2016年6月のサッカー

Index

  1. 06/03 ○ 日本7-2ブルガリア (キリンカップ)
  2. 06/07 ● 日本1-2ボスニア・ヘルツェゴビナ (キリンカップ)
  3. 06/11 ○ 浦和0-2鹿島 (J1・1stステージ第15節)
  4. 06/25 ○ 鹿島2-0福岡 (J1・1stステージ第17節)

日本7-2ブルガリア

キリンカップ/2016年6月3日(金)/豊田スタジアム/テレビ朝日

 おそらくハリルホジッチの強化プランに答える形で5年ぶりに復活したキリンカップの第一試合。
 今年のこの大会はこれまでとはレギュレーションが異なる。過去の開催では3ヵ国の総当たりだったけれど、今年は4ヵ国によるトーナメント戦。デンマーク-ボスニア・ヘルツェゴビナ戦の勝者とこの試合の勝者が決勝を戦い、敗者どうしが三位決定戦を戦うという趣向。ただし日本が初戦に負けて三位決定戦を戦うことになった場合でも、二試合目は日本の試合があとから行われるという話だった。まぁ、当然ですね。母国開催の代表戦を、わざわざ平日の昼間にやられても困るし。
 とはいえ、そんなホーム・アドバンテージのために、優勝が決まったあとで三位争いを繰り広げるなんてことになるのは、どうにも締まらない。規模は小さいとはいえ、仮にも賞金のかかった公式戦だ。ここはきっちりと勝って、気持ちよく第二戦を戦ってほしいところだ。
 初戦の対戦相手はブルガリア。なんとこの国に日本は過去に一度も勝ったことがないんだとかいう。調べてみたら、なるほど僕の記録にある限りでは2敗している。
 とはいえ、当時の試合はどちらも負けて当然という内容ではなかったみたいだし、いくら相手がヨーロッパの中堅国とはいえ、現時点でのFIFAランキングは69位と日本よりも低い。いまの日本ならば互角以上で戦えちゃうんじゃないの?
 ――と思っていたら、互角どころの話じゃなかった。
 前半だけで4-0。後半に集中力を欠いた守備から2点を奪われるも、それでも終わってみれば7-2という圧倒的な内容。わざわざ遠くから来てくれたお客さんをそこまでぼこぼこにしちゃ悪いんじゃないの? と思ってしまうような圧勝劇だった。
 いくらアウェイとはいえ、もしも日本がこんな負け方をしたら大騒ぎだろう。ブルガリア国内もきっと大変な騒ぎだろうなぁ……って、ひとごとながらちょっと心配になってしまった。
 この日の日本のスタメンはGKがひさしぶりに帰ってきた川島、DFが酒井宏樹、吉田麻也、森重、そして交際宣言でアモーレ・フィーバーをまき起こして、この日の影の主役となった長友、MFが長谷部、柏木のダブル・ボランチに、小林悠、香川、清武、そして岡崎のワントップという布陣。
 本田が怪我のためベンチということで、小林悠が代表初スタメン。さらに香川と清武が同時にピッチに立ち、さらには柏木までいるという。名パサーがたくさんで、なかなか楽しそうな試合になりそうだなと思ったら、楽しそうを通り越して、予想外の大爆発をしてみせてくれてしまったこの日の日本代表だった。
 開始わずか4分に柏木の右からのクロスに反応した岡崎がヘディングを決めた(オフサイドじゃないのが不思議だったけど)のを皮切りに、長友のクロスを香川が珍しく頭で決めて追加点。小林悠のグラウンダーのクロスを清武がスルーして香川が得意の反転からもう1点。さらにはセットプレーの流れから森重がヘッドで落としたボールを麻也が決めて、前半だけで4得点の大爆発。
 後半は後半で清武のグラウンダーのクロスをなぜだかまたもや麻也が、今度は足で決めてこの日2得点。さらには前半終了間際に腰の打撲で引っ込んだ香川にかわって途中出場していた宇佐美が、酒井からのクロスがファーに流れたボールを、得意の形で逆サイドへと流し込んで6点目。
 そのあと、ふわっとしたディフェンスでブルガリアに2失点を喫したのはいただけなかったけれど、それで終わらずに、さらに途中出場の浅野がみずから得たPKを決めて追加点を奪ってみせた──さらにはそのすぐあとに相手に与えられたPKを川島がみごと防いでみせた──ことで、試合終了時のスタジアムはみごとな祝祭空間と化していた(長友アモーレの影響も少なからずあった気がする)。
 それにしても、いくら相手の出来が悪かろうと、ヨーロッパの国相手に日本が7点もとって勝つなんて、ちょっと出来すぎでしょう。長友、酒井の両サイドとも、攻撃では効果抜群だったし、中盤のダイレクトでのパス・ワークは冴えまくり。ひさしぶりに帰ってきた川島もファイン・セーブにPK阻止にと、存在感たっぷりだったし、これであの2失点さえなければねぇ……って試合だった。そういや、ハリルホジッチ就任当時がこんな感じでしたっけね。
 いろいろと見どころの多い試合だったけれど、なにげに浅野のPKでの代表初ゴールがよかった。みずからPKを蹴るって決めたその積極性に好感が持てたし、蹴る前の表情からは緊張感がひしと伝わってきて、とてもういういしかった。スタンドで観戦しているお母さんが目をつぶってお祈りしていたのも微笑ましかったです。
(Jun 04, 2016)

日本1-2ボスニア・ヘルツェゴビナ

キリンカップ/2016年6月7日(火)/吹田スタジアム/テレビ朝日

 キリンカップ決勝の相手は、デンマークをPK戦で破って勝ちあがったハリルホジッチの母国、ボスニア・ヘルツェゴビナ。
 いや、始まったとたんに、おや、こいつら、強いぞと思ったんだ。FIFAランキング20位とかいうのはだてじゃない。
 なんつうか、とても守備がいい。どこがどういいか、うまくは説明できないんだけれど、やることに迷いがないというか。がしっとボールを奪ってマイボールにしたら、迷うことなく近くにいる仲間に確実につなぐ。──そういう(ある意味あたりまえの?)プレーが、まったくブレなくチーム全体で共有できているというか。ふだん僕が観ている日本代表やJリーグのサッカーとは確実に質が違う感じがした。なるほど、ヨーロッパのサッカーってこういうものかと感覚的に思った。
 かといって、日本に歯が立たないって相手でもなかった。少なくても攻撃的なタレントの個人技では日本のほうが上だと思ったし。ただ、さすがにフィジカルの差は雲泥。結局、その部分の差が最終的なスコアに反映されてしまったような気がする。
 日本のダイレクト・パスを多用した小刻みなパスワークは、ちゃんと通用していた。宇佐美の崩しから清武の決めた先制点の場面には、そんな日本のよさが凝縮されていた。
 ただ、日本の攻撃には一発ですべてを打開するような迫力がない。そうして正確で緻密なパスワークを90分間持続できるだけの集中力もない。
 対する相手にはがっしりと相手の攻撃を受け止めて、そこからパス1本でチャンスにつなげてしまうシンプルさがあった。細かい歯車の狂いは生じたら最後、そう簡単には修正できないけれど、シンプルなものにはそういう狂いは生じない。シンプル・イズ・ベストな相手の攻めに、日本の技巧がいま一歩及ばなかったという印象の試合。
 この日のスタメンは、GK西川、DF酒井高徳、吉田、森重、長友、MF長谷部、柏木、清武、FW浅野、宇佐美、岡崎という顔ぶれ。
 本田、香川は故障のため出場せず。本田が招集されたのに2試合つづけて出場しないで終わったのって、初めてじゃなかろうか。
 本田のかわりにスタメンに抜擢されたのは浅野。そして香川のかわりに清武がトップ下に入り、左サイドには宇佐美という布陣。これはこれで楽しそうだったし、実際にこのメンツで見事な先制点を生み出してみせたのだから、結果は上々というところだろう──少なくてもその直後に同点ゴールを食らうまでは。
 いや、あのタイミングであっという間に同点にされてしまうところが、いまの日本の実力なんだろう。なんともがっくりくる同点弾だった。あまりのあっけなさに、苦笑いせずにはいられなかった。
 後半に許した2点目だって、FKからわずかパス1本で決められている。2ゴールの両方を決めたのは、ちょんまげ頭のジュリッチという選手で──プレーの随所でなぜってくらいにほどけた髪を結い直していた──、なんでも彼はセリエAでは今季7ゴールしか決めていないらしい。そんな選手に1試合で2ゴールを許す日本代表の守備力って……。ってまぁ、迫力のある、いいFWだったけれど。
 前のブルガリア戦にしろ、今回はとにかく失点がイージーすぎた。攻撃よりも守備のほうがフィジカルがものをいうのだろうから、体格で劣る日本人に不利なのはわかる。でもそれを言い訳にしていたら、いつまでたっても日本は世界では勝てない。
 そもそも今回の大会での失点はどれもミスや集中力の欠如がきっかけだった。まずはそこをどうにかしないと。フィジカルで勝てないならば、その分を補うメンタルや技術が必要なわけで。そういう部分に活路を見いだしてゆかないと明るい未来は見えてこない。
 フィジカルにものをいわせる相手に、フィジカルに頼ることなく、いかにして“デュエル”で勝つか。──これが日本代表が解決すべきテーマなのではないかと思う。
 で、少なくても攻撃面ではそういうプレーができていると思う。実際、この日の前半に宇佐美がみせたプレーには、フィジカルのハンディをものともしない輝きがあった。後半はすっかり影が薄くなってしまったけれど、前半の彼のプレーにはほんと目を見張るものがあった。ほんとキレキレだった。
 清武もこの2試合で以前よりもいいプレーを見せてくれたし、もしも彼らに90分間コンスタントにゲームに絡みつづけられるスタミナがあったら、日本のサッカーはまた違ったものになってゆくのではないかと思う。
 そういう意味では、フル出場したあげくに後半ロスタイムに決定的チャンスを横パスでふいにして、試合後は悔し涙にくれていた浅野のスタミナはけっこうたいしたものかもしれない(まぁ、あのパスはないけど)。
 そういや金崎も2試合連続で出番をもらっていたけれど、今回は違いを見せることができず。おそらくシュートの1本も打ててないんじゃないだろうか。そういう意味では、持ち味の積極性が見せられず、アピール失敗の感あり。
 そのほかの途中出場は遠藤航、槙野(長友に代わって左SBに入った)、小林祐希と小林悠(一文字違いで紛らわしい)の計5人。
 そういや前の試合では昌子も出たんだった。書き忘れていた……というか、そもそも招集されていることを知らなかったので、出てきてびっくりしてしまった。ごめん、昌子。(ブルガリア戦の途中出場は、宇佐美、小林悠、浅野、原口、遠藤、昌子)
 柏木はポスト・ヤットの第一候補としてその地位を固めつつあるかと思いきや、この日はあまりいいところなく前半で交替。一方、柏木と交替で出てきた遠藤航(彼も2試合連続出場)はいまだ控えながらもA代表に定着したっぽい。あとは小林祐希が代表デビューを果たしたのがこの試合のトピックかなと。
 ということで、残念無念のキリンカップ準優勝だった。次の代表戦は9月で、いきなりW杯最終予選だそうだ。マジか。
(Jun 08, 2016)

浦和レッズ0-2鹿島アントラーズ

J1・1stステージ第15節/2016年6月11日(土)/埼玉スタジアム2002/スパカー!

 ファースト・ステージも残りあと3節――ということで、両チームともに優勝争いへの生き残りを賭けて、必勝を誓ってのぞんだレッズ戦。
 前節終了時点での順位は、首位・川崎フロンターレを勝ち点1の差で追ってアントラーズが2位。さらにそこから勝ち点3の差でレッズが3位。
 とはいえ、レッズの場合、ACLの都合で消化試合が2つも少ない。その2試合を勝ちとして計算すれば、勝ち点6が加わって実質首位……。
 とか思っていたんだけれども。聞けば戦っていない2試合というのが、同じくACLに参加していたガンバとFC東京だという。さらには広島戦が残っていて、でもって、この日の相手がアントラーズという……。それじゃまったく勝ち点計算できないじゃん(笑)。レッズには笑っちゃうくらいシビアな日程だった。
 ということで、アントラーズとしては、この試合に勝てば、レッズとは勝ち点6の差がつくので、あちらの未消化分を勝ちで計算したとしても、同点で並べる勘定となる。得失点差ではこちらが上なので、そうなればこっちが有利。で、あとは川崎の取りこぼしを期待するっきゃない。
 ちなみに、現時点で得点がいちばん多いクラブは川崎で、失点がいちばん少ないクラブはレッズ。で、アントラーズはどちらも2位。得失点差だと川崎と鹿島が同点1位で、浦和が3位。要するに得失点を見てもこの3クラブが三つどもえの争いを繰り広げているのは当然という今回のファースト・ステージだった。
 この日の鹿島は、GK曽ヶ端、DF西、植田、昌子、山本、MF柴崎、小笠原、遠藤、カイオ、FW土居、金崎というスタメン。現時点でのベスト・メンバーといっていいでしょう。大一番だけに、このメンツで戦えるってのは心強い。
 対するレッズは、GKが西川、DFが新加入の遠藤航に、槙野、森脇の3バック。柏木、阿部の新旧代表ボランチ・コンビの前には、実績じゅうぶんな宇賀神と梅崎。そして興梠、李忠成、武藤雄樹の3トップ(通称KLMというそうだ)。なにそれ、宇賀神以外、全員日本代表経験者じゃん。
 ということで、さすがにそんなレッズは手ごわかった。序盤はこちらのミスも多かったので、押し込まれてばかりの展開で、なかなか自由にボールを持たせてもらえない。
 それでも、そこはリーグ1位、2位を争う守備陣だけあって、レッズの攻撃をがっぷりと受け止めてみせる。そして、そうこうするうちに次第にカウンターからチャンスを作れるようにもなる。前半のうちに夢生がポストをたたくシュート2本も放っているし、ボールを持っている時間は相手のほうが長かったけれど、決定機という点ではこちらが確実に上回っていた印象だった。
 そして後半。さらに攻撃のギアをあげたアントラーズは、早めの時間帯に相手のミスからまんまと先制に成功する。
 宇賀神が不用意に出した横パスをフリーでもらったカイオが素早くドリブルで攻め上がると、右サイドを駆け上がってきた柴崎へとパスをつなぐ。柴崎はそのボールを一瞬ためてから、ダイレクトでゴール前に配給。ゴール真正面へと放り込まれたその鋭いボールを、西川よりも一歩先んじた夢生がスライディングでゴールへと押し込んだ。なんて見事なカウンター!
 その後の鹿島は遠藤→杉本、土居→鈴木優磨と、フレッシュな選手を入れて前線の運動量を維持しつつ、最後はカイオに替えて永木を投入、試合を締めにかかる。相手も両サイドに関根、駒井という突破力のある選手を入れ、高さのあるズラタンも投入して同点ゴールを狙ってくる。
 そのままナノ・ゼロで勝てるかどうか、かなり不安な終盤戦──。
 ここで値千金の働きをして見せたのが鈴木優磨だった。相手ペナルティ・エリア内で、マークについた駒井を胸トラップひとつでするりとかわすと、たまらず手をかけた駒井に倒されてPKを獲得~。
 まぁ、いかにもって倒れ方をしたので、レフェリーによってはファールにならなかった気もするけれど、結果オーライ(駒井はそれまで攻撃でとてもいい働きをしていたので、あそこでのファールはちょっと気の毒だった)。このPKを優磨自身が決めて、勝利を決定づけた。
 いやぁ、しかし、いくら自分がもらったPKだからって、20歳の選手が柴崎や夢生を押しのけてPK蹴るとは、驚いた強心臓だわ。そこは得点王レースの一角に名をつらねている夢生に譲るべきなんじゃ……とか思わないでもなかったけど、まぁよし。やる気まんまんでおもしろかった。
 ということで、難敵レッズを破ってアントラーズが2位キープ。この試合より前にフロンターレが勝っていたので(相手はマリノスだからせめてドローを期待したのに……)、勝ち点1の差は変わらなかった。なおかつ、この日の結果により、「暫定」だった川崎の首位から、その二文字がとれてしまった。川崎は残り2試合に連勝すれば自力優勝。対戦相手は福岡と大宮で、最下位の福岡には期待できなさそうだから、大宮にがんばってもらうしかない。
 アントラーズもこの日でファースト・ステージの3位以内が確定。まぁ、ファースト・ステージで3位になったところでなんの旨みもないけれど、鹿島は伝統的にセカンド・ステージのほうが強いので、この調子でゆけば今年はチャンピオンシップに出られる可能性大でしょう。大いに期待してます。
 いやぁ、それにしても最後の最後まで緊張感のある、とてもおもしろい試合だった。なんでもリーグ戦でアントラーズがレッズに勝ったのは、じつに6年ぶりらしい(マジ?)。2ステージ制にはいまだ反対だけれど、こんな時期にこんなにいい試合が観られたのが2ステージ制の恩恵だという事実は素直に認めておきます。ちくしょうめ。
(Jun 13, 2016)

鹿島アントラーズ2-0アビスパ福岡

J1・1stステージ第17節/2016年6月25日(土)/カシマサッカースタジアム/BS1

 祝・鹿島アントラーズ、ファースト・ステージ優勝~!
 いやしかし、ゴールデン・ウィークのあたりで勝てない試合がつづいたときには、よもやファースト・ステージが獲れるなんて思いもしなかった。上をいく川崎、浦和はなかなか負けそうになかったし(実際、川崎は1敗しかしていない)、試合数が少ないだけに追いつくのは難しいと思っていたのに……。
 まずはACLのせいで2試合少なかった浦和が、終盤戦の過密日程で勝手にこけてくれたのが大きい。いや、勝手にってことはないな。失速の原因を作ったのは、最後の5連戦のしょっぱなをたたいた鹿島なわけだから。それにしても、その試合からの3連敗は想定外だった。今年もレッズの勝負弱さは克服できていないらしい。
 その点、川崎はまったく崩れなかった。そんな川崎をかわせたのは、ひとえに鹿島が最後に6連勝という素晴らしい結果を残して、川崎の勝ち点を上回ったからだ。この逆転劇はあっぱれのひとこと。見事な快進撃だった。
 いやしかし、川崎にしてみれば、残り2連勝で優勝ってところで、前節最下位の福岡と引き分けてしまったのは計算外だったろう。こちらもまさかそんなことになるなんて思いもしなかった。とはいえ、その試合前に中村憲剛が腰痛のため欠場すると知って、そりゃもしかして……とは思ったんだよな。そしたら本当に取りこぼしちゃうんだから。いったい、どれだけ憲剛ありきのチームなんだ。いや、おかげで優勝できて、大変ありがたかったけれども。
 まぁ、なにはともあれ優勝を決めたこの試合では、鹿島も昌子、カイオが累積警告のため出場停止だった。ということで、スタメンは曽ヶ端、西、植田、ブエノ、山本、柴崎、小笠原、遠藤、杉本、土居、金崎の11人。
 センターバックが21歳の植田と20歳のブエノって。おいおい、大丈夫かと思ったけれど、そんなふたりを中心にしっかり完封勝利を収めちゃうんだからすごい。
 終盤戦で失速した浦和の失点がかさんだので、結局ファースト・ステージの失点10は、問答無用のリーグトップだ。得点は川崎、広島につづく3位ながら(広島すごいな)、得失点差では鹿島がトップ。12勝2敗3分で勝ち点39は堂々たる成績だ(いやしかし、勝てなかったのはわずか5試合なのに、そのうち4試合を観ているってのはどういうことなんだか……)。
 いや、それにしてもブエノは対人が強い強い。鹿島以外ならばふつうにレギュラー張れるんじゃないでしょうか。昌子、植田がともに若いだけに、この先レギュラーで活躍する機会はそんなになさそうだから、鹿島に置いておくのはもったいない気がする。まぁ、いてくれるのは、とても助かるんだが。それは永木もだけれど。なまじ才能がある選手が多いだけに、この先どういう使い方をしてゆくのか、難しそうな気がする。これぞ監督の腕の見せ所。石井さん、期待してます。
 井原正巳が監督をつとめるアビスパ福岡は、前節首位川崎を苦しめただけあって、なかなかタレントが揃っていた。キャプテンの城後に五輪代表の金森、中村北斗にウェリントン、ダニルソンという外国人。最下位ながら、そうそう侮れない。キックオフからしばらくは、こちらの出来も悪くて(最近こういう試合が多い)、相手ペースだったし、あの時間帯に1点でも取られていたら難しい試合になっていたかもしれない。
 でも先制したのはこちら。前半27分に柴崎のCKに山本が頭であわせた。キックからヘディングが決まるまでが一瞬って感じの、豪快かつ完璧なセットプレー。その10分後にはカウンターから金崎と土居のコンビネーションで追加点を奪って、これにて優勝はもらったも同然という状況になった。
 おもしろかったのは後半の石井の選手起用。
 この日は鳥栖への完全移籍が発表された青木(涙)と、6月末で契約解除となるジネイのラスト・ゲームだった。二人ともベンチ入りしているし、とうぜん出場の機会を与えたいのが人情ってもの。試合も勝ちはほぼつかんだ状態だし、どの辺でふたりに出番がまわってくるかが後半戦の見どころだった。
 ところが石井さん、いつまでたっても動こうとしない。ようやく一枚目の交替カードを切ったのは、後半30分過ぎ。それも杉本を下げて、永木の投入とくる。
 おぉ、そうか。守備力を高めて、このまま2-0で試合を終わらせようってわけだ。よし、それでいいから、はやく青木とジネイも投入してくれ──。
 と思って待てど暮らせど、青木もジネイも出てこない。ようやく二人がピッチに立ったのは、ともにロスタイムに入ってからだった。おっそーい。
 まぁねぇ。温情采配で試合を壊して優勝を逃したら話にならないから、慎重になるのはわかるけれどさ。でもそこまで信用できない選手たちじゃないし、そこまで警戒するほどの相手でもないじゃん。この試合で唯一惜しむらくは、このふたりの出番がほんのわずかだったこと──これに尽きる。
 あ、そういえば、ジネイはそのわずかな出場時間のあいだに、見事なヘディング決めてくれました。残念ながらオフサイドの判定で取り消されちゃったけれど。線審もあそこは空気読んで見逃して欲しかった。あぁ、残念。ほんとジネイは最後の最後までついてない人だった……。
 ということで、ジネイの劇的なラスト・ゴールが取り消されたがっかり感の漂うなかで青木がピッチに立ったと思ったら、そのあとすぐに試合終了の笛。こうしてアントラーズのファースト・ステージ優勝が決まったのでした。青木、長いあいだどうもありがとう。
 さて、そんな優勝の喜び&惜別のさみしさの余韻もそこそこに、次週からはもうセカンド・ステージがスタートするそうだ。第1節の対戦相手は、なんとまたガンバ大阪だって(BSスカパーで放送あり!)。
 なんなの、ファースト・ステージとセカンド・ステージが両方とも同じ相手から始まるってそのスケジュールは。
 でもまぁ、ガンバのような難敵は早いうちにたたいておいた方が、あとあと楽そうだから、こちらとしてはいい巡り合わせかもしれない。なんたって、こちとらもうチャンピオンシップ出場は決まっているわけだし。
 いやぁ、11月に入ったとたんに全日程が終了しないって決まったのがなにより嬉しいかもしれない。
(Jun 26, 2016)