エレファントカシマシ
新春ライブ2012/2012年1月6日(金)/渋谷公会堂
いやぁ、今回のエレカシの新春ライブは、おそらくこれまででもっとも豪華だった。まさにお年玉ライブって呼ぶにふさわしい内容。
なんたって渋谷公会堂──去年のうちに「C.C.レモンホール」改め、渋公に戻った。これもなんとなく、めでたい気がする──のキャパに、金原千恵子さん率いる弦楽四重奏と、サックスの山本拓夫氏ほかホーン四名が加わるんだから。もちろん、蔦谷くんとミッキーもいるから、ステージ上は最大十四名という大所帯。
これまでも武道館ではストリングスやホーンをゲストに迎えたことはあるけれど、僕が覚えているかぎり、渋公クラスのホールでこういう大編成のエレカシを観るのは史上初だ(……と思う。前回宮本がメンバーを下げて、ひとりきりで弾き語りをするのを初めて観た、というようなことを書いたら、じつは嘘だったので、これもあてにならないかも)。それも金原・山本の両氏は、桑田佳祐や佐野元春のバックを務めるほどの大物だ(……といいつつ、山本さんのことは本編ラストに宮本が紹介するまで、そうと気がつかなかったんだけれど)。そんな方々がエレカシをサポートしてくださっているのを見るのは、それだけで感慨深いものがある。
おまけに今回の僕らは席がよかった。一階席の前から十二列目の右通路側。ステージも近いし、渋公はけっこう段差がある上に、最近のエレカシのライブは女性客が大半なので(つまり平均身長が低いので)、視野がやたら広い。こんなに見晴らしのいい場所で、こんな豪華編成のエレカシが観られるのなんて、もしかして最初で最後じゃないだろうか。いやー、ほんと贅沢な体験をさせてもらいました。
最近はすっかりファン歴も長くなって、ツアーの一回くらいは観そこなっても、まあいいか、みたいな感じがあるのだけれど(まぁ、といいつつ観そこなってないんだが)、今回ばかりは見逃していたら後悔しまくりだったと思う。翌日はセットリストが部分的に違っていたと聞いて、そっちも観たかったと残念に思ったくらいだったから。ホーンつきの『おかみさん』や『so many people』、聴きたかったぞ~。
とにかく今回の渋公はスペシャルだった。始まる前から、ステージにストリングス用の透明のパーティションやホーン隊向けの楽譜台が並んでいるのを見て、お~、きょうはなんだか豪華そうだ~、と期待に胸を躍らせていたんだったが、いざオープニングとともにホーンの皆さんがエレカシのメンバーとともに出てきたのを見て、場内がどよめく。そして演奏前から大きな拍手が沸き起こる。
一曲目はひさしぶりの『今はここが真ん中さ』。もともとホーンがフィーチャーされたこの曲をちゃんとホーンつきで聴かせてもらって、盛り上がらないはずがない……のだけれど。新春早々の仕事帰りだった僕は、この曲にいまいち集中しきれなかった。やってくれてとてもうれしい曲だったのに、なんとなくぼーっとしていたら終わってしまった感じ。すんげー無念。2曲目の『女神になって』からは、こんなことじゃいけないとステージに意識を集中した。
【SET LIST】
[#] with strings |
そこからしばらくはホーンつきの曲がつづいたので、きょうはもしや全曲ホーンつきバージョンか!とも思ったのだけれど、さすがにそこまでリハーサルに時間がとれるはずもなく。ホーン隊は4曲目の『Soul rescue』──この日、個人的に聴けていちばん嬉しかったのはこの曲――までで、いったん退散。で、結局その後は本編最後の『あなたのやさしさをオレは何に例えよう』まで出番なしとあいなった。
一方の金原千恵子カルテットは、8曲目の『リッスントゥザミュージック』でまずは金原・笠原の両女史が登場。この曲のみ、ふたりきりの参加で、あとは男性ふたりを加えた四人組で、曲により出たり入ったりを繰り返していた。
いやぁ、それにしてもストリングスの生演奏を間近で聴けるのって、とても贅沢な気分になる。最近のエレカシは音のバランスがいいので、ストリングスの響きがバンド・サウンドに埋まることなくうまく加わって、とても味わいの深い演奏になっていた。
今回は途中からそうやってストリングスを交えた曲が多く、またそのほかにも『風』や『傷だらけの夜明け』など、宮本の弾き語りをフィーチャーした曲がセレクトされていたこともあって、中盤はかなりゆったりとした印象だった。みんな宮本の歌にじっくりと聴き入り、演奏の最後の一音がフェードアウトするのを待ってから、一斉に拍手が鳴り響く、といった調子。
それでも本編ラストは、『旅』、『笑顔の未来へ』をストリングスとともに高らかに鳴り響かせ、『俺たちの明日』──珍しく宮本が黒のレスポールを持ったので、なにをやるのかと思ったらこの曲だった。石くんもレスポールでそろい踏み(ミッキーがアコギ)。なんでこの曲にレスポール2本なの?って感じで、けっこう不思議だった──を経て、『あなたのやさしさをオレは何に例えよう』でもって大団円。最後のこの曲は、この日の出演者が一堂に会した唯一の曲。問答無用の盛り上がりでした。この日のクライマックスはもちろんこの曲。
とはいえ、ここで終わらないのがいまのエレカシだ。宮本が下がり際に「第一部終了~」といっていたし、そもそも、この時点でまだ新曲をどちらも聴かせてくれていない。
はたして2度目のアンコールが『花男』で締めとなるまでに、そこからさらに10曲が披露された。もちろん新曲の『ワインディングロード』と『東京からまんまで宇宙』を含む。この2曲は1度目のアンコールでつづけて演奏された。とくに後者は予想通り、ライブだとなおさら迫力があって最高だった。
ストリングスが加わるってことで、当初やるだろうと思っていた『彼女は買い物の帰り道』や『桜の花、舞い上がる道を』をやらなかったあたりはちょっと意外だったけれど(後者は翌日演奏されたらしい)、でも終わってみれば、それがなくてもなんらおかしくないくらい、セットリストは充実したものだった。
ほんと、エレカシの長いキャリアが見事に花開いた感ありの、素晴らしい二時間半強だったと思う。素敵なお年玉をどうもありがとう~。
(Jan 15, 2012)