東京ヴェルディ2-1ジュビロ磐田
天皇杯決勝/2005年1月1日(土)/国立競技場/NHK
元日恒例の天皇杯決勝。今年の対戦カードは、アルディレス監督のもとで若手を中心に評価を高めつつある古豪ヴェルディと、セカンド・ステージで急速に失速し、世代交代の失敗が指摘されるジュビロの組み合わせだった。
正直に言ってしまうと、個人的には準決勝で敗退した2チーム、浦和レッズとガンバ大阪の試合が見たかった。素晴らしい躍進を見せたにもかかわらず、チャンピオンシップとナビスコカップをともにPK戦の末に落としたレッズが、最後に残ったこのタイトルに高いモチベーションを持って臨むところが見たかった。その点では宮本や遠藤といった日本代表選手を擁し、毎年優勝候補の一角として名前をあげられつつも、いまだに無冠のままのガンバにとっても汚名返上のいいチャンスだ。この2チームの対戦ならば、どちらが勝っても盛り上がりは必至。そういう野次馬的な心理が働いていたのは否めない。
これに対して決勝まで駒を進めてきた2チームは、かたや売り出し中の若手ばかりで知名度の低いヴェルディと、かたや現役+元日本代表を多数擁しながらも、シーズン終盤はいまいち成績不振だった磐田だ。言っちゃ悪いけれど、いまひとつ面白味に欠ける。かつて小憎らしいほどの強さを誇った磐田の低迷ぶりを見せられるのは、同じように低迷し始めた鹿島のファンとしてはおもしろくないし、ヴェルディは去年結局一試合も見る機会がなかったので、あまりに馴染みがなくて興味を惹かれない。もしも大晦日の晩に鯨飲してのびていたら、見るのをやめてしまっていたかもしれない。
とはいっても、そこはタイトルのかかった大一番だ。両者とも真剣だし、見始めてしまえば十分に楽しめる。知っている選手の少ないヴェルディだったけれど、若手が中心ということでやたらと威勢がよく、イエローカードを連発しながらも(あれはレフェリーの柏原さんにとり過ぎの感があった)厳しいプレスでジュビロに自分たちのサッカーをさせない。前半35分の先制ゴールは必然的なものに思えた。
ところがその後、イエローの連発が祟って前半残りわずかでMFの小林慶行が退場をくらってしまう(あそこでイエローを出す柏原さんには本当に困ったものだと思う。もっと自分が試合を作っているんだという発想を持ってもらいたい)。いくら出来が悪いったって相手はあのジュビロだ。これは後半の苦戦は必至だと思われた。
ところがこの苦境をFWの平本一樹が救うことになる。後半8分、味方がカットしたボールをセンターサークル付近で受けた彼は、ひとりドリブルで攻め上がって、そのままゴールを決めてしまったのだった。前半から積極的にシュートを打ち続けていた姿勢があの場面で実を結んだということだろう。対するジュビロの前田が結局一本のシュートも打たずに前半のみで引っ込んでしまったのとは対照的だ。
ヴェルディに勝利を呼び込んだのは、この平本の2点目ともうひとつ、後半なかばに名波のFKを止めたGK高木義成のナイス・セーブだと思っている。その数分後に西のゴールが決まって1点差に追い上げられただけに、その前のあのFK(なかなかいいコースだった)を止めたのは大きかった。
ということでジュビロの連覇はならず、ヴェルディが8年ぶりとかのタイトルを手にすることになった。ヴェルディの若い選手たちの健闘を称えよう(なかでは平本と左サイドの相馬崇人が印象に残っている)。そしてクリスマスとニュー・イヤーズ・デイを返上していいサッカーを見せてくれたアルディレス監督に感謝を。
(Jan 16, 2005)