ジーコ・ジャパン・ドリーム・チーム0-0アルビレックス新潟
新潟復興支援チャリティーマッチ/2004年12月4日(土)/新潟スタジアム
新潟県中越地震の復興を支援するために組まれたチャリティーマッチ。W杯一次予選で消化試合となったシンガポール戦、ジーコがカズたちJリーグの功労者を呼んで戦いたいと言いながら、周囲の猛反対を受けて実現しなかったという経緯を踏まえ、この試合はそんなジーコのプランを違った形で実現する試合となった。
結果は大成功だったんじゃないだろうか。今年Jリーグでもっとも多くの観客を集めたアルビレックスが、基本的には98年W杯の代表選手を中心とするとても懐かしいメンツの日本代表と戦う。相手はほぼ全員が30歳以上のメンバーだ。経験は文句なしだけれど、スタミナやスピードを考えれば、絶対に勝てないという相手じゃない。現在のA代表が相手だったらば、まず勝てないというか、逆にJ1の真ん中から下に位置するチームが勝っちゃまずいだろうという部分もある。応援する新潟の人々も複雑な気分になるだろう。けれど今回の相手ならば勝っても問題ない。というか普段から一生懸命応援しているアルビレックスにぜひ勝って欲しいと素直に思える。そして相手のチームのプレーも楽しめる。最高の組み合わせだと思った。
ドリーム・チームのフォーメーションは3-5-2(テレビでは5-3-2と紹介されていた)。楢崎、秋田、森岡、小村、駒野、本田、山口素弘、服部、名波、カズ、ゴンという、なんとも懐かしい顔ぶれだった。
注目はこのベテランばかりの中、若手で一人抜擢された駒野だろう。今のA代表にとって右サイドはウィークポイントなので、ジーコがようやく加地のバックアップを真面目に考え始めたということなんだろうか。まあいいことだと思う。
もう一人、目を引くのが山口。アルビレックスの選手である彼は、この試合ではドリーム・チームのメンバーとしてプレーした。彼は98年の代表チームに欠かすことのできない存在だったから、この人選となれば加えたくなるジーコの気持ちはわかる。わかるけれど新潟のファンにとってはちょっとばかり複雑な心境だったんじゃないだろうか。そもそもチームの中心選手を欠いたアルビレックスの戦力的なハンディは如何ばかりかとも思うし。ジーコも罪作りだ。
それでもこういう代表チーム相手にアルビレックスはほぼ互角な戦いを見せてくれたと思う。決定機ではアルビ(とファンの男の子が呼んでいてちょっとおもしろかった)の方が多かったんじゃないだろうか。左サイドの鈴木慎吾(セカンド・ステージでアントラーズを破ったゲームでもやたらと目立っていた)と外国人の3トップ(オゼアス、ファビーニョ、ホベルト──後半はエジミウソン──)の繰り出す攻撃はなかなか見応えがあった。それでも試合はスコアレス・ドローで終わってしまった。被災地の人々にゴールが決まる快感を一度も味わわせてあげられなかったのはとても残念だ。
その点では僕は線審の人に文句をいいたい。後半、ゴールを目指して前がかりに攻めかかるアルビレックスは再三オフサイドを犯した。けれどそのうちのいくつかは実に微妙な判定だった。こういう親善試合でなんであんなに厳密にオフサイドをとる必要があるんだろう。この試合はエキシビジョン・マッチなのだし、ホーム・アドバンテージという言葉もある。堅苦しい判定よりも、少しでもおもしろい試合を演出しようという意志がレフェリーにあってもよかったはずだ。そういう意味では後半にドリーム・チームのサイドの線審を務めたあの人に、僕は生真面目なあまり融通が効かない日本人の悪い面を見た気がした。
もう一人、融通の効かない人がいる。ジーコだ。
この試合でもっとも観客を魅了したドリーム・チームの選手は間違いなくカズだった。リーグ戦の終盤に三試合連続ゴールを決めたというのがよくわかる素晴らしいプレーを見せてくれていた。そしてこの代表チームで彼と並んでもっとも観客に愛されていた選手はアルビレックス所属の山口だったはずだ。僕はこの試合で当然この二人だけは最後までプレーを続けるものだと思っていた。
ところがジーコは残り30分を残しているところでこの二人を一緒に下げてしまう。招集した選手を全員ピッチに立たせるべきなのはわかるけれど、もっと他の選択肢だってあるだろう。ちなみに後半に途中交替で出場したのは下田、村井、沢登、大黒、伊藤輝、阿部勇樹、城の七人だった。それならばDFを二人下げて阿部を最終バックに入れ、4-3-3で戦うこともできたはずだ。チームのバランスは崩れるかもしれないけれど、それにより得点の可能性は(両チームともに)増したことだろう。カズと城のコンビネーションが見られるというだけでも往年のファンにはたまらないものがあったはずだ。本人たちだって嬉しかっただろうと思う。そういう痒いところに手が届くような気の効いた演出ができないのがジーコの最大の欠点に思えて仕方ない。
なにはともあれ、そんな風に外野的な不満もいくつか感じた試合だったけれど、両チームとも親善試合とは思えないほど勝ちにこだわっていたのが伝わってくる、気合いの入ったなかなかいい試合だった。日本サッカーのレベルアップも実感できた。ジーコのチームで駒野、村井、阿部、大黒がプレーしたというのもこの先のA代表の方向性を考えると楽しみな要素だ。今後の日本サッカーとジーコ・ジャパンの発展を願ってやまない。
(Dec 05, 2004)