インド0-4日本
W杯アジア一次予選/2004年9月8日(水)/インド・コルカタ/TBS
小野、高原、久保が戻ってきたものの、入れ替わりで俊輔と玉田を欠く今回の代表。中盤は小野が入って俊輔が抜けたことでプラマイはゼロ。FWも久保がいまだスタメン出場するほど回復していないし、高原は病み上がり。つまりベースとなるのはアジアカップの優勝チームで、戦力アップはほとんど見込めないということだ。内容は多分あまり期待できないんだろうと思っていたら、やはりそのとおりという戦いぶりだった。アウェイとはいえ力の差は歴然、勝利は当然で、次のオマーン戦を有利に戦うためにどれだけ多くの得点を上げられるかが焦点の試合だったというのに、前半はロスタイムに上げた1点のみに終わってしまう。なんとも今の日本代表はじれったい。
俊輔の抜けた中盤の穴を埋めたのは、小笠原ではなく本山だった。これは意外だった。本山はアジアカップでもこの試合のための選出の時もFW登録だったし、ジーコは彼に本来のMFとしてではなく、FWとしての仕事を求めているのだと思っていた。ジーコはどうした心境の変化で本山をMFとして使う気になったんだろう。そのポジションには小笠原と藤田という別の選択肢もあったのに。そしてこれまでのチーム戦略からすれば、彼らこそ俊輔の穴を埋める第一選択肢だったはずなのに。
いずれにせよ俊輔が招集されなかったことにより、この二人が自分の出番が来たと思ったことは間違いないだろう。けれどジーコは彼らを選ばず、代わりに今までFWとして起用してきた本山にそのポジションを任せた。この選択が二人に及ぼした心理的な影響は少なくないと思う。特にこれまであまりスタメンの機会に恵まれなかった藤田はともかく、チームメイトにスタメンを奪われた小笠原にはショックだっただろう。
なぜ彼らが選ばれなかったのかはわからない。けれど彼らをスタメンで起用しなかったことは、意外と効果的だったように思う。後半途中から出場した藤田と小笠原のプレーは今までになくとても積極的に見えた。なんでおれを初めっから使ってくれないんだとアピールをしているように見えた。少ないチャンスを今後につなげてゆこうとする積極性が感じられた。それは(特に小笠原に関しては)今まであまり見られない姿だった。前回のアルゼンチン戦にせよ、代表での彼のプレーからはいまひとつ覇気が感じられなかった。今回はスタメンで出ているけれど、どうせ中田や俊輔が戻ってきたらベンチになっちゃうんだろう、というマイナスな心理でピッチに立っているような印象を受けた。僕にはそんな彼がもどかしくてならなかった。
けれどこの日の小笠原のプレーには、冗談じゃないぞ、おれはもっと代表でプレーしたいんだという積極性が感じられた。そりゃそうだろう。中田や俊輔ならばともかく、アントラーズでは常に自分のうしろにいた本山にスタメンを奪われたんじゃプライドが許さない。しかもそうした屈辱を与えたのは恩師であるジーコだ。ここで奮起しないようじゃ、この先もチャンスはなくなってしまうだろう。
とにかくこの試合の小笠原には今までにないやる気が感じられた。藤田もしかりだ。今までは慣れない途中出場に戸惑っていたような印象があったけれど、この日は積極的に自分でチームのムードを好転させてやろうとするリーダーシップが感じられた。彼ら二人が腐らずにチームのために全力を尽くしてくれれば、これ以上心強いことはない。
そしてもう一人、途中出場を果たした久保。得点こそなかったものの、彼が加わったことでチームのリズムが格段に良くなった。高原の出来がよくなかったためもあって、久保の良さがなおさら引き立ってしまった。やはり今のチームに久保は欠かせない。完全復活の日が待ち遠しくて仕方ないぞ。さっさと怪我を治してスタメンに帰ってきて欲しい。
とにかくこの三人のプレーは、不安の多い次のオマーン戦へ向けてのささやかな収穫に思えた。その反面、せっかくスタメンのチャンスをもらった本山はなんだかいまひとつボールに絡めていなくて残念だったけれど。
ま、なんにしろチームとしてはあいかわらず問題だらけだ。アレックスは得点にこそ絡んでいるものの(この日は1点目と3点目のアシストを決めている)、無理なプレーをしてピンチを招くこともあって、誉めてばかりはいられない。右サイドの加地はまったく攻撃参加できていない。ボールを持った時にも積極的に仕掛けてゆく姿勢がなくてイライラさせられる。今のままじゃ代表失格だと思う。小野もFKを一本決めはしたけれど、全体的にロングパスの精度が低かった。
小野とコンビを組んだのは福西だった。僕としては小野の攻撃力を生かすには遠藤や中田浩二とのコンビの方がいい気がするのだけれど、今の日本はセットプレーが攻撃において大きな比重を占めているので、ヘディングの強い福西はその点でアピールの度合いが強いのかもしれない(この試合でもものの見事に3点目を決めている)。
まあ4得点(隆行、小野、福西、宮本!)はどうにか及第点だった。これでとりあえず得失点差でもオマーンより上になった。次のオマーン戦で引き分けても一次予選突破が決まる。メディアではそのことばかり強調している。
それでも万が一その試合で日本がオマーンに2点差、もしくは0-1で負ければ、W杯出場はほぼ絶望という厳しい状況だったりする。今の日本がオマーンに2点差以上をつけられて負けるというのはちょっと考えにくいけれど、それでもサッカーはなにがあるかわからない。実際にアジア杯予選では韓国が1-3で負けているというのだから油断大敵。とにかく次のオマーン戦は一次予選の天王山だ。先制点をあげることに全力を注いでもらいたい。一点先に取りさえすれば、予選突破はほぼ決まりだろう。いずれにせよ負けられない一戦なのだから、最善の準備をして望んでもらいたい。いやあ、10月13日まで気が気じゃない日々が続きそうだ。
(Sep 09, 2004)