2003年11月のサッカー

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  1. 11/03 ● 鹿島0-4浦和 (ナビスコカップ・決勝)
  2. 11/15 ○ 横浜M1-2鹿島 (J1・2ndステージ第13節)
  3. 11/19 △ 日本0-0カメルーン
  4. 11/22   磐田2-1G大阪 (J1・2ndステージ第14節)
  5. 11/29 △ 浦和2-2鹿島 (J1・2ndステージ第15節)

鹿島アントラーズ0-4浦和レッドダイヤモンズ

ナビスコカップ・決勝/2003年11月3日(月)/国立霞ヶ丘競技場/フジテレビ

 完敗。いや、惨敗。今年は負けるべくして負けた。これくらい徹底的にやられると悔しいという気にもならない。アントラーズの状態も悪すぎたし。レッズ初のタイトル獲得という話題もサッカー界にとってはいいことだ。素直に敬意を表したい。いやいや、今日のレッズは強かった。ナビスコカップ優勝、おめでとうっ。でもやっぱり悔しいか。
 先週のJリーグにおける4バックの失敗への反省からか、トニーニョ・セレーゾはこの試合に再び5バックで{のぞ}んだ。しかも今回は以前のような3バックと5バックの中間みたいな形ではない。あの時の布陣では右サイドには青木が入っていた。だから変則4バック、3ボランチと考えられなくもなかった。ところが今日は違う。フェルナンドの出場停止に加え、レッズの強力な攻撃力に対する警戒心が強かったのだろう。3バックの右に池内を投入。その左右には石川と名良橋。つまりまったくの5バックだ。その前は青木、本田の2ボランチに、小笠原のトップ下、エウレル、深井の2トップという布陣。エウレルの復帰は大きいものの、それでも攻撃における駒不足の感は否めない。とれて一点だろうと思った。今日の試合に勝機があるとしたら、それはいかにレッズの攻撃をしのいでスコアレスに押さえ込むか、ただそれだけにかかっているというのがキックオフ前の僕の考えだった。
 でも開始早々、多分この試合は負けだなと思わされることになる。先にチャンスをつかんだのは鹿島だったけれど、その直後にいきなりレッズの強力2トップにゴールシーンを演出されてしまうのだった。田中達也のクロスにエメルソンのシュート。幸いオフサイドの判定に救われはしたものの、鹿島のディフェンスラインは完璧に崩されていた。この調子で試合が進んだら勝てるはずがない。
 案の定──。前半13分のレッズの先制点は、やはり田中の頑張りから生まれる。右サイド深いところへ転がったボールを諦めずに追ってボールをキープすると、マークにいった石川なんていないも同然という、精度抜群のクロスを上げる。これを山瀬がヘッドで流し込んでレッズ先制。山瀬のヘディングも見事だったけれど、やはりこの場面は田中が素晴らしかった。あの場面、大半の選手ならばボールを追わないだろう。それをがむしゃらに追ってマイボールにした積極性に負けたようなものだ。やられるべくしてやられたって感じだった。
 前半残り十分ばかりの時間帯にはCKからのプレーでレッズの坪井とエメルソンが頭をぶつけ、二人とも流血するというトラブルがあった。エメルソンはしばらくのちに頭を包帯でぐるぐる巻きにしてピッチに戻ったが、坪井はそのまま前半は引っ込んだままだった。多分、傷口を縫っていたのだろう。ハーフタイムで無事治療を終えて、後半はピッチに戻っていたけれど、頭に巻いた包帯には血が滲んでいた。試合終了時には左眼が腫れあがってほとんど開いていないような状態だった。それでもガンガン、スライディングタックルとかしていたんだから、敵ながらあっぱれだ。さすが日本代表。
 こちらは前半途中にエウレルが再び足を痛めて中島と交替。満身創痍のチームはさらなる戦力ダウンを余儀なくされる。もっとも交替で出場した中島は持ち前のスピードを生かしていいプレーを見せてくれていたと思う。密かにFW失格の烙印を押されたんじゃないかと心配していた深井も今日はFWで出場(まあ平瀬の出場停止というチーム事情があったのだけれど)、ハッスルプレーを見せてくれた。若い二人にはいい経験になっただろう。この試合での経験がアントラーズの将来に還元されることを祈ってやまない。
 試合のほうは0-1で始まった後半わずか3分に、カウンターからエメルソンに追加点を奪われた時点で勝負ありだった。ディフェンス(秋田~ぁ)の裏を取られてフリーになったエメルソンを止めようと飛び出した曽ヶ端がかわされ、アントラーズのゴールは無人。懸命に戻った大岩のスライディングも落ち着いてかわしたエメルソンは、誰もいないゴールへと、いとも容易くシュートを流し込んだ。ぐうの音も出ねえ。
 さらには田中達也が駄目を押す。池内、秋田を続けざまにフェイントでかわして、ドカンとミドル一発。本日一という美しいゴール・シーンだった。一方でこれほどまでに見事にディフェンスラインを破られてしまうなんて、本当にこのチームは9冠を誇る鹿島かと首を傾げたくなるほどの脆さだった。おまけにその後、小笠原が2枚目の警告で退場になってしまうし。もう踏んだり蹴ったり。
 最後にエメルソンが大岩の股抜きで曽ヶ端のファンブルを誘って4点目を決める。アントラーズも野沢や相馬を投入して最後まで得点を狙い続けてくれはしたけれど、結局スコアレスのまま試合終了。浦和レッズがJリーグ発足以来初となるタイトルを手にした。
 最初に書いたとおり、今年に関してはこれが正しい結末だと思う。今のアントラーズはあまりにタイトルにふさわしくなさ過ぎる。その一方でレッズは十分その地位に値する。特に田中達也の成長には驚かされた。もとよりゴールへの意欲には目覚しいもののある選手だったけれど、そこに以前はなかった正確さが加わっている。多分フル代表入りもすぐそこだろう。
 しっかしまあ。やられた、やられた。何度も書くけれど本当にぐうの音も出ない。もしかしたらこの試合は現在の日本代表である坪井、山田の二人が、往年の日本代表を支えた秋田、名良橋に世代交代を突きつけた試合だったのかもしれない。アキタ~、なんでそこで止めてくれないんだと何度思ったことか。残念ながらさすがの鉄人もそろそろ年貢の納め時なんじゃないだろうか。来期は羽田、金子あたりの台頭を望むよ、いい加減。
 この頃よく言われることだけれど、鹿島・磐田のJリーグ二強時代もようやく終わったのだろう。そんなことを思わされる鹿島の完敗だった。レッズあっぱれ。
(Nov 03, 2003)

横浜F・マリノス1-2鹿島アントラーズ

J1・セカンド・ステージ第13節/2003年11月15日(土)/横浜国際総合競技場/HNK

 このところサッカーに対する集中力を欠いていて、いまひとつゲームを楽しみきれていない。この試合も、ただぼうっと眺めていた感じだった。なのでたいしたことは書けない。もっとも、いつだってたいしたことは書いていないけれどもね。
 故障者続出のシーズン終盤、トニーニョ・セレーゾは試合ごとにフォーメーションを変えてなんとかしのいでいる。前節ガンバ戦は5バックだったらしいけれど、この試合では再び4バックに戻していた。いろいろやりくりが大変そうだ。相馬はなぜかベンチ入りもしておらず、左サイドバックは石川。さらに青木、フェルナンド、本田の3ボランチ、小笠原がトップ下、平瀬、深井の2トップという布陣。
 試合は開始わずか3分で横浜が先制。佐藤由紀彦からのクロスを秋田がクリアしきれず、久保に通してしまった。あの位置でフリーでボールを持たれたらアウト。ああ、またか秋田と気分が暗くなった。
 とにかく得点力不足が著しい昨今だ。この先制点でもう負けたかと思った。前節ようやくJ初ゴールを(それも2本も)決めている深井に期待していたのだけれど、前半はほとんど攻撃らしい攻撃を仕掛けることができない。深井がいい悪い以前の問題だった。どうにも相手にならない。今のアントラーズにはマリノスと互角に戦える戦力がないとしか思えなかった。
 ところが前半22分のプレーで状況が一変する。小笠原との接触プレーに興奮したユ・サンチョルが、小笠原を胸で小突いてレッドカードをもらってしまったためだ。小笠原の倒れ方は演技過剰だった。あれくらいでレッドを出してしまう主審もどうかと思う(この試合に限らず、この頃のJリーグはやたらとカードが多い気がする)。しかしこのユ・サンチョルの退場がアントラーズにとって大きかったのは確かだった。これでようやく互角に戦えるようになった。というか、これで力関係は一気に逆転してしまった。ここから先は鹿島が試合を支配するようになる。
 とはいってもあくまでボールの支配率が上がっただけという印象。後半の途中まではまるで点がとれる気がしなかった。こりゃまずいかと思って、いらいらしながら見ていたところで、小笠原がやってくれた。ミドル一発で横浜ゴールをこじ開けて、試合をイーヴンに戻す。GK榎本哲也の頭上を狙ったシュートはさすが代表と思わせるものだった。決めたあと、にこりともしないあたりも小笠原らしい。一人少ない相手にようやく同点に追いついただけだ、喜んでいる場合じゃないという気分だったんだろう。負けず嫌いで頼もしい。
 決勝点も小笠原が基点だった。でもこの得点は途中出場の野沢が一番の功労者だ。小笠原のスルーパスに反応して左サイドからペナルティエリア内へ切れ込み、懸命に足を伸ばしてボールをキープした。そのままシュートも打てる位置だったけれど、横浜のGKとDFがディフェンスに入っているのを見て、ゴール前の平瀬へのラストパスを選択した。あとは平瀬がこれを落ち着いてゴールへ蹴り込むだけだった。
 これで勝ち越し。あとは無難に逃げ切ってアントラーズが勝ち点3をゲット、上位チームが軒並み敗れたこともあって、暫定3位へと浮上した。よっしゃあ。
 しかしだ。この試合では秋田、大岩がイエローをもらって時節は累積警告により出場停止。加えて名良橋が前半早々に久保との接触プレーで足を痛めて負傷交替。次節の出場はどうかという状況だ。まあ彼のことだから無理をしても出るだろうけれど、いずれにせよセンターバックの二人は出られない。ただ救いなのは金子が復帰して、この試合ではベンチ入りしていたこと。少なくても池内、金子の二人で次節はなんとかスタメンを埋められるだろう。苦しい台所事情には変わりがないのだけれど。
 ちなみに横浜の方もかなり苦しい状況らしい。前節は松田がレッドを貰ってこの試合は出場停止。時節はユ・サンチョルに加え、累積警告でマルキーニョス、ドゥトラまで出場停止だそうだ。お気の毒。
 この日の対戦の結果、セカンド・ステージは残り2節で勝ち点3の間に9チームがひしめく大接戦で、一日遅れのヴェルディ-ジュビロ戦の勝者が首位に踊り出るという状況になった。できればこの試合が引き分けに終わってくれるといいのだけれど、どうもジュビロが底力を見せそうな雰囲気が……。
 このあまりの混戦をテレビ局も読みきれなかったらしく、突如首位決戦となることが決まったヴェルディ-ジュビロ戦はデジタル放送でしか放送されなかったりする。代わりにNHKが放送するのが仙台と京都の最下位決戦ってのはどうだ? まあ両チームとも必至だからおもしろい試合にはなるんだろうけれども。
 この日、J2ではサンフレッチェ広島がJ1への昇進を決めた。
(Nov 16, 2003)

日本0-0カメルーン

2003年11月19日(水)/大分スポーツ公園総合競技場/テレビ朝日

 中村俊輔、中澤、小笠原が怪我のために代表を辞退。代わりに藤田と宮本がスタメンに名前を連ねた以外は、海外組を中心とした、ジーコの考えるベスト・メンバーで臨むことのできる年内最後の試合となったカメルーン戦だった。でも不屈のライオンことカメルーンも、ニ、三人の中心選手が来られなかったせいか、意外と手ごたえがなかった。このくらいの相手に結局スコアレスで終わってしまったのでは、やはり満足はできない。いやいや、内容的には拮抗したいい試合だったし、チーム全体が悪かったとは思わない。でもなあ。
 結局今日の試合は僕にとっては柳沢のプレーがすべてだったような気がする。本当によお。君はいつまでたってもそんなか。今日も開始1分のファーストタッチはジャンプして胸トラップしたボールを高原に渡そうとして息が合わず、敵に献上してしまうプレーだった。今日はその胸トラップによる同じミスを三回くらいやっていたと思う。ゴール前でフリーになりかけながら、DFに止められてシュートを打てずに終わる場面もやたらと多かった。
 彼の場合、よく言われるように本当に動きの質が高いのだろう。さかんにボールに絡んではいる。それだから、なおさらミスの連発やシュートよりパスを選択する消極性が目立ってしまうことになる。期待が大きいだけに、失望、失望、失望の連発で本当にやりきれなかった。
 ヤナギと比べると今日の高原はボールのタッチは少なかったけれど、それでもまだゴールの匂いを感じさせてくれた。柳沢と交替でピッチに立った大久保しかり。少なくても彼らのプレーはゴールに向かって積極的だ。プレーの消極性ゆえに一部のファンには非常に評判が悪いという柳沢だけれど、今日のプレーを見ていればそれも仕方ないかなと思ってしまう。サッカーを真剣に見るようになった理由のひとつが彼のプレーを見たことだったという僕でさえ、こんなにがっかりさせられているのだから、もとより彼の姿勢が気に入らない人間にとっては、なおさらだろう。レッズ田中達也のA代表入りも時間の問題だろうし、今のままだと柳沢がドイツW杯のピッチに立てる可能性はどんどん低くなるばかりなんじゃないだろうか。別にプレーのスタイルを変えろとは言わないから、ワンタッチでさばいてばかりじゃなく、もう少し自らボールをキープするようなプレーを絡めることと、ミスを減らすことは心がけて欲しいと思う。本当にお願いしたい。
 今日の試合は柳沢以外だと、両サイドの攻めあがりがほとんどなかったのが気になった。本来はMFであるレッズ山田とアレックスをサイドバックに起用しているのは、ひとえにその攻撃力ゆえのはずだ。サイド攻撃に絡めないようならば、わざわざ彼らを起用している意味がない。単にディフェンス力の低下を招いているだけだろう。テレビの解説でもセルジオ越後がさかんに山田の裏を取られ過ぎていることを気にしていた。失点こそなかったものの、やはりディフェンスには問題があるんだろうなと思う。その分ちゃんと攻撃で成果を見せてもらわないことには割があわない。基本的に僕は彼ら二人の起用は肯定している方だから、もっともっと攻撃に絡んでみせて欲しい。
 その他のメンツに関しては文句なし。基本的にみんないい出来だったと思う。中田、藤田、小野、稲本の中盤は十分に楽しい。最後の十分強、藤田に代わって遠藤がひさしぶりに出場したのも個人的には嬉しかった。その反面、藤田のプレーをもっと見ていたいという思いもある(後半の中頃までの藤田の縦横無尽な活躍ぶりはすごかった)。確かにこのチームだとジーコじゃなくても選手交替は悩ましいかもしれない。俊輔が帰ってきたらジーコはどういう風に戦うつもりなんだろうか。俊輔スタメンで藤田、遠藤は後半のオプションという感じになるのか。うーん、わからない。
 なにはともあれ、内容的にはそれほど悲観的にならなくてもよさそうな試合ではあった。前回のルーマニア戦後にチームのコミュニケーション不足を危惧していた中田も、今回は試合が終わった後で随分と笑顔を見せていた。彼としても今回は悪くなかったと感じていたんだろうか。そうだといいと思う。
 さて、次は来月の東アジア選手権だ。中田ら海外組は抜きという話だから、残りのメンツでどういう風に韓国や中国を相手に戦って見せてくれるのか、不安な一方、楽しみでもある。少なくても小笠原や遠藤にとっては大きなチャンスだ。ここで十分アピールして見せて欲しい。
(Nov 19, 2003)

ジュビロ磐田2-1ガンバ大阪

J1・セカンド・ステージ第14節/2003年11月22日(土)/ジュビロ磐田スタジアム/BS1

 前節首位に立った磐田が王者の貫禄を見せた一番だった。なんだかんだいっても、やっぱりジュビロは強かった。
 試合は前半も早い時間に遠藤保仁のスルーパスを受けた吉原がDFの裏に飛び出し、GKをかわして無人のゴールにボールを流し込み、ガンバが先制する。そしてそのまま折り返した後半開始5分には、西が二枚目のイエローカードをもらって退場してしまう。どちらのカードもちょっと可哀想な判定だった。磐田は負けている上に人数まで少ないという劣勢に立たされたのだった。
 ところが、ここからがJリーグ最強チームの真骨頂だ。数的に不利な状況をものともせず、逆にガンバを圧倒し始める。まずは前田がPKでうしろから絡みつかれるようにして倒されてPKを奪取、これをグラウが決めて同点。さらにそれから10分もしないで名波の最高のクロスを河村が頭でダイナミックに叩き込んで勝ち越してしまう。厳しい状況になってからの集中力の高まりが半端じゃない感じがした。圧巻。
 ガンバは後半から出場したアリソンがわずかの時間で2枚のイエローをもらって退場してしまい、数的有利を失った時点で敗北が決まったようなものだった。それにしても、このアリソンの退場もかなりひどい判定の結果だった。ファールは二つとも不可抗力だったと僕は思う。この日の主審は本当になっていなかった。
 まあ、そうはいっても、ガンバには同点に追いつかれる以前にも二度、三度とPKを取られても文句が言えないようなプレーがあったし、結果は順当だったと思う。
 さて、これで最終節に勝てば優勝となる磐田だけれど、その対戦相手がなんと勝ち点3であとを追う横浜F・マリノス。横浜が勝てば勝ち点で並び、得失点差で上の横浜が磐田の成績を上回ることになる。ところが今日の試合でアントラーズが勝ったため(小笠原がロスタイムに決勝ゴール!)、現在は勝ち点差2で単独2位につけるのはアントラーズ。マリノスが勝ったとしても地力優勝はならない。横浜、磐田の実力が伯仲しているとしても、そういう状況的にはモチベーションが高い磐田がより有利に思える。でもここで磐田の優勝を許してしまうと横浜もチャンピオンシップでの戦いに不安が残るだろうし……。こうなると本当に優勝の行方がわからない。非常におもしろいJ1のセカンド・ステージになった。
 なんにしろアントラーズ・サポーターとしては苦しい台所事情の中、最後まで優勝戦線に絡んでくれて嬉しい限りだ。トニーニョ・セレーゾ監督と選手たち感謝、感謝。今年のチームは優勝にはふさわしくないなんて書いたこともあったけれど、ここまで来て優勝を狙わないなんてのはプロ精神に反する。最後を勝ちで納めてすっきりと終わって欲しい。セカンド・ステージも次週決着。
(Nov 23, 2003)

浦和レッドダイヤモンズ2-2鹿島アントラーズ

J1・セカンド・ステージ第15節/2003年11月29日(土)/埼玉スタジアム2002/BS1

 優勝のかかった大一番、横浜-磐田戦を見るつもりでいたらば、NHKはちゃんと浦和-鹿島戦もBSで放送してくれた。偉いっ。そういうことならばやはり鹿島の試合を見ないわけにはいかないということで、やや裏の試合に気をとられながらの観戦となった。とにかく勝たないことには優勝はない上に、レッズにはナビスコ杯の雪辱の意味もあったのだけれど、いや、これがしかし……。
 両サイドバックと本山を故障で欠いた鹿島は、内田、池内にサイドを任せ、石川を攻撃的MFに起用する変則的なフォーメーションでこの試合に臨んだ。ディフェンシブな選手を左サイドに起用することにより、レッズの攻撃のポイントとなる山田を止めて、エメルソン、田中の2トップとのつながりを断ち切ろうという作戦だったらしい。
 これが功を奏したようで、前半は浦和の2トップにほとんどボールを入れさせない。逆に鹿島は少ないチャンスを見事にものにする。この日もキャプテンマークをつけた小笠原が、相手のクリアミスをボレーで叩き込んで綺麗に先制。さらにゴール前の混戦から青木が落ち着いたシュートを決めて2-0として前半を折り返す。ホームの浦和が劣勢だったせいか、やたらと静かな試合という印象だった。
 ところが後半、浦和が永井をピッチに送り込んで3トップの攻撃的布陣を敷いたことでいきなり形成が逆転する。まあ前半もかなり攻められる場面が多かったのだけれど、ここからは本当にもう防戦一方。後半5分でエメルソンにPKを取られた場面は相手のミスでなんとか逃れたものの、やがて左サイドを田中に破られ(秋田のスライディングが届かない……)、そこからクロスを入れられてエメルソンにシュートを打たれる。これは曽ヶ端がなんとか止めたものの、そのこぼれ球に永井が詰めていた。オフトの作戦勝ちってところだろう、3トップの連係によって1点差に追い詰められる。この時点で裏の磐田-横浜は1-1というスコア。あちらが引き分けに終わった場合、鹿島は浦和に4点差をつけて勝たないと優勝はない。この時点でかなり優勝は厳しくなったかという感じだった。
 ところがだ。試合もあとはロスタイムを残すのみとかいう時間帯になって。横浜が2-1でリードしたという途中経過が飛び込んでくる(久保の執念のヘッド!)。まさかという感じだった。あちらでは前半にGK榎本哲也がグラウをどついて退場になり、横浜が10人で戦っているというのを聞いていたから、同点に追いついたのさえ驚きだったのに、まさかロスタイムで逆転してしまうなんて……。
 ともかくこの時点で、この試合のロスタイムさえ凌げれば、アントラーズがセカンド・ステージを制するんだということになったわけだ。あまりの展開に観ているこちらのボルテージは、どかっと上がる。さあ、いけ。逃げ切っておくれ。そう祈りながら観ていたのに……。
 右サイドでボールを持った永井をマークにいった大岩が、疲れからか、気の入らないプレーで突破を許し、クロスを上げられてしまう。ゴール前にはちゃんとエメルソンが詰めている。秋田のマークが遅れて、ズドンとヘディングを打たれる。同点ゴール……。
 アントラーズの大逆転優勝の夢はこの瞬間に断たれた。ナビスコカップに続き、リーグ戦でまでレッズに煮え湯を飲まされるとは……。ああ、がっくり。
 この試合は前半と後半でまるで違う内容になってしまった。前半をみる限り、今日の勝ちは堅いと思ったのに、後半は引き分けに終わるのも当然という内容。結果的には池内を下げて金子(!)を投入、3バック(5バック?)に切り替えたのがアダになったような気がする。後半は小笠原も引きっぱなしで、3ボランチに近い形だったし。とてもじゃないけれど3点目、4点目を狙おうって戦い方じゃなかった。そういう意味では、守りにいって守りきれなかったのだから、自滅と言える。やはり今年は話題となった全員三十歳以上のディフェンス・ラインが故障や疲労で一年を通してしっかりした仕事を出来なかったのが敗因だと思う。さすがのアントラーズも来年はそろそろ意識的な世代交代が必要だろう。燻し銀の活躍を期待していただけに残念ではあるけれど。
 ということで2003年のJリーグはセカンド・ステージも横浜F・マリノスが制し、去年のジュビロに続いて完全制覇を成し遂げた。ただし圧倒的に強かった去年の磐田とは違い、今年はどこのチームも圧倒的な力がない中で、幸運を味方につけたのが横浜だったという印象があった。岡田さんという人は監督としても十分優れているのだろうけれど、ワールドカップの監督を務めたのもそうで、とても運に恵まれた人なんだなと思った。
 なんにしろアントラーズはこれだけ故障者が多い中、それでもきちんと最後まで優勝争いに絡んでみせてくれたのは十分賞賛に値する。最後まで楽しませてくれてありがとうと言いたい。さ、次は天皇杯だ。元日決戦目指してもう一仕事がんばって欲しい。
(Nov 30, 2003)