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最近の五本

  1. オッペンハイマー
  2. トイ・ストーリー4
  3. デューン 砂の惑星 PART2
  4. グリーン・ホーネット
  5. デッドプール&ウルヴァリン
    and more...

オッペンハイマー

クリストファー・ノーラン監督/キリアン・マーフィー、マット・デイモン、ロバート・ダウニー・ジュニア/2023年/アメリカ

オッペンハイマー

 原爆の発明者ロバート・オッペンハイマーの半生を描いたことで、日本では公開が半年以上遅れた話題作。
 クリストファー・ノーランほどの人気監督の作品が未公開のままで終わるわけがないのだから、いずれは公開せざるを得ないのはわかりきったことだ。話題になっているからこそ、さっさと公開してその是非を問えばいいのに。延期にするなんて馬鹿じゃないのと思った。
 いざ観てみると、原爆投下によるアメリカの勝利に熱狂する人たちが描かれていたりはするけれど、キリアン・マーフィー演じる主人公のオッペンハイマーは決して肯定的な態度を取っていない。むしろ自らの発明が多くの人たちの命を奪ったことに苦悩の表情を見せている。この映画の公開を遅らせた人たちはなにを見ていたんだろう。
 ただ、登場人物が多くて、それも科学者、政治家、軍人と、似たような堅苦しい肩書を持った人たちばかりなので、その辺の実話の知識が皆無なものとしては、とにかく話がわかりにくかった。
 映像のシャープさやフラッシュバックを多用した演出など、表現面ではこれまでのノーラン作品と同じテイストなのだけれど、過去の作品が難解ながらもギリでエンタメ性を失っていなかったのに対して、この映画は原爆という深刻なテーマのせいもあって、エンタメとは呼びにくい仕上がりになっている。
 ロバート・ダウニー・ジュニア(名演!)にせよ、マット・デイモンにせよ、年を取ったせいもあってこれまでとイメージが違うので、途中までその人と気がつかなかったりしたし、そのせいでキャスティングの豪華さもいまいちアピール度が低い。
 ということで、現時点ではこれまでで、もっとも取っつきにくいノーラン作品だった。まぁ、二度、三度と観なおせば、また印象が変わるのかもしれない。
(Feb. 1, 2025)

トイ・ストーリー4

ジョシュ・クーリー監督/声優・トム・ハンクス、ティム・アレン/2019年/アメリカ

トイ・ストーリー4 (字幕版)

 知り合いのディズニーリゾート大好き青年に「好きなディズニーキャラは?」と聞いたら、この映画のダッキー&バニーだというので、どんなキャラか知りたくて、ひさしぶりに観たピクサー映画。
 前作の終わりに持ち主のアンディに別れを告げて、いまは別の子(もう名前を忘れた)のおもちゃとなっているウッディたちが、その子のうちの家族旅行で連れていかれた先で、かつての仲間だったボー・ピープらと再会、旧友を温めるまもなくドタバタ騒動に巻き込まれるというような話。酒を飲みながら観ていたせいで、なんで大騒ぎしていたのかいまいちピンとこない。
 噂のダッキー&バニーは、なるほどな存在感。予告編などではゴミで作られた手作りおもちゃのフォーキーが主役級の扱いだったけれど、わが家でいちばん受けていたのはこのアヒルとウサギのぬいぐるみコンビだった。
 物語はウッディとボーの再会にフォーカスした分、バズ・ライトイヤーやキャシーの存在感が薄くなってしまって、いささか微妙な感じがなきにしもあらずだけれども、まぁそれなりにはおもしろかった。
 なんでも来年公開予定で続編が準備中とのことだけれども、このつづきをウッディとバズを中心にやろうとすると、かなり強引なシナリオになりそうな……。
(Jan. 29, 2025)

デューン 砂の惑星 PART2

ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督/ティモシー・シャラメ、デンゼイヤ/2024年/アメリカ/Amazon Prime

デューン 砂の惑星PART2

 ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督(いまだに名前が覚えられない)による『デューン/砂の惑星』リメイク版の後半。
 砂漠の民フレメンに受け入れられ、その指導者となるまでに成長したムアッティブことポール・アトレイデス(ティモシー・シャラメ)。自らが参戦することにより数多の犠牲者が生まれるという未来予知に苦しみ、帝国との対決を逡巡していた彼が、わずかな可能性にかけて立ち上がり、皇帝およびハルコンネン家との最終決戦へと赴くまでの過程をこの映画は丁寧に描いてゆく。
 まぁ、おかげで主人公のうじうじがドライブ感を損ない、痛快さに欠ける嫌いはあるし、最後のハルコンネン男爵との決着もあまりにあっけなくて、なにそれって感じだったりする。サンドワームによるクライマックスの突撃シーンも期待していたほどの迫力ではなかった。全体的に出来が悪いとは思わないけれど、おかげで個人的にはいまいち盛りあがり切れなかった。
 続編の『デューン/砂漠の救世主』も映画化が決まっているようなので、どちらかというとそちらに期待したい。物語的にアクションシーンが少なくなるはずだから、ポールの内面に迫る演出はそちらのほうが映えそうな気がする。
 あと、どうでもいいような話だけれど、前編のタイトルは『DUNE/デューン 砂の惑星』と英語表記つきだったのに、この後編では「DUNE」が落ちている。インデックスで作品が並ばなくなるので、そういうのはマジやめて欲しい。
 前作の邦題から『PART1』が抜け落ちてているのも、おそらく完結していないとわかると興行成績に影響するからなんだろうし、ほんと日本の配給会社の仕事は商業主義の臭みが強くて嫌だ。
(Jan. 13, 2025)

グリーン・ホーネット

ミシェル・ゴンドリー監督/セス・ローゲン、ジェイ・チョウ/2011年/アメリカ/WOWOW録画

グリーン・ホーネット (字幕版)

 ミシェル・ゴンドリーが六十年代の人気テレビドラマを劇場版としてリメイクした2011年のヒーロー映画。
 あまり評判がよくないので、いまひとつ惹かれはしなかったんだけれど、ミシェル・ゴンドリーの作品だしなぁ……ということで観てみた。
 まぁ、評価が高くないのもわからなくないけれど、個人的にはそれほど悪くないと思った。
 いきなりオープニングで、クリストフ・ヴァルツとジェームズ・フランコが悪役どうしとして対決するのとか、いまとなると、なにげに豪華じゃん?(ジェームズ・フランコの出番はそこだけだけど)
 そのほか、ヒロインはキャメロン・ディアスだし、『ストレンジャー・シングス』のデヴィッド・ハーパーが悪徳判事役で出ていたりするし、キャスティングは魅力的だ。
 まぁ、主役のセス・ローゲンとアジア系の相棒役カトー(テレビドラマではブルース・リーが演じて注目を浴びたらしい)を演じるジェイ・チョウという人は、ややネーム・バリューが低い印象だけれども、ふたりともその筋では超人気者らしいし。
 ということで、キャスティングはいいし、ゴンドリーらしくクラシカルなロックを多用した音楽も好みなのだけれども、シナリオはいささかありきたり。とくに新聞社屋を舞台にハチャメチャしてみせるクライマックスは、無駄な空騒ぎ感が強かった。派手にやればいいってもんじゃない。もうちょっと抑えを効かせてほしかった。惜しい。
 それにしても、バットマンのブルース・ウェインといい、この映画の主人公ブリット・リードといい、アメリカのヒーローものって、超能力がない主人公がヒーローになるには、まずは財力ありき、というあたりに、妙なリアリズムを感じる。
(Dec. 14, 2024)

デッドプール&ウルヴァリン

ショーン・レヴィ監督/ライアン・レイノルズ、ヒュー・ジャックマン/2024年/アメリカ/Disney+

デッドプール&ウルヴァリン

 くっっっだらねーーー。
 『デッドプール』と『ウルヴァリン』、両シリーズをクロスオーバーさせた続編が、マーベル・シネマティック・ユニバースに組み込まれて、マーベルの最新作として制作されたというので、いまいち気乗りはしなかったけれど、とりあえず観ておこうかと思ったら、これがひどい出来だった。
 まぁ、くだらなさは『デッドプール』の十八番だから、くだらないってのは、ある意味誉め言葉なのかもしれない。
 でもこの作品のくだらなさは、前二作とそれとは違う。
 基本『デッドプール』は主人公の不死身性を盾にした、死者の尊厳を冒涜するような不謹慎なギャグが売りのコメディだった。人は虫けらのように殺されてゆくけれど、まぁこの作品の場合は確信犯的なんだろうし、そこでめくじらを立てるのもなぁって思ってしまうような作品だった。
 でもこの作品は違う。
 『LOGAN/ローガン』で死んだウルヴァリンの死体をデッドプールが掘り起こして大暴れする冒頭のシーケンスは、そんなデッドプールならではの不遜なギャグの代表だけれど、でもこの映画でデッドプールらしいと思ったのはそこだけ。
 それ以降、マルチヴァースを絡めて主人公ふたりの出逢いを描いたあたりから先は、最近のMCUシリーズに顕著な、ご都合主義にまみれたB級SFに堕してしまう。ギャグよりお涙頂戴に走ってしまう。
 この映画を観ると、マーベルが駄目になったいちばんの要因が、なんでもありのマルチヴァースの導入にあったことがわかる。なんでもできてしまうから、なにをやらせていいかわからなくなり、物語をうまくハンドリングできなくなっている気がする。
 アントマンをかたどった廃墟とかビジュアルとしてはインパクトがあったし、エマ・コリンという女優さんが演じる『X-MEN』シリーズの某重要キャラの妹も悪くない。クリス・エヴァンスのキャスティングもひねりが効いていて好きだ。
 でも全体的な出来がこれでは、そんなディテールばかり褒めたところでねぇ……。
 とにかく、メインとなる舞台造形が『マッドマックス』からの借りものだって時点で、マーベルがなにやってんだって話だ。
 なによりひどいと思ったのは、ウルヴァリンの娘ローラ(ダフネ・キーン)の扱い。
 ローラは『X-MEN』シリーズ最重要キャラの娘なわけですよ。次世代X-MENの中心人物でしょうよ。そうなってくれないと困るでしょうに。
 それをこの映画では、単なるモブのひとりにしてしまっている(かのウェズリー・スナイプやジェニファー・ガーナーも同列)。そこがなにより最低。
 冒頭に「『LOGAN/ローガン』のファンの人は気を悪くしないでね」みたいなエクスキューズがあったけれど、いや無理だって。いくらMCUのメインがアベンジャーズだといっても、アメコミ界で重要な地位を占めているはずのX-MENを軽く扱っていいわけがないでしょう?
 いやはや、本当にこの映画は残念すぎた。
 本気でもうこれ以上マーベル作品は観ないほうがいいんだろうなと思わされた一本。
(Nov. 26, 2024)