日本2-0モンテネグロ
キリンカップ/2007年6月1日(金)/静岡エコバスタジアム/日本テレビ
毎年恒例のキリンカップの初戦にして、今年2試合目のA代表の試合。
例年だとキリンカップまでにはもう1、2試合あるものだけれど、今年は7月にアジアカップがあって、リーグ戦が中断になることに配慮したのか、ここまでやたらと代表の試合が少ない。来週のコロンビア戦を含めて半年で3試合というのは、ファンとしてはさびしい限りだ。
でも、さびしいのは僕個人だけじゃなくて、この試合では観客の入りもさびしかった。スタジアムはガラガラ。なんでも2万8千人台という観客数は、2002年以降では最低らしい。その数字に限らず、サッカー人気が陰っているのは確かなようで、最近はテレビ・ニュースなんかを見ていても、短い番組だと、Jリーグの映像どころか、結果さえ報道されずに終わってしまう。野球、相撲、ゴルフときて、次はサッカーだろうと思って待っていると、それでスポーツコーナーはおしまい、みたいな。そりゃないぜと思う。
テレビCMでは年がら年中ロナウジーニョを見かけるし、4年に1度のワールドカップでは不必要なまでに盛りあがるのだから、サッカー自体はすでにある程度の市民権を得ているんだろう。なのに母国のプロ・リーグや代表に対する関心はいまひとつという状況は、あまり健全じゃない気がする。
まあ、なにはともあれ、個人的には待ちわびていた、ひさしぶりの代表Aマッチ。
スタメンGKはオシムさんが監督になってからは今回が初招集となる楢崎。DFは駒野、中澤、坪井、阿部の4バックということだけれど、阿部についてはまったく攻め上がっていなかったし、後半は相手のフォーメーションにあわせてセンターバックをつとめていた時間帯もあったので、実質的には、今回もやはり左寄りの変則3バックという印象だった。MFは中村憲剛、鈴木啓太、遠藤、山岸の4枚で、FWが高原、矢野の2トップという布陣。途中出場は佐藤寿人、水野、今野、巻、橋本、藤本の6人。橋本はこれが代表初キャップだった(でも出場はわずか1分)。
今回は海外から俊輔、高原、稲本、中田浩二の四人が招集されたのが話題の中心なのだけれど、あけてみればこの日の試合に出場したのは高原のみで、俊輔は足を痛めているとかでベンチにも入らなかった。あとの二人は出番なし。
試合は、こと前半に関しては理想的な内容だったと思う。このところの常で、守備に関してはほとんど破綻がなかったし、攻撃も少ないチャンスを見事にものにしていた。
1点目はショートコーナーからの遠藤のアシストを中澤がヘッドで決めたもの。モンテネグロの監督には自分たちのミスだと言われていたけれど、まあそうかもしれない。DFはファーサイドのボールをケアできていなかったし、GKが上手かったら止められていた気もする。それでも長身の相手DFを高さで上回った中澤にはやはり拍手を送りたい。ディフェンダーで代表10ゴール目はあっぱれだ。
2点目に関しては文句なしの素晴らしさだった。左サイドの中村憲剛が、右サイドのスペースへ上がってきた駒野へ大きなサイドチェンジのパスを通し、そこから駒野がスピードのあるクロスを放り込んで、そのボールに反応した高原が、鋭い動き出しで相手DFの前に飛び込み、頭であわせたもの。憲剛のパス、駒野のクロス、高原のヘディング、どれも最高だった。
なかでも高原。コンビを組んだ矢野も悪くなかったのだけれど、その矢野が試合後のインタビューで、「Jリーグとは上手さも強さもぜんぜん違った」と語っているように、彼はチャンスに絡みつつも、あと一歩のところでボールに追いつけなかったり、相手DFにブロックされたりしてばかりだった。それとくらべると、あの得点シーンでの高原の反応の良さは、さすがだった。だてにブンデスリーガで二桁得点をあげちゃいない。
でも、前半の内容をとおして見ると、そんな高原より、そのゴールのお膳立てをした二人のほうがよかったと僕は思う。中盤の底で的確にボールを捌き続けた中村憲剛、そして右サイドから多様なクロスを配給し続けていた駒野。いや、前半のこの二人は本当によかった。二人ともいまのところレギュラーが保証されたわけではない立場だけれど──憲剛は俊輔ら海外組、駒野は加地やアレックスが戻ってくれば、どうなるかわからない──、この日の前半のようなプレーがコンスタントにできるようになれば、日本代表にとって欠かせない戦力になるだろう。
ただ残念ながら、彼らを含めた日本代表がよかったのは、その前半の45分間だけだった。2点のリードに安心したのか、はたまた前半だけで疲れてしまったのか、後半はばったりと足が止まって、低調なサッカーに終始した。選手交代もほとんど効果がなかったように思う。そういう意味では、スタメンはともかく、選手交代に関しては、オシムさんの起用方法にはそれなりの不満がある。橋本と藤本なんて、わずか1分程度しかピッチに立っていない。なんのための交替なのか、よくわからなかった。
まあ、後半はよくなかったといっても、それはほとんどチャンスメイクができていなかったということで、ディフェンスの面では危なげない戦い方ができていた。そういう意味では、決して非難されるような内容の試合ではなかったかなとも思う。
やはり守備的MFを多用することによるディフェンス力の安定というのが、いまのチームの強みだ。高めの位置で相手のチャンスをつぶせるので、ジーコの時とは違い、ゴール前であたふたする場面が少ない。最終ラインも中澤の復帰で厚みが増したし、ディフェンス面ではかなり安心して見ていられる。これであとは後半になっても息切れせずにチャンスメイクできるスタミナと集中力をつければ、かなりいい線までいけそうな気がする。
モンテネグロはセルビアと分離してからこれがまだ2試合目だそうで、おまけに主力の一部が参加していなかったとのことで、残念ながら、あまり怖い相手じゃなかった。
(Jun 02, 2007)