バゴンボの嗅ぎタバコ入れ
カート・ヴォネガット/浅倉久志・伊藤典夫・訳/ハヤカワ文庫SF
エッセイをのぞいたヴォネガットの作品としては、もっとも最後に刊行された短編集。ただ、これは刊行されたのが最後なだけで、収録作品が書かれたのは、すべて 『スローターハウス5』 よりも前とのこと。まだ売れない貧乏作家だったヴォネガットが、生計を立てるためにエスクワイア誌などのために書き、それ以来、日の目を見ることなくずっと埋もれたままだった作品群を、ヴォネガットの友人であり、大学教授であり、評論家であるピーター・リードという人が掘り出してきて、一冊にまとめたものなのだそうだ。いってみれば、長いあいだ行方が知れなかった、『モンキーハウスへようこそ』 の弟分とでもいうべき作品集。
僕は単行本のときにも一度読んでいるので、これが再読ということになる。ところがこれがまた、まったく記憶にない話ばかりで。ここまで記憶にないと、読むだけ無駄じゃないかという気がしてくるけれど、まあ、その一方で、こうやって読み直してなお、新鮮な気分で楽しめるんだから、かえって得なのかなという気がしなくもない。後者の考え方のほうが前向きで幸せそうなので、ここではそちらを採用して、万事オッケーとしておきたい。
なんにしろ、初期の作品ということで、のちの作品ほど語りの個性は強くないけれど、それでもすでにこの時点で、独特のシニカルかつユーモラスな世界観の一端は
(Feb 03, 2008)