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最近の五本

  1. ずっと真夜中でいいのに。 @ 川口総合文化センター・リリア (Nov 10, 2022)
  2. エレファントカシマシ @ 日比谷野外大音楽堂 (Sep 25, 2022)
  3. SONICMANIA @ 幕張メッセ (Aug 19, 2022)
  4. A Light for Attracting Attention / The Smile
  5. 余命10年 / RADWIMPS
    and more...

ずっと真夜中でいいのに。

GAME CENTER TOUR『テクノプア』/2022年11月10日(木)/川口総合文化センター・リリア メインホール

 九月末に神奈川からスタートしたずとまよの最新ツアー『テクノプア』。全二十六公演のうち、十三回目の公演を埼玉県の川口で観た。この日でちょうどツアーの半分を消化した計算になる。
 毎回豪華なずとまよのステージセットだけれど、今回は『やきやきヤンキーツアー』のコンセプトをコンビニからゲームセンターに変更してグレードアップした感じ。
 ステージ向かって右手にゲームセンター『テクノプア』の母屋があって、屋上にはニコちゃんマークのアドバルーンが上がり、「レトロゲーム高価買取」という縦書きの垂れ幕が下がっている。この文言がライブがスタートにあわせて「川口店OPEN」に変わり、終演後には「新規会員募集中」に変わっていた。こんなところまで遊び心全開。
 ステージ左手は(60インチくらい?の)液晶モニターがあったこと以外、どんなだったか、いまいちよく覚えていない(困った記憶力だ)。印象的だったのは電柱が立っていて、そのシルエットが背景の夜空に浮かび上がり、電線が左右にぶらんと垂れていたこと。この電線に電飾が配されていて、ライブのスタートとともにネオンのようにひかり輝き、なにかの曲では流れ星が流れる演出にも使われていた。僕が過去に見たなかで世界一カッコいい電線だった。
 もうひとつのずとまよライブの名物がACAねのおもしろおかしい登場シーン。この日はステージ中央に自動販売機が二台設置されていると思ったら、その前面が観音開きに開いて、残ったドリンクのフレームを蹴倒して出てきました。毎回ちゃんと笑わせてくれて素晴らしい。
 ステージが暗いので、ACAねがどんな格好をしているのか、わからないのは毎度のことだけれど、この日はどんな髪形をしているかもよくわからなかった。髪がつんつん立ったショートのウィッグをつけてた? 違うかな。なんかぼさぼさな感じでした。
 今回のツアーではバンドメンバーが流動的で、この日は村☆ジュンがいなかった。メンバーで名前がわかったのはギターの佐々木コジローくんとOpen Reel Emsumbleのふたりだけ。といいつつ、佐々木くんもかつらをかぶった似非ヤンキー・スタイルだったので、途中で名前が呼ばれるまではその人とわからなかった。
 アンコールの『あいつら全員同窓会』でメンバー紹介のコーナーがあったのに、モニターの表示は「ベース」とか「ドラム」とか、パート名だけで、個人名が出ないし。そこはちゃんと名前を教えて欲しかったですよ。
 ということで、この日のバンドはドラム、ベース、ギター、キーボードに、管楽器がふたり、オープンリールふたり、そしてACAねの九人編成。
 そういや、ずとまよのファンって、いまいちライブ慣れしていないというか、ライブずれしていないというか、おとなしめな人が多くて、いつもバンドメンバーが出てきても座ったままで、主役のACAねが登場して初めて立つという感じなのだけれど、この日もその点は一緒ながら、開演を待つあいだにBGMでかかっていた曲にあわせて、しゃもじの手拍子が巻き起こったのにはびっくりした。おかげで開演前から場内はアンコール待ちな雰囲気に。大半がしゃもじを持っているからの珍事。たぶんずとまよのライブでしかあり得ないのではと思います。

【SET LIST】
  1. マイノリティ脈絡
  2. はう"ぁ ~ ヒューマノイド ~ 勘冴えて悔しいわ [メドレー]
  3. MILABO
  4. 猫リセット
  5. 勘ぐれい
  6. 秒針を噛む
  7. 夏枯れ
  8. 彷徨い酔い温度
  9. 正しくなれない
  10. 消えてしまいそうです
  11. 暗く黒く
  12. 脳裏上のクラッカー
  13. ミラーチューン
  14. 正義
  15. お勉強しといてよ
    [Encore]
  16. Dear Mr「F」
  17. 残機
  18. あいつら全員同窓会

 ライブは背中に電飾を装備したOpen Reel Emsumbleのふたりによるコミカルなパフォーマンスでスタート。つづいてドラム・ソロなんかがあってから、ようやくACAねが自動販売機から出てきた。
 オープニング・ナンバーは『マイノリティ脈絡』。ライブのクライマックスを飾れるテンションを持ったこの曲から始まるのだから、当然ライヴは最初から大盛り上がり。
 二曲目が『はう"ぁ』から始まる三曲メドレーで、その次が『MILABO』(『秒針を噛む』もこの日は前半)という惜しみなさだった。
 今回のツアーの特別企画・其の一がつぎの『猫リセット』で、ここではACAねがゲームセンター『テクノプア』についての口上をウグイス譲のようなナレーションで読み上げてみせた。歌はワンコーラスだけで、後半に8ビットのゲーム・サウンドを使ったインスト・コーナーがフィーチャーされていた。
 『テクノプア』にまつわるナレーションはその後も後半とアンコールで二度ほどあった。YouTubeなどの配信ではいまだにたどたどしいACAねちゃんだけれど、ライブでのMCは以前よりも断然はきはきしていて、まったく問題なし。あぁ、ちゃんと成長してんねぇって思った。
 本ツアーで初公開となった『夏枯れ』からの数曲は、ACAねがゲームセンターの屋上にあがって――ライブで主役がはしごを昇る姿を見たのって初めてな気がする――そこに配置されたドーム状のセット――なんだかよくわからなかったけれど、ザクの角みたいのが生えていたから、モビルスーツの頭とかかもしれない――で鉄琴を弾いたり、ガチャを回したり。『彷徨い酔い温度』は演奏はほぼ全部カラオケで、メンバーも何人かそこへ登って、ACAねのまわりでわちゃわちゃしていた。
 ギターがコジローくんだとわかったのは、この曲で彼がバイオリンを弾いていたから。バイオリン弾けるギタリストなんてそんなにいないだろうから、あ、きょうもコジローくんなのかと思いました。
 このパートで披露された今回のツアーの目玉企画のひとつが、ガチャガチャをまわして出た曲をその日の気分のアレンジで演奏するというもの。
 最初に出たカプセルは『ニャンキャット』とかなんとかいう曲で、「にゃんにゃんにゃにゃーん」とかアカペラで三十秒くらい歌って即終了。
 次が『正しくなれない』で、こちらはコジローくんに「怠惰な感じ始まって徐々に元気になる少年のようなアレンジで」みたいなリクエスト(うろ覚えなので間違っている可能性大)を出しての演奏だった。
 屋上から降りてからは、新曲『消えてしまいそうです』を含めた代表曲で盛り上げ、本編の最後はギターを弾きつつ『お勉強しといてよ』で締め。ACAねは歌う前にあまりタイトルを紹介することってないので、この曲のときに『お勉強しといてよ』のタイトルを力強く口にしていたのが妙に新鮮だった。
 アンコールでは誰かが舞台のしもてから派手な電飾を施されたデコチャリを運転して出てきたと思ったら、それがまさかのACAねだった。ステージにチャリが出てくるあたりも、やはり今回はヤンキーツアーからの流れを踏襲している感じだった。
 アンコール一曲目の『Dear Mr「F」』はピアノだけの演奏で始まって、後半からドラムが入るアレンジ。キーボードが村☆ジュンではないこともあって、いつもとはまた違った印象だった。うちの奥さんもいっていたけれど、電子ピアノでも弾く人によって印象が変わるのってけっこう不思議な感じだ。
 アンコール二曲目がこの日のライヴで個人的にもっとも楽しみにしていた、最新曲にしてアニメ『チェンソーマン』のエンディングテーマ『残機』。本編でやらなかったので、もしもやらないで終わってしまったらどうしようと、ちょっとはらはらした。この曲ではメンバー全員、肩のあたりにつけた風船ふたつが頭上でふわふわしてました。
 いやしかし、『残機』にしろ、『ミラーチューン』にしろ、そしてこの日のラスト・ナンバー『あいつら全員同窓会』にしろ、この一年ちょいのあいだにリリースされた新曲がどれも強烈にダンサブルで最強すぎる。
 ゲームセンターの外壁に「強」の文字が電飾で飾ってあったけれど、本当にいまのずとまよって最強だと思う。もう毎回楽しくてしょうがない。
(Nov. 13, 2022)

エレファントカシマシ

2022年9月25日(日)/日比谷野外大音楽堂

 四年ぶりに野音でエレカシを観た!
 僕個人にとっては四年ぶりだけれど、エレカシにとっても二年ぶりの野音。
 噂ではチケットの抽選には何万人という応募があったらしい。
 野音は立ち見も込みで約三千席だそうだから、仮に三万人の応募があったとすると、当選確率は十分の一。つまりエレカシの野音はいまや十年に一度観られたら運がいいというレベルのレア・コンテンツになってしまっているということだ。
 そんなん、もうチケット取れるはずないじゃん!――と思って、最初からまったく期待していなかったから、今年はあっさり取れてしまってびっくり。しかも夫婦そろって(席は当然別々)。一つ屋根の下で暮らしている人たちで、この夜一緒にエレカシを観れた人ってどれだけいるんだろう。どんだけラッキーなんだ、俺たち。
 まぁ、この先もこのラッキー運とハッピー運がそう長くつづくとも思えないので、ふたりで一緒に野音でエレカシを観るのもこれが最後かもしれないという覚悟で拝見してきました。2022年のエレカシ野音。
 半年以上にわたって宮本がソロで大活躍してきたあとなので、今回の野音はどういう風にソロとの差別化をはかるんだろうと思っていたら、その回答はいたって単純だった。宮本がギターを弾くこと。
 ソロではまったくといっていいほどギターを弾かなかった宮本が、この日は大半の曲でギターを弾いていた。弾かなかったのはアンコールとあと数曲という印象。
 ロック歌手として、頼れるメンバーにバックを任せてスポットライトを浴びていたソロからバンドに戻るにあたり、宮本はみずからバンド・サウンドの一翼を担うことでその違いを鮮明にさせた。基本的にやっている音楽はそう変わらないはずなのに、ここまでバンドとソロで音の感触が違う人も珍しいんじゃないだろうか。
 サウンドの完成度でいえばソロのほうが圧倒的に高いんだけれど、宮本の乱暴なへたうまギターが加わったエレカシのバンド・サウンドは、ここでしかあり得ない唯一無二の存在感で日比谷の夜空に鳴り響いていた。
 あと、ギターということでいえば、今年の野音で個人的にいちばんのポイントは、サポートのギタリストが佐々木"コジロー"貴之くんだったこと。
 ずとまよのライヴですっかりお馴染みになった彼のプレーをエレカシでも――それもよりによって野音で観られようとは!
 同じ週の週末からずとまよのツアーが始まるので、コジローくんはそちらに出るものと思い込んでいたから、まさか野音で彼に会えるとは思っていなかった(今回はずとまよのツアーには不参加みたいだけれど)。
 考えてみれば、佐々木くんは二年前の野音(Blu-rayで観た)でもギターを弾いているので、この日のセットリストの過半数はそのときにプレイ済みだから、お願いするにはうってつけだったのかもと、あとから思ったりした。
 とはいえ、ずとまよで彼がどれだけ上手いギタリストか知っている僕からすると、エレカシに彼を加えるのはいささかもったいない感がなきにしもあらず。とくにエピック時代の曲中心だった前半は出番が少なくて手持ち無沙汰っぽかった。あぁ、なんて佐々木貴之の無駄遣い……とか思いながら観てました。
 でも、ステージに近い彼の対面の席で観ていたうちの奥さんによると、コジローくんは終始楽しげでニコニコ嬉しそうだったそうだ。本人が大喜びならばきっとオーケーなんでしょう。今後とも末永くなかよくしていただければと思います。
 それにしても彼ってもう三十八歳なのか。もっと若いのかと思っていた。
 まぁ、ということで、エレカシの四人に佐々木貴之と、野音といえばすっかりこの人って感じになっている細海魚さんを加えた六人編成でのエレカシ野音2022。

【SET LIST】
    [第一部]
  1. 過ぎゆく日々
  2. 地元のダンナ
  3. デーデ
  4. 星の砂
  5. ふわふわ
  6. 偶成
  7. 月の夜
  8. 珍奇男
  9. 昔の侍
  10. I don't know たゆまずに
  11. 未来の生命体
  12. なぜだか、俺は祈ってゐた。
  13. この世は最高!
  14. 悲しみの果て
  15. RAINBOW
    [第二部]
  16. 東京の空
  17. 武蔵野
  18. 風に吹かれて
  19. 赤い薔薇
  20. ズレてる方がいい
  21. 俺たちの明日
  22. so many people
    [Encore]
  23. 星の降るような夜に
  24. 友達がいるのさ
  25. ファイティングマン

 僕の席はCブロックの右手、うしろから数えたほうが近い席で、ステージは遠目だったからメンバーの表情とかまではわからなかったけれど、それでも野音の規模ならば、どこで観ても快適。とくに今回はチケットがファンクラブでも取れないくらいだから、観客の大部分が女性で、僕の視野に入る男性はほんの数人という状況だった。
 あまりに女性ばかりで、自分がそこにいるのが場違いな感じだったけれど、でもおかげでとても視野が広いっ! 僕は特別背が高いわけではないけれど、それでも日本人女性の平均に比べれば十センチ以上は高いので、ステージまでなにも遮るものがなくて、非常に観やすかった。
 オープニングナンバーの個人予想は『夢のちまた』か『おはようこんちにちわ』、はたまた『俺の道』――だったのだけれど、宮本が選んだ一曲目は『過ぎゆく日々』だった。予想外の極み。しかも一曲目から男椅子にすわっての演奏。
 まぁ、でも考えてみれば、宮本が椅子にすわったままギターを弾いて歌うというスタイルは、宮本のソロではあり得ないエレカシならではの光景なので、この曲を一曲目に選んだのはすごく考えられた賢い選択だったように思う。
 この曲を始めとして、第一部には個人的にもっとも愛着のあるエピックとEMI時代の曲がこれでもかと並んでいた。なかには『ふわふわ』とか『偶成』とか『I don't know たゆまずに』とか、うわー、いつ以来だろうってレア・ナンバーも含まれていた。これだから野音はたまらない。
 『珍奇男』で途中でアコギをエレキに持ち替えるのに失敗して、演奏がいったん止まってしまったあたりも安心のエレカシ印。ああいうときって最初からやり直したりすることもあるけれど、この日はライヴ配信されていたからか、途中からそのまま演奏を再開したりしていた。
 そういえば、「あなたたちに捧げます」みたいなことをいって始めたから、『悲しみの果て』かと思ったら、『なぜだか、俺は祈ってゐた』だったのも、なにげに感動的だった。この曲って本当にいい曲だよねぇ……。しみじみ。
 あと、この曲だったと思うけれど、石くんのギターソロがよかった。ひさびさに石くんカッコいいって思いました。
 第二部の最初が『東京の空』ってのも今回の最重要ポイント。第一部は懐古的・内省的な曲が多かったから、第二部は一転して明るいサービス・メニューになるかと思っていたのに、いきなりエレカシ史上もっとも長くて重い文学的な曲を持ってくるという。さすが、これでこそ俺たちの宮本。
 第二部はそのあとちゃんと明るめの曲をたくさんやって、最後は『so many people』で締めて本編終了。
 この時点で『今宵の月のように』も『ガストロンジャー』もやっていなかったから、アンコールはそれらの曲を含めてたっぷりやるつもりなのかと思ったら、そんなことなし。どちらもこの夜は披露されなかった。なにげにこの二曲がそろって外れるのってレアな気がする。
 でも、今回の野音のアンコールは過去最高のサービス・メニューだった。
 だって、いまや野音での定番中の定番と呼べる『星の降るような夜に』と『友達がいるのさ』が二曲つづけて演奏されるなんて、野音でこれ以上の演出はあり得ないでしょう? この二曲のメドレーを今後とも野音の定番にして欲しいくらい。
 そしてそのあとつづけて『ファイティングマン』を演奏して今年の野音は終了。
 アンコールの締めは『花男』か『待つ男』の印象が強いけれど、この日はエレカシの野音復活を祝う意味で、『ファイティングマン』で締めるのがふさわしかった。
 あと、この三曲は宮本がハンドマイクだったので、佐々木くんの存在が際立っていた。この夜いちばん音がきれーでした。ガチャガチャと取っ散らかったエレカシらしい演奏をたっぷりと聴かせたあと、宮本の歌がくっきりと浮かび上がってくる、すっきりとクリアなギター・サウンドで最後を締めたのには、なんともいえない高揚感があった。
 不幸にも去年で野音の連続公演記録が切れてしまって、再出発となる今回の野音だから気合入りまくりですんごく濃い内容になるかと思っていたけれど、全二十五曲で二時間半とちょいというのは、エレカシにしては予想外にあっさりめな気がした。
 でも、すでにメンバー全員五十代後半ですもんねぇ。これくらいがちょうどいい匙加減なのかもしれない。いままでのボリュームが可能過ぎただけで。あまり無理をせずに、末永く活動をつづけてください。心からお願いします。
 日没前に始まって、次第にステージが暗くなってゆき、終わるころにはすっかり真っ暗。見上げれば樹影の先の夜空にそびえるビルの灯り。曲間のあいまには虫の鳴く声が聞こえる――。そんな野音でエレカシを観る喜びはなにごとにもかえがたい。
 あらためてそう思った早秋の一夜。
(Oct. 02, 2022)

エレカシ特集はこちら

SONICMANIA

2022年8月19日(金)/幕張メッセ

 サマーソニックの前夜祭的オールナイトイベント、ソニックマニアに行ってきた。
 いわゆる夏フェスに参加するのはじつに三年ぶり。
 何度も書いている気がするけれど、僕は基本的に出不精なインドア人間で、ライヴ大好きってわけではないし、ひと晩中マスクをしたまま過ごすのも気が進まないので、ひとりだったら絶対に行っていないのだけれど、うちの奥さんがプライマル・スクリームのスクリーマデリカ再現ライブを観たいというし――でもって、オールナイトイベントにひとりで参加するのはさびしいというので――思い切って行くことにした。
 いやしかし、コロナ禍がおさまるまでは必要最低限のライブしかゆかないつもりだったのに、僕にとってはマストなエレカシ宮本とずとまよが盛んにライブをしてくれちゃうので、今年はこれがじつに七本目だ。これから先のチケットがまだ三枚あるので、今年はひさびさにライブを観た数が二桁に乗ることがすでに確定。いまだ新型コロナウィルス騒動は収まっていないけれど、僕個人の音楽生活はなし崩し的に例年並みに戻ってしまった気がする。

 ということで、この日のトップバッターはマウンテン・ステージのカザビアン。
 実際のオープニング・アクトはほかのステージのほかのバンドだったけれど、オールナイトなのに無理して本命のプライマルの前に疲れてしまっては仕方ないので、知らないバンドはスルーした。
 若いころはせっかくフェスに参加するんだから、ひとつでも多く観ようと欲張ったものだけれど、まぁいいかと思ってスルーしてしまうあたりが若くない証拠。なんたっていまや夫婦あわせて百十歳。こういうイベントに参加するのは、そろそろ年寄りの冷や水って言葉がふさわしいのではと我がことながら思う。
 カザビアンって不思議なバンドで、やっている音楽は90年代以降のUKロックのいいとこ取りをしたような感じで、基本的に僕の守備範囲だと思うのだけれど、なぜかわからないけれど聴く気にならない。この日の演奏を観ていても、オアシスやフランツ・フェルディナンドを思い出させる音で、これが人気を博するのはわかるよなぁとは思うのだけれど、不思議と僕個人は入れ込めないでいる。
 ということで、もとより興味が薄いところへきて、この日はタイムテーブルの都合で最後までフルでは観られないことが決まっていたせいもあって、なおさら身が入らない。つぎのステージが始まる前に喉の渇きをいやしておきたかったので、冒頭のちょっとだけ観てからステージを離れてビールを買いにゆき、そのあとふたたび戻ってきて最後のほうの二、三曲だけ観た。――いや、観たというよりか、単にステージのみえるところに座っていたというのが正しい気がする。
 ステージの背景には漢字のようで漢字ではない謎の象形文字があしらわれていたけれど、あれはなんだったんでしょうかね。

 カザビアンの次はとなりのソニック・ステージに移ってCornelius。
 コーネリアスといえば、去年の東京五輪で若いころのいじめ問題が再燃して小山田圭吾が活動休止に追い込まれたのが記憶に新しい。
 今回のステージはフジロックで再始動した彼らの復帰ライブ後第二弾ということで、集まったオーディエンスは当然ファン中心ということもあり、会場は小山田くんの復帰を祝う温かい空気に包まれていた――ような気がした。
 内容は今回も『Mellow Waves』のツアーを踏襲したもの。映像は四年前のソニマニで観たときと違っているぽかったので、細かいところでブラッシュアップされているんだろうけれど、それでも全体的な演出手法が同じだから、やや新鮮さに欠ける印象が否めなかった。
 コーネリアスのステージって、全編に途切れなく映像が用意されているせいで、ライヴを観ているって印象が薄いのが難点のような気がする。演奏している小山田くんたちメンバーにスポットライトがあたらないというか。僕らの目はいやおうなくモニターに映る映像を追ってしまうので、演奏者が目立たない。結果、あまり楽器を演奏している姿が視野に入らないゆえに、生演奏の印象が薄くなる。
 全編MVのように完成度の高い映像と生演奏を同期させるコンセプトは唯一無二でおもしろいのだけれど、それって要するにライヴというよりはMVの延長戦上にある印象だから、繰り返し観せられるとどうしても飽きがくる。その点、演出がほとんどなく、むきだしの歌声と生演奏があるだけゆえにまったく飽きることがないエレカシのライヴとは対極にある気がする。
 今回はキーボードの堀江某氏が急遽出演できなくなったとかで三人編成だったけれど、メンバーがひとり欠けても特に問題なく演奏できてしまうってところも、いかに事前の作り込みの部分が大きなウエイトを占めているかという証拠のように思えた。
 あと、個人的な意見としては、真ん中くらいで演奏された波の映像を使った五分近いインストナンバー、あれが余計。フルセットの単独公演ならばともかく、フェスのステージでやるにはちょい環境音楽っぽすぎて、観ていて疲れてしまった。あれを挟んだせいで、復帰を祝う祝祭気分に満ちていた会場の熱気がいくらか冷めた気がする。
 以上、できれば復活を祝うハッピーな文章を書きたかったのに、批判めいた言葉ばかりになってしまって申し訳ない。不徳の致すところです。
 それにしても、リッチな映像演出の陰に隠れてほとんど自身の存在をアピールしない小山田圭吾という人は、自己顕示欲が低いとても謙虚な人って印象なのに、そんな彼が若き日の過ちのせいで罪人のように嫌われバッシングを受けてしまったという事実は、ただただ不幸なことにしか思えない。

 さて、そんなコーネリアスの次は、三十分ほどの休憩をはさんで、同じソニック・ステージで電気グルーヴを観た。
 電気グルーヴについてはいつも同じ感想になってしまう。
 とにかくすごい。ひたすらパワフル。
 何曲か演奏したあと――たぶん三曲目に演奏された『Shangri-La』のあと?――石野卓球が最初のMCで発した、
 「こんばんわ、どうだ、カッコいいだろう! 電気グルーヴです!」
 という言葉が、まさにそのままで異議なしだった。
 ほんと、電気グルーヴはカッコいい。見た目はむさい二人組(失礼)が、問答無用のダンス・ビートをガンガン鳴らして、フロアを揺るがし続けている風景はひたすら壮観。ことダンス・ミュージックとしての機能性において、日本で彼らと肩を並べられるバンドはほかにないんじゃなかろうか。
 次のプライマル・スクリームとタイムテーブルが重なっていたので、すぐに退出できるよう僕らは出口の近くで観ていたのだけれど、移動しようとその場所を離れてみると、通路の部分まで人が溢れていた。
 ピエール瀧がコカイン所持で逮捕されて活動停止の期間もあったし、去年のフジロックで電グルが復活してからもライヴの機会は限られていたら、当然注目も高かったのだと思う。この日の電気グルーヴにはソニック・ステージはいささか狭すぎる印象だった。

 ということで、その次が本日のメインイベント、プライマル・スクリームによる名盤『Screamadelica』再現ライヴ。
 あらためて確認してみて、僕らがプライマルのライヴを観るのが十三年ぶりだという事実にびっくりした。
 なぜにそんなに長いこと観てなかったんだろうと思ったら、前回の来日は2016年でうちの娘の大学受験の年、その前が2013年で高校受験の年だった。どうやら学費が心配で節約生活を強いられていて、ライヴどころじゃなかったらしい。なんかすごくわかりやすくて笑ってしまった。
 ちなみに前回から六年ぶりの今回は、娘の大学院卒業の年だったりします。なぜだか我が家の節目にやってくるボビー・ギレスピーだった。
 ということで十三年ぶりに観たプライマル・スクリーム。
 前回観たときにはまだマニがいたはずなので(記憶があやしい)、その後に加入したシモーネ・バトラーという女の子がベースを弾くプライマルを観るのはこれが初めてだった。彼女が加入したのが2012年だそうだから、もう十年もこのメンツでやってんすね。いやぁ、光陰矢の如しだわ。
 バンドは彼女を含めた5人編成で、コーラス等のサポート・メンバーはなし。『Loaded』などの女性コーラスのパートは録音だった。30周年記念と銘打っているくらだから、もっと大人数で華やかにやってくれるのかと思っていたので、最少人数だったことにはやや拍子抜けした。
 Blu-rayで観られる二十周年のスクリーマデリカ再現ライヴは序盤にヒットパレード・コーナーがあって、そのあとアルバムの再現に突入するという構成だったけれど、今回はフェスのステージということで時間が限られているせいもあってか、最初から『スクリーマデリカ』のみで勝負ってセットリストだった。
 いや、正しくはアルバム全曲+アルバム未収録のEPカップリングナンバー『Screamadelica』を加えたセットリストで、これぞまさしくスクリーマデリカ完全版と呼ぶにふさわしい内容。
 ――で、このライブを観て思ったこと。
『Screamadelica』ってアルバム、けっこう地味でない?
 『Movin' On Up』『Come Together』『Damaged』『Loaded』の四曲は超キャッチーだけれど、それ以外だと思いのほかスローな曲、暗めの曲が多い。
 『Higher Then The Sun』も世間では人気みたいで、このアルバムの代表曲のひとつなのかもしれないけれど、僕は特に好きではないので(基本昔は明るい曲ばかりが好きだったのです)、アルバム全体をまとめて再現されると、いやー、地味だわって思わずにいられなかった(身も蓋もない)。

【SET LIST】
  1. Movin' on Up
  2. Slip Inside This House
  3. Don't Fight It, Feel It
  4. Come Together
  5. Inner Flight
  6. Screamadelica
  7. Damaged
  8. I'm Comin' Down
  9. Higher Than the Sun
  10. Shine Like Stars
  11. Loaded
  12. Rocks

 でも、そう感じたのはきっと俺だけはないよね?――と思ったのは、アルバム最後の曲として『Loaded』が演奏されたあと、間髪入れずに『Rocks』が始まったときのオーディエンスの熱狂がはんぱなかったから。
 いやぁ、あれはすごかった。この夜のクライマックスは間違いなくあの瞬間。
 あまりの盛り上がりように、みんな、もしかしてアルバム『Screamadelica』を単体で再現されるより、『Rocks』なんかを含めた名曲ヒット・メドレーをやってくれたほうが嬉しいのでは?――と思ってしまいました。いや、少なくても僕個人は絶対にそうなので。
 まぁ、とはいえ、先にあげた好きな楽曲群はよかった。
 特に『Damaged』は珠玉の名バラードだなぁって、ひさびさに生で聴いてあらためて思った。九十年代にあれほど往年のストーンズっぽい名バラードを書いたアーティストはほかにいないのではと思う。ミック・ジャガーにもキース・リチャーズにも書けまい(というか実際に書いていない)。『スクリーマデリカ』のようにダークでサイケデリックなアルバムのなかに、ああいう時代を超越した珠玉の名バラードをさらっと入れてしまえるボビー・ギレスピーのメロディーメイカーとしての才能がすごい。
 そういや、この夜のボビーは『スクリーマデリカ』のジャケットデザインをそのままプリントしたド派手な真っ赤なスーツ姿でした。ああいうのを着ちゃうセンスもぶっ飛んでいる。決して歌が上手い人ではないけれど、ああいうセンスも含めた素っ頓狂な人どなりがやっぱおもしろいなぁって思った。
 個人的には最後は『Loaded』できっちり締めて、アルバムの曲だけで終わったほうが美しかったのではと思うのだけれど、でも蛇足ともいうべき『Rocks』でのフロアの尋常ならざる盛り上がりを体感してしまうと、やはりあれはライヴとしてはあってしかるべきだよなぁと思わずにいられない。
 翌日のサマソニ最終日のステージ――そちらもWOWOWのライブ配信でフルで観た――では、マウンテン・ステージのとりとして、この日より長く時間が与えられていたこともあり、アンコールでさらに三曲多く演奏されたけれど、そちらは『Loaded』がアンコール扱いになっていたため、『スクリーマデリカ』の再現度が若干下がっていた印象だったし、なによりソニマニでの『Rocks』の熱狂は、残り時間の関係で、まさかやってくれるとは思わなかったところであのイントロが鳴り響いたからこそだと思うので、そういう意味でサマソニではなくソニマニでプライマルを観れたのはラッキーだと思った。
 ――ってまぁ、今年はサマソニのチケットが早々に売り切れてしまったので、サマソニ本編は観たくても観れなかったんだけれども。
 なんにしろ、この夜のライヴを観て思ったのは、プライマル・スクリームには生で聴きたい曲がまだほかにもたくさんあるってこと。次に彼らが来日するころには娘も就職して学費の心配はまったくなくなっているはずなので、これから先の来日公演は逃すことなく観に行こうと心に誓った。
 ――あ、でもフジロックに来たらNGかもです。苗場までゆくパワーはもうなさそうだって、うちの奥さんがいっているので。僕としても異存なし。

 プライマルのあと、今年のソニマニのとりを飾ったのはマウンテン・ステージのCreepy Nuts。
 ――とはいっても、プライマルのステージを一時間半、立ったまま観たあとですでに疲れ切っていたし、Creepy Nutsは最新アルバムを一度だけ聴いたくらいで、まったく馴染みがなかったので、無理して観なくてもいいやって思って、この夜最後のビールを飲んでひと休みしたあと、途中から移動して、最後の何曲かだけ観た。それもフロアのうしろの方で座ったままだった。
 Creepy Nuts、なんかとても真面目そうで熱い青年たちでした(もしかしてそう見えるだけで実は悪いやつらという可能性も)。一曲ごとにMCで語る内容がなんかすごく若さを感じさせた。フロアに坐って聴いていると音響が悪くて、R-指定のラップが超高速なこともあり、なにを歌っているまったくかわからなかったのが、やや残念だった。
 あと、僕らのような畑違いのオーディエンスが多かったせいか、集客はいまいちな感じだった。持ち歌が少ないのか、定刻を待たずにアンコールなしで終わってしまったし、クリエイティヴマンとしてはいまが旬の彼らに華を持たせたかったのかもしれないけれど、できれば彼らと電気グルーヴは逆にして欲しかった。

 ということで、今年のソニマニは以上の五バンドを観て終了。
 ステージは四つあったけれど、うち二つは訪れることもなく終わってしまった。若いころならば、絶対すべてのステージを確認くらいはしに行ったところなのに。こういうところにも自分の年を感じる。
 それにしても、新型コロナウィルスの第七波の真っ最中に開催された今回のソニマニは、みごとに無法地帯だった。ちまたでは過去最大の陽性者数を記録しているというのに、そんなの嘘みたいにふるまう人多数。酒を飲むためにマスクを外した若者たちが、ステージを移動するために、平気で身体をぶつけて通り過ぎてゆく。
 プライマルのステージが始まる前に、お笑いタレントらしきMCの人が「声出しは控えてくださいね」みたいな注意をしているのに、ボビーは客席にマイクを向けて歌えって要求したりもするし。興行主とアーティストの間でぜんぜん意思の疎通が取れてないじゃん。アーティストにきちんと了承を得れないくらいならば、余計な注意なんてしないほうがマシでしょう。そんなの偽善的すぎる。それのどこがロックだ。
 とにかく、本当にこの夜は感染対策もなにもあったもんじゃないじゃんって感じだった。これでクラスターが出なかったら、そのほうが不思議だろうってレベル。過去二年間我慢してきたのはなんだったんだか。
 もしかしてワクチン打ってない俺は参加しちゃいけなかったのでは?――と思ったりしたけれど、結局その後もとくに問題なく無症状のままだから結果オーライ。そんな今年のソニマニだった。
(Sep. 03, 2022)

A Light for Attracting Attention

The Smile / 2022

A LIGHT FOR ATTRACTING ATTENTION [輸入盤CD] (XL1196CD)_1560

 レディオヘッドのトム・ヨークとジョニー・グリーンウッドが立ちあげた新プロジェクトのファースト・アルバム(二枚目が出るかは知らない)。
 このアルバムはいまいち存在意義がわからない。
 ストーンズにたとえれば、要するにミック・ジャガーとキース・リチャーズがふたりだけでコンビを組んで、ストーンズ以外のバンドをやりましたって話なわけで。ライブでセッションしたとかならばともかく、アルバム一枚新しく作りましたって――そんな話、ほかで聞かなくないですか? 僕が知らないだけで、なくもないのかな?
 メンバーはそのふたりに、ジャズ・ドラマーのトム・スキナーという人。でもってプロデュースがナイジェル・ゴドリッチ。
 ――つまりプロデューサーもレディオヘッドと同じ。
 ということで、レディオヘッドの中心人物ふたりがお馴染みのプロデューサーとともに作った作品だけあって、当然のように音の方向性はレディオヘッドに極めて近い――というか、なにも知らずに聴かされたら、レディオヘッドの新譜だといわれてもまったく疑わないだろうって作品に仕上がっている。
 ただ、最近のレディオヘッドの作品と比べると、ややラフでバンドっぽさが強いかもしれない。そこのところがこのアルバムの魅力。
 正直なところ、最近のレディオヘッドの緻密な音作りには、その密室性ゆえに若干の息苦しさを感じてしまうようなところがなきにしもあらずだけれど、この作品では、基本的な方向性は同じながら、いい感じで力が抜けている。完全体のレディオヘッドではないからこその隙のようなものがある。
 二十一世紀の最重要バンドというマスイメージが定着しているレディオヘッドだけに、その期待を裏切るような作品は出したくないけれど、でも新型コロナで閉塞気味なこの社会にあって、なにかしらの作品は残したい――そんな思いから生まれた作品なのかなと思った。
(Aug. 07, 2022)

余命10年

RADWIMPS / 2022

余命10年 ?Original Soundtrack?

 RADWIMPS、通算三作目となる映画のオリジナル・サウンドトラック。
 新海誠とタッグを組んで作った前の二枚とは異なり、今回はアニメではなくて実写――しかもヒロインが不治の病に苦しむ恋愛もの――なので、内容もそれ相応のものになっている。
 歌ものは最後の主題歌『うるうひと』一曲だけだし、インストの曲調もアップテンポなものは皆無。いつごろレコーディングした作品なのかわからないから、確かなことはいえないけれど、桑原くんが活動休止中なので、その影響もあるのだと思う。これまででもっともギターの出番が少ない。
 ということで、主となるのは洋次郎の素朴で優しい音色のピアノ。そこにオーケストラでいろいろ味をつけたって感じの曲が大半という印象だった。
 前の二枚は、歌が入ることによって起承転結がついていた感があったけれど、今回はずっと映画の流れをインスト曲だけで辿っていって、最後に『うるうひと』でクライマックスを迎えるって感じの仕上がりだった。
 映画を観たあとで、ひとつひとつ曲名を確認しながら聴くと、あぁ、ここはあのシーンなのかと、映画のシーンがよみがえってきてじーんとくるけれど、逆にいうと、映画を知らないで聴くと十分にその魅力を味わえない作品という気もする。
 そういう意味では、ラッドとしては、これまででもっとも映画のサントラらしいサントラかもしれない。
 CDのブックレットは16ページ分の小松菜奈と坂口健太郎の写真集みたいなので、映画のファンの人は買って損はないと思います。眺めているだけでけっこうくるものがある。
 ただし、音楽ファンとしては、最近のCDは楽曲や演奏者のクレジットが知りたくて買っているようなものなので、個々の楽曲ごとにそれらのデータがきちんと書いていないのが不満。暗黙の了解ってことなのか、作詞・作曲のクレジットさえない――少なくても僕は見つけられなかった――のはさすがにどうかと思う。
(Aug. 07, 2022)