日本2-0中国
東アジア選手権/2003年12月4日(木)/国立競技場/フジテレビ
日本代表にとって今年最後となる公式戦三連戦、東アジア選手権が開幕。日本は中国、香港、韓国と順番に対戦する。まず最初の対戦相手はオランダ人監督に率いられた中国だ。
この大会、開催日が国際Aマッチ・デーではないため、海外チーム所属選手は基本的に参加していない(韓国戦のみ藤田がスポット参戦の予定)。そのため必然的に、この大会における日本代表はJリーグ代表とでも言うべき形をとることになった。お気に入りの海外組MF四人組が使えない状況に対してジーコが下した意外な決断は、今までは避けてきた3バックの導入だった。
初めにシステムありきではないというのがジーコが初めから言っている方針だ。だけれど今まで
もうひとつ想像するに、3バックの採用には中澤の台頭という要素が大きかったに違いない。今の中澤の充実ぶりからして、彼をサブに置いておくには惜しい。かといって中田の代わりにキャプテンマークを任した宮本を外すはずはない。すると4バックを維持するには坪井を引っ込める必要がある。でも今まで宮本とのコンビで経験を積んできた伸び盛りの坪井を外したくもない。結果、この三人を一緒に使って、両サイドを中盤に上げる3-5-2のフォーメーションが今のチームならば一番いいと判断したのだろう。それはつまり、サブの攻撃陣に対する期待感よりも、中澤に対する信頼感の方が高かったということに他ならない。奥や石川あたりはジーコに「こいつらが見たいから4バックに戻そう」と思わせるような、より一層の発奮が必要だろう。
結果からいえば、この日の試合では相手が弱かったとはいえ、ディフェンス・ラインは嬉しいくらい安定していた(まあニ、三回は、いつもどおり危なっかしい場面もあったけれど)。今後の問題は4バックに戻した時に坪井と中澤のどちらを残すかだろう。今のパフォーマンスからすると中澤だと思うのだけれど。あと今は故障がちで低迷しているけれど、本来の実力からすれば松田もここに顔を出してしかるべきだし。DFのセレクションも意外と難しい問題だったりする。僕らは単なるサポーターだから好き嫌いでいいけれど、監督はそういうわけにはいかない。ジーコも大変だ。
なにはともあれジーコが日本代表の指揮をとるようになって初の3バックでの試合だった。フォーメーションはGK楢崎、DFが左から中澤、宮本、坪井、中盤は遠藤、福西の2ボランチに、両サイドがアレックスと山田、トップ下に小笠原。そして2トップが久保と大久保という、3-5-2、もしくは3-4-1-2という布陣だ。2トップのうち、大きな方が久保で、小さな方が大久保ってのがちょっとおかしい。
試合は開始からわずか5分くらいで、高い位置で相手のボールを奪い取った小笠原から久保へのラストパスがとおり、GKと1対1のチャンスを得た久保が、最初のシュートでは決め切れなかったものの、こぼれ球を落ち着いて押し込んで先制。
この得点で日本が引き気味になってしまったのか、それ以降は中国の速くて強いプレッシャーに押されるような形で、試合は膠着状態に陥ったまま前半終了。後半はなにがどう変わったのか、終始日本がゲームを圧倒していた。前半はほとんどなくて不満だったアレックスと山田の攻撃参加もようやく見られるようになったし、時には中澤が上がってクロスなんて場面もあった。攻撃に勢いがあって見ていて楽しかった。
2点目は大久保に代わってピッチに立った本山からのスルーパスに反応してフリーのチャンスを得た久保が、GKの動きを見てゴールへとパスのようなシュートを流し込んだもの。眠れる竜と仇名された男が、ようやくその才能に見合った活躍を見せてくれた一戦だった。アントラーズのMFコンビが(まあ本山はFWとしての出場だけれど)どちらもアシストを決めてくれたのもファンとしては嬉しい。
3バックを採用したことによる一番のポイントは、両サイドウィングの攻撃参加の度合いだと思うのだけれど、その点ではこの試合はやはり不十分だった。アレックスはボールを持つと中へと向かうばかりで、自分からサイドを駆け上がる動きが皆無。山田もアレックスとバランスを取るために下がってばかりで、ほとんど攻撃参加できていなかった。この二人が攻撃において効果を発揮できないのならば、3バックは無意味だろう。どうせならば4バックで戦って、どこまでできるかを見せて欲しかった気がする。
中国は中盤のプレッシャーがきつい間はかなり手ごわい印象だったけれど、それ以外だと特別見るところのないチームだった。これくらいの相手だったらば、日本代表のディフェンスラインなら急造の3バックでも完封できて当然だろう。このフォーメーションの可否については韓国との対戦を見るまでは判断は保留ということになりそうだ。
なにはともあれ、この日の試合は久保の代表初ブレイク、小笠原の司令塔としての存在感、守備的2ボランチ&3バック・システムの成功といいことづくめの試合だった。この大会は海外組不在ながら、なかなか見所の多い大会だと思うのに、国立に空席が目立ったのが意外だった。なんだかなあ。
(Dec 06, 2003)