あんときのRADWIMPS 人間開花編
渡辺雅敏/小学館
RADWIMPSのスタッフによる公式ヒステリー本の第二弾。
今回のこれはいきなり重いっ!
前作でも終盤になるとバンド活動が決して順調とはいえなくなっていたので、そのあとを描くこの本がある程度重い内容になるのは予想ができたはずだけれど、まさかここまでとは。
取り上げているのは、アルバムでいうと『絶体絶命』から『人間開花』までの四枚の時期。期間は2011年から2017年のツアーまで。
――ということで、始まりが2011年という時点で鋭い人は気がつくはず。
そう、この本はいきなり東北大震災という未曽有の災害に対するRADWIMPSという一バンドのドキュメンタリーとして始まるのだった。
『絶体絶命』のリリース日は2011年3月9日。なんと震災の二日前だ。
渾身の一枚を完成させ、いざプロモーションに打って出ようという矢先にあの大地震が起こったことで、ラッドの面々とスタッフがこのアルバムのために用意していたプロモーションはすべて日の目を見ることなく終わってしまう。
この緊急事態を前に、洋次郎は即座に動く。スタッフや知人の助けを借りて、チャリティーサイト『糸式 -ITOSHIKI-』を立ち上げ、募金や応援メッセージを集める。
震災後のツアー、メンバーの結婚、洋次郎の映画出演に単独野外ライブと、息つく暇のない激動の日々のあと、ついにドラマーの山口智史が職業性ジストニアという病気で活動休止を余儀なくされてしまう。
そこまででほぼ全体の三分の二なのだから重いのも当然。ラッドにとってもっとも厳しかったであろう数年のバンド史がこの本では描かれている。
救いがあるのは、終わりのほうは明るいこと。新海誠との運命的な出会いから『君の名は。』の音楽を手がけ、『前々前世』の大ヒットを受けて紅白歌合戦に出演した時期までを描いてこの本は終わる。
困苦の時期を乗り越えてきたあとだからこそという吹っ切れた明るさがこの本の最後にはある。
(Jul. 01, 2023)