オマーン0-1日本
W杯アジア一次予選/2004年10月13日(水)/マスカット/フジテレビ
さあ、ワールドカップ最終予選出場をかけた大一番だ。勝てば一次予選突破決定、負ければ逆に敗退がほぼ決定という、一次予選のクライマックスの一戦。サッカーを見るようになって以来、これほど長い間、ハラハラしながら待った試合はなかったんじゃないかと思う。三ヶ月以上前からこういう大一番を迎えることが確定的だったため、ずっとどきどきし続けていた気がする。
もうサッカーを見るようになって十二年にもなるんだから、そりゃ今までにも重要な試合は幾度もあった。ただそれらはあくまで本戦だったり、これに勝てば本戦出場が決まるといった場合だ。こんな風に一次予選で敗退するかもしれない、本戦を含めて二年間以上もワールドカップと縁がない国になってしまうなんて屈辱的な状況に置かれたのは初めてだ。根が悲観的なものだから、負けたらどうしようとマイナス思考が働いて、落ち着かなかった。
そうした不安を抱かざるを得なかったのは、今の日本代表に対して不信感があるからだ。アジアカップでのサッカーを見せられて、日本代表の強さを実感した人は少ないんじゃないかと思う。ディフェンスはある程度満足がいくけれど、攻撃の面ではあまりいいところがない。攻撃的サッカーを標榜していたはずのジーコが、いつの間にか耐えに耐えたあげく少ないチャンスをものにするという、とても守備的なサッカーを繰り広げている。それには頼みにしていた海外組の招集の難しさや故障者の多さが影響しているのは確かだけれど、それにしてももっと別の選択肢があるだろうと思わずにはいられない。どうしようもないもどかしさがジーコのサッカーにはある。
というわけで、はらはらどきどきしながら迎えたオマーンとのアウェイの一戦。先発は川口、田中誠、宮本、中澤、加地、福西、小野、三都主、中村俊輔、鈴木隆行、高原。アジアカップのメンバーに小野と高原を入れたという布陣だ。僕がこの試合の出場に期待してた中田英寿は代表復帰ならず。久保もスタメン出場するまでにはコンディションが復活しなかった。結局それはつまり、この試合でもあの大会同様の耐え忍ぶサッカーを見せられるということだ。
そして試合はまさしくそういう内容になった。ただし嬉しいことに結果もあの大会と同じだった。つまり耐えに耐えて少ないチャンスをものにして勝ってくれたということだ。スコアレスで終わった前半こそ息が詰るような思いをさせられたけれど、後半比較的早い時間帯に俊輔のアシストにより隆行がヘディングを決めて先制したあとはもう余裕。ここから二点取られて逆転されることはないだろうと思うので、それまでのドキドキが嘘みたいに、脱力したままで残りの時間をやり過ごすことになった。
この試合、俊輔のボール
ディフェンスに関しては、宮本のよさっていうのは僕にはいつもながらわからない。田中誠は積極的な攻撃参加を見せたり、致命的なミスから無人のゴールに向けて打たれた相手のシュートを身を呈して止めたり──あの場面にはまいった──と、いつになくいいプレーをしているように見えた。これまでは特別いいと思わなかったし、この日は腰痛で痛み止めを使用しているという話だったから、あまり期待していなかったんだけれど、実に代表にふさわしいプレーぶりだった。ナイス。
さあ、これで無事最終予選進出決定だ。最終予選は4チームずつの2グループに分かれて、そのうち上位2チームずつが本戦出場を果たすというレギュレーションだそうだ。今の日本が普通に実力を発揮できれば、勝ち抜けの可能性はかなり高いと思われる。ドイツ・ワールドカップ出場がとても現実的になってきた。しみじみと嬉しい。
ちなみにジーコはこの試合のあと、消化試合となった次のシンガポール戦には、今の代表のメンバーの代わりに、日本代表に長いこと貢献してきた、カズなどのベテラン選手を起用したいという意向を表明したのだとか。ベテランにリスペクトを与えたいというのは実にジーコらしい発想ではあるけれど、ことこの状況では後ろ向きであまり誉められたことではないと思う。ちょっとばかり複雑な心境。
(Oct 17, 2004)