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  1. ずっと真夜中でいいのに。 @ 代々木第一体育館 (May. 18, 2025)
  2. ずっと真夜中でいいのに。 @ 代々木第一体育館 (May. 17, 2025)
  3. ヨルシカLIVE「月と猫のダンス」 / ヨルシカ
  4. 米津玄師 @ 東京ドーム (Feb. 26, 2025)
  5. 変身のレシピ / 十明
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ずっと真夜中でいいのに。

YAKI YAKI YANKEE TOUR 続「名巧は愚なるが如し」/2025年5月18日(日)/国立代々木競技場 第一体育館

 ずとまよ代々木公演2デイズの二日目にしてツアー最終日。

 二日連続だし、できれば前日とは反対サイドから観たかったのだけれど、あいにく席は昨日と同じ北側スタンド一階。それでも、この日はHブロックということで、三ブロックほどステージに近かった。

 そしたら、この違いが思いのほか、でかかった。視覚的にも音響的にも解像度が違った。ステージも右手のスクリーンも断然よく見えるし、音も俄然とはっきりしていた。演出で時折あがる炎の熱さもちょっとだけ伝わってきた。

 まぁ、前日は遠かった分、ステージ全体が見渡せて、ライティングの美しさが際立っていたのと比べると、この日は近づいた分、右手にいたストリングの人たちが機材に遮られてよく見えなかったし、ライティングもそれほど意識することがなかった。

 それでもやっぱり、肉眼でACAねの動きがちゃんと追えるのは嬉しい。それ以前に前日はなんだかよくわからなかったことがちゃんとわかるのがいい。

 たとえば、開会宣言でのテープカット。前日はなんかよくわからない紐が出てきたくらいのイメージだったのが、この日はちゃんと開会式のテープカットだってわかった。

 たとえば、サブステージへ向かう電飾バイクのうしろをついてゆく小さなメカうにぐり。前日は「なんかいる?」くらいのイメージだったリモコン操作のこのロボが、この日は目の前を通り過ぎてゆくのが肉眼で確認できた。

 たとえば、そのサブステージから本ステージに戻る前に、ACAねが背中につけたC字型の装着物。それがルナストーンを切り出して作ったルナモノリスというものだという説明がちゃんと聴きとれた。

 ステージ左手の隅にいたハープの人と佐々木コジローが前日はどこにいるのかさっぱりわからず、もしかしてコジローくんがハープを弾いているのかと思ったりしたんだけれど、この日は二人が別人なのがわかった。

 『お勉強しといてよ』のイントロ前に奈落からデコバイクが再登場した場面では、バイクにまたがっているのがトランペットの具志堅という人で、ACAねが乗っていたときには台座に固定されていたそのバイクが、この時にはふつうにタイヤで動いていること――なおかつ具志堅さんはそのバイクに乗ったまま、トランペットを吹いていたこと――がわかった。

 さらには、ラストナンバーの『眩しいDNAだけ』(ラストのACAねのロングトーンが圧巻だった)で、演奏の終わりにバーンと爆発音がさく裂した場面。前日はびっくりして跳ね上がってしまったけれど、この日は扇風機の中央にカウントダウンが表示されているのがわかったので、安心して爆発の瞬間を待てた。

 そのほか、『ミラーチューン』で最後のほうで転調ともに「パワーアップ!」とかいってミラーシューターを大きなやつに持ち替えるところとか、『クズリ念』でワンコーラス目をトランシーバーで歌っていたこととか、『クリームで会いにいけますか』のとき、前日は知らないうちに花道にいたうにぐりの着ぐるみが、花道のつけ根にある奈落から出入りしていたこととか。

 あと、『MILABO』のサビの「因果応報叱らないで」や、『お勉強しといてよ』の「乾かないや」というフレーズで、申し合わせたような大合唱が起こるのに感心していたら、ステージ上の小さなスクリーンに「SING」という文字が出ていることに途中で気がついたりとか。

 アンコールの終了後、奈落へ消えてゆくACAねは片手を高く掲げ、親指をたててグッドサインを作っていた。僕らが最後に見たのはそのグッドサインだった。

 そういう前日は遠くてよくわからなかったディテールの数々がこの日はわかった。基本的には同じ内容なのに、それだけで全体のイメージがよりくっきりとしてくる。やっぱライヴはステージが近いほうが楽しいなぁって思った。

【SET LIST】
  1. 虚仮にしてくれ (Short ver.)
  2. 嘘じゃない
  3. 秒針を噛む
  4. 消えてしまいそうです
  5. ミラーチューン
  6. 勘ぐれい (ヤンキーver.)
  7. 馴れ合いサーブ
  8. 残機
  9. 形 [新曲]
  10. 上辺の私自身なんだよ (Acoustic ver.)
  11. クズリ念 (Acoustic ver.)
  12. ろんりねす (フラメンコよさこいver.)
  13. 微熱魔
  14. 胸の煙
  15. 海馬成長痛
  16. MILABO
  17. シェードの埃は延長
  18. お勉強しといてよ
  19. TAIDADA
  20. 暗く黒く
    [Encore]
  21. クリームで会いにいけますか
  22. あいつら全員同窓会
  23. 眩しいDNAだけ

 二日つづけて観てよかったことのもうひとつは、演出の違いが楽しめたこと。

 日替わりメニューの選曲とアレンジが違うのは当然として、その前のルナストーンにまつわる余興の内容が違っていたり、ライヴ後の告知が違っていたりする。

 日替わりメニューでは、この日のルーレットも前日と同じブルーが止まったのに、選曲は『ろんりねす』(ヤンキー表記は『孤独寝巣』)で、アレンジはよさこいフラメンコ風だった(でも後半の合いの手はソーラン節だった)。

 ルナストーンのくだりでは、ACAねの通信相手を務めていたのが、前日と同じブラウン博士ではなく、HARU1987こと吉田悠だった。また、この日はパーカッションの神谷氏も登場。まずはブルースクリーンのせいで着ているツナギが消えて、顔だけが浮いている状態になって笑わせる。さらに前日はルナストーンに大きな石の模型を使っていたのに、今回は宙に浮くその顔をルナストーンだといって、さらなる爆笑を誘っていた。

 前日はこのルナストーンのパートから日替わり曲のコーナーまで、正直ちょっと長すぎやしないかと思ってしまったけれど(おそらくその部分の三曲だけで三十分くらい費やしている)、二日目のこの日は流れが把握できていた上にギャグが倍増していたこともあって、ずっと笑って観ていられた。

 終演後の告知もまるで違った。マリマリマリーは登場せず、ツアー最終日ということで、これまでに発表したことのおさらい的な内容に変更になっていた。そして最後には「アルバム曲も作ってます」という報告あり!

 そういや、前日は終演後に出口で配られた『コズミックどろ団子ツアー』の告知ポストカードを、この日は入場の際にもらった。

 そんな風にツアーの進行にあわせて、演出も運営もちょっとずつやり方を変えてゆく。今回も会場周辺は文化祭のようだったし、そうやってお客さんを少しでも楽しませようとする創意工夫が見て取れるのも、ずとまよライブの魅力のひとつだ。

 演奏についてもそう。TVドラムのイントロを聴くと、次は『お勉強しといてよ』だと思うよう習慣づけられている僕らに、この日は『勘ぐれい』や『海馬成長痛』をかまして意表をついてきた(逆に『お勉強しといてよ』のイントロにはTVドラムのソロがなかった)。そういうところもいい。

 あれとかこれとか当然演奏されると思っていた名曲群をあえてセットリストから外してくる姿勢も含めて――まぁ、そこは嬉しいわけではないけれど(『花一匁』聴きたかった……)――同じことはそうそうつづけませんよって。そういう予定調和を嫌う姿勢が素晴らしい。

 コンサートチケットの高騰がすさまじくて、最近はすっかり洋楽のライブにいけなくなってしまったけれど――ここ一年くらいのあいだに、トム・ヨーク、PJハーヴィー、ベックなど、悩んだあげくにスルーしたライブがたくさんある――こういうコンサートをやってくれている限り、今後どれだけチケットが高くなっても、ずとまよのライヴには通いつづけないではいられないよなって思った。

(Jun. 03, 2025)

ずっと真夜中でいいのに。

YAKI YAKI YANKEE TOUR 続「名巧は愚なるが如し」/2025年5月17日(土)/国立代々木競技場 第一体育館

 ずとまよライブではすっかり恒例となった、全国ホールツアー終了後にテーマを拡大アレンジして行う〆のアリーナ公演。やきやきヤンキーツアー2の完結編。

 前回までは同一会場での二公演だったのが、今年は全国ツアーに拡大された。

 三月のぴあアリーナからスタートして、翌週が南船橋、そのあと名古屋、福岡、大阪を経て、最後が代々木というスケジュール。全会場二公演ずつで計十二公演。そのとりを飾る代々木第一体育館での2デイズを両方とも観た。

 二公演見たのは、このところの常で、チケットが取れなかったら嫌だからと、念のため二公演分申し込んだら両方取れてしまったから。

 ツアーは一ヵ月半以上に及ぶ長丁場なのだから、どうせ二日分申し込むのならば、最初の横浜か南船橋と最後の代々木にしておけばいいのに、わざわざ二日とも代々木にしたのは、いいかげん年を取って、東京から出るのがめんどくさくなってしまったため。

 自宅から三十分強でゆける代々木と、横浜や船橋では、移動時間が倍以上ちがう。夏フェスも今年からはもう行かないと決めたことだし、通常のライブもあまり高すぎるものや、東京以外の公演は、今後はできる限り避けることにした(すっかり年寄り)。でもって、代々木のチケットが外れて横浜だけ行くことになるのは嫌だったので、だったらもう二日間とも代々木でいいやって思った。

 でも、冷静になって考えると、今回は全国ツアーで、しかも全部アリーナ規模なんだから、よほどのことがない限り、チケットが取れないなんてことはないだろう。だったら、申し込むのは一公演だけでもよかったんじゃん?ってあとから思ったけれど、まぁ、それはそれ。結果的には二日目のほうが席がよかったし、つづけて二日観たからこその楽しさもあったので結果オーライ。

 そもそも、同じ公演を二回も観るのは確かに贅沢だけれど、洋楽チケットがあたりまえに二万円を超えるようになってしまった昨今、ずとまよの超豪華ステージが二日間あわせて二万円もしないで観られるというのは、かえってお得感さえある。

 さて、というわけで、代々木公園のとなりの会場で二年ぶりに観た、ずとまよの代々木公演(駄洒落)の一日目。

 ツアーが大阪万博の開催時期と重なったことで、昭和レトロ好きなACAねさんが過去の大阪万博にインスピレーションを受けたらしい。今回のツアーは「裏の万博」というコンセプトで、「永遠深夜万博」と題して行われた。

 ステージセットは去年までと同様、ツアーポスターのイラストを実体したもので、今回これらはすべて「スナネコ建設」が建設した万博のパビリオンだという設定だった。

 ということで、ステージの中央には大阪万博のシンボルである「太陽の塔」をもじった「十六夜月いざよいづきの塔」と題されたモニュメントが配されている。

 ただ、これは去年のツアーの扇風機を巨大化しただけって感じで、それ自体のインパクトはいまいち。巨大な剣がコンビニに突き刺さっていた前々回や、とぐろを巻く龍が城に巻きついていた前回に比べると、いささか地味な感が否めない。

 塔の左手後方にはツアーキャラの巨大な首長竜ヨグネッシーも配されていたけれど、ライブ中には動くことはなくて、存在感は控えめだったし、それ以外では十六夜月の塔に設置されたお立ち台が上下したり、ステージ左右に丸い謎の球体が配されていた以外、とくに目を引くものもなかった。

 ACAねの登場シーンも奈落からせりあがってくるだけで、あまり奇をてらったものではなかったし、今回はステージセットやギミックに対するこだわりが以前より希薄な気がした。まぁ、去年までのステージセットが破格すぎたって話もある。

 ちなみにツアータイトルの「名巧は愚なるが如し」は「大賢は愚なるが如し」という格言のもじり。「名巧」はあまり一般的な熟語ではなく、うちにある電子辞書では『漢辞海』にしか載っていなかった。そんな言葉どこからひっぱってくるのやら。あいかわらず語彙力がすごい。

 「大賢は愚なるが如し」は『広辞苑』(第四版)によると「非常に賢い人は、知識をひけらかさないから、ちょっと見たところでは愚かな人のように見える」という意味なので、ステージが地味に感じられたのも、もしかしたらわざとだったのかもしれない。

 まあでも、ステージが地味めな分、演出は凝っていた。

 客電が落ちて、左右の縦長の小さめのスクリーンにナレーションとともに今回の「裏万博」の説明が映し出される。そのナレーターを務めているのがなんと――。

 石坂浩二氏だっ!

 なんでも石坂さん、七十年の大阪万博でもナレーターを務めていたそうで、今回はわざわざ依頼を受けて、このツアーのためのナレーションを担当していた。ACAねの書いた――ものなんでしょうおそらく――「永遠深夜万博」の説明を読み上げて、締めの一言に「夜露死苦」なんていっちゃったりして。御年八十三歳の名俳優にこんな仕事頼むACAねとそのスタッフさんたち、怖いもの知らず。

 石坂さんの挨拶につづく今回のオープニング・ナンバーは『虚仮にしてくれ』。

 アリーナ公演のときにはメインのツアーには参加していなかった楽器の奏者がスペシャルゲストとして参加して、オープニングでソロを聴かせるのが恒例になっているけれど、今回はそれがハープだったので、一曲目は当然この曲だろうって思った。

 冒頭のナレーション中に「開会式の間は席におかけのままご覧ください」みたいな注意書きがあったので、この曲のあいだ観客は全員座ったまま。開会式のテーマという扱いのため、この曲が短めで終わったあと、「起立~」という掛け声があって、会場の全員が立ち上がって、ACAねの開会宣言を見守るという趣向だった。

 開会宣言のセレモニーにつづく『嘘じゃない』(冒頭が弾き語り)からがライブ本編で、その次の三曲目で早くも『秒針を噛む』が演奏される。

 この曲の後半でしゃもじクラップと合唱のコール・アンド・レスポンスが起こるのも最近の定番だけれど、今回は直近に配信されたマリマリマリーというユーチューバーのネタを盛り込んで、「変な声で!」歌うように要求して、笑いを誘っていた。変な声でっていわれてもねぇ。どうしていいか、わかりません。

 この日の最初のクライマックスはその次の『消えてしまいそうです』。今回「万博」と並ぶもうひとつのテーマが「七十年代」で、この曲ではその時代のディスコやソウルを踏まえたファンキーなアレンジが施されていた。ステージの映像もそれっぽくグルービーでカラフルなものになっていて、ものすごくカッコよかった。この曲から次の『ミラーチューン』へとつづく部分での多幸感が前半部分の最高潮。

 とにかく今回のライヴはミラーボールでキラッキラ。ステージの上下左右に十個近くの変型ミラーボールが配されていて、それらが乱反射して会場は光の渦と化す。さらにはレーザーライトが縦横無尽に放たれる。ことライティングという点では過去最高に派手だった(当社比)。

 ACAねは赤いミニのレザースーツにハイソックス、白いキャップという衣装で、ギャル版の仮面ライダーか山本リンダみたいなその恰好も、いかにも七十年代風だった。豪華なステージセットよりも、むしろこの七十年代の再現というコンセプト、それこれが今回のツアーの要だったように思う。

 そのあとが前回ツアーのとりを飾った『勘ぐれい』のヤンキー・バージョンから、ロックンロール・アレンジの『馴れ合いサーブ』へという流れ。この辺の曲にもレトロ感があふれていた。さらには早々に『残機』が披露され、序盤から「踊らにゃ損々」なキラーチューン連発で大いに盛り上がる。

【SET LIST】
  1. 虚仮にしてくれ (Short ver.)
  2. 嘘じゃない
  3. 秒針を噛む
  4. 消えてしまいそうです
  5. ミラーチューン
  6. 勘ぐれい (ヤンキーver.)
  7. 馴れ合いサーブ
  8. 残機

  9. 上辺の私自身なんだよ (Acoustic ver.)
  10. クズリ念 (Acoustic ver.)
  11. 居眠り遠征隊 (味噌ーランver.)
  12. 微熱魔
  13. 胸の煙
  14. 海馬成長痛
  15. MILABO
  16. シェードの埃は延長
  17. お勉強しといてよ
  18. TAIDADA
  19. 暗く黒く
    [Encore]
  20. クリームで会いにいけますか
  21. あいつら全員同窓会
  22. 眩しいDNAだけ

 前半戦の締めはこれから公開される映画『ドールハウス』の挿入曲で、今ツアーの途中からセットリストに加わった未発表曲『形』。

 ホラー映画の主題歌ってことでシリアスな雰囲気の曲だったけれど、スローで始まったのでバラードかと思ったら、すぐにアッパーになっちゃうのがACAねらしい。初めて聴くので、スクリーンに映し出される歌詞に注目していたせいで、いまいちステージへの意識が薄くなってしまったのはもったいなかった。

 この日の僕らの席(北側スタンド一階Eブロック)からだと、スクリーンは小さめで、いまいち見にくかった。終演後に表示されたACAね直筆の縦書きメッセージなんて、字が小さすぎてまったく読めなかった。

 そのあとは花道の先に配されたサブステージ(と呼ぶほど広くはなかったけれど)でのアコースティック・コーナー。

 台座に固定された電飾バイクに乗ったACAねが花道をゆっくりと運ばれてゆき(天皇家の人たちみたいに上品に手を振って拍手をうけていた)、まずはその先に設置されたなんとかチェア(とんがった籠状のやつ)に座って余興を繰り広げる。

 内容は大きなトランシーバーを使って、月にいる(という設定でモニターに映し出された)ブラウン博士ことオープンリールの和田永と会話して、ルナストーン(要するに万博名物の月の石なんだろう)を受け取るとかいう話。

 「石はもう太陽系第三惑星の日本の代々木に送ってあります」みたいなことを言われて、ACAねが座っていた椅子の上方を見上げると、なにやら縦長のものがついている。そのオブジェを隠していた覆いをとると、回りながらキラキラ輝くミラーボール仕様の月の石が登場~。

 ということで、ルナストーンが光をまき散らすサブステージで『上辺の私自身なんだよ』と『クズリ念』が披露された。

 『上辺』はワンコーラス目がアコギの弾き語りで途中からバンド・アレンジ。『クズリ念』はハープ、ストリングス、キーボード、パーカッションだけでのバラード・バージョンだった。

 で、この『クズリ念』が最っ高によかった。バラードになったことで、そのメロディの素晴らしさとせつない世界観が際立っていた。アレンジの変更により、もともと楽曲が持っていたポテンシャルが露になったというか。いい曲だとは思ってけれど、ここまで感動的な曲に化けるとは驚きだった。いっそ最初からバラードとしてリリースしたほうがよかったんじゃないかと思ってしまった。まぁでも僕はもとのアレンジも好きだ。

 そのあとの恒例三択コーナーは、十六夜月の塔をルーレット仕様に模様替えして、矢印に止まった羽と同じの色のくすだまを割って曲を決めるという企画で、選ばれた曲は『居眠り遠征隊』だった。垂れ幕の表記はヤンキー風に『威音無離炎聖隊』的なやつ(とうぜん読めない)。

 ACAねのリクエストによる吉田兄弟の即興劇は、祖父と孫によるソーラン節ならぬ「味噌ーラン節」がどうしたというもので、バンドの演奏はキーボーで琴と尺八の音色を奏でた和風アレンジだった。即興でしっかりと和のテイストを出すバンドに拍手。

 ちなみに代々木体育館のスタンド席って、普通に座ると真正面は反対側のスタンドで、ステージを見るには首をねじらないといけないので、座ってみるライブには向かないと思った。ここまでの余興コーナーで長いこと座っていたら、首が痛くなった。

 後半戦は新曲『微熱魔』からスタート。あのぐしゃっとした音の洪水的なイントロやドラムンベース的なアレンジが生演奏できちんと再現されているのがすごい。

 これ以降の選曲で意外性があったのは『胸の煙』くらいで、あとは定番といっていい内容だった――と思ったんだけれど、よく見たら、終盤に演奏された八曲のうち、半分がここ一年にリリースされた曲だった。

 要するに新旧バランスよく並べたというべき内容で、定番と呼ぶには新曲が多すぎる。それでもこの盛りあがりと一体感ってのがすごい。『MILABO』(三年ぶりにフルで聴けて嬉しかった)と『お勉強しといてよ』に挟まれて演奏された初公開の『シェードの埃は延長』も、まったく違和感なくそれらの曲に溶け込んでいた。

 この後半戦でのマイフェイバリットは『TAIDADA』。この曲のACAねのボーカルが切れがよくクリスプで最高に気持ちよかった。しゃべりはあんなにたどたどしいのに、なぜ歌だとあんなに滑舌がいいんだろう。不思議。ダンスもノリノリで最高でした。

 本編ラストは「最後の曲です。Crack Clock」と紹介されたので新曲かと思ったら、『暗く黒く』だった。

 ずとまよのライブは全体的に陽性なイメージが強いから、ダークな感触のこの曲で終わると意外に思うことが多いのだけれど、この日はアンコールの最後も『眩しいDNA』だったし、元ツアーのラストは『正義』だったし(今回は演奏されなかった)、ずとまよって意外とライヴの最後にシリアスな楽曲を持ってくる比率が高いかもしれない。いまさらなにをいってんだって話だけれども。

 アンコールは新曲『クリームで会いにいけますか』から始まる三曲。

 お色直ししたACAねの衣装は、オフショルダーで超ミニな白いスパンコールのワンピース。ピンクレディーやキャンディーズを思い出させる大胆な七十年代風ファッションで、スパンコール(もしかしたら割れた鏡の破片?)がキラッキラ。光が当たるとまさに人間ミラーボール状態。キラキラだったこの日のライブの最後を、自らミラーボールになって飾ってみせるという趣向がおもしろすぎた。「シャバダバ、シャバダバ」というスキャットの入る、明るくキュートな新曲も七十年代風というコンセプトにベストマッチだった。

 つづく『あいつら全員同窓会』がメンバー紹介の入らない通常バージョンだったのもいい(「お世話になってます」のところのお辞儀タイムはこれまでより長かった)。軽く予想を裏切られる感じが楽しい。途中でマイクを落としたハプニングさえ楽しい。

 最後の『眩しいDNAだけ』の前に長めのMCで「孤独」について語った部分では、石坂氏のナレーションにもあった「孤独とは社会的な行為である」みたいな引用にぐっときた。岡本太郎氏の言葉でしょうか。いいこという。

 今回はこの曲でバンドのメンバー紹介があった。内訳はドラム、パーカッション、ベース、キーボード、ギター×2、ホーン×4、弦×4、オープンリールアンサンブルの三人組、そしてスペシャルゲストのハープに、ACAねの十九人編成。スクリーンの紹介が楽器名だけだったので、お馴染みのメンツ(コジロー、キッシー、菰口、二家本、神谷)以外の個人名は不明。ちなみにオープンリール、TVドラム、扇風琴は「未来楽器」と紹介されていた。

 メンバー紹介での各自のソロは短めで(基本四小節ずつ?)、個人のソロに加えてそのあとにパートのセッションがあるという流れだった。ギターだと、コジローのソロ、菰口のソロ、でもってふたりのツイン・ギターという形。三時間近いライブの最後で、いい加減疲れている時間帯だったので、適度なボリューム感がありがたかった。

 ということで今回のライブは以上。全曲が終わって、メンバーが花道をランウェイよろしく一周したあと、これまで動かなかったヨグネッシーがうなずくように首を上下して見送る中、ACAねはゆっくりと奈落へと消えていった。

 終演後には前述したマリマリマリーのYouTube動画を使った次回『コズミックどろ団子Tour』の発表もあったりして、最後までとても楽しい三時間弱でした。

(Jun. 01, 2025)

ヨルシカLIVE「月と猫のダンス」

ヨルシカ /2024

ヨルシカ LIVE 「月と猫のダンス」 (初回限定盤) [Blu-ray]

 先日YouTubeで公開されたヨルシカの『負け犬にアンコールはいらない/言って。』のライブMVがとても好きで、来月に控えた、その映像を含むライブBDのリリース(6月25日発売)を心待ちにしている。

 きっとそれを観たらまたなにか書きたくなると思うので、その前に、去年出たのに触れていなかった、ひとつ前のライブ映像作品『月と猫のダンス』について。

 『月光』では、n-bunaによる詩の朗読を挟むことで、ライブ全編をひとつの物語仕立てにしてみせたヨルシカ。

 それにつづくこの作品ではその趣向をさらに一歩先へと推し進め、朗読劇というスタイルを提示してみせている。

 ステージ上に演劇用の舞台セットを用意して、そこでひとりの俳優がシナリオを朗読しながら物語を進めてゆくというスタイル。バンドは動物の鳴き声を効果音で出したりして、その演技の裏方も務めている。

 『月光』の物語はぼんやりとしたイメージの提示という感じだったけれども、今回はセットがあり、演技があることで、物語がより明確な絵を描く。

 描き出されるのは、ひとりの売れない画家が、夜な夜な訪れる動物たち――カナリア、カエル、カメレオン、梟、鹿、羽虫、等々――を相手にピアノでベートーベンの『月光』を奏でて聴かせるという、宮沢賢治の『セロ弾きのゴーシュ』へのオマージュ。

 それが最終的には画集アルバム『幻燈』第二章の『踊る動物たち』へと結実してゆくという趣向になっている。

 物語はn-buna自身の創作に対する経験が比喩的に表現されたものらしい。

 こんな変わったステージを見せてくれるのはヨルシカだけだろう。最後にsuisサンが思わぬ形で登場するサプライズも含めて、とてもおもしろいステージだった。

 ただ、なにせ二、三曲ごとに演劇パートが差し挟まれるので、純粋に音楽を聴きたいと思って観ていると、いささか冗長に感じられてしまうのが残念なところ。

 『月光』の詩の朗読はn-buna自身だったからまだしも、こちらは見ず知らずの俳優さん(村井成仁という人)の演技だけになおさらだ。一度目はともかく、二度、三度とリピートするのはいささか苦しい。

 映画だってよほど好きな作品じゃないと、そう何度も観ようって気にはなれないですよね? この作品にはそれと同じとっつきにくさがある。

 だからといって、演劇部分は飛ばして音楽だけ聴くのも違う気がするしねぇ……。

 ということで、作品自体は超個性的で唯一無二の内容だと思うけれど、ただこれがヨルシカの最高傑作かと問われると、素直にはそうともいいきれない。そんな作品。

 ライブ全編がYouTubeで無料配信されているので、興味がある方はぜひ一度。

(May. 15, 2025)

米津玄師

2025 TOUR / JUNK/2025年2月26日(水)/東京ドーム

LOST CORNER (通常盤)

 米津玄師の新譜『LOST CORNER』の国内ツアー――そのとりを飾る初の東京ドーム公演2デイズの一日目を観た。

 アルバムについてきた先行抽選応募券でゲットした席は、スタンド一階席の十九列目、ステージ向かって右側のほぼ真横。後楽園駅にいちばん近いゲートからの入場だったので、入退出は楽だった。

 でもこの席ではステージのバックスクリーンを使った映像演出はほとんど見えなさそうだと思ったら、意外とそうでもなかった。

 ステージの背景が左右のスクリーンから扇型で弧を描く形でつながった全面スクリーンだったので、僕らの席からは左手半分の映像がだいたい見えた。たぶん全体の五分の三はちゃんと見えたはず。

 まぁ、全体像は俯瞰できず、右半分は欠けたようになってしまうので、アニメのキャラの顔がつぶれて、なにそれって感じになってしまうときもあったけれど、それでも視野に入る景色は十分に美麗。いまの舞台演出ってすごいなぁと素直に思いました。

 ライブはアルバムの一曲目『RED OUT』で始まり、アンコールでタイトルトラックの『LOST CORNER』を聴かせて〆。終演後にアルバム最後のインストナンバー『おはよう』をBGMにエンドクレジットが流れるという流れはほぼ予想通りだった。

 予想外だったのはそのセットリストの豪華さ。

 アルバム『LOST CORNER』はそれだけで全二十曲というボリュームなので、全曲完全再現したらそれだけで本編のほとんどの時間を使い切ってしまう。

 さてどうすると思っていたら、米津は思い切りよくアルバムの収録曲のうち、四分の一を切り落としてきた。具体的には『POP SONG』『死神』『月を見ていた』『Pale Blue』『POST HUMAN』の五曲が演奏されなかった。

 調べてみたら『POST HUMAN』は別の日に日替わりでやっているし、それ以外の曲は過去のツアーですでにお披露目済みなので、今回はあえてはずしたってことなんだろう。

 で、それらをはずした結果として選ばれた曲が強力すぎた。

 だって、『感電』に『アイネクライネ』、『Lemon』に『海の幽霊』、『LOSER』『ピースサイン』『ドーナツホール』だよ?

 加えてここに最新配信シングルの三曲、『Azalea』『BOW AND ARROW』『Plazma』が入ってくる。

 こんなベストアルバムみたいなセットリストある?

 いやはや、最強すぎる。

 アルバムではアイナ・ジ・エンドとデュエットしている『マルゲリータ』を米津の歌でフルコーラス聴けたのは、かえって貴重だと思ったし、それは最新MVのアニメをそのまま使って歌われた『ドーナツホール』も同じ。あのMVを初音ミクではなく、米津玄師のボーカルで聴けて喜んだファンも多かったろう。少なくても僕は嬉しかった。

【SET LIST】
  1. RED OUT
  2. 感電
  3. マルゲリータ
  4. アイネクライネ
  5. LADY
  6. Azalea
  7. ゆめうつつ
  8. さよーならまたいつか!
  9. 地球儀
  10. YELLOW GHOST
  11. M八七
  12. Lemon
  13. 海の幽霊
  14. とまれみよ
  15. LENS FLARE
  16. 毎日
  17. LOSER
  18. KICK BACK
  19. ピースサイン
  20. ドーナツホール
  21. がらくた
    [Encore]
  22. BOW AND ARROW
  23. Plazma
  24. LOST CORNER

 米津はごく普通の服装だったけれど(アンコールでも衣装替えなし)、演出はいろいろ多種多様だった。

 オープニングの『RED OUT』では、客電が消えたあとの暗さがすごかった。ドームの広さを意識するからかもしれない。こんなに真っ暗でなにも見えないオープニングは初めてかもって思った。やがてステージと花道に真っ赤なライトが点りはじめ、雨音まじりの雷鳴がとどろく。ハードなオープニング曲にあわせた不穏な幕開け。

 でも二曲目の『感電』で花道へと踊りだした米津玄師はニコニコ愛想がよく、とてもご機嫌そうだった。ダンサーもたくさんいる。

 『Azalea』~『ゆめうつつ』あたりでは、花道の上に巨大な絹みたいな布――ラグジュアリーな一反木綿といった感じ――がふわふわと浮かび上がる。その浮かび方はとても幻想的で、3Dフォノグラムかなにかかと思うような不思議な眺めだった。

 『さよーならまたいつか!』では女性ダンサーたちが『虎と翼』を思わせる着物と袴姿で登場。でもヘアスタイルはカラフルかつ多様でちっともレトロじゃないし、ダンスも『虎と翼』のオープニングのそれとは違うオリジナルの振り付けだったので、どうにもコレジャナイ感がすごかった。

 途中のどの曲か忘れたけれど、ステージに巨大なジャングルジムみたいな足場が登場して、ダンサーがその上で踊る場面があったりする。で、二、三曲くらいであっという間に撤収される。いちいちセットの入れ替えがすごい。

 ジブリ映画の主題歌『地球儀』では、ジブリではない(たぶん違う)けれどそれっぽいアニメが流れ、『M八七』では宇宙空間が広がり、『海の幽霊』では『海獣の子供』――を観ていないのでオリジナルかどうかは保証できないけれどそれ相当の――のアニメがフィーチャーされる。

 『KICK BACK』では炎が吹き上がり、その熱気がスタンドにいた僕らのところまで伝わってくる。

 最後の『LOST CORNER』では、巨大な「がらくたくん」オブジェとともに、ガラクタを積んだ黄色いオープンカーに乗る米津玄師が登場。ドライブをテーマにした曲ということで、その車に乗ったまま、場内のアリーナ席の通路を一周してみせる。

 そんな風に二時間ちょいのライヴの間に、さまざまな趣向を凝らした演出が盛り込まれていた。

 客席では『ピースサイン』で大多数のオーディエンスが「おーおーおおーおー」と合唱しながらピースサインを掲げている風景もかなりのインパクトだった。

 僕らの斜め前にいたギャルふたりはいけいけで可愛かったし、うしろにいたお兄さんはあれこれ熱く語っていたくせに、ラストの『LOST CORNER』で「この曲だけタイトルわからないや」とかのたまっていておかしかった。天井にライトでデカデカと書いてあったじゃん。

 まぁ、その曲での自動車の演出とかは、正直どうかと思った。意外性はたっぷりだったけれど、おかげでその間、僕らは車に乗ったまま動きがない米津玄師のアップの映像をスクリーンで延々と見ているだけという、いまいち楽しくないことになってしまっていたし。最後の最後がこれ?――って。

 そのちょっと前のメンバー紹介――ギターが米津玄師の幼なじみだという中島宏士、ベースが宮本浩次のサポートもしている須藤優、ドラムが堀正輝、キーボードに宮川純という五人組(知っている人は須藤くんしかいない)――では幼なじみ氏による、やったらめったら長いMCがあって、「なぜ俺はこんな初対面の人のMCを、疲れた体で突っ立ったまま聞かされているんだろう?」と思ってしまったりもした。正直いって、この二点でライブの高揚感にけっこう水を差された感あり。

 でもまぁ、主役の米津は楽しそうだったし、ケチをつけるのも野暮ってものか。

 いずれにせよ、とてもいいライヴだったのは間違いなし。

 かつての東京ドーム公演では音響の悪さにうんざりしたこともあったけれど、このところは技術的な進歩のためか、はたまた近頃いい席でしか観ていないからなのか、今回も音響に対する不満は一切なかった。米津玄師の歌はレコーディング音源と遜色のないクリアさだった。バンドの音も五人とは思えないほど表現力豊かだった。

 『地球儀』『海の幽霊』『がらくた』といった名バラードは限りなく感動的だったし、『LOSER』『KICK BACK』『ピースサイン』『ドーナツホール』とつづいた怒涛のクライマックスは最高だった。アンコールでややテンションが下がってしまったのは残念だったけれども、本編についてはもう完璧といえる内容。これぞ現在のJ-POPの最高峰といっていいようなライブだったと思う。

 いやはや、いいもの見せてもらいました。

 ちなみにうちの奥さんが米津玄師を聴かないので、今回はうちの子が一緒だった。娘とふたりでライブに行くのって、五年ぶり二度目だ。嫌われてなくてなにより。

(Mar. 10, 2025)

変身のレシピ

十明 / 2024

変身のレシピ

 もう一枚、野田洋次郎関係の作品を。

 新海誠の『すずめの戸締まり』の主題歌にボーカリストとして抜擢されたシンガーソングライター、十明(とあか)のデビュー・アルバム。

 2023年に配信デビュー曲としてリリースされた『灰かぶり』からずっと洋次郎がプロデューサーとしてクレジットされているので聴くようになった人だけれど、同じ経路で出会った酸欠少女さユりのように、一聴してすぐに気に入ったわけではなかった。

 『灰かぶり』が『すずめ』での透明感あふれる繊細なボーカルからは予想できなかったダークなダンス・チューンだったのには意表をつかれたものの、サウンド・プロダクションは洋次郎のソロ・アルバムと同じ傾向で僕の趣味からは外れていたし、正直ハマるところまではいかなかった。

 その後の配信シングルについても同じで、つかず離れずの距離感で新曲をチェックしていた僕が、初めて彼女の曲に「お~」と思ったのが、そこまでのシングルをカップリングしたミニ・アルバム『僕だけの愛』に収録された『メイデン』。

 初期のラッドに通じる音作りのこの性急なギター・ロック・チューン――クレジットに武田・桑原両氏が名を連ねているのをどこかで見た記憶がある(未確認)――がいいっ! この曲は最高に好き。僕の去年のソング・オブ・ジ・イヤー候補の一曲。この曲のためだけにでも、彼女についてひとこと書いておかないとって思った。

 あと、このアルバムでおもしろいのは曲順。

 全十三曲のうち、配信シングルとしてリリースされた一曲目の『灰かぶり』から『蜘蛛の糸』までの八曲が、リリースの順にそのまま並んでいる。そのあとに新曲が四曲と、弾き語りのボーナストラックという構成。

 ベスト盤ならばともかく、デビュー・アルバムをこういうひねりのない曲順にする人ってあまりいないと思う。少なくても僕はほかの例を知らない。

 先行したミニ・アルバム『僕だけの愛』もその点は同じで、おもしろいことすんなぁと思っていたら、満を持したこのフル・アルバムも同じだったという。

 要するにこのアルバムと『僕だけの愛』は重複する冒頭四曲はまったく同じなわけだ(ミニ・アルバムの最期に収録された『蛹』は入っていない)。

 他人から提供された曲である『すずめ』で世間から認知された十明が、『灰かぶり』のリリースから始まった自らのシンガーソングライターとしての成長の歴史を、人前に提示した順でそのままパッケージして見せた。これはそういうドキュメンタリー的な性格を持ったアルバムなのだろうなと思う。

 その美しく繊細な声質からは想像しにくい、癖のある女の子だということを印象づけた、なかなかおもしろいデビュー・アルバムだった。

(Feb. 15, 2025)