薬屋のひとりごと15
日向夏/ヒーロー文庫/主婦の友社/Kindle
『薬屋のひとりごと』も既刊は残すところあと二冊。
今回は猫猫が医局の選抜試験を受けるところから始まる。
受けるというか、無理やり受けさせられるというか。なぜだかもわからず受けたその試験をパスした彼女は、仲間の医官たちとともに、目的を伏せたままの投薬実験の担当を任される。
さて、その投薬実験の目的は?――というのと、その結果として巻き起こるお国の一大事が今回のメインテーマ。
それに絡んで、前回見つかった「華佗の書」がそれなりに重要な役割を果たすことになる。断片的に復元されてゆく「華佗の書」にうきうきする猫猫がおもろい。
いずれにせよ、今回のエピソードは一巻まるまる医局絡みの話だけ。こんな風に一冊がワンテーマで起承転結した巻はこれまでになかった気がする。それも全編、薬とか手術とかの話ばかり。
国を揺るがす医療事件を、それに振り回される猫猫の視点で描いてゆく。そういう意味ではまさに『薬屋のひとりごと』というタイトルにふさわしい一冊という気がしなくもない。
とはいえ、そのせいで登場人物が医官方面に限定気味なので、シリーズでもっとも色気の少ない一冊な気もする。
(Aug. 28, 2025)