鹿島アントラーズ2-0柏レイソル
J1・第34節/2012年12月1日(土)/カシマサッカースタジアム/BSスカパー!
ガンバが残留できるかどうかが注目を集める最終節に、すでに残留が決まったアントラーズと4位の柏の試合なんて、無料放送があるわきゃないから、NHKあたりで放送されるだろうガンバ戦を観よう──そもそも今節に関しては、正直なところ、アントラーズの試合よりもガンバの去就のほうが気にかかるし──、と思っていたのだけれど。
いざ、テレビ各局の放送スケジュールが決まってみたら、アントラーズ戦は前節につづき、BSスカパーでした。お~、またもや観れちゃうじゃん!
まぁ、これがなにも話題性のない普通の試合だったらば、もしかしたらガンバ戦を観たかもしれないけれど、今回は一年の最後の試合だし、なによりその前々日にジョルジーニョが今季限りでの退任を発表していた。つまりこれが現体制での最後のリーグ戦ってことになる。そりゃさすがに観ておかないわけにはいかない。
――ということで、裏で同時刻に行われているジュビロ対ガンバをはじめ、残留争いをしている新潟、神戸、セレッソの試合結果を気にしつつの観戦となった、今季最後のアントラーズ戦──いや、もとい、まだ天皇杯があるので、今季最後のリーグ戦。
ジョルジーニョがこの最終節で選んだ先発メンバーは、曽ヶ端、西、青木、中田浩二、新井場、柴崎、小笠原、遠藤、ドゥトラ、ジュニーニョ、そして大迫という顔ぶれ。
岩政がいないのは、今週の練習中に怪我をしたかららしい。そういや、前半戦はレギュラーとして活躍していた山村も五輪明けに故障したきり帰ってこないし、今年は攻守ともに、いまいちレギュラーが固定しきれなかったのが、勝ち点が伸びなかった一因な気がする。でもまぁ、岩政、山村の代わりに出ているのが青木と中田浩二なんだから、戦力的にはまったく見劣りしないんだけれど。そのあたり、やはり他のクラブより贅沢だと思う。
相手のレイソルはナビスコ杯決勝のときには不在だったレアンドロ・ドミンゲスが戻ってきていたので、今回は苦戦させられるかと思ったら、意外とそんなことはなかった(最近こういうパターンが多い)。相手がいまいちだったというよりは、アントラーズの戦いぶりがすっかり安定した感じで、まぁ攻められる時間も多かったけれど、それでも大事に至るような場面はあまりなく、攻めては大迫の2ゴールを守り切って、危なげなく勝ち切ってしまった。
1点目はゴール前でのパス交換にミスったボールが相手にあたって、ピンボールみたいに跳ね返って、大迫の前にフリーで転がってきた、そのチャンスを逃さず、遠めからきっちり相手ゴールに突き刺したもの。あの距離のミドル・シュートを打たせたら、今年の大迫の右に出るFWはいない気がする。
2点目は左サイドからジュニーニョがあげたクロスにニアで飛び込み、ジャンピング・ヘッドでファーサイドへと流し込んだもの。
大迫って身長がある割にはヘディングが下手な印象があったけれど、これはとても見事なヘディングだった。どの試合か忘れたけれど、確かちょっと前にも同じような形でヘディングを決めていたし、足だけではなく頭でも点が取れるようになったのはでかい。もともと足元の技術はしっかりしているので、加えてヘディングでの得点力がアップして、しかもポスト・プレーでも存在感をアピールできるという現在のオール・ラウンダーぶりからすれば、近い将来、ポスト前田の一番手として日本代表でプレーできる可能性だって低くはないと思う。柴崎ともども、ブラジルW杯への出場を期待してもいい気がしてきた。
……とはいえ、大迫の今年のゴールは通算9点で、惜しくも2桁には届かず。興梠(11点)とジュニーニョ(3点)と3人あわせて、ようやく得点王の佐藤寿人(22点)に肩を並べるくらいのゴール数なんだから、さすがにアントラーズが苦戦したのも当然な気はする。J2上がりの豊田が19点も取っているんだから、なおさらがんばってもらわないと……。
なにはともあれ、この試合に勝って、アントラーズは年間順位11位でリーグ戦を終了。2桁順位は過去最低だけれど、まぁ無事に残留を決めて、最後はきちんと2連勝で有終の美を飾ったのはよかった。
驚いたことに、最後までACL出場権のかかった3位を争っていたレイソル(この試合に負けて6位に沈んだ)との勝ち点の差はわずか6だ。残り2節で3位争いをしていたクラブと残留争いをしていたクラブの勝ち点の差がわずか6だってんだから、今年のリーグ戦がいかに
裏ではガンバ大阪が結局ジュビロに負けてJ2降格決定。あぁ……。なんでも前田がリーグ戦初ゴールを奪ったチームがJ2に降格するのは、これで6年連続だそうだ。この日の先制点も前田だったというし、人呼んで「前田遼一の呪い」という都市伝説を自らの手で(いや足で)完成してしまうんだから、前田遼一、恐るべし……。
しっかしガンバはリーグ最多得点、得失点差+2で降格しちゃうってんだから、わけがわからない。いったい一年間、どんなサッカーをしてたらそんなことになるんだろう?
もうひとつ、この日で降格が決まったのは、ヴィッセル神戸。野沢、田代、伊野波というアントラーズからの移籍組にとっては、かわいそうな結果になってしまった。常勝軍団から意を決して移籍してみたら、その年に移籍先のクラブがJ2降格してしまうってのは、どんな気分なんだか……。まぁ、アントラーズに残っていても、今年は残留争いの苦しみを味わったことには変わりがなかったわけだけれど。それとも野沢や田代が残っていてくれたら、また話は違ったんだろうか。その辺はよくわからない。
わからないといえば、神戸は最後3節を残して西野さんを解任してしまったのがわからない。あとを任せた安達という人(僕より年下)が経験値的に西野さん以上だとはとても思えないし、普通ここまできたら、もう西野さんにすべてを託すしかないだろうに。大ばくちを打って監督を替えて結局降格なんて、他人事ながらまったく洒落にならない。
まぁ、それを言うんならば、それまでトップチームの監督経験がない松波にクラブの危機を託したガンバもわからないけれど。
その点、ペトロヴィッチの築いたチームを発展させて、みごと優勝に導いてみせた森保には脱帽するしかない(とはいっても、今季の広島は序盤に一試合しか観ていないので(しかも録画で)、どんな素晴らしいサッカーをしていたのか、まったく知らないんだけれど)。師匠は師匠で、ここ数年低迷していたレッズを優勝争いの一角を担うまでに復活させてみせているし。弱小サガン鳥栖をリーグ5位でフィニッシュさせた
そのほかでも、この最終節に大逆転でまさかの残留を決めたアルビレックス新潟の柳下さんや、最後の11試合を無敗で残留争いから抜け出してみせた大宮のベルデニック氏など、シーズン途中に就任してチームを立て直してみせた監督さんたちの仕事ぶりも印象的だった(柳下さんは前節で退席処分を受けて、最終節はベンチ入りしていなかったそうだけれど)。ほんと、アントラーズの不振もあいまって、今年ほどサッカーにおける監督人事の重要さを痛感させられたシーズンはなかったと思う。
上位争いでは、3位サガン、4位レイソルがともに敗れたため、グランパスとの直接対決を制したレッズが逆転で3位に返り咲き、来季のACLの出場権を獲得した。言っちゃなんだけれど、今年の天皇杯でJFLやJ2のクラブに負けている広島と仙台が、来年ACLで勝ち抜けるとはとても思えないので、とりあえずあと一枠に滑り込んだのがレッズでよかった。
以上、ということで2012年のJ1はサンフレッチェ広島の優勝、2位・仙台、3位・レッズ、下位では神戸、ガンバ大阪、札幌が降格と決まって全日程を終了。来年、昇格してくるのは、甲府、湘南、大分の3チーム。そういや、J1昇格プレーオフで京都が負けたので、これで来年のJ1は、関西勢はセレッソ大阪ただ一チームということに……。
しかしまぁ、ジョルジーニョにはさんざん辞めろとか言っていたくせして、いざ退団が決まってみると、それはそれで淋しかったりする。ぜひ監督としての腕をあげて、いずれまた帰ってきてほしいと思う。
(Dec 02, 2012)