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  1. 新幹線大爆破 [1975]
  2. 新幹線大爆破 [2025]

  3. ロスト・イン・トランスレーション
  4. ニール・ヤング/ジャーニーズ
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新幹線大爆破

佐藤純弥・監督/高倉健、千葉真一、宇津井健/1975年/日本/Netflix

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 ということで、ひきつづき『新幹線大爆破』のオリジナル版。

 こちらに関しては、新作を先に観てしまったせいで、やたらと時代性を感じるところが多かった。

 爆発するのは時速百キロではなく八十キロだし、新幹線には修学旅行生ではなく、変な太鼓をたたく宗教団体みたいなのが乗っている。あと臨月の妊婦とか、護送中の容疑者とか、いまの時代だったら、絶対に乗っていないだろうって乗客が多い。

 なにより新作では「テロリストの要求は飲めない!」と身代金の要求を拒否していたのに対して、こちらでは「人命には変えられないから素直に払いましょう」という調子ですもん。いやぁ、時代が違うなぁと思った。

 あとタバコね。先日『ロスト・イン・トランスレーション』を観たときにも、ずいぶんとみんな好き勝手にタバコを吸ってんなぁと思ったものだけれど、この映画でもスパスパ吸いまくり。ここ二十年ばかりのあいだに、いかに僕らがタバコのない社会に慣らされてきたかをスクリーン越しに感じさせられた。

 物語としては――犯人が後半までわからない新作を先に観たもので――いきなり高倉健が犯人役として登場する展開にびっくり。それ以降も彼を中心とした犯人グループが犯行に及ぶまでの人間ドラマが、現在進行形の身代金の受け渡しシーンに並行してたっぷりと描かれている。

 新作は誰が主役というわけでもない群像劇だったけれども、こちらは健さんを主役にフィーチャーした犯罪映画としての色が濃い。

 おかげで肝心の新幹線絡みのシーンは新作の半分くらいしかない印象で、その点がなにより拍子抜けだった。上りと下りの新幹線がすれ違うシーンとか、並走した二台の新幹線で工具を受け渡しするシーンとか、大きな見せ場が新作でそのままリメイクされているので、なおさら割をくっている感あり。

 新旧で同じだったといえば、新幹線の管制室。新幹線の進行状況をモニターするパネルのデザインが一緒なのがおもしろかった。

 あれは実際にいまでもああなのか、映画だからノスタルジーのためにそう描いているんでしょうか? まぁ、何十年も止まらずに走っているのだから、実際にいまでもああいうデザインなのかな。よくわからない。でもなんとなく、その昔ながらな感じがよかった。まぁ、七十年代当時はあれが近未来的だったのかもしれないけれど。

 映画としては音楽の使い方も含めて、すごく七十年代風(あたりまえだけど)。それも洋画――ジャン=ポール・ベルモンドの諸作品や『フレンチ・コネクション』なんか――を思い出させる雰囲気だった。当時の邦画もがんばっていたんだなと思った。

 出演は高倉健、千葉真一、宇津井健、丹波哲郎らの大物多数で、当時の日本映画界の総力を結集したフルキャストといった印象。初代ウルトラマンでハヤタ隊員を演じた黒部進も出演しているので、リメイク版に斎藤工が出ているのは、ウルトラマンに対するオマージュなのかもしれない。

(May. 13, 2025)

新幹線大爆破

樋口真嗣・監督/草彅剛、細田佳央太、のん/2025年/日本/Netflix

 『シン・ゴジラ』や『シン・ウルトラマン』の樋口真嗣監督による、1975年のパニック映画のリメイク版。話題になっていたので新旧両方とも観てみた。

 古いほうから観るべきかとも思ったんだけれど、どちらかというと興味があったのはこちらだったので、あえて新作を先にした。

 内容は新幹線に時速百キロを下回ったら爆発する爆弾が仕掛けられたという設定で、事件に対処する様々な人々の姿を描く群像劇。

 新幹線の車掌さんが草彅くんと細田佳央太で、運転手がのん(すんごいひさしぶりに観たけど『あまちゃん』のころのイメージのまんまだった)、JRの管制室のリーダーが『シン・ウルトラマン』の斎藤工、そのほかたまたま新幹線に乗り合わせた乗客役として、尾野真千子が女性議員、要潤がユーチューバー、松尾諭が事故を起こして炎上中の会社の社長役などを演じている。気がつけば主要なキャストはほぼ朝ドラ出演者だ。

 あと、新幹線には修学旅行中の高校生の一団が乗り合わせていて、そこの女性教師(大後寿々花)と女子高生ひとり(豊嶋花)が前述の乗客らとともに事件に深くかかわってゆくことになる。

 あとで観た旧作では初めから犯人がわかっていて、犯人たちの行動を描くのにたっぷりと時間をかけていたけれど、新作では犯人が終盤になるまでわからない。そうすることで、旧作の半分くらいを占める犯人パートをごっそりと切り捨てている。

 この改変により新幹線の事件にだけフォーカスしている分、旧作より圧倒的にリズムがよくて、緊迫感があった。CGでさまざまな映像が自在に操れる現在だからこその迫力あるサスペンスシーンの連続で飽きさせない。その点はすごくいい。

 ただ後半になって明らかにされる犯人と動機にまつわるサプライズが駄目。旧作の事件をオマージュしたシナリオは気がきいていると思うのだけれど、その犯人像にはあまりに説得力がない。おかげでそこから派生する人間ドラマもありきたりに感じられてしまった。後味もよくないしねぇ……。

 新幹線が爆発するかもというだけで十分にサスペンスフルなんだから、下手などんでん返しなんて仕掛けずに、もう少し納得のゆく犯人像を練り上げて、事件解決を心から喜ばせてもらえれば最高だったのに……。

 なんかほんともったいない。パニック映画ということで、ローランド・エメリッヒ作品に近い残念さがあった。

 でもまぁ、おもしろかったのは否定しない。とりあえず『シン・ゴジラ』に通じる情報過多なサスペンスを、時速二百キロ超えのスピード感満載で観られるので、『シン・ゴジラ』が好きな人は観ておいて損はないと思います。

(May. 20, 2025)

北野武・監督/ビートたけし、西島秀俊、加瀬亮/2023年/Netflix

首

 およそ十年ぶりに観た北野武監督の新作。

 この人の映画を観るのは気合がいるので、映画全体の鑑賞本数が減っている昨今、どうにも疎遠になってしまう。

 この作品に関しては、予告編がおもしろそうだったし、北野武の新作が配信で観られるのは貴重な気がしたので、観られるうちに観ておくことにした。

 内容は北野武初の本格的な歴史もの。時代劇としては『座頭市』があったけれども、あれはフィクションだし、ミュージカル仕立ての異色作だったので、史実をもとにした本格的な時代劇はこれが初めてだ。

 扱っているのは織田信長が天下統一を目指す戦国期で、荒木村重(知りませんでした)の謀反から始まり、本能寺の変のあとまでを描いてゆく。

 物語の大きな流れは史実に乗っ取っている――はず。まぁ、日本史に詳しくないので、嘘が混じっていてもわからない。

 でもディテールには明らかに改変が加えられている。信長が加瀬亮、秀吉がビートたけし本人、家康が小林薫というキャスティングは年齢度外視だし――実際は信長が最年長で、秀吉が三歳下、家康がその六歳下とのこと――本能寺の変での信長の最後も、なにそれって演出が施してある。

 話の中心となるのは前述の天下人三人ではなく、西島秀俊演じる明智光秀と遠藤憲一演じる荒木村重。このふたりが同性愛関係にあるという設定で、信長の側近である光秀は、裏切り者の村重を捕まえるよう指示されて苦悩することになり、それがのちの本能寺の変へとつながってゆく。

 史実を下敷きにしてこれら偉人たちを描くシーケンスと並行して、チコちゃん木村祐一が演じる忍者崩れの大道芸人と、成り上がりを夢見てその仲間となる百姓上がりのろくでなし役の中村獅童を中心とした下層階級の戦場での生きざまも描かれる。

 そのほかにも有名な俳優たちが演じる歴史上の偉人がたくさん出てくる。日本映画界の有名男優をこぞって集めたような豪華キャストで描く、バイオレンスと男色たっぷりの戦国歴史群像劇だった。

 なんといってもインパクトがあったのは、加瀬亮による傍若無人でエキセントリックな信長像。変人として描かれる印象の強い信長さまだけれど、たけしの描く信長は日本史上最大の偉人というよりは、年がら年じゅう切れまくりのチンピラみたいだ。天下人としてのカリスマとか尊厳を微塵も感じさせない(少なくても僕は感じなかった)。

 とはいえ、では平凡かというとそんなことはない。彼の触れただけで切れる鋭利なカミソリみたいな危なっかしさは他を圧倒している。近くにこんな人がいたら嫌だなぁと思わせる点で、『ダークナイト』のジョーカーに通じる怖さがあった。

(May. 07, 2025)

ロスト・イン・トランスレーション

ソフィア・コッポラ監督/ビル・マーレイ、スカーレット・ヨハンソン/2003年/アメリカ、日本/Amazon Prime

ロスト・イン・トランスレーション

 ずっと気になっていたのに、配給元がマイナーな東北新社だからか、DVDは廃盤になったままだし、テレビ放送もないしで、なかなか見る機会が作れなかったこの作品。

 しばらく前にアマプラに登場したので、ようやく観られる!――と喜んだくせに、すぐに観なかったのが失敗。途中でCMが入りやがりました。

 この四月からアマプラにもCMが入るようになったという噂は聞いていたけれど、映画が始まる前はともかく、映画の本編途中にも入るとは……。

 しかも二分間もがっつりと。この映画は二時間もないから途中一度だけだったけれど、もっと長いやつだと途中に二回目が入ったりするんだろうか?

 いずれにせよもうアマプラでは映画は観れないなぁ……観るんならばCM抜きにする追加料金が必須かなぁと思った。

 でもまぁ、このところ集中力が落ちているので、途中で強制的に中休みさせられるのも悪くないかなと思ったりしなくもない。

 あとで確認したら、これを観た直後にWOWOWの放送があったり、六月にはBlu-rayの発売が決まっていたりもして、そういう意味でも観るタイミングを間違った感がすごかった。やれやれ。

 さて、そんなこんなありつつ、念願かなってようやく観られたこの映画。

 ビル・マーレイとスカーレット・ヨハンソンが言葉の通じない東京にやってきて困る話――というくらいの認識だったら、あたらずも遠からず。とにかく物語は全編日本が舞台だった。

 ウィスキーのCM撮影のために単独来日した俳優役のビル・マーレイと、カメラマンの夫についてきた大学を出たばかりの新妻スカーレット・ヨハンソンが、滞在する同じホテル(パークハイアット東京)で出逢い、エキセントリックな東洋の大都市で孤独にさいなまれる者同士、少しずつ親交を温めてゆく。

 公開は2003年だから、撮影がその前の年だとしても、いまから二十二、三年前。そのころの新宿、渋谷、京都なんかの風景がアメリカ人の視点で写し取られている。

 ところが。これが非常にうさんくさい。なんだろう、このバッタもん感。

 二十年前っていまの僕らの感覚からするとさほど昔って気がしないのだけれど、なんかとても古めかしい。あのころのわが故郷・東京ってこんな感じでしたっけ?――と首を傾げたくなるような違和感たっぷりの映画だった。

 使われている音楽は当時のシューゲイザー系のオルタナティヴ・ロック中心で、まさに僕にとってはツボ。

 それもそのはず。音楽を手掛けているのはマイ・ブラディ・ヴァレンタインのケヴィン・シールズだった。なるほど。そうと知って観たいと思っていたのかもしれない(だとしてもすっかり忘れていた)。作中で流れるマイブラ・シグニチャーたっぷりの曲も彼のソロ名義だそうだ。

 あと印象的だったのがスカーレット・ヨハンソンの若さ。彼女の出演作品ってだいたい時系列で観てきているので、若いころからそれほど変わった印象を受けていなかったけれど、過去にさかのぼってこの作品を観たら、やたらと初々しくてびっくりした。

 日本が舞台ではあるけれど、それほど有名な日本人は出てこない。僕がわかったのはダイヤモンド・ユカイ(うさんくさいCMディレクター役。似た人だと思ったら本人だった)と藤井隆くらい。後者は当時に実際放送されていたという番組のシーンにカメオ出演している(とうぜんそんな番組、僕は知らない)。あとうちの奥さんが知っていたのはHIROMIX(最後にVサインしている人)。それくらい。

 とにかく当時の自分がどっぷりと浸っていたジャンルの音楽をBGMに、若き日のスカーレット・ヨハンソンがわれらが故郷・東京で過ごす一週間を描いたこの映画。

 ノスタルジックな気分を煽る要素をたっぷり含んでいるにもかかわらず、僕らの知らない東京の別の顔ばかりを見せられて、ノスタルジーよりもむしろ違和感が勝ってしまうという、なんともいえない気分にさせられる作品だった。

(Apr. 30, 2025)

ニール・ヤング/ジャーニーズ

ジョナサン・デミ監督/ニール・ヤング/2011年/アメリカ/Apple TV

ニール・ヤング / ジャーニーズ

 『羊たちの沈黙』のジョナサン・デミが監督したニール・ヤングのツアー・ドキュメンタリー・フィルム。

 ジョナサン・デミが撮ったニール・ヤングのフィルムは三本あるそうで、これはそのうちの三本目。一本目の『ハート・オブ・ゴールド/孤独の旅路』を観ていないのに、Apple TVでディスカウントで売っていたもんで、そちらを飛ばしてこれを先に観てしまった。ちなみに二本目の『Trunk Show』は日本では未公開の模様。

 この作品はニール・ヤングが自らハンドルを握ってどでかいアメ車を転がし、子供のころに住んでいた故郷の町を通過して、当時の思い出を語りながら、ライブの行われるトロントまでドライブする風景を映し出して始まる。

 会場はのちに1971年の音源がアーカイヴ・シリーズでリリースされたマッセイ・ホール。そのライブから40年近くたって同じステージに現役で立っているのがすごい。

 時期的には『Le Noise』が新譜としてリリースされたあとのツアーなので、ライブはソロでの弾き語りだ。

 ニール・ヤングの弾き語りのライヴ映像作品は以前にも観た記憶があるけれど(『シルバー・アンド・ゴールド』でしたっけ)、今回の作品はツアー・ドキュメンタリーであり、なおかつ有名な映画監督が手掛けていることもあり、単にライヴを撮っただけでは終わらない。

 デモを行った大学生が鎮圧しようとした警察隊による武力行使で射殺されたという痛ましい事件をテーマにした『オハイオ』(そういう歌だったのか……)では、犠牲になった四人の学生のポートレート写真をかかげて追悼して見せたり、曲によってはマイクにセットしたらしきカメラでニール・ヤングの口もとをアップにした映像だけを延々と見せたり。

 冒頭のドライブのシーン等もふくめ、そういうジョナサン・デミの映像作家としての自己主張が感じられる部分がけっこうあって、なんとなくジャン=リュック・ゴダールが撮ったストーンズの『ワン・プラス・ワン』に近いものを感じた。

 まぁ、この作品でしか聴けない曲とかもあるようだし、ニール・ヤングの思い出話とかも含めて、コアなファンにとっては貴重な作品には違いない。

(Apr. 26, 2025)