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  1. 名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊
  2. PLUTO
  3. SHE SAID/シー・セッド その名を暴け
  4. ラスベガスをやっつけろ
  5. トップガン マーヴェリック
    and more...

名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊

ケネス・ブラナー監督/ケネス・ブラナー、ティナ・フェイ/2023年/アメリカ/Disney+

名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊

 ケネス・ブラナー監督・主演による名探偵ポアロ・シリーズ第三弾となるこの作品は、シリーズきっての異色作だった。
 そもそも『ベネチアの亡霊』ってなにさ? 僕はそんなクリスティーの作品を知らない。
 原作は『ハロウィーン・パーティ』だというけれど、原作の舞台はベネチアじゃないよな? そもそも僕が知っている『ハロウィーン・パーティ』は嘘つきの女の子がバケツで溺死させられる話なんだけれども。
 この映画で殺されるのは中年女性の降霊術師じゃん!(演じているのは『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』でアカデミー賞を受賞したミシェル・ヨー)
 あまりに違いすぎだろー。
 意訳がすぎて、これをクリスティー原作と呼ぶのは間違いなんじゃないかってレベル。おかげでどういう事件なのかも、犯人が誰なのかもよくわからない。
 いや、終わってみれば犯人は原作と同じだったけれど、でも原作と違ってなぜその人が殺人を犯したのか、僕にはさっぱりわからなかった(酒を飲みながら観ていたせいかもしれない)。
 ほんと、なんなんだこの映画?
 ハロウィーンの夜のおどろおどろしい雰囲気を背景に殺人事件が起こるという映像作品としてのムードは決して悪くないんだけれど、これをしてクリスティー作品を名乗るのにはちょっと難ありではと思ってしまう。
 このシリーズはもとよりリミックス感が半端なかったけれど、今作においてはリミックスが過ぎて原型をとどめていない。いっそ原作とどこが同じかを探しながら観たら楽しいかもしれない。これはそんな作品。
(Nov. 19, 2023)

PLUTO

川口俊夫・監督/原作・浦沢直樹、手塚治虫/2023年/日本/Netflix(全8回)

 浦沢直樹が『鉄腕アトム』のエピソードのひとつである『史上最大のロボット』を大胆な解釈でリメイクしたマンガ『Pluto(プルートゥ)』のアニメ版。
 僕がこれまでシリーズもののアニメの感想をまったく書いていないのは、全編をきちんと観た作品がほとんどないからで、アニメは食事をしたり、酒を飲んだりしながら、ながらでだらだらと観るのが習慣になってしまっているので(それはそれで失礼な話だとは思うのけれど)、きちんと観てないものについて、つべこべ言っちゃいけないだろうと思ってのこと。
 この作品についてはあの浦沢直樹のマンガがアニメでどんな風に再現されるのか興味があったから、配信が始まってすぐ、それなりにちゃんと観たので、とりあえずなんか書いとかなきゃって思った。
 まぁ、とはいっても、書けることといったら、浦沢直樹がすごいのひとことなんですが。
 だってアトムにせよ、お茶の水博士にせよ、天馬博士にせよ、みんなちゃんとそれらしいのがすごい。アトムの物語世界が、浦沢直樹のあの絵のタッチでしっかり再現されているという、その事実にただひたすら感心してしまう。
 ぜんぜん覚えていなかったけれど、ウランの通う小学校の校長役でヒゲ親父が出てきたのにはびっくりだった(マンガ版にも出てましたっけ?)。あー、ヒゲオヤジじゃん! って。ひとめ見ただけでそれとわかる。画風は浦沢直樹のキャラなのにちゃんとヒゲオヤジになっている。すげー。
 アニメも気合が入っていて、CGをまじえた第一話冒頭の山火事のシーンとかすごいグレードが高くてよかったのだけれど、いざ物語が始まってゲジヒトの登場シーンになったら、いささか作画の質が落ちて、あれ?って感じになってしまった。
 ネトフリがバックについていても、やはり全編にわたって宮崎駿や庵野秀明ほどの作画の質を徹底するのは難しいということなのか……。
 僕があまりアニメを好まないのは、そういう作画に対する不満を感じたくないからのような気がする。マンガで読めるならばそっちの方がいいやって思ってしまう。マンガだと絵の粗さも作品の個性になるけれど、アニメだと手抜きに思えてしまう。
 まぁ、それでもこのアニメはいい出来なのではと思います。少なくてもこの作品にはデフォルメ三頭身キャラが出てこないのがいい(原作にないのだから当然か)。それだけで最近のアニメのなかではいちばん気持ちよく観られた。
 僕がアニメが好きになりきれないのは、自分がアニメーターだったら絶対にやりたくないと思う、マンガ直伝の安直なデフォルメ表現があたりまえのようにまかり通っている現状も大きいんだなと、これを観て思った。
 そういえば、最近のアニメには珍しく、主題歌のタイアップがないのも、ロック好きな浦沢直樹らしくていい。俺の作品にいまどきの若者の歌などつけてくれるなという頑固親父の声が聞こえてきそうだ。
(Nov. 19, 2023)

SHE SAID/シー・セッド その名を暴け

マリア・シュラーダー監督/キャリー・マリガン、ゾーイ・カザン/2022年/アメリカ/WOWOWオンデマンド

シー・セッド その名を暴け

 ニューヨークタイムズがミラマックスの創始者でハリウッドの大物プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインの数知れぬセクハラ被害を暴いたという実話をもとにした作品。
 冒頭、キャリー・マリガン演じる主人公がトランプ大統領候補のセクハラ疑惑を追及して果たせず、出産のため休職して……みたいな流れになっていて、その部分が説明不足でいまいちよくわからなかった。あれ、これってハリウッドのプロデューサーを告発する話じゃないの?――って思った。
 その後、ゾーイ・サガンという女優さんが演じるもうひとりの主人公がハリウッドのセクハラ疑惑を追うことになり、そのパートナーとしてマリガンが復職したあたりでようやく話についてゆけるようになった。
 僕はこの事件をほとんど知らなかったけれど、被害者にはアシュレイ・ジャッド(『恋する遺伝子』)、ローズ・マッゴーワン(『プラネット・テラー』)、そしてグウィネス・パルトロウといった、僕も観たことがある映画の主演女優たちも含まれていたとのことで、そのうちジャッドは本人が出演している。パルトロウは声だけの出演だけれど、電話の声は本人らしい。彼女たちにしてみれば封印したままにして思い出したくもない過去だろうに。勇気をもって出演した彼女たちに敬意を。
 男性上位な芸能界の闇に果敢に立ち向かった女性たちの話ということで、監督も女性だし、新しい男女平等の時代の到来をつけるような秀作だとは思うのだけれど、いかんせん、セクハラを受けたり、パワハラで仕事を奪われた女性たちの証言から、クソ野郎の悪行をあぶりだして記事にするところまでを描いて終わるので、観終わったあとにすっきりと気分よくはなれない。悪党をやっつけた痛快さよりも、被害者の味わった苦しみが強く印象に残ってしまう。
 勧善懲悪をエンタメとして描いたりせず、淡々と女性たちの苦しみや悲しみをすくいあげている。良心的ではあるけれど、それゆえとても苦味の効いた一本。
(Nov. 19, 2023)

ラスベガスをやっつけろ

テリー・ギリアム監督/ジョニー・デップ、ベニチオ・デル・トロ/1998年/アメリカ/Amazon Prime

ラスベガスをやっつけろ (字幕版)

 七十年代にゴンゾー・ジャーナリズムと呼ばれたジャンル(まったく知らない)の第一人者だというハンター・S・トンプソンという人の作品を実写化した作品。
 公開当時に原作の翻訳が『ラスベガス☆71』というタイトルでロッキング・オン社から出ていたこともあり、英米文学好きで、当時はまだロッキング・オン本誌の読者だった僕にとっては、ずっと気になっていた作品だった。
 まぁ、気になっていたといっても原作は読んでいないし(そのうち買おうと思っているうちに絶版になっていた)、映画自体もなかなか観る機会がないまま幾星霜。
 そんな作品が先日Appleの配信ストアのバーゲンコーナーを見たらワンコインで売っていたので、いい機会だから買って観ようかと思ったのだけれど、調べてみたら、Amazon Primeでは無料で観れる。だったらとりあえずそちらで観てから、気に入ったら買おうと思ったのでしたが――。
 いやはや、これがなんともひどい映画だった。
 ジョニー・デップ演じるジャーナリストとベニチオ・デル・トロ演じる弁護士のコンビが、ドラッグ浸りでべろべろになりながら、ラスベガスへの取材旅行(なんの取材なのかもよくわからない)へと出かけてゆく顛末を描いたロードムービーなのだけれど、とにかく終始ぐだぐだ。
 デップは原作者に寄せて禿ヅラだし(この時まだ三十五なのに)、デル・トロはすんごい太鼓腹で、年がら年中吐いてばかりいる。こんなにゲロ・シーンが多い映画は初めて観た気がする。
 この映画はそんなふたりのジャンキーの醜態を、おおげさなギャグと幻覚シーン満載で延々と描いてゆく。
 監督は『未来世紀ブラジル』や『12モンキー』のテリー・ギリアムで、脇役もトビー・マグワイア(ヒッチハイクするヒッピー役。気がつかん)、キャメロン・ディアス、クリスティーナ・リッチ、エレン・バーキンと、とても豪華だ(まぁ、みんな出番は数分とはいえ)。
 でも、たとえ名優デップとデル・トロの演技とはいえ、ジャンキーがラリって好き勝手でたらめ放題やっているのを二時間も見せられるのは、正直楽しくなかった。
 これは一度観ればもう十分。いやはや、買わないでよかった。
(Oct. 29, 2023)

トップガン マーヴェリック

ジョセフ・コシンスキー監督/トム・クルーズ、ジェニファー・コネリー/2022年/アメリカ/Netflix

トップガン マーヴェリック

 前作のあとすぐに観るつもりでいたのに、夏場にまったく映画を観る気が起きなくて放っておいたら、半年以上も過ぎてしまった。アカデミー作品賞にもノミネートされた、トム・クルーズの代表作『トップガン』の続編。
 物語の中心となるのは、若いころそのままのやんちゃさで出世もせず現役パイロットとして軍役をこなしてきた主人公のマーヴェリック(トム・クリーズ)の最後の任務。それが核武装をもくろむ敵が僻地に建造中のウラン工場を破壊するというもの。
 攻撃の難易度があまりに高いので、アイスマン(こちらはしっかり出世したヴァル・キルマー)の推薦で歴戦の英雄である彼に白羽の矢が立ったのだけれど、ただし出撃するのは彼自身ではなく、実戦経験のない若きパイロットたち。彼らがミッション・インポッシブルなその作戦を達成できるよう教育しろという命令がくだる。
 みずからが操縦するのならばともかく、経験不足の若者たちが犠牲者なしで成功を収めるのは無理だと、一度は任務を断ろうとしたトム・クルーズだけれど、メンバーのひとりにいまは亡き親友グースの息子ルースター(ガチョウの息子が七面鳥ってのがいいです。演じるマイルズ・テラーは『セッション』の主役の人だった)が含まれていたこともあり、結局若者たちの初々しさにほだされて、教官役を引き受けることになる。
 しかし彼と教え子たちのあいだには如何ともしがたい実力差があり……。
 凄腕のベテランパイロットがひよっ子たちを鍛えて難易度マックスな戦いへ臨むというこの映画、むちゃくちゃ少年ジャンプ的だった。
 前作同様、戦闘機やバイクの映像はこれでもかとスタイリッシュで、どうだカッコいいだろーといわんばかりだし。冒頭では前回同様ケニー・ロギンスの主題歌もかかるし。マッチョな少年の夢を映像化したみたいで、なんとなくこそばゆかった。
 まぁ、少年ジャンプ的であるということは、要するにそれだけわかりやすくて感動的だということで。このエンタメに徹底した迷いなき娯楽路線が大好評の要因とみた。
 大好きとまではいえないけれど、とりあえずおもしろかったです。
(Oct. 29, 2023)