日本7-2ブルガリア
キリンカップ/2016年6月3日(金)/豊田スタジアム/テレビ朝日
おそらくハリルホジッチの強化プランに答える形で5年ぶりに復活したキリンカップの第一試合。
今年のこの大会はこれまでとはレギュレーションが異なる。過去の開催では3ヵ国の総当たりだったけれど、今年は4ヵ国によるトーナメント戦。デンマーク-ボスニア・ヘルツェゴビナ戦の勝者とこの試合の勝者が決勝を戦い、敗者どうしが三位決定戦を戦うという趣向。ただし日本が初戦に負けて三位決定戦を戦うことになった場合でも、二試合目は日本の試合があとから行われるという話だった。まぁ、当然ですね。母国開催の代表戦を、わざわざ平日の昼間にやられても困るし。
とはいえ、そんなホーム・アドバンテージのために、優勝が決まったあとで三位争いを繰り広げるなんてことになるのは、どうにも締まらない。規模は小さいとはいえ、仮にも賞金のかかった公式戦だ。ここはきっちりと勝って、気持ちよく第二戦を戦ってほしいところだ。
初戦の対戦相手はブルガリア。なんとこの国に日本は過去に一度も勝ったことがないんだとかいう。調べてみたら、なるほど僕の記録にある限りでは2敗している。
とはいえ、当時の試合はどちらも負けて当然という内容ではなかったみたいだし、いくら相手がヨーロッパの中堅国とはいえ、現時点でのFIFAランキングは69位と日本よりも低い。いまの日本ならば互角以上で戦えちゃうんじゃないの?
――と思っていたら、互角どころの話じゃなかった。
前半だけで4-0。後半に集中力を欠いた守備から2点を奪われるも、それでも終わってみれば7-2という圧倒的な内容。わざわざ遠くから来てくれたお客さんをそこまでぼこぼこにしちゃ悪いんじゃないの? と思ってしまうような圧勝劇だった。
いくらアウェイとはいえ、もしも日本がこんな負け方をしたら大騒ぎだろう。ブルガリア国内もきっと大変な騒ぎだろうなぁ……って、ひとごとながらちょっと心配になってしまった。
この日の日本のスタメンはGKがひさしぶりに帰ってきた川島、DFが酒井宏樹、吉田麻也、森重、そして交際宣言でアモーレ・フィーバーをまき起こして、この日の影の主役となった長友、MFが長谷部、柏木のダブル・ボランチに、小林悠、香川、清武、そして岡崎のワントップという布陣。
本田が怪我のためベンチということで、小林悠が代表初スタメン。さらに香川と清武が同時にピッチに立ち、さらには柏木までいるという。名パサーがたくさんで、なかなか楽しそうな試合になりそうだなと思ったら、楽しそうを通り越して、予想外の大爆発をしてみせてくれてしまったこの日の日本代表だった。
開始わずか4分に柏木の右からのクロスに反応した岡崎がヘディングを決めた(オフサイドじゃないのが不思議だったけど)のを皮切りに、長友のクロスを香川が珍しく頭で決めて追加点。小林悠のグラウンダーのクロスを清武がスルーして香川が得意の反転からもう1点。さらにはセットプレーの流れから森重がヘッドで落としたボールを麻也が決めて、前半だけで4得点の大爆発。
後半は後半で清武のグラウンダーのクロスをなぜだかまたもや麻也が、今度は足で決めてこの日2得点。さらには前半終了間際に腰の打撲で引っ込んだ香川にかわって途中出場していた宇佐美が、酒井からのクロスがファーに流れたボールを、得意の形で逆サイドへと流し込んで6点目。
そのあと、ふわっとしたディフェンスでブルガリアに2失点を喫したのはいただけなかったけれど、それで終わらずに、さらに途中出場の浅野がみずから得たPKを決めて追加点を奪ってみせた──さらにはそのすぐあとに相手に与えられたPKを川島がみごと防いでみせた──ことで、試合終了時のスタジアムはみごとな祝祭空間と化していた(長友アモーレの影響も少なからずあった気がする)。
それにしても、いくら相手の出来が悪かろうと、ヨーロッパの国相手に日本が7点もとって勝つなんて、ちょっと出来すぎでしょう。長友、酒井の両サイドとも、攻撃では効果抜群だったし、中盤のダイレクトでのパス・ワークは冴えまくり。ひさしぶりに帰ってきた川島もファイン・セーブにPK阻止にと、存在感たっぷりだったし、これであの2失点さえなければねぇ……って試合だった。そういや、ハリルホジッチ就任当時がこんな感じでしたっけね。
いろいろと見どころの多い試合だったけれど、なにげに浅野のPKでの代表初ゴールがよかった。みずからPKを蹴るって決めたその積極性に好感が持てたし、蹴る前の表情からは緊張感がひしと伝わってきて、とてもういういしかった。スタンドで観戦しているお母さんが目をつぶってお祈りしていたのも微笑ましかったです。
(Jun 04, 2016)