サバイバー
チャック・パラニューク/池田真紀子・訳/ハヤカワ文庫NV
『ファイト・クラブ』の作者による長編第二作。
帯にある「この作家の伝道のために生きています」という担当編集者の煽り文句につられて、『ファイト・クラブ』と一緒に買った本。
これにつづく三作品(紙は絶版)も、Kindleのバーゲン期間に見つけてつい買ってしまったので、いまだ『ファイト・クラブ』も読まないうちから、僕のライブラリにはチャック・パラニュークの本が五冊もある状態だった。
で、いざ読んでみれば、『ファイト・クラブ』は正直なところ、それほど好みではなく、つづくこの作品も冒頭からいまいち物語に入り込めなかったので、読んだことのない作家の本をいきなりまとめ買いしたのはまちがいだったかと、ちょっぴり後悔していたのだけれども。
でも読み終えてみれば、これが意外とわるくなかった――というか、けっこうすごかった。『ファイト・クラブ』同様、僕にとっては共感のしにくい世界観ではあるけれど、小説としては好き嫌いを超越したパワフルさがある。
物語は航空機をハイジャックした語り手が、乗客をすべて降ろして、操縦士も脱出させてひとりきりになったあと、自動操縦にした飛行機の燃料が切れて墜落するまでのあいだ、フライトレコーダーに吹き込んだ録音だという設定になっている。
なぜ彼は飛行機をハイジャックして、ひとりで自殺しようとしているのか?
カルト教団の生き残りとして数奇な人生を歩んだ彼が、その状況に至るまでの道のりが、残りのページを通して描かれてゆく。
ハヤカワ文庫ではお馴染みの、登場人物の紹介ページにある名前はわずか四名。それもひとりとして本名とはいえない。
たったそれだけの出自のあやしいキャラを動かして、四百ページ強のボリュームで描き出される物語のイメージは、そのディテールの曖昧さに反して、とても鮮烈だ。
『ファイト・クラブ』につづけて、こういうパンチのある作品を書けるのだから、この人の作家としての力量は疑うまでもなさそうだ。
まぁ、それでもやはり、作風の好き嫌いは別として――という断りはついてしまうのだけれど。
(Jul. 20, 2026)

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