってやろうと書きおろした異色作。

 いざ作ってみたらあまりに製造コストがかかってしまって、なるほどこれでは誰にも作れないはずだと納得したらしいですが。本人が出版業の部外者だからこそ実現できたと語る怖いもの知らずな逸品。

 ものとしてはヨルシカのデビュー・アルバム『だから僕は音楽を辞めた』の初回限定盤についてきた手紙や写真の入った紙箱、あれをもっと本格的に展開して、音楽とは切り離した単品の作品に昇格させたよう作品だと思う。

 アルバム『二人称』の新曲の歌詞がすべて収録されているので、異色の歌詞カード的な楽しみ方もできる。ときにはワンフレーズに五線譜がつけてあったり、書き直したり反故にした部分もあって、n-bunaの創作の過程を垣間見られる点も興味深かった。

 物語は「無料で文章の添削をします」という広告をみた引き籠りの少年が、自作の詩を送って批評を依頼したところから始まる「先生」との往復書簡を、実際の封筒に入れて形にしたもの。

 やりとりは全部で三十二通。それが原稿用紙とその返信の便箋や同封された写真(実物ではなくそれ風のカード)と一緒に個々の封筒に入っている。

 手紙といっても少年が使っているのは原稿用紙だから、ふつうの手紙とはいえない。

 原稿用紙は一枚ずつ六折りにして重ねて封入されている。製本(?)の都合でこういう形になっているんだろうけれど、ふつうに考えると、封筒に入れる際には、原稿用紙なり便箋なりを束ねて折るものだから、モノとしての体裁は決してリアルに現実を再現できているわけではない。

 なので実際に読むとなると、封筒から出した手紙を一枚ずつ開いて読んでたたんで戻して、開いて読んでたたんで戻して、という形になる。

 そんな風に読むのは不自然な上にリズムが悪い気がしたので、僕は三通目くらいからは封筒から出したあと最初に全部開いて束ねてから読むようにした。そのほうが手紙を読んでるっぽくなるので。

 そもそも封筒に宛名とか書いてなくて、連番と日付が振ってあるだけってのも不自然じゃん?――という疑問にはちゃんと最後に答えが用意されている。その辺はさすがn-bunaくん。用意周到というか、仕掛けは上々、仕上げをご覧じろって感じ。

 いざ読んでみると、この形にしたからこそ味わえるサプライズがいくつも仕掛けてあるのがすごい。最初は往復書簡になっているのに、途中から返信がないものがつづいたので、どうしたのかと思ったら、そのあとにどっきり的な返信があったりする。全体としては純文学的なのに、その部分にはある種のサスペンスみたいな味わいがあった。

 手紙はすべて手書で、おそらくn-buna本人が書いているんだろう。往復書簡だから二人分を、筆跡を変えて、文字を色違いにする工夫も凝らしてある。

 書簡小説を実際に手に取れるリアルな形で提供するというコンセプトをこういう形で実現して見せた着想と行動力には脱帽するしかない。

 そもそも僕は「書簡小説なのになんで実際の手紙の形にしないんだろう?」なんてこれぽっちも疑問に思ったことがなかったし、原稿用紙にはひとマスに一文字を書くのが当然だと思って疑ったことがなかった。

 ところが、n-bunaは「原稿用紙が高いので枚数を節約したいから」といって、四百字詰めの原稿用紙にマス目を無視して自由に文章を書く。そういう常識に縛られない姿勢があってこそ、こういう作品が生まれてくるわけだ。

 節約したいならわざわざ原稿用紙なんて使わなきゃいいじゃん――という話は野暮だからなし。あえて原稿用紙を使うことに、ものを書く人間としての矜持や美学があるはずだから。

 この物語のなかで引用癖のある主人公の文学少年は、謎の年配者との書面での交流をへて、徐々に詩人として成長してゆく。

 引用というのは、対象となる作品の内容をみずからのうちに取り込んで、自分のものとしているからこそできる行為だろう。この作品に限らず、ヨルシカの音楽にも、彼が影響を受けてきた数多の作品の影響がみてとれる。

 それをきちんと昇華して、こういう作品の形にまとめあげてみせる才覚と労力には感心するしかない。読んだ本の内容をかたっぱしから忘れてゆく僕のような男にはとうてい真似ができない(これを読んで僕は自分の人生の最大の問題はこの記憶力のなさと学習能力の低さだなといまさらながら思った)。

 いやしかし、封書が三十通以上たばねられているので外箱がでかい(LPサイズ)。わが家は収納スペースに難ありなので、読む前には、いずれふつうの本としても再販されるかもしれないから、それを待とうかなとか思っていたんだけれど、活字にしたら作品の本質が失われてしまうから、n-bunaが出版を認めないかなと今は思う。

 いずれにせよ、本として読んだとしたら伝わらないニュアンスこそが肝って作品なので、興味があったらぜひ一度手にとってみて欲しいと思います。ちょっと高いけれど、一読の価値はある。

(Apr. 4, 2026)

ランゲルハンス島の午後

村上春樹・安西水丸/新潮文庫/Kindle

ランゲルハンス島の午後(新潮文庫)

 三月の月刊村上春樹は、安西水丸氏のイラストをフィーチャーした共著のエッセイ集。

 この本を読んでなにに驚いたかってその薄さ。

 デジタルで読んでいるから物理的なページ数がわからなかったもんで、わずか三日で読み終わってしまったことにびっくりした。

 あとから確認したら、文庫版はわずか百十二ページ。

 そりゃすぐに終わって当然だわ……。というか、一日で読み終えなきゃいけないボリュームじゃん。三日もかけてんじゃないよ俺。

 もうひとつ驚いたのがその内容。

 イラストが主役という位置付けなのか、一篇一遍が短め(たぶん文庫本だと二ページ?)で、ボリュームがない分、ほとんどがどうでもいい話に終始して、僕が苦手な『村上朝日堂』の感触にきわめて近かった。

 なにこれ、『村上朝日堂』とどう違うの?

 ――と思ったら、それもそのはず。

 巻末に添えられた安西氏のあとがきに「村上朝日堂画報」のタイトルで連載されていたものだとという紹介がありました。

 あぁ、そうでしたか……。

 連載時期は一九八四年からの二年間だというから、まさに『村上朝日堂』の最初の二冊と同時期の作品で、要するにカラー版の『村上朝日堂』って企画だったわけだ。

 でもまぁ、安西水丸さんの絵――エッセイ一篇ごとに静物画のイラスト二枚が最初と最後に添えられている――が素敵なので、それらをタブレットの大画面で眺められるだけでも、文庫よりもKindle版で読んでよかったかなと。

 そんな一冊。

(Mar. 31, 2026)



【相棒】
しろくろや

【Shortcuts】
音楽 作品 / ライブ / 会場 / 購入 / エレカシ
作品 / 作家 / 翻訳家 / 出版社 / 読了 / 積読
映画 作品 / 監督 / 俳優 / / シリーズ / ドラマ
蹴球 鹿島 / Jリーグ / 日本代表 / W杯

【新譜】
04/24Julia / Julia Cumming
05/01PEACHES! / The Black Keys
05/01Maitreya Corso / Maya Hawke
05/01They Came Like Swallows / Bonner Kramer/Thurston Moore
05/08Remember The Humans / Broken Social Scene
05/29The Boys Of Dungeon Lane / Paul McCartney
06/10I AM HERO 「俺と、友だち」盤 / 宮本浩次
06/10I AM HERO 「最高の日、最高の時」盤 / 宮本浩次
06/05I Built You A Tower / Death Cab for Cutie
06/26Bliss / Temples

【コンサート】
07/17HARRY & THE BIRTHDAY@SGC HALL ARIAKE
10/28BUMP OF CHICKEN@有明アリーナ
02/06BUMP OF CHICKEN@東京ドーム

【サッカー】
04/12[J1百年構想L 第10節] 川崎-鹿島
04/18[J1百年構想L 第11節] 鹿島-浦和
04/24[J1百年構想L 第12節] 柏-鹿島
04/29[J1百年構想L 第13節] 東京V-鹿島

【新刊書籍】
04/24『絵本百物語』 京極夏彦・竹原春泉・桃山人
05/21『マルドゥック・アノニマス11』 冲方丁
07/14『サリンジャー初期短篇全集』 柴田元幸・訳

【準備中】
04/03荒木飛呂彦の漫画術
04/04果樹園の守り手

【過去のコンテンツ】
Coishikawa Scraps Bootleg 2.0