絵本百物語
京極夏彦・竹原春泉・桃山人/角川文庫
京極夏彦の最新作は、竹原春泉という画家の妖怪画に、桃山人という人が文を添えた妖怪本の現代語訳版。
なぜこういう本をいきなり文庫オリジナルで出すことになったんだろう?――と思ったらば、だ。
なんと、これまるまる一冊が――原書は全五巻みたいだから実質的には一冊ではないのかもしれないけれど――『巷説百物語』のネタ本だったから。
名に偽りありで、「百物語」をうたいながら、この本で紹介されている妖怪画は四十四しかない。
対する『巷説百物語』のシリーズを構成しているエピソードは全四十五話。
最終話は『百物語』だから、つまりそれを除くと同じく四十四。
そう、つまりその四十四話が、この『絵本百物語』に収録された妖怪――この本の収録順でいえば、白蔵主、飛縁魔、狐者異、塩の長次郎、等々――を、そのままのタイトルで「巷説」として語りなおしたものなのだった。
まさかそんな統一性があったとは……。
妖怪好きにとっては自明の理だったのかもしれないけれど、妖怪にうとい一般人としては、まさかそんな仕掛けになっていようとは思いもよらなかった。
シリーズ全七作でもって、京極夏彦は『絵本百物語』を自家薬籠中の物として、平成・令和の世にあっても楽しめる娯楽作品としてリメイクしてみせた。
でもって、今回『了巷説百物語』の文庫化により、シリーズの文庫版がすべて出揃ったのにあわせて、その最終巻と一緒にこの『絵本百物語』を刊行することで、シリーズの完結を高らかに宣言してみせた――ということなんでしょう。
元ネタはすべて使い切りましたよ、もうつづきはありませんよ――と。
終わってから知ったる、驚嘆すべき名シリーズの大団円。
いずれこの本の内容をしっかり頭に叩き込んだうえで、シリーズ全部をじっくりと再読したいと思う。
(Jun. 03, 2026)
