J・エドガー
クリント・イーストウッド監督/レオナルド・ディカプリオ、ナオミ・ワッツ、アーミー・ハマー/2011年/アメリカ/WOWOW録画
クリント・イーストウッド監督、ディカプリオ主演による初代FBI長官、ジョン・エドガー・フーヴァーの伝記映画。
一ヶ月ぶりに映画を観るにあたって、なぜこれを選んだかというと、空き容量の少ないわが家のHDDレコーダーに入っている映画のうちで、これがもっとも再生時間が長かった(2時間17分)からという、身も蓋もない理由による。
公私にわたって徹底的な秘密主義者だったフーヴァー長官は、自伝のようなものを残していないらしいので、この映画で描かれる人物像は、伝聞と推測によるものだと思われる。それなのに、フーヴァーをはっきり同性愛者として描いていたりするのがすごい。フーヴァー自身が語ったという武勇伝は嘘ばかりだって言い切っていたりもするし、場合によっては名誉棄損で訴えられそうな内容。まぁ、主人公がすでに故人の上に、未婚で子供もいないから、遺族への配慮などがいっさいいらないってことなんでしょうか。それにしてもすごいなと思う。
物語は晩年のフーヴァーが自叙伝のため、ライターに過去の思い出を語り聞かせているという設定で、時間軸が行ったり来たりする。ディカプリオら主要3キャストが特殊メイクで老け役を演じているのだけれど、なかでもディカプリオの老けっぷりは見事。うちの奥さんなんか、冒頭のシーンでは、それがディカプリオだって気がつかなかったくらいの化けっぷりだった(まぁ、うちの奥さんがおかしいという話もある)。
一方で、フーヴァーの秘書ミス・ガンディ役を演じているナオミ・ワッツは、せっかくの紅一点だというのに、老け役のほうが多い印象で、あまり目立つこともなく、やや気の毒な感あり。
まぁ、ここでのフーヴァーは同性愛者として描かれているので、女性が目立たないのも致し方なしって感もある。アメリカ現代史におけるフーヴァーの業績を縦軸に、彼とその相棒であったクライド・トルソン(アーミー・ハマー)の老後までつづく微妙な同性愛関係を横軸に描いてみせた、ちょっぴり困った感じの異色の伝記映画だった。
(May 12, 2013)