2007年2月のサッカー

Index

  1. 02/21 △ U-22日本0-0U-22アメリカ
  2. 02/24   浦和0-4G大阪 (ゼロックス杯)
  3. 02/28 ○ U-22日本3-0U-22香港

U-22日本0-0U-22アメリカ

2007年2月21日(水)/熊本県民総合運動公園陸上競技場/TBS

 この時期、{ちまた}のサッカーファンの話題はもっぱらチャンピオンズ・リーグ決勝トーナメントのような気がするけれど、国内限定サッカーファンである僕にとっては、この試合が07年のシーズンイン。来年の北京オリンピック出場を目指すU-22日本代表の、予選開始を一週間後にひかえての親善試合だ。相手はタフなプレーが売りというイメージのあるアメリカ。
 わがアントラーズから選出された増田誓志は、残念ながら梶山に背番号10を奪われ、ベンチスタートとなった。でもまあ、替わりにもらった背番号は7だし、プレースタイル的には、どちらかというとそちらの方がふさわしい気もする。この日は後半途中から、30分ばかりピッチに立って、可もなく不可もなくというプレーを見せていた。
 もうひとりのアントラーズの選手、U-20から飛び級で選出された期待の内田篤人は、残念ながら出番なし。そもそもこの試合の3-4-3というフォーメーションでは、右サイドバック専門の彼の出番なんて、これっぽっちもなさそうだった。
 この日のスタメンは、GKが松井謙弥(西川はあいかわらず故障中)、3バックが青山直晃、伊野波、水本、2ボランチが梶山と本田拓也──梶山はかなり攻撃に絡んでいたので、もしかしたら攻撃的MFかもしれない──、右サイドが水野、左サイドが本田圭佑、そして平山、カレン・ロバート、李忠成{り・ただなり}の3トップという布陣。
 李忠成は、今月になって日本国籍を取得した在日韓国人四世で、所属は柏レイソルとのこと。先発が噂されていた青山敏弘は、発熱のために欠場したそうだ。途中出場は、増田、家長、苔口、谷口、そしてセレッソ大阪の十九歳、森島康仁の5人。
 試合のほうは、まあシーズン前ということもあって、まだまだという印象。平山や梶山がいいシュートを何本か打っていたけれど、どれもGK真正面だったり、クロスバーに嫌われたりして、決まらない。前半30分過ぎまでは圧倒的に日本ペースで試合が進んでいたので、それでもまあまあ楽しんでいられたけれど、その後はアメリカも盛りかえしてきて、膠着状態になってしまい、あまり気分よく観てもいられなくなった。
 なんでもアメリカはまだ五輪予選のスケジュールが未定だとかで、この試合は今年開かれるU-20W杯を視野に入れて、メンバーのうち4~5人はその世代の選手が起用されていたという。つまり通常よりは経験値が低い相手だったわけだ。そんなチームを相手にホームでスコアレス・ドローに終わってしまったんだから、満足したとは言えないのも当然。サッカーを観るのは天皇杯決勝以来、およそ一ヵ月半ぶりだから、けっこう楽しみにしていたのだけれど、残念ながら消化不良の気分を否めなかった。
 でもまあ、いまはシーズン前だし、こんなものなんだろう。それに部分部分にはいいところもあった。減量に成功して、以前の切れが戻ったという噂の平山は、なるほどという思い切りのいいシュートを3本も見せてくれた(特に後半のヘディングの迫力はすごかった)。水野や家長のサイド攻撃はあいかわらず強烈だった(水野のシュートも惜しかった)。梶山のセンスの良さはところどころで垣間見られたし(増田あやうし)、伊野波のセンターバックはフィードの正確さがとても魅力的だった。みんなそういう良いところをコンスタントに見せてくれていたわけじゃないところが、もの足りなかったりする。しかしながら時期的なことを考えれば、それもまあ仕方のないところかなと思う。今年も始まったばかりだし、これからに期待したい。
(Feb 21, 2007)

浦和レッズ0-4ガンバ大阪

ゼロックス スーパーカップ/2007年2月24日(土)/国立競技場/日本テレビ

 毎年恒例、Jリーグ開幕を一週間後にひかえて行われるゼロックス杯。例年は昨年度Jリーグ王者と天皇杯優勝チームの対戦だけれど、今年は両方ともレッズが勝ってしまったため、天皇杯準優勝のガンバ大阪が対戦相手に選ばれた。つまり元日の天皇杯決勝戦とおなじ顔合わせなわけだ(ということは、両チームが天皇杯決勝への進出を決めた時点で、この日の対戦カードが決まっていたことになる)。
 その試合では、負けたガンバのほうが内容的には上回っていた印象だった。この日もやはり構図はおなじ。ただし結果はまるで正反対になった。ガンバ大阪がマグノ・アウベスのハットトリックなどで、4-0と予想外の圧勝。今年のガンバはかなりヤバイかもしれない。
 レッズは前々日まで合宿をしていたというし、やはりコンディション的に不十分だったのだろう。おまけに闘莉王、相馬、長谷部、田中達也といった、日本代表組の過半数が不在──まあ、とはいってもスタメンの顔ぶれが、そうしたスター選手の不在を感じさせないところがすごいんだけれど。
 それに対してガンバは、五輪代表で合宿中の家長を欠くのみ。替わりに左サイドに入った十九歳の安田という選手もなかなかの出来だったし、こちらは非常に仕上がりがいい感じだった。ガンバはこの1年間にレッズと4回対戦して、3敗1分と一度も勝てなかったというから、この試合に臨むにあたってのモチベーションも違ったのだろう。そうそう、その3敗のうちのひとつは、このゼロックス杯だった。つまりこの両チームは二年連続での対戦なのだった。
 いまやJリーグの二強と呼んでもいいような両チームだけあって、今シーズンを迎えるにあたっての姿勢は(方向性こそ正反対ながら)、非常に似かよっている。どちらも基本的な戦力は昨年とほぼ同じ。リーグ1位と3位のチームだけに、現状戦力のままでも戦えるという判断だろう。
 ただし、レッズはアレックス、ガンバは宮本という中心選手を、ともにザルツブルクに送り出している。興味深いのは、両チームとも、彼らの穴を埋める補強を行っていないことだ。彼らが抜けた穴は現状戦力で{おぎな}っている。その替わりに獲得したのが、レッズは阿部勇樹、ガンバはバレーということになる。この補強はとてもおもしろい。
 昨年度、Jリーグ屈指の守備力を誇ったレッズは、攻撃の一翼を担っていたアレックスが抜けたというのに、その穴を埋めるのではなく、阿部というディフェンシブな選手を獲得してきた。プレースキックをはじめとした阿部の得点力にも期待はしているのだろうけれど、それでも彼の売りは、どちらかといえば、やはり守備力。つまり攻撃力のマイナスを、より一層のディフェンス力の強化で補おうということなのだろう。いや、去年はアレックスの控えに甘んじていたけれど、もとより相馬がいる以上、スタメンレベルでは戦力面でのマイナスはほとんどないから、プラスアルファはできるかぎり攻守のバランスの取れた選手でということなのかもしれない。
 一方のガンバも、ディフェンスの{かなめ}だった宮本の穴を埋めようとはしなかった。その部分を埋める替わりに、フォーメーションを3バックから4バックへと変更。キャプテンマークを山口に託し、シジクレイとのコンビでセンターラインを死守してもらって、浮いた一枚のカードで、より攻撃的なサッカーを目指そうとしている。なんたって、マグノ・アウベスと播戸という強力な2トップを擁するにもかかわらず、補強の目玉はFWのバレーなのだから。小柄な2トップとは違うプレースタイルの、高さを武器とするバレーを加入させることで、より一層の攻撃力のアップを図ってきた。ただし、中盤にもタレントのそろった今のチーム構成で3トップは考えにくいから、そのうちの一人は控えに甘んじることになるわけだ。まったく贅沢この上ない。なんでも今年のスローガンは「超攻撃」なのだそうだけれど、この日の内容を見れば、なるほどと思ってしまう。
 とにかく昨年、Jリーグ一の守備力を誇ったチームは、阿部を加えてその守備力に磨きをかけようとしている。そしてJリーグ屈指の攻撃力を誇ったチームは、さらにバレーという高さを加えて、その攻撃力に厚みを持たせてきた。両チームと対戦することになるこちらとしては、なかなか頭が痛いところだ。
 今日の試合を見るかぎり、現時点での仕上がりはガンバが圧倒的だった。先頃の合宿で日本代表に初招集された橋本が、明神とペアで2ボランチをつとめ、遠藤は高めの位置でプレーしていた。でもって、その遠藤が切れまくり。4点目のきっかけとなったプレーでのボールコントロールの美しさは感動ものだった。しかも、後半ロスタイムになってなお、最前列からプレスをかけているんだから、その運動量には頭が下がる。彼は見事にオシムのサッカーを吸収している気がする。
 この日はコンビを組む二川も、そんな遠藤に負けず劣らぬ活躍ぶりだった。2点目のミドルシュートを自ら決めたのみならず、そのほかの得点でも、ことごとくプレーに絡んでいた。とにかく今日のこの二人は本当にすごかった。インパクトはハットトリックを決めたマグノ・アウベス以上だった。
 マグノ・アウベスのハットトリックは、3点すべてが、ほかの人が打ったシュートのこぼれ球を決めたもの。それはそれで、ある意味すごい。いや、いくら調子がいまいちだとはいえ、レッズ相手にあれだけ惜しいシュートが何本も打てるガンバの攻撃力に恐れ入るし、そのこぼれ球が転がってくるところに三度{みたび}いるマグノ・アウベスの得点感覚にも感心してしまう。「超攻撃」の宣伝文句はだてじゃない。
 対するレッズのほうは、山田や鈴木啓太の運動量と山岸のセーブ力、それとネネの闘莉王ばりの攻め上がりに感心させられたくらい。小野は年が替わっても、あいかわらずぴりっとしないし、注目の阿部のプレーにも目立つようなところはなかった。新監督オジェックの手腕もさだかじゃない。オーストラリア遠征ではボロ負けしたというし、この試合でも4失点と、自慢の守備力が綻びまくっている。でもまあ、まだシーズン前だし、主力を何人も欠いているわけで、これくらいで{あなど}るわけにはいかないんだろう。エンゲルスは留任したようだし、そうなると、監督交替の悪影響もそれほど期待はできなさそうだ。やれやれ。
 なんにしろ、当面の問題はガンバ大阪。第二節でこのチームと対戦することになっている鹿島アントラーズのファンとしては、なんともこまった気分にさせられる快勝劇だった。うーん、手強{てごわ}すぎる。
(Feb 24, 2007)

U-22日本3-0U-22香港

北京オリンピック・アジア地区二次予選/2007年2月28日(水)/国立競技場/BS1

 いよいよオリンピックの予選が始まったというのに、五輪代表の若者たちの戦いぶりは、いまひとつぱっとしなかった。
 フォーメーションはこの前のアメリカ戦と同じ3-4-3で、ボランチを本田拓也から青山敏弘に入れ替えたのみという布陣。この形がどうにも、いまひとつな気がする。
 特に3トップがうまく機能している気がしない。先制点の場面こそ、カレンから平山へのパスが通った形だったけれど、その場面以外は、コンビネーションという言葉を知らないんじゃないかと思ってしまうようなプレーが多かった。
 平山もカレンも、自分でゴールを決めてやろうという意欲を見せるのはいいけれど、その反面、お互いが見えてないか、もしくはお互いを見ていない感じがした。そこでパスを出せば決定機じゃん、というところでボールを持ちすぎてチャンスをつぶすシーンが、いくつあったことか。普段の日本人は、出さなくていいところでパスを出してしまうことが多いから、この日はFW間のパスの少なさが逆に印象に残った。あまりにパスを出さないから、この人たちはもしかして仲が悪いんじゃないだろうかと、穿{うが}った見方までしてしまった。李忠成はどこにいるんだか、わからないし。
 見ていて楽しめるようになったのは、後半、3トップの形をくずして、家長と増田を入れてからだ(ちなみにもう一枚の交替は、ジュビロの上田康太)。中盤でのプレーを専門とする彼らが入ったことで、チームとしての連動性がようやく出てきた。アントラーズ・ファンの僕としては、Jリーグの開幕戦を3日後に控えていることだし、いっそ増田は出場機会なしでもいいかなという打算もあったのだけれど、そんな増田くんが途中出場ながら、とても良いプレーを見せてくれたのは、やはり嬉しかった。これで開幕戦にはずみがついてくれればと思う。
 彼の場合、去年はクラブでボランチを任されていたし、代表でつけていた背番号10を梶山にとられたので、なんとなく梶山がライバルのような気がしていたけれど、このチームでは攻撃的な仕事を期待されているようなので、どちらかというとライバルは、李忠成やカレン・ロバートなのだろう。だとすれば、今日のプレーぶりからして──まあ、香港が疲れた時間帯からの出場だから、増田のアドバンテージはあきらかだったにせよ──、十分スタメンを奪い返せると思う。いや、この日のプレーは本当によかった。カレンはともかく、李にはぜったいに負けていなかった。ロスタイムのシュートを決めていれば、なおよかったのだけれど──水本、家長、増田と三人が続けてシュートを打って、すべて止められた──、あれが決まらないのは、増田個人というよりは、このチーム全体の問題のような気がする。
 ごひいきの増田のほかだと、ジェフ千葉の水野があいかわらず素晴らしかった。この日は単に右サイドに張っているだけではなく、グラウンド中を動き回って、あちこちで惜しいラストパスを連発していた。いや、この子はすごい。オシムの秘蔵っ子だけに、いっきにA代表入りという日も近いんじゃないだろうか。
 気にかかるのは、本田圭佑。レフティー・モンスターともてはやされているわりには、これまでに僕はそのモンスターぶりを見せてもらったことが一度もない。いまの彼だったらば、家長のほうが、よほどいいんじゃないかと思ってしまう。
 平山も、先制点こそあげたものの、全体のプレーはまだまだな感じ。あいかわらずつまらないファールも多いし、不用意にボールを持ちすぎる場面も多々あったし、彼のプレーがチームのリズムを悪くしていたようにも見えた。
 それでなくても全体的に知名度が低い選手が多いなか、もっとも名前の売れているこの二人の出来があれでは、スタンドに空席が目立つのも仕方がない気がしてしまう。とりあえず勝ち点3はゲットしたものの、内容はいまいちな上に、観客も1万2千を切るという、興行的にもさびしい一戦だった。うーん、あまりにお客さんが少ないので、次の試合は観に行かないといけないんじゃないかという気がしてきた。
(Mar 01, 2007)