日本1-1カタール
アジアカップ・グループB/2007年7月9日(月)/ハノイ(ベトナム)/BS1
待ちに待ったオシム・ジャパン最初の大仕事、アジアカップの第一戦──なのだけれど。これがなんともため息の出るような結果になってしまった。
この試合のスタメンに名前を連ねたのは、GK川口、DF加地、阿部、中澤、今野、MF鈴木啓太、中村憲剛、中村俊輔、遠藤、山岸、FW高原の11人。故障のため大会に参加できなかった闘莉王に代わり、CBには阿部が入り、試合前日に怪我をした駒野に代わって、左サイドには今野が入った。で、高原のワントップと。つまり、加地が右サイドに戻ってきたり、若干のメンバーチェンジはあるものの、基本的な形はコロンビア戦とそんなに変わっていないわけだ。
で、そのせいなのかどうかのか、この試合もあの試合と同じようなパターンになる。前半は低調で、後半になって盛り返すというやつ。
この日は特に前半が駄目だった。もうキックオフ直後から、おや~って感じだった。
とにかく人が動かない。そうとう暑いとは聞いていたし、実際に選手たちのユニフォームには、キックオフ前から汗の染みができているくらいだから、本当にきつかったんだろう。芝生も長めな上にボコボコで、パスワークと運動量をモットーとする日本にとっては、やりにくい環境だったのも確かだと思う。それにしてもなあって思ってしまうくらい、動きが緩慢。相手のカタールも省エネ第一という感じでプレスをかけてこないから、なんだかまったりとした妙な立ち上がりだった。テレビの解説では、日本がボールを支配している、みたいなことを言っていたけれど、単にこちらが攻めてゆかないから、相手も様子を見てじっとしているだけなんじゃないかという印象を受けた。
結局、前半はそんな感じで、ほとんど動きがないまま終わってしまう。なんだか、むちゃくちゃ息苦しい展開だった。
後半に入ると、カタールがようやく攻めの姿勢を見せ始める。それを受けて、日本も徐々に攻撃のリズムが出てくる。
しかし、こういう風に相手の出方に左右されて、こちらの内容が決まってゆくという受身な姿勢は、どうにもジーコのころから変わらない悪い癖だと思う。いかにも日本的というか、なんというか……。それともあれは、前半は体力温存で後半勝負という作戦が、たまたまお互いに一致しちゃっただけなんだろうか。その辺はよくわからない。
とにかく、両チームともに攻撃的になって、やっとサッカーらしくなった後半の16分に、ようやく均衡が破れる。相手がちょっぴり集中力を切らした瞬間を見逃さなかったぜって感じで、憲剛が基点となり、今野が右サイドからあげたクロスに、高原が左足のインサイド・ボレーであわせた。タイミングがずれて体勢が不自然だったせいか、高原はシュートのあと、ボールの飛んだ方とは逆向きにくるっと一回転。変わったシュートだったけれど、とりあえずこれで日本が貴重な先制点をゲットした。
ここまではいい。ところが、ここからがいけなかった。もう1点取ってしまえば、勝ちはほぼ間違いないだろうに、どうにもその1点が取れない。圧倒的に攻めてるのに、取れない。山岸を羽生に代えたことで、攻撃のリズムがさらによくなったにもかかわらず、やはり得点するには到らない。で、残り時間が十分を切ると、もう得点への期待は諦めたのか、オシムは憲剛を下げて、橋本を投入してくる。これはどう見ても、守って逃げ切ろうって形だ。
でも、この橋本の起用がアダになった気がする。なんたって、橋本はこれがまだ日本代表として、公式戦2試合目だ。前回はわずか1分ばかりの出場だったことを考えると、実質的にはこれがデビュー戦のようなものだろう。緊張のせいかどうなのか、あまりチームにフィットしていない感じで、嘘みたいなミスキックもしていたし、とても守備力アップに貢献しているようには見えなかった。
で、日本は後半残り5分を切って、ウクライナから帰化したというカタールのFW、セバスチャンの中央突破を許し、これを阿部がファールで止めて、ペナルティ・エリアぎりぎりでFKを与えてしまう。阿部があの程度の接触プレーでファールをとられたのは不運だったけれど、でもそれ以前に、あの位置でドリブル勝負を仕掛けられてしまったのが問題だ。それまではほとんどそういうピンチを迎えてなかったのを考えると、やはりあれは、橋本を入れたあとのポジショニングにずれがあったんじゃないかという気がする。
結局、このFKをセバスチャン自らにドカンと決められ、日本は土壇場で同点に追いつかれてしまった。壁のあいだを縫う、強烈なFKだった。選手にあたってコースが変わったみたいだし、さすがの川口もあれは止められない。カタールにはそれまでにも二度ほどFKを与えていて、かなりきわどい目にあっていたので、あの時間帯のFKというのは、まずいなあと思ったんだ。まったく、totoはあたらないくせに、悪い予感にかぎって的中する。
結局、試合はその後、カタールの10番が退場になり、監督まで退席処分を食らうというハプニングこそあったものの、そのままスコアは動かずにゲームセット。相手に与えたチャンスはFKだけだったにもかかわらず、日本は惜しいところで勝ち点3を逃すことになった。
次に対戦するUAEは、初戦でベトナムによもやの黒星を喫している。これで負けたらおしまいと、必死になってくるんだろう。最後に当たるベトナムも四ヶ国共催のホスト・カントリーだけあって、モチベーションが高いのは確実。いやあ、いきなり厳しい展開になってしまっている。実力は両チームより日本のほうが上と信じてはいるけれど、勝負は時の運。どうなることか、わかったもんじゃない。三連覇どころか、ことによっては予選リーグ敗退なんてこともありえるんじゃないかという気がしてきた。まいったなあ……。
(Jul 09, 2007)