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最近の五本

  1. デッドプール&ウルヴァリン
  2. ルックバック
  3. マーターズ・イン・ビルディング シーズン1
  4. ラストマイル
  5. エミリー、パリへ行く シーズン4
    and more...

デッドプール&ウルヴァリン

ショーン・レヴィ監督/ライアン・レイノルズ、ヒュー・ジャックマン/2024年/アメリカ/Disney+

デッドプール&ウルヴァリン

 くっっっだらねーーー。
 『デッドプール』と『ウルヴァリン』、両シリーズをクロスオーバーさせた続編が、マーベル・シネマティック・ユニバースに組み込まれて、マーベルの最新作として制作されたというので、いまいち気乗りはしなかったけれど、とりあえず観ておこうかと思ったら、これがひどい出来だった。
 まぁ、くだらなさは『デッドプール』の十八番だから、くだらないってのは、ある意味誉め言葉なのかもしれない。
 でもこの作品のくだらなさは、前二作とそれとは違う。
 基本『デッドプール』は主人公の不死身性を盾にした、死者の尊厳を冒涜するような不謹慎なギャグが売りのコメディだった。人は虫けらのように殺されてゆくけれど、まぁこの作品の場合は確信犯的なんだろうし、そこでめくじらを立てるのもなぁって思ってしまうような作品だった。
 でもこの作品は違う。
 『LOGAN/ローガン』で死んだウルヴァリンの死体をデッドプールが掘り起こして大暴れする冒頭のシーケンスは、そんなデッドプールならではの不遜なギャグの代表だけれど、でもこの映画でデッドプールらしいと思ったのはそこだけ。
 それ以降、マルチヴァースを絡めて主人公ふたりの出逢いを描いたあたりから先は、最近のMCUシリーズに顕著な、ご都合主義にまみれたB級SFに堕してしまう。ギャグよりお涙頂戴に走ってしまう。
 この映画を観ると、マーベルが駄目になったいちばんの要因が、なんでもありのマルチヴァースの導入にあったことがわかる。なんでもできてしまうから、なにをやらせていいかわからなくなり、物語をうまくハンドリングできなくなっている気がする。
 アントマンをかたどった廃墟とかビジュアルとしてはインパクトがあったし、エマ・コリンという女優さんが演じる『X-MEN』シリーズの某重要キャラの妹も悪くない。クリス・エヴァンスのキャスティングもひねりが効いていて好きだ。
 でも全体的な出来がこれでは、そんなディテールばかり褒めたところでねぇ……。
 とにかく、メインとなる舞台造形が『マッドマックス』からの借りものだって時点で、マーベルがなにやってんだって話だ。
 なによりひどいと思ったのは、ウルヴァリンの娘ローラ(ダフネ・キーン)の扱い。
 ローラは『X-MEN』シリーズ最重要キャラの娘なわけですよ。次世代X-MENの中心人物でしょうよ。そうなってくれないと困るでしょうに。
 それをこの映画では、単なるモブのひとりにしてしまっている(かのウェズリー・スナイプやジェニファー・ガーナーも同列)。そこがなにより最低。
 冒頭に「『LOGAN/ローガン』のファンの人は気を悪くしないでね」みたいなエクスキューズがあったけれど、いや無理だって。いくらMCUのメインがアベンジャーズだといっても、アメコミ界で重要な地位を占めているはずのX-MENを軽く扱っていいわけがないでしょう?
 いやはや、本当にこの映画は残念すぎた。
 本気でもうこれ以上マーベル作品は観ないほうがいいんだろうなと思わされた一本。
(Nov. 26, 2024)

ルックバック

押山清高・監督/声優・河合優実、吉田美月喜/2024年/日本/Amazon Prime

ルックバック ルックバック (ジャンプコミックス)

 『チェンソーマン』の作者・藤本タツキによる書きおろしマンガのアニメ化作品。
 最近は原作の魅力を十二分に引き出した上で、さらなる魅力を加えてみせる素晴らしいアニメが多いけれど、これもそのうちのひとつ。それも出来は極上だ。正直なところ原作を読んだときの何倍も感動した。
 この映画、もとのマンガが単行本一冊の読み切りということもあって、劇場公開されたのに58分しかない。でもそうは思えないくらいに濃い。
 主人公の藤野はクラスで人気の女の子。学級新聞の四コママンガを担当していて、自分にはマンガの才能があると自負している(下手なのに)。
 そんな彼女に強力なライバルが登場する。あるときから彼女の作品と並んで学級新聞に載るようになった同級生のマンガは(内容はともかく)画力が桁違いだった。
 描いたのは引きこもりの京本。登校拒否で学校に来ないため、顔も知らないその同級生の才能にショックを受けた藤野は、負けてなるものかと、これを機にマンガの世界へとのめり込んでゆく。
 やがて訪れる二人の少女の出逢いはお互いの運命を大きく変えることになり……。
 この作品でとにかく印象的なのが、机に突っ伏して夢中でマンガを描く藤野のうしろ姿。全編にわたって何度も繰り返し描かれるその風景が、マンガという創作活動に没頭する一アーティストの孤独と恍惚を浮かび上がらせて、深く胸を打つ。
 こんなもの、好きにならずにいられるわけがない。
(Nov. 21, 2024)

マーダーズ・イン・ビルディング シーズン1

スティーブ・マーティン、マーティン・ショート、セレーナ・ゴメス・主演・製作総指揮/2021年/アメリカ/Disney+

 マンハッタンの高級マンションの住民である、老人ふたりと若い女性の凸凹三人組が、マンションで起こった自殺事件を他殺だと疑って、調査に乗り出すというクライム・コメディ。スティーブ・マーティン、マーティン・ショート、セレーナ・ゴメスというの主演の三人が、そのままエグゼクティブ・プロデューサーに名を連ねている。
 物語が始まった時点では三人は知りあいではなく、都会の住民らしく、隣人ではあっても一定の距離を置いた関係だ。――いや、スティーブ・マーティン演じるチャールズは元俳優で、マーティン・ショート(マーティンつながりでまぎらわしい)演じるオリバーも業界人だから、このふたりは知りあいだったのかも。でも親しくはない。
 それが事件の当日に非常警報でマンションから退避した際に(アメリカでは非常ベルが鳴ったら非難するのが普通なんだろうか? うちのマンションでも何度か誤報で非常ベルが鳴ったことはあるけれど、僕は一度も外へ出たことなんてない)、たまたま同じ犯罪ドキュメンタリーのポッドキャスト番組のファンであったことを知り、われわれもこの事件を解決して、ポッドキャストで一旗揚げよう、みたいな話になる。噂には聞いていたけれど、日本ではマイナーなポッドキャストがアメリカではドラマのネタになるほど市民権を得ているというのが意外。
 チャールズはかつて『ブラゾス』という刑事ドラマで人気を博した元俳優で、知らない人から年じゅう「ブラゾス?」と声をかけられている。要するに『刑事コロンボ』のピーター・フォークみたいな役どころ。オリバーは大枚を投じて手掛けた舞台で事故を起こして落ちぶれたブロードウェイの舞台監督。
 このふたりは年も年だし、経歴にもそのマンションに住んでいるのも納得なのだけれど、セレーナ・ゴメス演じるメイベルは若い上に職業不詳(画家?)なので、彼女がなぜそのマンションに住んでいるのか、いまいちよくわからなかった(注意力散漫)。
 おばさんに借りているとかいう話だったような気がするけれど、なんたって、このマンションにはスティングが住んでいたりするわけで。そんなセレブ御用達のマンションで、セレーナ・ゴメスのような若い女性やその幼なじみがひとり暮らししているというシチュエーションにはいまいち説得力を感じなかった。
 なにはともあれ、スティングのカメオ出演がこのドラマ最大のサプライズだ。しかも容疑者として疑われる一幕があったり、その流れで弾き語りしてみせて笑いをとったりしているし。なにやってんでしょうか、スティングさん。
(Oct. 31, 2024)

ラストマイル

塚原あゆ子・監督/満島ひかり、岡田将生/2024年/日本/MOVIXさいたま

 同じ野木亜紀子が脚本の人気ドラマ『アンナチュラル』と『MIU404』のキャラクターが再登場するというので話題の『ラストマイル』を観た。
 その二本のドラマをちゃんと観ていない僕が、なぜわざわざ映画館で観るんだよって話なんだけれども。
 まぁ、うちの妻子が観ているのを横目に眺めていたので、どちらも物語はいちおう知っているし。それらを絡めてどういう物語が展開するのか、ちょっと興味があったので、大宮でのライブのために仕事を休んだ水曜日に、水曜ならば映画も安いし、まあいいかなと思って、ライブ会場のとなりのさいたま新都心の映画館へ足を運んだ。
 いやしかし。これはやたらと疲れる映画だった。最初から最後まで気が休まるひまなし。
 ブラックフライデーのセールが始まると同時に、国内最大手の通販サイトの商品に一ダースの爆弾が仕込まれるというテロ事件が発生する。
 その配送拠点の責任者に着任したばかりの満島ひかりと部下の岡田将生を主役にして、本社の重役、配送会社の管理職、宅配業者の運転手親子、事件を追う刑事たち(『MIU404』の脇役の方々)などが事件に振り回されるさまを描いてゆく。
 時はブラックフライデーの渦中。主な舞台は二十四時間ベルトコンベアが止まらない配送センターの中。そこから発送された荷物が様々な人々を犠牲にして、ドカンドカンと爆発してゆく。音楽は初めからやたらと仰々しいし、もうせわしないったらない。
 とにかく、いっときも気が休まる暇のないこのノンストップ感がこの映画でもっとも印象的だった。登場人物らとともに通販サイトのバーゲンに忙殺される気分を味わえます。――んなもん味わいたい人がいるかよって話だけれども。
 シナリオはとてもよくできていて、伏線回収もばっちりだ。序盤に描かれた何気ないシーンが最後に次々と回収されていく。ただ事件の鍵を握るロッカーに残された謎の落書きの意味が、僕にはいまいち腑に落ちなくて、そこだけはやや消化不良な気分が残ってしまった。
 注目のドラマ二本とのクロスオーバー出演に関しては、正直おまけ程度といった印象だった。もっとがっつりとドラマに絡んでいるのかと思ったので、いささか拍子抜け。
 まぁ、ミコトさんや志摩くんの姿を一目見られたらそれでもう幸せ!――と思える人はぜひ。――とか僕が書かなくても観るよね。
(Oct. 16, 2024)

エミリー、パリへ行く シーズン4

ダレン・スター制作/リリー・コリンズ/2024年/Netflix(全10話)

 『アンブレラ・アカデミー』が終わり、『ストレンジャー・シングス』も最新シーズンで完結だというし、このドラマもシーズンの後半部分が一ヵ月遅れで公開されたりして、もったいぶった感じだったから、すっかりこれで完結すると思いこんでいたので、観終わってびっくりした。――終わってないじゃん!
 いやはや。前回こじれまくった四角関係に今回でいちおう決着がついたので――なおかつ、最後には舞台をパリからローマへと移すという展開だったこともあり――――いまいち気分はすっきりしないけれど、まぁいいや、こんな終わり方も意外性があって悪くないのでは?――とか思った僕がバカだった。
 最後に「シーズン5制作決定」とかいうテロップを見て、正直がっくりきた。つまらなかったとはいわないけれど、おかげでいまいち感想を書く気になれない。
 エミリーとガブリエルの二人にはさっさとくっついて、幸せな生活を送っていただきたい。いい年をした男女がいつまでもすれ違いまくってばかりいる展開には、いい加減うんざりだ。ノーモア四角関係。
(Oct. 06, 2024)