三体Ⅲ 死神永生
劉慈欣/大森望・光吉さくら・ワンチャイ・泊功・訳/早川書房/全二巻
『三体』三部作の完結編。
このシリーズはどれも始まり方が振るっている。
第一作が文化大革命から始まるのにも意表を突かれたけれど、二作目も蟻の描写から始まって、なんだこりゃと思った。
そしてこの第三作の冒頭を飾るのはコンスタンティノープルの陥落にまつわるエピソードだ。なにそれ?
だって、前作で二百年とか未来まで話が進んだんだから、誰だって続編は当然そのつづきからだと思うじゃん。まさか時を過去に遡ろうとは……。
しかもそのエピソードが本編にどうつながるのかよくわからない。
まぁ、今作の鍵となるのが四次元への侵入みたいな展開なので、その一例だったんだろうと思うけれど、SFにうとい僕のような人間にとっては、それはなにって話だった。
そんなところにも劉慈欣という人のSF作家ならではのセンス・オブ・ワンダーを感じる。とにかく一筋縄じゃいかない。
この完結編の主役となるのは程心(チェン・シン)という女性で、三体世界との共存への道を歩んでいたはずの地球は、この人の優しさゆえにふたたび滅亡の危機に瀕することになる。その辺はおそらく第一作で葉文潔(イエ・ウェンジェ)の人類に対する絶望と憎悪が地球を危機に陥れたのと対になっているんだろう。
愛も憎しみも世界は救えない。ただ滅ぼすのみ――。
そんな救いようもなくシビアな現状認識がこのシリーズの芯になっているように思う。
クライマックスで怒涛のカタストロフをもららす三次元の崩潰という出来事が、僕にはビジュアルとしてまったくイメージできなかったこともあり、今回もいまひとつ乗り切れない感がありはしたけれど、まぁ、これが稀有なSFシリーズだというのはよくわかった。
とりあえず、三次元の崩壊というのが映像としてどんな風に表現されるのか興味があるので、ドラマ版を観てみようかと思ったら、どうもネトフリ版はそこまでたどり着いていないっぽい。残念。
(Oct. 05, 2024)