プロジェクト・ヘイル・メアリー
アンディ・ウィアー/小野田和子・訳/早川書房(全二巻)
映画『オデッセイ』の原作である『火星の人』の作者アンディ・ウィアーの最新作。
発売当初からとてもおもしろいと評判だったから気にはなっていたんだけれど、この人の作品は過去二作ともKindleで読んでいたので、これだけ紙の本で買うのもなぁと思って、読むのをためらっていたせいで、やたらと後手を踏んだ。
映画版が公開され、それもとても好評だったため、やっぱこれは映画を観る前に原作を読んどかなきゃならんと思い、すでに文庫化されたあとだったけれど、文庫版も電子版もちょい高だったこともあり、ならばと、いまさら単行本を買って読んだ。なんて間抜けなんだ。タイミング逸しすぎ。さっさと初動で読んでおけばよかった。
でもまぁ、これは内容をほとんど知らないうちに読めてよかった。これから先は映画の情報とか広まって、自然とネタバレを踏んでしまうことも多くなるんだろうから、その前に読んでおいて正解。え、なにそれ、みたいな驚きたっぷりの小説だった。
映画の予告編で伝わってきたあらすじは「地球の存亡をかけてひとりの宇宙飛行士が単独でミッションに挑む」みたいなやつだったから、勝手に『火星の人』の上位互換みたいなイメージを抱いていたら、序盤からそれを裏切るびっくり展開がつづく。
物語のきっかけとなり、宇宙船の原動力ともなるアストロファージ。この着想がとにかく素晴らしい。正直なところ、そんなものあるかいって超現実的存在ではあるけれど、SFなんだから、現実味はなくてもOK。アストロファージというひとつの嘘をもとに、ここまでおもしろいフィクションを書きあげた手腕に脱帽した。
この人の文体はいささか軽すぎる嫌いがあって、作風が好きだとはいえないんだけれど、でもそのおもしろさには毎回夢中にさせてもらっている。まさにページターナー。今回も上下巻・六百ページ越えを一気に読まずにいられなかった。
ちょっと次から次へとトラブル起きすぎじゃん?――ってくらい、休みなく怒涛のハプニングが頻発する、ジェットコースタームービーならぬ、ライトスピードスペースノベル。
(May. 4, 2026)
