サガン鳥栖1-1鹿島アントラーズ
J1・第1節/2013年3月2日(土)/ベストアメニティスタジアム/スカパー!
スカパーがJリーグ全試合無料放送という大盤ぶるまいをしてくれたので観ることができた2013年のシーズン開幕戦。ありがとう、スカパー!
……とはいえ、結果はドロー発進。しかも、勝ち点を取り損ねたというよりは、むしろ負けなくてよかったという内容で、優勝を狙うクラブとしては、いささか不本意なオープニング・マッチだった。
さて、トニーニョ・セレーゾがふたたび指揮をとることになった今年のアントラーズ。選手では、新井場、興梠、増田らが移籍していなくなり(さびしい)、かわりに昨年のJ2得点王、ダヴィが入ってきて、野沢が出戻ってきたのが目玉というところ。
ということで、開幕戦のスタメンはGK曽ヶ端、4バックが右から西、岩政、青木、中田浩二、MFに柴崎、小笠原、野沢、ジュニーニョ、FWが大迫とダヴィで、フォーメーションは本来の4-4-2だった。やっぱりアントラーズはこの形のほうがしっくりくる。
新井場が抜けてどうする気かと思っていた左サイドバックには、中田浩二が入った。J2愛媛から前野という24歳のサイドバックを獲得したものの、現時点ではまだ中田浩二の経験値のほうが上だということなんだろう。
中田と青木がともにスタメンというのは、長年のファンとしては感慨深いものがある。それに岩政、中田、青木らが顔をそろえると、セットプレーのときには迫力があっていい。……というのは確かなんだけれど、それでもやはり中田のサイドバックでは、左サイドからの攻撃に関しては疑問が残る。サイド攻撃は彼の前にいるジュニーニョにお任せってことなのか。それだと4バックというより、左サイドにずれた3バックという感じ。強いときのアントラーズには、両サイドからのサイド攻撃が欠かせないと思うので、そういう意味では、この開幕戦の布陣は今後に不安を抱かせた。
おもしろかったのは、試合が始まってから背番号35の選手がいるのを見て、おいこりゃ誰だと思ったら、野沢だったこと。そうか野沢、今年は35なのか。オガサの40と同じで、出戻り組はクラブを離れた罰として、でかい番号を背負うのがお約束か。いや、でも中田浩二は6番つけてるな。まぁいいや。なんにしろ、おもしろかったです、野沢の35番。あ、いま気づいた。これって3+5=8ってことか。
なんにしろ、J2得点王ダヴィの加入に、中田浩二の左サイドバックへのコンバート、そして野沢の背番号が35ってあたりに新鮮さを感じさせつつ、基本は去年どおりといった印象の新生アントラーズだった。つまり、いまいち内容はよくない。
テレビ放送では、前半はアントラーズが相手を圧倒したようなことを言っていたけれど、僕にはけっしてそんな風には見えなかった。内容的には五分五分だったと思う。小笠原、ジュニーニョ、大迫のラインでは、いい感じでボールをつなげていたけれど、反面ダヴィ、野沢、柴崎のサイドはいまいちな印象。まだまだチームがまとまっていない印象を受けた。
反対に鳥栖はとても成熟したチーム力のようなものを感じさせた。
鳥栖でおもしろかったのが、10番の選手・
なんにしろ、鳥栖はとても手ごわかった。鹿島に運動量があった前半こそ、ある程度押し込むことができていたけれど、後半になって運動量が減るやいなや、圧倒的な鳥栖ペースとなってしまった。そして、豊田の個人技から同点に追いつかれ、試合終了間際には、またもや豊田にあわやの2点目を奪われそうになるという、危なっかしい展開(サイドバーありがとう)。ほんと、負けずによかったという試合だった。
苦戦の原因はトニーニョ・セレーゾの采配にもあったと思う。とにかく動かない。最初の選手交替(ジュニーニョ→本田拓也、野沢→中村充孝を同時に投入)が86分ってのは、いい加減に遅すぎる。その前から相手に圧倒されていたんだから、どうせ本田を使うならば、勝っているうちに入れて欲しかった。
そういや、ジュニーニョをツートップとは別にMFとして使う布陣は、去年僕が期待していたにもかかわらず、ジョルジーニョがまったく試してくれなかった形で(少なくても僕が観た試合ではなかったと思う)、それをトニーニョ・セレーゾがこの復帰第一戦で試してきたのは、わが意を得たりの気分だったのだけれど(ジュニーニョもたまにボールを持ちすぎたり、残念なパスミスがあったりはしたけれど、なかなかいいプレーを見せてくれていた)、さすがに彼も若くはない。──というか、まわりもまた若くはない。
この日のスタメンで20代は、ツートップを組んだふたりと柴崎、西の4人だけだ。あとのメンツは軒並みオーバー・サーティー。経験値の高さは折り紙つきながら、スタミナの面では不安が残る。このメンバーでシーズンを通して戦う気ならば、早めの選手交替は必須だろう。さいわいベンチには本田拓也や中村充孝(よさそうな選手だった)のような選手も控えているのだから、選手交替をためらう理由はまったくない。というか、若い彼らを積極的に使わない理由がない。
なのにトニーニョ・セレーゾはこの試合、相手に同点に追いつかれ、残り時間が十分を切ってもなお、動こうともしなかった。その姿勢にはまるで納得がいかない。ほとんどのサポーターがそう感じたことだろう。
少なくてもきょうの試合からは、今年は去年とは違うんだという手ごたえは感じられなかった。どちらかというと、またもや今年も去年と同じ間違いをしでかしそうな印象さえ受けた。おかげで引き分けに終わったにもかかわらず、気分は負けに近い。うーん、せっかくの開幕戦なのに、このもやもやした気分はなに?
いや、開幕早々こんなネガティヴなことばっか書いてても仕方ない。少なくても、去年とは違って今年は負けなかったのだから、勝ち点1をよしとしよう。そしてリーグを通じてのシーズン初ゴールを奪ったのが大迫だったという事実を祝おう。
得点の場面はCKから、ニアにいたダヴィがヘディングで後方に流したボールを、大迫がダイレクト・ボレーで決めてみせたもの。セットプレーからではあったけれど、とてもきれいなゴールだった(あぁ、あれが決勝点であってくれたなら……)。
対する鳥栖のゴールは豊田。青木との競り合いに勝って、ヘディングでうまくボールを奪うと、そのままドリブルでゴールへと向かい、きっちりとシュートを決めてみせた。おいおい、うまいな豊田。伊達に去年19点も取っちゃいない。大迫とともに代表での前田の後釜を狙うライバルになりそう(FWといえば、レッズに移籍した興梠のことも気にかかる)。
なにはともあれ、今年も無事にサッカー・シーズンが始まった。震災の直後は、勝っても負けても引き分けても、ただサッカーが観られるだけで幸せだって思った、あの気持ちを忘れずにいよう。次節はホームで仙台との対戦。そりゃまた難しそうな……。で、その次は広島だって。なぜに最初の3節の相手すべてが去年のベスト5入りチームなんだ。ひどい。
(Mar 02, 2013)