パルプ
チャールズ・ブコウスキー/柴田元幸・訳/ちくま文庫
ちょっと前に読んだ『小説の読み方、書き方、訳し方』のなかで、高橋源一郎が「文章の理想像」と語っていたので、いまさらこのタイミングで読むことにした積読のなかの一冊。これがブコウスキーの遺作なのだそうだ。
これ、なにがそんなにすごいのかと思ったら――。
拍子抜けするくらいに、まったくすごくない。でも、肩の力が抜けたあっさりとした文体で、とても読みやすかった。翻訳であることを感じさせないその自然体でさばけた語りこそが高評価の理由なのかもしれない。
若いころに読んだブコウスキーの短編集『町でいちばんの美女』はそんなに読みやすかった気がしないのだけれど、ずいぶんと昔のことで、内容はまったく忘れてしまっているので、比較するのがおこがましい。でも作品の感触はけっこう違った気がする。
いずれにせよ、そのときの印象は「酒と競馬とセックス、そして最低な犯罪がいくつか」という、小市民的な僕には縁遠いタイプの作家というものだった。
ダメ探偵のもとに次々と妙な依頼が舞い込み、主人公の活躍を待たずにそれぞれ勝手に解決していってしまうハードボイルドのパロディみたいなこの作品を読んでも、その辺の印象はさほど変わらず。やっぱ俺には関係ないかなぁと思う。
若いころにロス・H・スペンサーのチャンス・パーデュー・シリーズが大好きだったものとしては、そこそこ通じるもののある世界観のような気がするんだけれど、ブコウスキーという作家のフィルターを通したことで、なんとなくしっくりこなくなっちゃった、みたいな。そんな作品。
いやでも、ブコウスキーって、コーマック・マッカーシーやドン・デリーロと同じで、僕には関係ない作家だと思いながらも、なんとなく気になる存在ではあるので、この先もたぶん読むことはあるだろう。
――というか、これと同時期に買った積読があと二冊あるので、少なくてもそれらは読むことが確定しているんだった。
(Aug. 20, 2026)




