村上朝日堂 はいほー!
村上春樹/新潮文庫/Kindle
今年は個人的に節目の一年なので、ずっと気になっていた村上春樹の未読作品のうち、Kindleで読める作品をすべて読んでしまうことに決めた。毎月一冊ずつ読めば、たぶん年内ですべて読み終わるはず。
ということで、題して月刊村上春樹。第一弾がこれ。
前に何度か書いているように、僕は村上春樹のエッセイが好きではなくて、『村上朝日堂の逆襲』でめげて、この本は読まずにスルーしていたのだけれども――。
意外とこれが悪くなかった。
まぁ、冒頭からテレビCMの話とか、星占いがどうしたという話とか、僕にとってはどうでもいいような話がつづいたので、やっぱ駄目かと思ったら、その後は比較的共感できる話が多くなる。洋画の邦題がなってないとか、日本人はなんであんなに標語が好きなのかとか、財テクが苦手だとか。うんうん、そうだよねって思う。
ビリー・ホリデイやジム・モリソンやオペラに関するエッセイは、その後の『ポートレイト・イン・ジャズ』あたりの音楽エッセイ集に収録されていてもおかしくない出来で、ちゃんと読みでがあってよいと思った。アタッシュ・ケースをもってバーで飲んでいたら、後日そのせいで陰口を聞かされたという『一人称単数』の原体験になったようなエピソードがあるのも一興。
まぁ、双子の女の子とつきあうのが夢だとか、なにいってんですかって話もあって、昔同じ会社で働いていた女の子が「村上春樹は気持ち悪い」といっていたのを思い出したりもしたけれども。少なくてもこれまでに読んだノンジャンル系の村上春樹のエッセイではこれがいちばんよかった。どうでもいいような話とちゃんとしたエッセイが同居している玉石混交な一冊。
とはいえ、書かれたのが一九八三年からの五年間ということもあって、いささか話が古い。最近ヒットした映画が『スター・ウォーズ』や『E.T.』や『ジョーズ』や『レイダース』だというんだから、ある種の昔話だ。もっと早く読んでおけばよかったとちょっとだけ思った。
いや、もとい。ひとつだけいま読んでよかったことがあった。最初から二番目に収録されている『わり食う山羊座』というエッセイに奥様の誕生日が記されているのだけれど、それがなんと、うちの子の誕生日と同じ日! なんて偶然。
この本が文庫化されたタイミングで読んでいたら、奥さんの誕生日がいつかなんて気にも留めていなかったろう。子供が生まれたあとで読んだからこその発見だった。
この本をいままで読まずにいたのは、この事実を知るためだったのかも――なんてこたぁないな。うちの子が生まれてもう二十七年もたってんだから。もっと早く読んでおけって話だ。
(Jan. 28, 2026)




