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  1. 天気の子 complete version / RADWIMPS
  2. 天気の子 / RADWIMPS
  3. 宮本、独歩。 / 宮本浩次
  4. 潜潜話 / ずっと真夜中でいいのに。
  5. エレファントカシマシ @ 東京国際フォーラム・ホールA (Jan 4, 2020)
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天気の子 complete version

RADWIMPS / 2019 / CD

天気の子 complete version (通常盤)

 『天気の子』のサントラで使われた歌もの五曲のフル・バージョンを収録したミニ・アルバム。
 これをもってして「コンプリート・バージョン」と呼ぶのがふさわしいかは疑問だけれど(サントラとこのミニ・アルバムをあわせることでようやく『天気の子』関係の楽曲がすべてコンプリートできるという意味ならばとりあえず納得)、メイン・テーマの『愛にできることはまだあるかい』だけがサントラと同じバージョンの再録で、あとの曲はほぼ倍近い長さのオリジナル・バージョンが収録されている。聞くところによると、サントラのバージョンを長尺に膨らませたわけではなくて、もともとこの長さだったものを映画のために必要なサイズに切り詰めたんだとかなんとか。
 そのせいってわけではないけれど、『天気の子』のサントラをそれなりに聴いた人にとって、このアルバムにはすっかり耳になじんだ曲の知らない歌詞を耳にする意外性がある。
 そう、ふだんはワン・コーラスしか聴けないテレビ・アニメの主題歌のフル・バージョンを初めて聴いて、二番目以降の歌詞を新鮮に思う感覚――あれと同じ感触が味わえるのがたぶんこのアルバムの醍醐味。少なくても一、二曲目の『風たちの声』と『祝祭』についてはそう。ただし『祝祭』には「それはそれでまぁいいか」というくだけたワンフレーズが加わったことで、また違った味わいが生まれているところがいい。
 『グランドエスケープ』と『大丈夫』についてはまたちょっと話が違っていて、サントラ版だとけっこう構成に大胆な変更が加わっているので、単純に二番の歌詞がどうって話ではなくなる。『大丈夫』なんて映画ではサビしか使われていなかったことが、こちらのバージョンを聴くとわかる。
 でもじゃあこちらのバージョンに比べてサントラ版がものたりないかというとそんなことはなくて、僕はかえってサントラ版のほうが好きだったりした。あちらのバージョンには楽曲の美味しいところだけを見事にすくいとってみせた感じがある。インスト部分の長さも含めて、映画の感動をより強く喚起するのはあちらのバージョン。『グランドエスケープ』、『大丈夫』ともに、僕にとってはそうだった。
 これを聴いて僕はあのサントラの編集って見事だったんだなと思った。
(Mar. 29, 2020)

天気の子

RADWIMPS / 2019 / CD

天気の子

 RADWIMPSと新海誠とのコラボ第二弾、『天気の子』のサウンドトラック。
 二度目のサントラ挑戦ということで、バンドにとってはさらなる成長を実感した自信作なのかもしれないけれど、僕個人が受けた全体的な印象は『君の名は。』とそれほど違わず。
 でもそれは決して悪い意味ではなく。トレント・レズナーやジョニー・グリーンウッドらの作るサントラのように映像のシーンに沿った環境音楽のようなふわふわしたものではなく、あくまで全編がバンド・アンサンブル(+管弦楽)を中心にしたものなので、圧倒的に聴きやすくて楽しい。そこが前作と同じ。
 僕が思う『君の名は。』とのいちばんの違いは、歌ものとインスト・ナンバーの関係性。あちらの作品では『三葉のテーマ』のようなインスト・ナンバーが繰り返しパターンを変えて演奏されて、歌もの四曲はそれらからは独立した作品という感じだった。要するに歌ひとつひとつの個性が際立っていた。
 それに対して今作では映画のメイン・テーマである『愛にできることはまだあるかい』や『グランドエスケープ』の旋律がインスト・ナンバーでも繰り返し鳴らされる。そのために全体的な統一感が高くなっている一方で、アルバムのなかで歌ものが鳴らされたときのカタルシスが前作よりも控えめになっている気がした(あくまで当社比)。
 あと、三浦透子という女性ボーカリストをゲストに迎えている点も前作との大きな違い。五曲収録された歌もののうちの二曲は彼女のボーカルによるものだ。
 つまり野田くんがボーカルを取っている曲は三曲しかない。そのせいもあって、なんだか前作よりもRADWIMPSっぽさが薄まっている気がする。
 僕個人はこれまでとくべつ洋次郎のボーカルが好きだと思ったことがなかったんだけれど、このアルバムを聴いて、もっと彼のボーカル曲が入っていてくれればいいのにと思ってしまった。さすがに干支がひとまわりするくらいファンをやっているから、すっかり彼の声が耳になじんでしまっているみたいだ。
 そんなわけでアルバム自体の印象は『君の名は。』と似た感じながら、「どちらかというと前のやつのほうが好きかなぁ」とか思いながら聴いていたのだけれど……。
 映画を観て、そのクライマックスで『グランドエスケープ』や『愛にできることはまだあるかい』がかかったときの異常な高揚感にびっくりしてしまった。
 えーっ、なんでこんなに感動的なんだ?
 ――情けないことに、僕にはその理由がまったく説明できない。
 でもおそらくあの感動は、このアルバムが映画との関係において、素晴らしい成功を収めているということの証明なんだろうなと思った。
 映画に寄り添うことで初めてその真価を発揮する――。
 僕にとってこれはそういうアルバムだった。
(Mar. 23, 2020)

宮本、独歩。

宮本浩次 / 2020 / CD+DVD

宮本、独歩。(初回限定612バースデーライブatリキッドルーム盤)(DVD付)

 2018年に椎名林檎とのコラボ『獣ゆく細道』から始まったエレカシ宮本のソロ活動、その総決算ともいうべきファースト・フル・アルバム『宮本、独歩。』――これがまさに宮本ソロの総決算と呼んでしかるべき内容になっている。
 配信限定だった『冬の花』や発売済みのシングル2枚は当然として、椎名林檎とスカパラのアルバムにすでに収録されていたコラボ曲がこちらにも再収録されているし、高橋一生に提供した『きみに会いたい -Dance with you-』のセルフカバーまで入っている。宮本絡みの楽曲で未収録なのはおそらくシングル『Do you remember?』のカップリングの『If I Fell』だけ。あれはビートルズのカバー(もちろん英語)だから、ここに加えるのはふさわしくない。なので、これぞまさに集大成と呼ぶにふさわしい内容だと思う。
 でもってその出来が予想外のよさだったりもする。
 いや、正直なところ、単独ソロ名義の最初の作品として『冬の花』を聴かされたときには、今回のソロには期待しちゃ駄目なんじゃないかと思ったんだ。あまりにドがつくほどの歌謡曲路線だったから。
 エレカシで僕がもっとも苦手なタイプのナンバーを、さらにグレードアップして持ってこられたら、盛り上がれっていわれても無理な話だ。
 その曲が好きになれなかったせいか、その後のシングル二枚も――楽曲はスピード感があって悪くなかったのだけれど――いまいち盛り上がり切れず。なので正直、満を持してリリースされたこのフル・アルバムも、僕はそれほど聴かずに終わるんじゃないかと思っていた。
 なんたって、前にも書いた通りで、このアルバムにはこれまでに発表してきた曲はすべて収録されていて、収録曲十二曲のうち、このアルバムで初めて聴くのはたった四曲なわけです。これまでに聴いてきた――でもって大いに盛り上がったわけでもない――曲たちに新曲が四つ加わっただけで、そうそう印象が変わるとは思えない。
 ――ところがどっこい。
 それが変わっちゃうんだからびっくりだよ。
 一曲一曲を個々で聴いていたときには「悪くないんだけどねぇ」とか思っていた楽曲が、ここで一枚のアルバムとしてまとめてどーんと鳴らされてみると、これが予想外の気持ちよさだったりする。個々の楽曲のポテンシャルの高さが、アルバム単位になったことで一気に花開いた感じ。
 なにがいいって、とにかくアッパーな曲が多いところ。一曲目の『ハレルヤ』から、横山健とのコラボ『Do you remember?』をはさんで、ラストの『昇る太陽』に至る、この曲順が素晴らしい。これらハイ・エナジーな珠玉の三曲のイメージがアルバム一枚分に膨れ上がったってくらいの印象がある。
 このなかで聴くと、ちょっと待てよと思った『冬の花』や、他人のためじゃないとこんな曲書けないだろうと思った『きみに会いたい』なんかも、すごく自然に気持ちよく聴けるから不思議だ。林檎さんとスカパラの曲もまったく違和感なくアルバムの流れに溶け込んでいるし、『Fight! Fight! Fight!』のポール・マッカートニー風のアレンジも、いかにも村ジュンの仕事って感じで笑えていい(うちの奥さんには歌詞がつまらなさすぎると不評ですけど)。
 まぁ、このところのつねで歌詞については僕も不満をおぼえるところが少なくないし、ボーカリストとして(特に高音部で)ちょっと衰えたかなぁと思うところがなくもないけれど、それでも五十もそろそろなかばになってなお、この疾走感を生み出し得るパワーには敬服するしかない。51分間というトータルタイムの中から宮本浩次という人のさまざまな魅力が溢れ出まくっている。
 やはり宮本はすごかったと思わされた一枚。
(Mar. 20, 2020)

潜潜話

ずっと真夜中でいいのに。 / CD / 2019

潜潜話

 去年のうちになにか書かなきゃと思いつつ、結局年を越してしまいました。
 現時点での僕にとっての最重要アーティスト「ずっと真夜中でいいのに。」――通称ずとまよ――待望のファースト・フル・アルバム『潜潜話{ひそひそばなし}』。
 気がつけば去年の僕はたった六枚のアルバムの感想しか書いていないけれど、その理由がこのずとまよだった。去年の夏ごろにこのバンドと出会って以来、僕はほぼこのバンドしか聴いてないぜってくらいの状態になってしまっていたから。あ、あとヨルシカ。去年は完全にこのふたつのバンドが僕の音楽生活の中心だった。
 いやしかし、なぜに俺はこれほどまでにずとまよが好きなんだろうって。自分でも不思議に思うくらい、僕はACAねの作る音楽に夢中になっている。
 このアルバムの収録曲は十三で、そのうち六曲は先行する二枚のミニ・アルバムから再収録されている。ミニ・アルバムには六曲ずつが収録されていたから、つまり既存曲のちょうど半分がこのアルバムに再収録されていることになる。
 僕は去年の夏以来その二枚のミニ・アルバム――『正しい偽りからの起床』と『今は今で誓いは笑みで』――を、それこそアナログ盤だったら擦り切れているんじゃないかってくらいに聴いてきた。なのでその収録曲がこのファースト・アルバムにも再び収録されることで、いやおうなくアルバムの新鮮さが損なわれてがっかりする――はずなんだけれど。
 まったくそんなことがないことに、自分でも驚く。
 僕はこのアルバムに再収録されたナンバー――『脳裏上のクラッカー』『勘冴えて悔しいわ』『眩しいDNAだけ』『ヒューマノイド』『正義』『秒針を噛む』の六曲――をいまだ飽きることなく、繰り返し聴きつづけている。
 なんでこんなに飽きないんだろう?
 ほんと、僕は自分でも不思議に思うくらいにずとまよが大好きだ。
 なにが好きって、その性急に言葉を詰め込むビート感が好き。難解な日本語の歌詞が好き。メロディーのセンスが好き。多彩なアレンジが好き。そしてACAねの声が最高に好きだ。
 ――要するにお前はずとまよのすべてが好きなんじゃないかよって話だ。
 わがことながら、自分の娘くらいの女の子が作った音楽をこんなに好きになってしまった自分がちょっと気持ち悪い。でも好きなんだからどうしよーもない。
 このアルバムでは『Dear Mr「F」』『グラスとラムレーズン』『優しくLAST SMILE』の三曲で、それまでに聴かせてこなかったスローバラードを披露しているのも意外性があった(この子は速いナンバーしか歌わないのかと思っていたから)。『蹴っ飛ばした毛布』のジャズ・テイストも新鮮だし、『こんなこと騒動』でのイントロのスキャットを歌詞カードに「でぁーられったっとぇん」と書いてみせるセンスには笑った。
 あと『優しくLAST SMILE』で女子高生の恋愛をストレートに歌ってみせたのも驚きだった。それまでの楽曲と違って、ハイスクールライフを描いた歌詞があまりに直球で少女マンガ的すぎたもので、ライヴで初めて聴いたときには他人の曲のカバーかと思ったくらい。『居眠り遠征隊』の歌詞にも高校生活的なキーワードが多いし、あぁ、ACAねさんにとっては高校時代っていまだに直近なんだなって。この子って本当に若いんだなぁってしみじみと思った。
 ほとんど大好きな曲ばっかりのアルバムだけれど、あえてフェイバリット・ナンバーをひとつだけあげるとするならば、『ハゼ馳せる果てまで』。
 「曖昧な解決/どう踠いても/単純問題回答ならば」という歌いだしから始まって、「異なる自分を愛していたいの」と歌いきって終わるところまで、構成も歌詞も音も歌もすべてが完璧な4分5秒のポップ・ソング(タイトルは意味不明だけど)。
 もう本当に好きで好きでしかたありません。
 果たして僕がこの深い深い「ずとまよ」沼から抜け出す日はいつになるやら……。
(Mar. 08, 2020)

エレファントカシマシ

新春ライブ2020/2020年1月4日(土)/東京国際フォーラム・ホールA

 去年の新春ライブから一年ぶりとなるエレカシのライブ。
 このところ野音はチケットが取れなくてあたりまえになってしまったし、去年は宮本のソロがあってエレカシがほとんど活動していなかったこともあって、じつに一年ぶりということになった。
 ファンになってから一年もエレカシを生で観なかったのって、たぶん宮本が難聴をわずらったとき以来二度目だ。まあ、オハラで宮本の弾き語りを観ているので、実際には一年ぶりってほどのインターバルは感じなかったけれど。
 まあ、なんにしろ宮本のソロよりエレカシがいいよねって。この日の東京国際フォーラムに集まった大半の人がそう思ったに違いない。
 宮本のソロが悪いとはいわないけれど、やはりエレカシの宮本こそが本当の宮本。ミック・ジャガーのソロではストーンズほどには盛り上がれないのと一緒。エレカシこそが宮本の真骨頂。エレカシのステージには、そう感じさせてくれる安心感がある。
 どんなに宮本のソロでのバック・メンバーが上手かろうと、何十年って歴史を重ねてきたバンドの楽曲郡とアンサンブルの味わいにはかなわない。宮本浩次というボーカリストの魅力を最大限に引き出せるのはエレカシだよなぁって、この日のステージを観ながらしみじみと思った。
 もうひとつ、この日のステージを観て思ったのが、ヒラマミキオという人がいかにエレカシのバンド・サウンドに大きな安定感を与えていたかってこと。
 というのも、この日のステージにはなんとミッキーがいなかったから。かわりに山本幹宗という人がギタリストとして加わっていた。
 おいおいおい、ミッキー抜きのエレカシ観るのっていつ以来だよ?
 『MASTERPIECE』のツアーではフジイケンジがギターを弾いたと聞いているけれど、僕個人はつまらない理由でそのツアーを観ていないし、そのほかのギタリストはとんと記憶にないので、おそらくミッキー以外の人がギターで加わったエレカシを観るのって、僕にとってはこの十何年で初めてのことなんじゃないかと思う。
 調べてみたら、ミッキーが初めてエレカシのステージに登場したのが2008年の『STARTING OVER』リリース後の渋公だから、それからかれこれ十二年になる。そのほとんどのステージで石くんのとなりではヒラマミキオがギターを弾いていた。
 キーボードは蔦谷くんから村☆ジュンへと引き継がれ、ときには細海魚さんやサニーさんがかわりを務めることがあっても、ギターはいつでもミッキーだった。
 おかげでいつのまにか僕がエレカシの音として思い描くイメージは、ミッキーのギター抜きでは考えられなくなっていた。ミッキー不在のこの日のエレカシの音を聴いて、僕はそのことに気がついた。
 やっぱ違うんですよ、ギタリストがひとり替わっただけでバンドの印象が。
 今回のヤマモトカンジという人が比較的ラフなギターを弾く――そういう意味ではエレカシ本来のイメージに近い――ギタリストだったので、なおさらミッキーの不在が強調された印象があった。
 ミッキーはもとより安定感のある綺麗なギターを弾くギタリストだし、宮本をはじめとするバンド・メンバーと長いこと苦楽をともにしてきただけあって、ぴたりと息があっていた。宮本の破天荒さを笑って受け止めて、バンドの音に一本筋の通った安定感をもたらしていた。
 それと比べてしまうと、やはり初登場のカンジ君は様子を見ながら手探りで演奏している感じが否めなかった。もとよりエレカシは技術的には問題の多いバンドだし、あいかわらず宮本の暴走も激しいし。この日は大半の曲に金原千恵子さん率いる弦楽四重奏が加わっていたこともあって、なおさらアンサンブルには難しいところがあったんだろう。お疲れさま。
 ということで、この日のエレカシはひさびさに微妙なアンバランスさを感じさせる演奏となっていた。
 でもまぁ、それはそれでまたこのバンドの持ち味かなと思う。よくもわるくも毎回どこかがちょっとずつ違う。三十年以上に渡ってそのライブに通いつづけているのに、いまだまるで飽きることがないのは、そういうバンドのまとまらなさゆえなのだろうから。
 まぁ、なにはともあれ、十年以上の長きにわたっておなじみだったミッキーがいないのはどうにもにさびしかった。なんで今回不在だったのかわからないけれど、また次のツアーでは彼のギターが聴けたらいいなと思っている。もしも宮本のソロの都合で仕事がなかったせいで、愛想をつかされたなんていうだったら悲しすぎるから。
 以上、閑話休題。

【SET LIST】
    [第一部]
  1. 俺の道
  2. 平成理想主義
  3. 新しい季節へキミと

  4. 悲しみの果て
  5. 真冬のロマンチック
  6. ふたりの冬
  7. 昔の侍
  8. 自由
  9. i am hungry
  10. ドビッシャー男
  11. 遠い浜辺
  12. 笑顔の未来へ
  13. 桜の花、舞い上がる道を
  14. 未来の生命体
  15. 旅立ちの朝
  16. 風と共に
  17. 俺たちの明日
    [第二部]
  18. デーデ
  19. RESTART
  20. ガストロンジャー
  21. ズレてる方がいい
  22. 悪魔メフィスト
  23. 風に吹かれて
  24. 今宵の月のように
  25. やさしさ
  26. ファイティングマン
    [Encore]
  27. 友達がいるのさ

 さて、昨年につづき今年の新春ライブでも僕らはいい席に恵まれた。今回は前から八列目。去年は席こそもっと前だったけれど、すみっこでストリングス・チームがまったく見えなかったのに対して、今年は金原さんたちと村山☆潤が真正面にいて、ちゃんと全員が視野に納まる位置だった(僕のとなりにいたうちの奥さんは金原さんが見えなかったらしい。ごめん)。おかげでストリングスの音がビビッドなのがとてもよかった。『昔の侍』のイントロなどは過去最高の迫力だった。
 この日のライブで「やっぱりエレカシはいいよなぁ」と思わせたのは、セットリストのよさもあったと思う。
 最近の代表曲である『Easy Go』や『RAINBOW』など――楽曲はハードで最高だけれど、喉への負担が大きすぎて、宮本がちゃんと歌えない曲――がこの日は温存されて、ボーカリスト宮本浩次の魅力が最大限に生きるタイプの曲ばかりが選ばれていた印象だった。
 そうそう、みんなが大好きな宮本の歌って、やっぱこういうのだよなと思わせた(まあ、『悪魔メフィスト』みたいに、なんで毎回こうなっちゃうのかなって曲もありましたが)。
 個人的にはひさびさに『旅』が聴けたのが嬉しかった。『真冬のロマンチック』からの「冬の歌」三連発はとても味わい深かったし、『未来の生命体』と『旅立ちの朝』がつづいたところには意外な洋楽テイストがあふれていて、これまでにないロック・バンドとしての懐の深さを感じさせた。
 あと、今回のライブで個人的におもしろかったのが、通路を挟んで僕の右隣にいた女の子の熱狂ぶりがものすごかったこと。とくに第二部に入って、『RESTART』、『ガストロンジャー』、『ズレてる方がいい』などが連発したあたりがすごかった。曲が始まるごとに興奮のあまり、両の手のひらを天に向けて、元気玉を作らんばかりの勢いだった。あれくらい熱狂できたら本気で楽しいんだろうなぁって思った。いやはや、とても微笑ましかった。
 この日のライブでもっともエレカシらしさ――というか宮本らしさ――を感じさせたのがそんな第二部の最後の部分。
 本当は『今宵の月のように』で終わる予定だったんだと思うのだけれど、宮本がきまぐれを起こして、すぐにつづけてアコギの弾き語りで『やさしさ』を歌いだした。
 お~、アコギの『やさしさ』は超レア!――とか思っていたら、ワンコーラス歌い終わらないうちに中断。「やっぱみんなで演奏しよう」と仲間たちに問いかけて、あらためていつものアレンジ+村☆ジュンのオルガン+宮本のアコギというスタイルで演奏し直してみせた。
 まあ、アコギはワンコーラスだけで弾くのをやめてしまったけれど、それでもこれまでにないアレンジの『やさしさ』はとても味わい深くてよかった。村☆ジュンのオルガンもとても心に沁みました。
 このあとつづけて演奏された『ファイティングマン』もあきらかに予定外。なぜって、その時点でセイちゃんはベースを置いて帰ろうとしていたから。石くんのギターもいつもみたいにビシッとチューニングが決まっていなかったし、いまいち締まりがない感じになってしまっていて、ちょっと笑えた。でもまあ、そういう突発的な宮本の暴走っぷりが見られるのもエレカシのライブならではの楽しみだったりする。
 ということで、そのあとあらためて再登場して、金原さんらも含めた出演者全員で演奏されたアンコールの〆は『友達がいるのさ』。ひさびさのエレカシとの再会を締めくくる意味でも最高のラスト・ナンバーだった。
 今年も宮本のソロ活動が中心の一年になってしまいそうだけれど、せめてもう一度くらいはエレカシのライブをみたいとせつに思うよ。
(Jan. 26, 2020)