鹿島アントラーズ2-1清水エスパルス
天皇杯・決勝/2011年1月1日(土)/国立競技場/NHK総合
正月早々風邪で寝込んでいたもんで、かれこれ一週間以上まえの話になってしまったけれど、鹿島アントラーズが天皇杯決勝で清水エスパルスを破り、3年ぶり4度目の優勝を果たした一戦。
元日決戦のピッチに立ったのは、曽ヶ端、新井場、伊野波、中田浩二、宮崎智彦、青木、小笠原、野沢、フェリペ・ガブリエル、大迫、興梠の11人。
要するに前の試合の後半と同じフォーメーションで、案の定、この試合が現役最後となる大岩の名前はなかった。大岩にはやや気の毒だけれど、でもそれでこそ勝負の世界とも思う。大岩本人もそう思っているからだろう。チームが有終の美を飾ってくれたこともあって、試合後の表情はとても明るかった。あぁ、なんていいやつ。
試合のほうは、前半は見事なまでの鹿島ペース。的確なプレスがビシバシ決まり、セカンド・ボールはほぼすべてこっちのもんじゃないかってくらいの出来。攻めても小笠原の左CKから(なんと!)フェリペ・ガブリエルのヘッドで先制点をもぎ取り、文句なしの内容で前半を終了した。
ただ、後半になるとエスパルスも盛り返す。こちらが大岩の引退を飾ろうと思うのと同じように、あちらも長谷川健太監督に加えて、テルと市川という、長いことチームを支えてきたベテランが今季限りで退団。ヨンセンも契約解除だとのことだし、岡崎は海外移籍が決まったし、本田拓也はわれらがアントラーズへの移籍が内定しているという話がある(なぜ?)。藤本にも移籍の噂がある。要するに来季は主力の多くがチームを離れてしまうということで、有終の美を飾りたいという思いは自然と強くなる。
はたして、この試合が最後となるヨンセンが、こちらのDFラインの裏へと抜け出し(いっちゃなんだか、かなりオフサイドっぽかった)、曽ヶ端が猛然と前へと出てきたのを見て、ちょこんとトゥーキック。ゆるい弧を描いてソガの頭上を越したボールは、バウンドしながら鹿島のゴールマウスに吸い込まれていった。中田浩二が追いすがるも一歩及ばず、これで同点。
ただ、それでも慌てるところが少しもなかったのは、こちらにはまだ後半戦の秘密兵器、本山が控えていたからだと思う。準決勝でチームを劇的勝利に導いた本山は、この試合でもやはり後半途中から出場すると、こちらの期待にたがわず、試合の流れを変えてみせた。
本山が入ってからは中盤の組み立てがスムーズになり、たまのカウンターでピンチを迎えることこそあれ、試合の流れはほぼこちらのもの。で、そんななかゴール真正面でもらったFKを野沢が決めて、勝ち越し。この1点を守りきって、アントラーズが3年ぶりの天皇杯を制した。
リーグ戦こそ4位に終わりはしたけれど、最後にはこうやってしっかりタイトルを取っちゃうんだから、たいしたもんだ。というか、よそから見たら嫌なチームだろうなぁと思う。まあ、この試合、岡崎やヨンセンにあと一歩で決定機というシーンを作られたりもしていたので、そのうちのひとつでも決められていたら、どうなっていたかわからなかったとも思う。
いや、じつは今年のエスパルスには、昔っからなぜだか鹿島との相性がやたらといい印象の小野伸二がいるため、ちょっと危険かもと思っていたんだった。でも、その伸二くんは前半はまったく見せ場なし。後半はそれなりにボールを散らすシーンも見受けられたけれど、残り10分を切ってお役御免となった。正直いって、伸二が引っ込んで、ちょっと安心した(やや淋しくもあったけれど)。とりあえず彼をきちんと押さえこんだのが勝因のひとつだろう。
そういえばここ3試合、ジウトンが抜けた左サイドバックでは、宮崎が溌剌としたプレーを見せていたので、来季(というかもう今年か)は彼が主力候補なのかと思っていたのに、先日、出し抜けにその宮崎の横浜FCへのレンタル移籍が発表されてしまった。代わりにアルビレックスから西大伍という選手を獲得したので、どうも今年は新井場と當間とこの選手の3人にサイドを争わせる腹づもりらしい。宮崎の移籍は、ちょっと残念。
あとFWにはポルトガルでプレーしていたカルロンという190センチのブラジル人を獲得(代わりに佐々木が湘南へレンタル)。これに加えて、山形へレンタル移籍していた田代と増田が帰ってくるので(二人とも主力として活躍していたので、帰還はちょっと意外)、FWは興梠、大迫、田代、新外国人の4人の争い。中盤は現状に加えて、注目の高卒ルーキー柴崎、本田拓也、増田が加わった構成。中田浩二はCBにコンバートするという噂もある。
こう見ると、CBのバックアップがやや手薄な印象はあるものの、今年も十分に戦える戦力が揃っていそうだ。初のアジア制覇へ向けて、ぜひともいい一年にして欲しい。
(Jan 09, 2011)