Coishikawa Scraps / Movies

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最近の五本

  1. チェンジング・レーン
  2. デヴィッド・ボウイ ムーンエイジ・デイドリーム
  3. ジュラシック・ワールド/新たなる支配者
  4. トゥルー・ロマンス
  5. フロム・ダスク・ティル・ドーン
    and more...

チェンジング・レーン

ロジャー・ミッシェル監督/ベン・アフレック、サミュエル・L・ジャクソン/2002年/アメリカ/WOWOW録画

チェンジング・レーン (字幕版)

 無謀な車線変更(=チェンジング・レーン)により接触事故を起こしたせいで、さんざんな目にあう二人の男性を描いたサスペンス・スリラー。

 若き日のベン・アフレック演じるエリート弁護士のギャビンが、出廷すべき裁判に遅れそうになって、事故を起こしたのが事件の発端。

 先を急ぐ彼は、無責任にもさっさと事故現場を立ち去ってしまう。でもって、その際に、裁判所に提出しなくてはいけない大事な書類を置き忘れてしまったことから、敗訴どころか詐欺罪での刑務所入りかってピンチに陥る。まさに自業自得。

 一方のサミュエル・L・ジャクソン演じる保険販売員のドイルも、離婚か養育権の調停を受けるため、同じ裁判所へ向かう途中だったのに、事故で車が動かなくなったせいで遅刻を余儀なくされ、それが原因で調停に失敗してしまう。

 かくして書類を取り戻すために違法な手段に打って出たギャビンと、家庭崩壊を余儀なくされて自暴自棄になったドイルによる報復で、事態は悪化の一路を辿ってゆく。

 もうベン・アフレック演じる主人公がひどい人で。交通事故は金でもみ消そうとするし、事務所の同僚(トニ・コレット)と浮気しているし、書類を取り戻すためにハッカーをやとって相手の銀行口座を改ざんして、その復旧を口実に脅迫するし、スプリンクラーを誤動作させてオフィスを水浸しにするし。いつ捕まってもおかしくないじゃんって行動の数々に同情の余地がない。

 対するサミュエル・L・ジャクソンは、相対的に最初のうちは気の毒なのだけれど、相手の悪辣さに激高して報復に出てからは、あわや大惨事って交通事故を起こしたり、ローン窓口の人にやつあたりしてコンピュータを投げ出したり、それはないんじゃんって行動を取るようになってしまう。

 とにかく主演の人気俳優ふたりの行動があまりにひどくて苦笑が絶えない。作り手はべつに笑わそうとはしていないのかもしれないけれど、苦笑いなしには見られない。これはそういう映画だった。でもって僕はそこのところがけっこう好きだった。

(Aug. 09, 2025)

デヴィッド・ボウイ ムーンエイジ・デイドリーム

ブレット・モーゲン監督/デヴィッド・ボウイ/2022年/ドイツ、アメリカ/Apple TV

デヴィッド・ボウイ ムーンエイジ・デイドリーム (字幕版)

 デヴィッド・ボウイのキャリアを貴重な未発表映像たっぷりで辿るドキュメンタリー・フィルム。

 「神は死んだ」というニーチェの言葉を引用したボウイのテキストから始まるこの映画。

 有名なメリエスの『月世界旅行』が一瞬登場するほか、しっぽの生えた女の子が宇宙飛行士のミイラをのぞき込む映像等、この映画のオリジナルなのか、ボウイのミュージック・ビデオの一部なのか、はたまたボウイが愛した映画の一シーンなのか、出自が不明なフィクション映像もあるけれど、そうした演出上インサートされた映像をのぞけば、あとはすべてボウイのライブやインタビューやツアー映像から成りたっている。

 説明的なナレーションはなしで、話を進めるのはすべてインタビューなどで発せられたボウイ自身の言葉。それらを絡めて数多のライブシーンやインタビュー映像やプライベートショットをコラージュして、デヴィッド・ボウイという稀代のポップ・アイコンの姿を描き出してゆく。

 いってみればボウイのキャリアを映像のイメージ力だけで辿ってみせる二時間越えのミュージックビデオとでもいったような作品。

 映像だけでボウイの人生を辿るというその性格上、この映画は動画が少ない最初期は割愛して、『ジギー・スターダスト』の時期から始まる。晩年もあまり映像が残っていないらしく、『レッツ・ダンス』の時期までが中心という印象だった。

 コアなファンにとっては感涙ものの内容かもしれないけれど、全体的に説明が足りないので、僕のようにボウイについてよく知らない人間には向かない作品だって気がした。途中で観るのをやめてボウイのアルバムをちゃんと聴き返したくなってしまった。

 自分がいかにデヴィッド・ボウイを知らないかを思い知らされた一本。

(Aug. 05, 2025)

ジュラシック・ワールド/新たなる支配者

コリン・トレヴォロウ監督/クリス・プラット、ブライス・ダラス・ハワード/2023年/アメリカ/WOWOW録画

ジュラシック・ワールド/新たなる支配者(字幕版)

 ジュラシック・ワールド・シリーズの第三弾。

 来週末に公開される四本目はキャストが一新されているので、これが三部作の完結編という位置付けになるらしい。

 舞台となるのは前作で逃げ出した恐竜が世界中に拡散して、人間と恐竜が共存するようになった世界。そのため地域限定だった旧作とは違い、街中でクリス・プラットがバイクに乗って恐竜とカーチェイスもどきを繰り広げるなんてーンもある。そんな風に人々の暮らしの中にあたりまえのように恐竜がいるというシチュエーションが今作のポイント。

 ただ、クライマックスの舞台となるのは恐竜保護区の島なので、そこからは過去作と同じテイストになってしまう。どうせならばずっと市街地とかで話を進めてもらった方がおもしろかったのではと思う。まぁ、その辺は作り手の都合とかもあるんだろう。

 物語としては前作の子役イザベラ・モートンがひきつづき出演。主演のふたりを親代わりに疑似家族としてひっそりと暮らしていた彼女が、その特殊な遺伝子を狙う巨大企業の手先に誘拐されてしまい、彼女を助け出すべく、クリス・プラットとブライス・ダラス・ハワードのカップルが奔走することになる。

 一方で遺伝子操作により誕生した巨大なバッタかイナゴ(でっかい昆虫って気持ち悪い)が世界中の食物を食い散らかして、このままだと食糧危機により人類が滅亡するのではという話が持ち上がる。

 この問題の解決のために登場するのが、初代『ジュラシック・パーク』の主演だったサム・ニールとローラ・ダーン。前作でシリーズに復帰したジェフ・ゴールドブラムも引きつづき登出演しているし、新旧三部作の主要キャストが一堂に会するこの豪華キャストも本作の見どころのひとつだと思われます。

 ただ、旧三部作を最後に観てから二十年以上たっていて、内容をほとんど忘れている身としては、サム・ニールらが再登場したからといって、そうそう感動もできない。

 恐竜に関しても「史上最大の肉食恐竜」という歌い文句のギガノトサウルスが今回の目玉らしいのだけれど、ティラノザウルスとの大きさの差がいまいちぴんとこなくて、そのすごさが伝わらなかった。

 ということで、作品のセールスポイントがいまいち上手く響かなくて、残念ながら盛りあがりはそこそこだった。

(Jul. 31, 2025)

トゥルー・ロマンス

トニー・スコット監督/クリスチャン・スレーター、パトリシア・アークエット/1993年/アメリカ/WOWOW録画

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 つづけてもう一本、タランティーノ脚本作品。

 こちらについては、いつどうやって観たのか、まったく記憶にないのだけれど、少なくても『フロム・ダスク・ティル・ドーン』と違って、「これはいい!」と思った。

 でも、今回もう一度観てみようと思ったら、配信しているサイトはないし、BDも廃盤になってしまって手に入らない。我が家の場合は十年近く前に録画したデータがレコーダーに残っていたので観られたけれど、さもなければ、DVDをレンタルするしか観る方法がない。こんないい映画が観たくても観られないなんて、いったいどうなっているんだ、日本映画界!――とか思いました。

 ほんと、ひさしぶりに観なおしてみて、改めてこれっていいなぁと思った。

 まぁ、B級っちゃぁB級だけれど、タランティーノならではのテイストが全開。監督は『トップガン』のトニー・スコットなのに、間違いなくタランティーノ印。ここまで脚本家の個性が表に出ている作品も珍しいのでは?

 物語は冴えない映画オタクの青年とコールガールが一夜の恋に落ちて即結婚、間違って大量の麻薬を手に入れてしまい、ギャングに追われて逃避行を繰り広げるという話。恋愛パートの能天気なスウィートさと血みどろのバイオレンス・シーンのコントラストが鮮烈だ。

 クリスチャン・スレーターとパトリシア・アークエットの主演のふたりは美男美女という柄ではないけれど、それゆえに役どころにはぴったりだし、彼ら主役の脇を固めるのが、デニス・ホッパー、ブラッド・ピット、クリストファー・ウォーケン、ゲイリー・オールドマン、サミュエル・L・ジャクソン、ジェームズ・ガンドルフィーニ、ヴァル・キルマーという、なにそれな豪華さ。

 デニス・ホッパー以外は、大半がまだブレイク前だからこそ実現したキャスティングなのかもしれないけれど(みなさんお若い)、それにしてもあまりの錚々たる顔ぶれにびっくりした。しかも大半が、え、出番それだけ?――ってあっけなさで退場してしまう。サミュエル・L・ジャクソンなんて、一分も出てないんじゃなかろうか。

 主人公が幻覚で見るエルヴィスの役はヴァル・キルマーらしいんだけれど、顔が映らないのでそんなのわかるわけがない。ほんと贅沢にもほどがある。

 あと、この映画は音楽がハンス・ジマーというのも意外性がある。その後のハリウッド超大作御用達なイメージからは想像できないオフビートな仕事ぶりにびっくりした。主人公カップルがイチャイチャするシーンで何度もかかるほのぼのとした曲がやたらとおかしくていい。

 なんにしろ、タランティーノ自身の監督作品ではないけれど、『レザボア・ドッグス』のロマンス版と呼んでもよさそうな内容だし、タランティーノを語るうえで欠かすことのできない一本では? と思います。

 これが正規の流通ルートでは観られないなんて、日本の映画ファンにとっては大きな損失じゃなかろうか。一日も早い配信希望。

(Jul. 27, 2025)

フロム・ダスク・ティル・ドーン

ロバート・ロドリゲス監督/ジョージ・クルーニー、クエンティン・タランティーノ/1996年/アメリカ/Apple TV

フロム・ダスク・ティル・ドーン (字幕版)

 記憶がさだかじゃないのだけれど、この映画はたぶん映画館で観ている。

 クエンティン・タランティーノ脚本で、監督がロバート・ロドリゲス、主演はジョージ・クルーニー、タランティーノ、ハーヴェイ・カイテルという豪華な顔ぶれに惹かれて、内容をほとんど知らないまま観て、やたらとびっくりした記憶がある。

 だってなにこれ?

 強盗殺人を働いて逃亡中の兄弟――兄がジョージ・クルーニーでタランティーノが弟――が残虐非道の限りをつくすオープニングから、彼らがハーヴェイ・カイテルとふたりの子供の乗ったキャンピングカーを乗っ取って国境を越え、メキシコのストリップ・バーへとたどり着くまでの展開は最高だと思う。

 脚本はタランティーノの真骨頂という感じだし、ナイスミドルなイメージが強いジョージ・クルーニーのほれぼれとする悪党っぷりと、サイコな変質者役が際立つタランティーノのコンビは、ユーモラスで危なっかしくて最高だ(知りあいたくないけど)。彼らに捕らわれて災難にあうハーヴェイ・カイテルと娘役のジュリエット・ルイス(二十代前半なのに幼い!)とアジア系の青年の一家三人、中心となる主要キャラ五人のキャスティングは抜群だと思う。

 そんな彼らが辿り着いたお下劣でエロティックなストリップ・バーも――まぁ、好き嫌いは別として――ムードたっぷりでいい感じなのだけれど、そのあとが問題。そこで暴動が起こったところから、この映画はまったく違う様相を呈してしまう。

 いや、なぜその展開?

 『黄昏から夜明けまで』というタイトルからすれば、この映画は本来それ以降が主題なんだろうけれど、なまじそこまでが『レザボア・ドッグス』や『パルプ・フィクション』に通じる味のあるクライム・ムービーだったので、そこからの開き直ったようなB級スプラッター・ホラーな展開には心底びっくり(がっかり)した。

 二度目の今回は、そういう映画だって知っていたから、さすがに驚きはなかったけれども、やっぱりなぜそうなる? と思わずにはいられなかった。こういうのが大好きな人がいるのはわかるんだけどねぇ。

 まぁ、店の裏側にじつは……というラストのワンシーンは気がきいているし、前半は文句なしなので、初見のときよりは印象がよかった気がしなくもない。

(Jul. 15, 2025)