鹿島アントラーズ0-4浦和レッドダイヤモンズ
ナビスコカップ・決勝/2003年11月3日(月)/国立霞ヶ丘競技場/フジテレビ
完敗。いや、惨敗。今年は負けるべくして負けた。これくらい徹底的にやられると悔しいという気にもならない。アントラーズの状態も悪すぎたし。レッズ初のタイトル獲得という話題もサッカー界にとってはいいことだ。素直に敬意を表したい。いやいや、今日のレッズは強かった。ナビスコカップ優勝、おめでとうっ。でもやっぱり悔しいか。
先週のJリーグにおける4バックの失敗への反省からか、トニーニョ・セレーゾはこの試合に再び5バックで
でも開始早々、多分この試合は負けだなと思わされることになる。先にチャンスをつかんだのは鹿島だったけれど、その直後にいきなりレッズの強力2トップにゴールシーンを演出されてしまうのだった。田中達也のクロスにエメルソンのシュート。幸いオフサイドの判定に救われはしたものの、鹿島のディフェンスラインは完璧に崩されていた。この調子で試合が進んだら勝てるはずがない。
案の定──。前半13分のレッズの先制点は、やはり田中の頑張りから生まれる。右サイド深いところへ転がったボールを諦めずに追ってボールをキープすると、マークにいった石川なんていないも同然という、精度抜群のクロスを上げる。これを山瀬がヘッドで流し込んでレッズ先制。山瀬のヘディングも見事だったけれど、やはりこの場面は田中が素晴らしかった。あの場面、大半の選手ならばボールを追わないだろう。それをがむしゃらに追ってマイボールにした積極性に負けたようなものだ。やられるべくしてやられたって感じだった。
前半残り十分ばかりの時間帯にはCKからのプレーでレッズの坪井とエメルソンが頭をぶつけ、二人とも流血するというトラブルがあった。エメルソンはしばらくのちに頭を包帯でぐるぐる巻きにしてピッチに戻ったが、坪井はそのまま前半は引っ込んだままだった。多分、傷口を縫っていたのだろう。ハーフタイムで無事治療を終えて、後半はピッチに戻っていたけれど、頭に巻いた包帯には血が滲んでいた。試合終了時には左眼が腫れあがってほとんど開いていないような状態だった。それでもガンガン、スライディングタックルとかしていたんだから、敵ながらあっぱれだ。さすが日本代表。
こちらは前半途中にエウレルが再び足を痛めて中島と交替。満身創痍のチームはさらなる戦力ダウンを余儀なくされる。もっとも交替で出場した中島は持ち前のスピードを生かしていいプレーを見せてくれていたと思う。密かにFW失格の烙印を押されたんじゃないかと心配していた深井も今日はFWで出場(まあ平瀬の出場停止というチーム事情があったのだけれど)、ハッスルプレーを見せてくれた。若い二人にはいい経験になっただろう。この試合での経験がアントラーズの将来に還元されることを祈ってやまない。
試合のほうは0-1で始まった後半わずか3分に、カウンターからエメルソンに追加点を奪われた時点で勝負ありだった。ディフェンス(秋田~ぁ)の裏を取られてフリーになったエメルソンを止めようと飛び出した曽ヶ端がかわされ、アントラーズのゴールは無人。懸命に戻った大岩のスライディングも落ち着いてかわしたエメルソンは、誰もいないゴールへと、いとも容易くシュートを流し込んだ。ぐうの音も出ねえ。
さらには田中達也が駄目を押す。池内、秋田を続けざまにフェイントでかわして、ドカンとミドル一発。本日一という美しいゴール・シーンだった。一方でこれほどまでに見事にディフェンスラインを破られてしまうなんて、本当にこのチームは9冠を誇る鹿島かと首を傾げたくなるほどの脆さだった。おまけにその後、小笠原が2枚目の警告で退場になってしまうし。もう踏んだり蹴ったり。
最後にエメルソンが大岩の股抜きで曽ヶ端のファンブルを誘って4点目を決める。アントラーズも野沢や相馬を投入して最後まで得点を狙い続けてくれはしたけれど、結局スコアレスのまま試合終了。浦和レッズがJリーグ発足以来初となるタイトルを手にした。
最初に書いたとおり、今年に関してはこれが正しい結末だと思う。今のアントラーズはあまりにタイトルにふさわしくなさ過ぎる。その一方でレッズは十分その地位に値する。特に田中達也の成長には驚かされた。もとよりゴールへの意欲には目覚しいもののある選手だったけれど、そこに以前はなかった正確さが加わっている。多分フル代表入りもすぐそこだろう。
しっかしまあ。やられた、やられた。何度も書くけれど本当にぐうの音も出ない。もしかしたらこの試合は現在の日本代表である坪井、山田の二人が、往年の日本代表を支えた秋田、名良橋に世代交代を突きつけた試合だったのかもしれない。アキタ~、なんでそこで止めてくれないんだと何度思ったことか。残念ながらさすがの鉄人もそろそろ年貢の納め時なんじゃないだろうか。来期は羽田、金子あたりの台頭を望むよ、いい加減。
この頃よく言われることだけれど、鹿島・磐田のJリーグ二強時代もようやく終わったのだろう。そんなことを思わされる鹿島の完敗だった。レッズあっぱれ。
(Nov 03, 2003)