プレイグラウンド
リチャード・パワーズ/木原善彦・訳/新潮社
リチャード・パワーズ三年ぶりの最新作。
今回の作品では時系列の異なる三つの物語が同時進行で語られてゆく。
メインとなるひとつめの舞台はマカテア島というポリネシアの島。かつてはリン鉱石が取れたことで栄えたものの、資源の枯渇とともに衰退(ここまでは実話)。現在は過疎化して、住民が八十人くらいしかいないこの島に、新たな開発事業の話が持ち上がる。その是非をめぐる住民投票の顛末が、群像劇として、最新時間軸で描かれる。
ふたつめはその島で子供ふたりと暮らすアメリカ人夫婦、ラフィ・ヤングとイナ・アロイタ、そして彼らとかつて親密な関係にあったIT長者、トッド・キーンの物語。
貧乏家庭に生まれた黒人のラフィと大富豪の息子トッドがいかに知りあって親友となったか、ポリネシアからの留学生だったイナとラフィが出逢ったことから、彼らの関係がどのように変わっていったかが、認知症が進行しつつあるトッドの回想談として、一人称で語られてゆく。
最後はトッドが幼いころに憧れた女性海洋生物学者、イーヴリン・ポーリューの話。この人も現在はマカテア島の住人で、海で死ぬのが本望とばかりに、九十二になってなおスキューバダイビングに精を出す元気なお婆さん。女性学者の先駆けとして道なき道を歩んできた彼女の波乱に富んだ人生が幼少期までさかのぼって綴られている。
博覧強記なパワーズのことだから、海洋生物学やAIや囲碁の話など、ディテールの
まぁ、それらが最後にどのように結びついてゆくのかと思っていたら、「え、それってあり?」と思うような落ちがつくのには、ちょっとだけ釈然としなかったけれども。
それでもかつての作品ほどの難解さはないし(まぁ、だからといってすべてが理解できたといえないところが情けない)、読み物としてはとても楽しめました。
きちんと読み取れなかった点も多々あったので、これはいずれ再読しないといけない。――というか、パワーズの作品はすべて一度といわず何度でも読み直したい。
(Dec. 18, 2025)





