2016年1月のサッカー

Index

  1. 01/01   浦和1-2G大阪 (天皇杯・決勝)
  2. 01/13 ○ U-23日本1-0U-23北朝鮮 (U-23選手権)
  3. 01/16 ○ U-23タイ0-4U-23日本 (U-23選手権)
  4. 01/19 ○ U-23サウジアラビア1-2U-23日本 (U-23選手権)
  5. 01/22 ○ U-23日本3-0U-23イラン (U-23選手権・準々決勝)
  6. 01/26 ○ U-23日本2-1U-23イラク (U-23選手権・準決勝)
  7. 01/30 ○ U-23韓国2-3U-23日本 (U-23選手権・決勝)

浦和レッズ1-2ガンバ大阪

天皇杯・決勝/2016年1月1日(金)/味の素スタジアム/NHK総合

 今年も実家でお屠蘇気分で観戦した天皇杯決勝。
 アントラーズが二年連続のPK負け二回戦敗退という失態を演じてしまったので、今年も天皇杯はいまいち気分が盛りあがらなかった。もとより、なにを書こうと酔っぱらいのたわごとにしかならないし、今回もごく簡単に。
 今年の会場は味スタ。そういや、去年は元日決戦ではなかったんでしたっけね。それはそれでありかなと思ったけれど、こうやって元日に観ると、やっぱ天皇杯決勝は元日であって欲しい気がする。
 決勝戦の対戦相手は、ナビスコ杯、チャンピオンシップ、天皇杯と、三冠すべての決勝まで駒を進めてきた昨年度覇者ガンバと、リーグ戦ファースト・ステージでは圧倒的な数字を残して優勝しながら、その後失速してここまで無冠のレッズ。
 どっちが勝ってもおかしくない実力者どうしではあるけれど、結局はレッズの──それともペトロヴィッチの?──勝負弱さが出てしまった感じの一戦だった。レッズは柏木が故障欠場だったのが残念。彼がいたらまた違っただろうに……。
 試合は前半、パトリックの素晴らしいゴールで先制を許したレッズが、そのすぐあとに興梠のゴール──李がヘディングでポストにあてた跳ね返りをしぶとく決めた(成長したなぁ)──で一度は追いつくも、後半にセットプレーからふたたびパトリックにヘディングでゴールを許して勝負あり。表彰式では遠藤ヤットが今季限りでの退団が決まっている明神のユニフォームを着ていたのがちょい感動的だった。
 レッズ、ガンバというJ1年間2位、3位のクラブが決勝まで上がってきた時点で、ACLの4枠目は年間4位のFC東京に決定。要するに5位のアントラーズは勝ち点4の差でACL出場を逃したことになる。うーん、それもまたちょい悔しい。
(Jan 02, 2016)

U-23日本1-0U-23北朝鮮

AFC U-23選手権カタール・グループB/2016年1月13日(水)/ドーハ/テレビ朝日

 五輪代表、リオデジャネイロ・オリンピック出場へ向けての最大にして最後の試練、最終予選始まる。
 最近はいろいろやるべきことも多いし、五輪代表は本大会で観ればいいかとも思っていたんだけれど、なんだか今回の代表はそこにたどり着けるかどうか不安視されているようだし、試合も平日ながら午後十時半からと、観やすい時間帯だったので、とりあえず観ておくことにしたんでしたが。そしたらこれが大変な大会で……。
 最終予選っていうから、よくある総当たりのリーグ戦だろうと思っていたら、あにはからんや。U-23選手権とかいっちゃって、グループリーグのあとにトーナメントが控えている本格的な大会で、要するにアジア杯のU-23版。その結果を踏まえて上位3チームにオリンピック出場権が与えられるという。つまり決勝戦まで進出するか、三位決定戦に勝たないとオリンピックには出られないことになる。
 たとえれば、アジア杯でW杯出場を決めるよってな話なわけで。だとすると前回ベスト8に終わったA代表はW杯に出られてないって話になる。
 おいおい、それってすごいシビアじゃありません?
 だって、決勝トーナメントの準決勝までに韓国やオーストラリアと対戦する可能性だって高いわけだよね? えー、大丈夫なの、今回の五輪代表?
 はたして、オリンピックへの挑戦は初戦から非常にタフな試合になった。
 大事な初戦のスタメンに手倉森監督が選んだ11人は、GK櫛引政敏(ようこそ鹿島へ)、DF室屋成(明大生でFC東京の特別指定選手とのこと。知らなんだ)、岩波拓也(神戸)、植田直道(もちろん鹿島)、山中亮輔(柏)、MF遠藤航(今年から浦和)、大島僚太(川崎)、中島翔哉(F東京)、FW南野巧実(ザルツブルク)、久保裕也(BSCヤングボーイズ)、鈴木武蔵(新潟に復帰?)というメンバーだった。途中出場は矢島慎也(岡山)、原川力(川崎)、豊川雄太(岡山)の3人。なじみがない選手が多いので、全員フルネーム&所属クラブ付きにしてみた。
 GKの櫛引は今年から鹿島でプレーする選手だし(レンタルだけど)、ベンチ入りしていた三竿健斗もそう(こちらは完全移籍。まったく知らない人だけど)。さらにはレンタルで岡山へ行ってしまった豊川(涙)、そして植田と、なにげにアントラーズ関係者が4人もいた。これは個人的には嬉しい誤算。これだけでもう、ちゃんと観なきゃって気になる。
 グループリーグ初戦の対戦相手・北朝鮮は、この年代はめっぽう強く、U-16やU-19での日本代表は毎回苦杯を飲まされ、世界大会への道を閉ざされてきたとかいう話だった。
 とはいえ、そこは十代のころの話。U-23ともなれば、選手たちはほぼ全員プロを経験してきている。Jリーガーとして経験を積んだ日本代表の選手たちが、よもやプロリーグのない北朝鮮(もしかしてある?)におくれをとっていいはずがない。過去のことは過去のこととして、この試合はきっちりと勝ってくれるはずだと思っていた。
 なので、キックオフからわずか5分での先制点にも、とくに驚きはなし(植田~、ナイス・ゴール!)。よしこれで楽になっただろうと思ったらば、だ。
 そこからは、なんかもうずっと防戦一方でした。
 べつに北朝鮮が特別うまかったからというよりは、日本が妙に消極的だった感じ。前線の守備はいいものの、中盤の守備がゆるい。ボランチのあたりのスペースが広い感じで(遠藤航がいるのになぜ?)、そこからロング・ボールを放り込んで思い切りよくシュートを打ってくる相手を、どうにかいなすのが精いっぱいというような展開が延々とつづいた。よくも残り85分をスコアレスで終われたよなって試合だった。
 攻撃ではたまにいい感じでボールをつなげるシーンもあったけれど、なぜかゴール前での思い切りが悪くて、シュートで終われない。もっと積極的にシュートを打とうよって何度思ったことか……。
 でもそんななか、非常に好印象だったのが中島。
 一昨年このチームを観た時にも、その小さな身体で小気味よくパスをさばくプレーは印象的だった気がするけれど、ひさしぶりに観たら、なおさらすごくなっていた。すげーキープ力高いし、運動量も豊富。でもって、詰めてくる相手をうまくかわしては、的確に味方にパスをつないでゆく。とにかくパスの成功率の高さが最高だった。かなり状況判断力が高いんじゃないだろうか。彼のプレーはもっと見たいと思った。
 反対に攻撃陣でややがっかりだったのは南野。海外移籍もしたことだし、さぞや成長しているかと思ったら、なぜ?ってくらいに目立たない。鈴木武蔵はポスト・プレーで存在感を見せていたし、久保も2本ほどいいシュートを打っていた。中島は前述のとおり素晴らしかった。つまり、この日の攻撃のものたりなさは、南野の不出来に負ったところが多いように思う。
 この大会での日本代表の運命を左右するのは、南野かもしれない。
 まぁ、なにはともあれ、勝ってよかった。この日の勝ち点3はでかい。次の相手がタイ(その次はサウジ)なのを考えれば、これで決勝トーナメント進出はほぼ確実でしょう。ノックアウトステージへ向けてどうやって調子を上げてゆくか、これから先も目が離せない気分になってきた。
 始まるまでは観なくてもいいかと思っていたくせに。われながら現金な。
(Jan 14, 2016)

U-23タイ0-4U-23日本

AFC U-23選手権カタール・グループB/2016年1月16日(土)/ドーハ/BS1

 U-23代表、オリンピックへ向けてのグループ第2戦、タイ戦。
 中2日での連戦ということで、手倉森監督は大幅にメンバーを入れ替えてきた。
 スタメンはGK櫛引、DF室屋、岩波、奈良竜樹(川崎)、亀川諒史(福岡)、MF遠藤航、原川、矢島、FW鈴木武蔵、豊川、浅野拓磨(広島)の11人。
 前の試合から6人の入れ替えで、奈良、亀川、浅野が初出場。さらには鈴木武蔵と交替で、オナイウ阿道{あど}という、誰それって選手も初出場を果たした(ナイジェリア人とのハーフで、千葉所属とのこと)。あとは久保と南野が途中出場している。
 試合はいきなりタイに押し込まれる意外な展開で始まった。タイ、初戦ではサウジとドローだし、もしかしてあなどれない? A代表では一度も負けたことがないからちょっと油断していた。
 でもまぁ、下手に守り一辺倒だったり、ロング・ボールばかりのパワー・プレーでこられるよりも、こういう相手のほうがやりやすいのだろう。こちらもチャンスを作って、ポストやバーをたたくシーンを連発するようになる(豊川、決めてくれ)。そのうちに遠藤がDFラインの裏へ出したパスを鈴木武蔵が豪快に決めて、日本が先制。
 前半はこの一点に終わったものの、実質的にはこれにて勝負あり。
 後半はわずか5分で左サイドの崩しから矢島がどんぴしゃのヘディングを決めて2点目。さらには途中出場の久保がドリブル突破からGKにあてたボールが跳ね上がってゴールに転がり込むラッキーなゴールで追加点。さらに久保はPKをもらって、それを自分で決めて2ゴール目。計4点で日本が快勝した。
 まぁ、快勝とはいっても、得点差ほどの力の差は感じなかった。アジア各国の実力差は年々縮まってきているなぁって実感する。そりゃそうだよな、世界中のサッカーがいつでも観られる時代だもの。ほかの国の若い子だってそれを見て成長するだろう。日本もうかうかしていると、そのうち足元をすくわれて、W杯や五輪に出られなくなること必至。この大会がそうならないことを祈るばかりだ。
 まぁ、とりあえずこの日の勝利で日本のグループリーグ1位抜けが確定(サウジは北朝鮮と引き分けて勝ち点2に甘んじている)。こうなると、次の試合は勝っても負けてもいいので(負けてほしくはないけれど)、あとはどうやって準々決勝につなげるかがいちばんの見どころ。絶対に負けるわけにはいかない準々決勝に向けて、手倉森さんがどういう手を打ってくるのかが楽しみだ。
 いま必要とされるのは、主力に疲労を残さないで、かつ試合勘も失わせないような選手起用。それってけっこうむずかしそうな気がする。
(Jan 17, 2016)

U-23サウジアラビア1-2U-23日本

AFC U-23選手権カタール・グループB/2016年1月19日(火)/ドーハ/テレビ朝日

 U-23日本代表は、みごと3連勝でグループリーグを終えた。対するサウジアラビアは引き分けでも決勝トーナメントに進出できたのに、あと1点及ばずに五輪出場の道が途絶えた。両国の明暗の分かれたグループリーグ最終戦。
 この日の日本のスタメンは、GK杉本大地(徳島)、DF松原健(新潟)、植田、奈良、山中、MF三竿健斗(鹿島!)、大島、井手口陽介(G大阪)、中島、FW南野、オナイウ阿道。
 大胆にも、前の試合から奈良だけを残して、じつに10人の入れ替え。初戦と比べても6人も違う。この試合では杉本、松原、三竿、井手口が初出場、オナイウが初先発(途中出場は浅野、亀川、久保)。これだけ入れ替えてなお勝ち切っちゃうんだから、なにげにすごいかもしれない。今回の五輪代表は強いんだか、弱いんだか、よくわからない。
 ちなみにフォーメーションは三竿、大島、井手口のトリプル・ボランチを要した4-3-3とのこと。これまでは4-4-2だったらしい。ずっと武蔵ワントップの4-2-3-1でだと思って見ていた。
 それにしても、櫛引にしろ、三竿にしろ、移籍してきたばかりで、これまで顔も知らなかったアントラーズの選手を、代表戦で初めて観るってのはちょっと不思議な感じだ。……というか、五輪代表に選ばれるほどの有望株をクラブが手放すってのが、そもそもよくわからない。世の中、よくわからないことばっかりだ。まぁいいけど。
 試合は大島(初戦はいまいち存在感がなかった)の豪快なミドルで日本が先制。後半には井手口が南野のアシストから追加点を決めて勝負あり。
 そのあと、植田がペナルティ・エリアでボールをクリアしようとして、横から足を出してきたサウジの選手を蹴ってPKを取られ、1点を失ったものの、あれは判定が疑問。蹴ったというか、お互い足がぶつかったって感じだったのに……。
 まぁ、故意じゃないにしろ、蹴ったらいけないということなんだろうか。だとしたら、あそこに足を突っ込んできた相手の勝ち。なんにしろ、グループリーグ無失点という記録まであと少しだったので、残念な失点だった。今回の代表はけっこうあぶなっかしいシーンが多くて、それほど守備が安定している感じがしないのに、それでもきちんと守れているのが不思議だ。
 まぁ、そんなわけで失点こそ許したものの、大島の先制点は素晴らしかったし、2点目のゴールを決めた井手口も、宇佐美をして「怪物」といわしめたという大器の片りんを感じさせる、なかなかのプレーぶりだった。そのゴールをアシストした南野も徐々に調子が上がってきている感がある。
 北朝鮮戦後のインタビューで手倉森さんが「これ以上悪くなることはない」と言っていたけれど、なるほど、最初にくらべると全体的にパス回しもずいぶんスムーズになってきた感あり。少なくてもこの3試合の印象では、このグループの首位が日本というのはいたって順当だと思った。なんたって、他の3チームはすべて2分1敗で、1勝もしていないんだから、なにをいわんやだ。
 ちなみに北朝鮮とサウジは勝ち点、得失点差、総得点とすべてが同じで、直接対決も3-3のドローだったため、同じ勝ち点2のタイを加えた3国の直接対決での総得点がいちばん多かったってことで、北朝鮮が2位と決まったとのこと。あの植田のPKがなければ、もっとすっきり決まったのに……。なんにしろ、とても珍しいケースだった。
 サウジは左サイドから迫力のある攻撃を仕掛けてきた時間帯もあったけれど、試合全体を通じて、その集中力を持続できていなかった印象だった。オリンピック出場を賭けているにしては、どうも必死さが足りなかったような気がする。
 さてこれで次はいよいよサドンデスの準々決勝。負けたら一巻の終わりの正念場。相手はイランだっ。ちょい怖い。はらはらどきどき……。
(Jan 20, 2016)

U-23日本3-0U-23イラン(延長:3-0)

AFC U-23選手権カタール・準々決勝/2016年1月22日(金)/ドーハ/テレビ朝日、BS1

 U-23代表、延長戦でイランを倒し、鬼門といわれた準々決勝を突破して、無事ベスト4進出。オリンピック出場決定まであとひとつ。
 いやぁ、とはいえ、スタメンを見たときに嫌な予感がしたんだ。だって、鈴木武蔵も、南野も、大島も、山中もいないんだから。なんだそりゃいったいと思った。
 だって、負けたら終わりの大一番ですよ? ここで最強メンバーで戦わないで、いつ戦うんだって思っていた。
 それなのに、スタメンは、櫛引、室屋、岩波、植田、亀川、遠藤、平川、矢島、中島、久保、オナイウという顔ぶれ。
 2戦目、3戦目で先制ゴールをあげた武蔵と大島、どっちもいない。
 前の試合でセットプレーのキッカーをひとりで務めていた山中もいない。
 これから本調子になってくれることを期待していた南野もいない。
 おいおい、これがいまの五輪代表の最強の布陣なの?
 ──と思ったら。
 なんと、試合後の記者会見で、手倉森氏が「きょうの先発はいまのベストメンバーではありません」と言い切っていた。「今日イランと戦う上でのベスメンバー」ですって。コンディションを鑑みたうえで、イランの高さに負けない選手ということで──あと、これからのことも考えて──このメンバーにしたと。
 ええっ、マジですか? それってすごすぎるんだが。
 この試合の日本代表は決してよくなかった。相手がいままでより強かったことを差し引いても、とても90分では勝てそうな感じがしなかった。それどころか、相手にフリーでシュートを許したり、バーをたたくシュートがあったり。いつ失点してもおかしくない展開だった。一方でこちらはいっこうに点が取れそうな気配がない。
 それなのに、手倉森は後半に入っても、いっこうに選手を替えようとしない。最初のカードを切って、浅野を投入したのが、じつに後半37分だ。
 こりゃもう延長戦に入った場合のことを心配して、消極的になっているんだろうとしか思えず、僕はその采配にとてもイラついていた。こんなメンバーで戦って、しかも延長戦を怖がっていて、勝てるはずがないだろうよと。
 ところがだ。
 話を聞けば、手倉森氏は延長戦をおそれてメンバーを替えられなかったのではなく、最初から延長戦で勝負をつけるつもりで試合を運んでいたんだという。コンディションで上回る日本は、延長戦に入れば、より優位に立てるという確信があったんだそうだ。
 その言葉のとおり、日本代表は延長戦に入って5分で、豊川(浅野のすぐあとに投入されていた)が先制ゴールを決めてみせる。室屋のクロスといい、豊川のダイビングヘッドといい、完璧なゴールだった。
 さらに延長後半には、中島が左サイドから個人技で切れ込んで、同じような形から見事な2ゴール。延長こそあったものの、終わってみれば3-0でイランを圧倒。見事準決勝に駒を進めたのだった。
 先制点をあげた豊川は、選手選考の際に、最後の最後で追加で選んだ選手だそうだ。そんな選手を後半の終わりごろに「試合をしっかり終わらせて、延長に持ち込め。それまではアイドリングだと思って、延長戦で決めろ」とかなんとかいって送り出し、してやったりの結果を出してみせる。
 中島の起用にしても、この2試合は初戦のような存在感がなかったので、やはり小柄な彼には中2日での連戦はきついのかと思ったら、延長に入ってから、まさかの2ゴールで結果を出してみせるし。
 いやぁ、びっくりだわ、手倉森采配。おみそれしましたもいいところ。試合内容は決してよくなかったし、延長勝負という発想もあまり好きとはいえないけれど、それでも計画どおりに戦って、しっかり結果を出してみせたことには、ただひたすら脱帽。恐れ入りました。
 さぁ、これであと1勝でオリンピックだ。あえてベストメンバーを組まずに準々決勝を乗り越えたこのチームならば、次できっちり決められそうな気がする。大いに期待しています。
(Jan 23, 2016)

U-23日本2-1U-23イラク

AFC U-23選手権カタール・準決勝/2016年1月26日(火)/ドーハ/テレビ朝日

 祝・U-23日本代表、オリンピック出場決定~!
 いやぁ、それにしても日本代表って、期待されていないときの方が強いんじゃないだろうか。南アフリカW杯のときの岡田ジャパンといい、前回のオリンピックのときの関塚さんのチームといい、そして今回といい。こんなんじゃ駄目だろうと思わせるチームのほうが、結果的にはいい成績を残している。
 やっているサッカーはそれほどおもしろいとは言えないのだけれど、それでも守備意識を徹底して、ここぞのチャンスに集中する。そういう内容よりも結果重視のサッカーのほうが、もしかして僕ら日本人にはあっているのかもしれない。
 この日のスタメンは、櫛引、室屋、植田、奈良、山中、遠藤、原川、南野、中島、久保、鈴木武蔵の11人。途中出場はオナイウと浅野。
 よもや、大島が二試合つづけてベンチってのは想定外だった。あと、岩波を外してきたのも。僕はこのふたりが入った初戦のフォーメーションが今回の五輪代表のベスト・メンバーだろうと思っていたので、勝てば出場決定というこの試合は絶対にそのメンツで戦うものだと思っていた。手倉森、メンバーいじりすぎ。
 岩波に関しては、誰もが想定外──もちろん本人にも──だったようで、それに関しては、手倉森が奈良のライン・コントロールの上手さを買った、というようなエクスキューズをしていたらしい。あと、ここまできたら最後までターンオーバーでやりたいと。
 岩波にくらべて大島がとくに問題とされていないようなのは、僕が思っているほど、彼がこのチームでは特別な選手じゃなかったということなのか(遠藤がいないときにはキャプテン・マークを託されていたのに)。
 まぁ、とはいえ今回は彼のかわりに出場した原川が値千金の決勝ゴールを、それも後半のアディショナル・タイムに決めているんだから、手倉森采配ズバリなわけで。結果オーライで、大島の名前が出てこないのも当然ってことなんだろう。恐れ入りました、原川くん。そして彼を起用した手倉森監督。
 まぁ、なんにしろ、この試合も日本代表は押されていた。鈴木武蔵が守備でのがんばりから作ったワンチャンス──積極的な守備から敵陣に蹴りだしたサイド・ライン際のボールに、そのまま自分で追いついてチャンス・メイクしてみせたプレーはあっぱれだった──を、久保がどんぴしゃ合わせて見事に先制したものの、前半の終わり間近のセットプレーで3発のヘディング・シュートを浴びせかけられて同点を許す。
 それを櫛引が止める→こぼれ球をイラクがヘディング→櫛引ふたたび止める→イラクがヘディング→態勢を崩した櫛引反応しきれず……という。このバレーボールかテニスのラリーみたいな同点弾で前半は終了。
 でもまぁ、櫛引、よく最初の2本は止めた。いいGKだよな。なんで清水が手放したのか、ほんと不思議でしょうがない。曽ヶ端には悪いけれど、鹿島もそろそろ世代交代の潮時だし、今年は櫛引が正GKでもいいんじゃないかって気分になってしまっている。
 後半はどんな試合だったか、すでに記憶があいまいだけれど、今回も我慢くらべの感が強く漂っていた。
 こりゃまた延長での体力勝負か……と覚悟を決めた後半ロスタイム。そこで南野が放ったクロスをGKがパンチングでクリアした先に、フリーで待っていたのが原川。彼が放った豪快なミドル・シュートが、みごとイラク・ゴールに突き刺さる。お~、最後の最後に、なんちゅう素晴らしいゴール!
 いやはや、このチームの生命線は守備力なんだろうけれど、この大会で決めたゴールは、妙に素晴らしいものが多い。
 初戦の植田のボレーシュートに、タイ戦の大島のミドル。サウジ戦の武蔵の先制ゴール。イラン戦の豊川のヘディングに中島の2発。そしてこの日の久保の先制点に、原川の決勝ゴール。思い返してみるに、どれも文句なしのビューティフル・ゴールばかりだ。こんなに毎回素晴らしいゴールを見せてくれる代表なんて、とんと記憶にない。
 というか、あらためて確認したら、この手の国際大会で初戦から無傷の5連勝した代表って、僕が記録を取るようになってからは初めてみたいだ。もしかしてこの子たち、なにげにすごいかもしれない。いやはや、あっぱれでした。
 さぁ、これで残すはあと一試合。決勝戦の相手は永遠のライバル韓国だ。ここはぜひきっちりと勝って、6連勝で優勝を決めてもらおー。
 そうそう、この大会、オーストラリアはなんとグループ・リーグで敗退していた。中国なんてグループ・リーグ最下位だし。やっぱ楽な大会じゃなかったんだよな。そんな中をしっかり決勝まで勝ち上がってきた日本代表の若者たちに最大限の祝福を。

U-23韓国2-3U-23日本

AFC U-23選手権カタール・決勝/2016年1月30日(土)/ドーハ/テレビ朝日

 今回の五輪代表には最後まで驚かされっぱなしだった。
 なんですか、この試合は……。
 日本が国際大会で相手に2点を先制されてながら、残り30分で試合をひっくり返したなんて話、聞いたことないぞ。ましてや相手がライバル韓国ともなれば、なおさらだ。
 いやぁ、なんなんだろう、このチームの底力は。ほんとびっくりだわ。手倉森ジャパンではなく、不思議ジャパンと呼びたい。
 この日の先発は、櫛引、室屋、植田、岩波、山中、遠藤、大島、矢島、中島、久保、オナイウというメンバー。
 鈴木武蔵が怪我、南野が所属クラブの要請を受けて離脱ということで、緒戦のメンバーからこのふたりを抜いて、かわりに矢島、オナイウを入れた形。メンバー交替の理由がはっきりしている上に、最後の試合ということもあってか、とても納得のゆくスタメン構成となった。まぁ、単に日替わりスタメンが一巡してもとに戻っただけかもしれないけど。それが計算ずくだとしたら、手倉森采配おそるべしだ。
 ただ、やはりこの日も日本代表は最初からぴりっとしない。オナイウは運動量こそ多いものの、鈴木武蔵に比べるとボールの収まりが悪いし、おまけに前半はそんなオナイウが孤軍奮闘しているように見えてしまうほど、前線が不活発。
 対する韓国は、さすがにアジアでは頭ひとつ抜けている印象だった。序盤から立てつづけにDFの裏を取られ、かろうじてオフサイドに救われるってシーンが連続する。
 やっぱ上手いじゃないか、韓国。得点にこそならなかったものの、二度もつづけてネットを揺らされると、おいおい大丈夫かって気分になる。
 そしたらやっぱり先制は韓国だった。前半なかばに、右サイドの崩しから、ペナルティ・エリア内でフリーのシュートを決められてしまう。
 まぁ、そのままならば櫛引の真正面ってシュートが、岩波にあたってコースが変わってしまったのは不運だった。とはいえ、それ以前にあんなポジションでフリーにしてしまったのが問題。なぜにあんなに詰めが甘かったかなぁ、植田。
 後半の立ち上がりに許した2点目にしてもそう。なぜ?ってくらいにこの日は守備が緩かった。もともとそれほど安定感があったとは思っていないけれど(それでいて大会最少失点だというのだから不思議だ)、ここまでは集中力を高めてギリギリでクリアを重ねてきたのに、大事なこの決勝戦でその集中力が途切れてしまった感じだった。
 劣勢を跳ね返すべく、手倉森は後半の立ち上がりから、オナイウに替えて原川を入れてきた。おそらく中盤を厚くして、まずは守備を落ち着かせ、反撃はそれからって心づもりだったのだと思うけれど、その直後によもやの追加点を許す展開は、まずすぎた。
 ここまで全試合先制逃げ切りで勝ちあがってきたチームだ。それが韓国相手に後半の頭で2点のビハインド……。あぁ、さすがにもう終わったと思った。
 ところが、だ。そのあとにまさかの大逆転劇が待っていようとは……。
 逆転への布石は、これまでよりも早めの時間帯──後半の15分くらい──に浅野を投入したことだった。そりゃそうだ。2点を追いつかないと延長戦だってないんだから、出し惜しみしている場合じゃない。交替で下がったのは大島で、フォーメーションはふたたび2トップに変更。
 終盤になって浅野を投入してスピード勝負に出るのはこれが初めてではない──というか、それどころか、これまでに何度も繰り返してきたにもかかわらず、不発に終わっていた奥の手だった。
 それがこの大一番でついに実を結ぶ。浅野はピッチに立ってわずか6分で相手のゴールネットを揺らしてみせたのだった。矢島からのスルーパスを受けての、電光石火の追撃弾!
 さらなる驚きはその1分後に待っていた。
 今度は殊勲のアシストを決めた矢島自身が、山中からのクロスにあわせて、どんぴしゃのヘディング弾を決める。その間、わずか1分。あっという間の同点劇!
 いやぁ、矢島、それまではどこにいたのか、よくわからなかったのに、わずか2分足らずのあいだに、つづけざまになんて大仕事を……。
 しかも、この大会の2得点がどちらも見事なヘディングだったので、ヘディングが得意なのかと思えば、本人は自分でも意外とか言っているし。もうわけがわからない。
 なんにしろ、この同点弾が決まった時点で、試合はほぼ日本のものとなった。韓国の選手は足が止まってきていたし、対するこちらには、まだまだ元気いっぱいのスピードスター浅野がいる。さらには手倉森もこれまでの試合での慎重な采配から一転。延長戦をかえりみず、最後のカードを切って豊川も投入して、一気に試合を決めにゆく。
 はたして、最後は中島のワンタッチ・パス(おみごと!)を受けた浅野が、相手DFとの駆け引きに勝ってくるりと反転、GKと一対一のチャンスを作ると、これを落ち着いて決めてみせたのだった。おおお~、ついに逆転~!
 逆転のあとの10分ほどは、豊川が鹿島仕込みの時間稼ぎなんかしてみたりして、のらりくらりとしのぎ切り、ついにタイムアップ! 世代別の大会では一度も優勝したことのなかったという今回の五輪代表が、最後の最後でついにアジアの頂点に輝いた。
 終わりよければすべてよし。──そんな言葉を地でゆくような今回の五輪代表の快進撃だった。
 いやぁ、しかしすごいや。この試合までノーゴールだった浅野が2点も取ったり、それまでほとんど存在感がなかった矢島が1ゴール1アシストを決めたり。決勝ゴールで見事なアシストをみせた中島だって、この日はそこまでこれといったプレーはできていなかった。そんな彼らが、ここぞというところで、こぞって最高のプレーを見せて、韓国を相手に2点のビハインドを跳ね返してみせたのだから、ほんとうにびっくりだ。
 思えば、僕が今回の五輪代表を初めて見たのは、2年前の日韓戦だった。日本が1-0で負けて、U-21W杯への出場を逃すことになったその試合では、スコア以上に力の差を感じたものだった。
 今回の試合にしても、実力の上では、もしかしたら韓国の方が上だったかもしれないと思う。少なくても、同点に追いつくまでの内容では、完璧に相手に負けていた。
 それでも、終わってみれば、アジアのトップに立ったのは日本だった。
 今回の代表には、劣勢にもくじけずに最後まで戦いぬく辛抱強さがあった。そして耐えに耐えたあげく、ここぞできちんとゴールを決められる技術があった。そのことを彼らは誇りに思っていいと思う。
 祝・アジア制覇。この代表チームがオリンピック本大会ではどんな戦いを見せてくれるのか、とても楽しみになった。
(Jan 31, 2016)