Coishikawa Scraps / Music

2024年5月の音楽

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  1. Wall of Eyes / The Smile

Wall of Eyes

The Smile / 2023

Wall of Eyes [国内盤CD / 解説書・歌詞対訳付き / 高音質UHQCD仕様] (XL1394CDJP)

 レディオヘッドはどうした?――と聞きたくなるトム・ヨークとジョニー・グリーンウッドのサイド・プロジェクト、ザ・スマイルのセカンド・アルバム。

 レディオヘッドの近年のリリース・インターバルが四~五年だったのを考えると、前作からわずか二年でこのアルバムがリリースされたのがまずは驚きだ。ほんと、レディオヘッドはどうなったんだ。

 内容は前作同様に生音志向の仕上がり。でもファーストに比べると音作りがより繊細でメランコリックな感触が強くなっている。前作ではもっとビート感を打ち出した曲もあったけれど、今回はそういうのがほとんどなくて、全体的におとなしめ。

 最近はフロントマンふたりがそろってサントラの仕事に精を出しているので、そういう環境音楽的なアプローチがバンドの作品にも反映されているのかもしれない。

 ラス前でもっとも長い『Being Hectic』で終盤にノイジーでラウドになる場面があるのがアルバム唯一のクライマックスという感じだけれど、曲自体が地味目なので、正直それほどの高揚感があるでもない。

 とはいえ、五曲目の『Friend of A Friend』のまるでサージェント・ペパーなサイケデリック・サウンドには意外性があるし、全体的に丁寧に作りこまれたビンテージ感たっぷりのサウンドがこの作品のいちばんの魅力だと思う。

 歌詞がわかればまた話は違うのかもしれないけれど、僕にとってはなによりまずその音作りを味わうべきって作品。

 まぁ、レディオヘッドのころから、この人たちの作品って常にそうだった気もする。

(May. 29, 2024)