川崎フロンターレ1-0鹿島アントラーズ
J1・第1節/2007年3月3日(土)/等々力競技場
2007年シーズンのアントラーズの開幕ゲーム(アウェイ)を等々力競技場まで観に行ってきた。スタジアムともすっかりご無沙汰してしまっていて、調べてみたところ、これがおよそ7年ぶりのサッカー観戦だった(前回最後に観たのは、2000年にアントラーズがセカンド・シーズンの優勝を決めた国立の柏戦)。
僕の場合、諸事情により──本やCDの出費がかさんで回す金がないとか、まわりにアントラーズ・サポーターがいないとか、カシマスタジアムが遠いとか、人混みが嫌いだとか──、基本的にサッカーはテレビ観戦だけで済ませることにしている。けれど今年はホームページも作ったことだし、開幕を記念してスタジアムに足を運んでみることにした。
おまけに今回は、義理の妹夫婦が中村俊輔を観るため、わざわざスコットランドまで出かけていった直後だというのもあった。彼女たちが旅行社に手配してもらったチャンピオンズリーグのミラン戦のチケットは、なんと8万円もしたそうだ。そういう話を聞くと、──いくらなんでもそこまでは出せないけれど──、
で、調べてみれば、等々力競技場は渋谷から東横線でわずか8駅のところにある。それならば、わが家から1時間ちょっとで行けてしまう(やたらと地理に疎い僕は、もっと遠いものだと思っていた)。しかもこの試合、今年の開幕戦のなかでも屈指の好カードだというのに、スパカー以外ではテレビ放送がない。そうなると、これはもう絶対に行かなくちゃいけないだろうという気にもなる。
ということで、オズワルド・オリヴェイラ新監督のもと、三人の新外国人を加えた新生アントラーズがどんな戦い方を見せてくれるのか、期待と不安を胸に、初めてのスタジアムへと出かけていったのだった。
この試合のアントラーズのスタメンは、GK曽ヶ端、DFが内田、岩政、ファボン、新井場の4バック、中盤が中後、青木、本山、ダニーロ、そしてマルキーニョスと柳沢の2トップという布陣。注目の増田は途中出場で、ボランチとしてプレーしていた(途中出場のあとの二人は田代と興梠)。今年もクラブではボランチとして起用されるとなると、五輪代表での今後がちょっと心配だ。まあ、その前にスタメンが確保できない状況が問題だけれど。
シーズン最初のこの試合でキャプテンマークをつけていたのは、アントラーズが柳沢、フロンターレが中村憲剛だった。新旧、日本代表どうしのキャプテン対決。なんだか、どちらもあまりキャプテンシーが感じられないタイプだけれど、キャプテンをつとめるというからには、ともにそれなりの覚悟があるんだろう。だから今年の二人には要注意だ、といいたいところだけれど、この試合を見る限り、注意が必要なのは中村だけみたいだった。
いや、ほんと中村憲剛はよかった。川崎の攻撃のシーンには必ず彼が絡んでいたような印象がある。でもって、あの独特のキックで、決定的なラストパスをガンガン入れてくる。得点にこそならなかったけれど、かなり自由にやられてしまっていた。まいった。アントラーズ戦であれだけやってくれて、日本代表でしょぼかったら、ちょっと許せないぞという素晴らしさだった。それに対して、柳沢の存在感のないこと……。
でもまあ、柳沢個人をどういういう前に、この日の両者では、チームとしての完成度が違いすぎる感じがした。
去年との違いは外国人が一人が抜けただけという印象の川崎に対して、こちらは監督が代わり、新外国人三人を加えた新しい布陣もいまだに手探り状態。なんだか攻撃がまるで形になっていない気がした。惜しかったのは、ダニーロのヘディングがポストをたたいたシュートくらいだったんじゃないだろうか。とにかく、なにもかもがちぐはぐな印象だった。マルキーニョスもダニーロもまだまだチームにあっていないみたいだし。この先、ちゃんとフィットするのかも不安になるような出来だった。
あえていいところを見つけようとすれば、相手の得点を1点に抑えた守備くらいだろうか。ファボンはでかくて、なかなか頼りになりそうだし。あ、でも守備といえば、開幕戦だというのに、いきなり岩政がイエローカードを2枚もらって、残り10分というあたりで退場になってしまったんだった。
いや、試合開始前の場内アナウンスで、主審が(国際試合の誤審で有名な)吉田寿光さんだと聞いて、不安に思っていたんだ。そうしたら、やっぱりイエローカードの出し方に疑問を感じるシーンがいくつもあって、あげくの果てには岩政の退場だ。ああ、ついていない。
まあ、ついてないといえば、今年はアジア・チャンピオンズ・リーグ出場で過密日程による疲労が心配されるフロンターレと開幕戦であたってしまうというのも、つきのなさのひとつだし、直前の練習試合で、野沢が削られて全治2ヶ月というのもそうだ。最初からこうも不運が重なると、今年も十冠への道は、去年以上に
対する川崎は、さすがに去年の2位はだてじゃないというサッカーを見せていた。中村憲剛は前述したとおり素晴らしかったし、ジュニーニョ、マギヌンの両外国人に我那覇を加えた最前線には、こちらとは比べものにならないような迫力があった。仙台から移籍してきたばかりという左サイドの村上和弘もかなりよくて、再三攻め上がってはチャンスを作っていた。
唯一の得点のシーンは、その村上がゴールライン付近から上げたクロスに、マギヌンがヘディングであわせたもの。ゴール裏のスタンドで観ていた僕の目の前から上げられたクロスを、どフリーでいたマギヌンがきっちりと決めた。まさに練習どおりというような綺麗なゴールだった。いやあ、この試合唯一の得点シーンを見るにはうってつけの席でした。ちくしょうめ。
なんにしろ、内容的には1-0という得点差以上の違いがあったように思えた一戦だった。
それにしても、05年に川崎がJ1に復帰してきて以来の対戦成績は、ナビスコ杯も含めて、これで2勝5敗だ。思いっきり負け越している。どうにも川崎が、あらたな天敵になってしまった感がある。試合前の場内アナウンスで、関塚監督が紹介された時にブーイングをしているアントラーズ・サポーターがたくさんいたけれど、終わってみると、その人たちの気分もわからなくない気がしてしまった。アントラーズからの監督就任要請を蹴って、フロンターレをここまで強くした関塚さんが、ちょっぴり恨めしくなるような07年シーズンの開幕戦だった。
(Mar 05, 2007)