サンフレッチェ広島1-4鹿島アントラーズ
J1・第34節/2021年11月3日(水)/エディオンスタジアム広島/DAZN
今年も残すところあと5節。3位4位の神戸、名古屋との直接対決はすでに終わっているので自力での3位入りは無理。アントラーズがACL出場権を得るには、その2チームが取りこぼすことを期待して、残りすべて勝つしかない。
でも9月以降の鹿島は連勝なし。勝っては負け、勝っては負けで、白星と黒星がオセロ状態で交互に並んでいる。その流れでゆけば、前節勝ったので今回は負けじゃん?――という嫌な予想をくつがえす大勝に終わった第34節の清水エスパルス戦。
まずこの試合で驚いたのが、鹿島のGKがクォン・スンテだったこと。沖もベンチ入りしていたから、彼の怪我が理由での交替ではないんだろう。今季限りで退団しそうな功労者のクォンに最後に花を持たせようってこと? 理由はよくわからない。でもまぁ、このまま一度もクォン・スンテを見ないで終ったら、それはそれでさびしかったから、相馬のこの起用には拍手を送りたい。
GKといえば、対する広島のGKも大迫ではなく林卓人だった。奇しくも五輪代表の座を争った若いGKがこの試合ではどちらもベンチを温めていたわけだ。五輪も終わったし、この終盤戦で大事なのは伸びしろよりも経験値ってことなのか。
まあ、なんにしろ、そういうわけでこの日のスタメンはクォン・スンテ、常本、関川、安西、三竿、ピトゥカ、ファン・アラーノ、アルトゥール・カイキ、土居、上田綺世の11人だった。
要するに意外性があったのはGKだけで、そのほかのメンバーは先週の天皇杯・準々決勝とおなじ顔ぶれだったわけだ。
だからなぜにあんな惨敗を喫した試合と同じメンバーでそのまま戦おうとするかなぁ――という僕の相馬に対する不満は、開始3分のカイキのゴールであっというまに見当はずれの愚痴に変わってしまう。
ロングボールを広島のDF荒木隼人と競り合った上田綺世がうまくボールを奪い、フリーのチャンスを作ってグラウンダーのクロスを入れる。これにカイキがなんとか追いつき、ぎりぎりのところで足を伸ばしてボールをゴールへ押し込んだ。毎回積極的にゴール前に攻めあがっているのが印象的だったカイキのがんばりがいきなり生きた形。
さらに28分には常本がゴラッソ。CKから相手DFに跳ね返されたボールが落ちてきたところを足裏でトラップすると、間髪入れずに右足を振り抜いて、ドライブのかかった超絶美麗なシュートをゴール右隅に突き刺してみせた。常本がこんな見事なシュートが打てる人だとは思わなかった。開幕のころは腐してごめん。最近のプレーは文句なしだ。
まぁ、この2点のリードで気が緩んだのか、その6分後に青山に最終ラインの裏をとられてフリーでクロスを打たれ、エゼキエウにゴールを決められたのは残念だったけど――クォン手にあてるも体勢を崩されて止めきれず――この試合での失点はそれのみ。
対するこちらは後半に入ってすぐにカイキとファン・アラーノのふたりが見事な連携から追加点を奪ってみせる。
センターライン付近でボールを奪ったカイキがそのままドリブルで攻めあがってシュートを打つも、やや強引なそのシュートは相手にあたってファン・アラーノへ。でもってそこからファンが芸術的なターンをみせて相手DFをかわして打ったクロスを、すかさずゴール前に走り込んでいたカイキがダイレクトボレーでゴールへ流し込んでみせた。
なんちゅう見事な得点。こんなプレーを見せられては、相馬がふたりをスタメン起用したのは大正解だったと認めざるを得ない。
ということで、常本とカイキのゴールはどちらもめったに見られないような素晴らしいゴールだった。でもこの日のクライマックスはそのあとに途中出場の和泉が倒されて、VAR判定により遅れて与えられたPK。ここで自ら願い出てキッカーと務めたのが荒木遼太郎だった。
荒木は十代での二桁得点まで残り1点としていた。決まれば城彰二以来27年ぶりだというその記録に大手をかけているんだから、記録達成のためにもスタメンで使ってあげてよってのが僕の相馬への不満のひとつだったから、ここでチームメイトがお膳立てしたPKのチャンスを荒木が自ら買って出たのは胸熱だった。
荒木はこのPKをきっちり決めて記録達成~。城の記録は12点だそうなので、願わくばあと4試合でそこに到達して欲しいところだけれど、でもこの調子だと残りの試合もそんなにプレータイムはそんなにもらえなさそうな……。
ちなみに和泉にPKを与えたのは広島のほうの荒木で、彼は先制点の場面でも綺世にボールを奪われていたし、鹿島の荒木とは対照的に、この試合では踏んだり蹴ったりだった。PKの直後には交替を命じられて――きっと監督からメンタル的に難しいと判断されたんだろう――あたりをはばからず泣いていた。試合後もまだ泣いていたし、相当悔しかったんだろう。その涙が無駄にならないといいねって。敵ながらちょっと応援したくなった。
そうそう、広島といえば、なんと監督が変わっていた。城福さんは残り5試合を残して退任。この試合からは沢田謙太郎という人が指揮を取っていた。清水もきょうロティーナの解任を発表したし、なぜにあと一ヵ月しかない状況で降格圏の上にいるクラブが監督を替えるかな。まったく理解できません。
まぁなんにしろ、ひさびさの連勝で鹿島の順位は5位になった。次節が勝ち点で並ぶ6位レッズとの直接対戦なので、それに勝てば、5位以内はほぼ確定。4位の名古屋との勝ち点の差はわずか2だから射程圏内。3位の神戸との差5はちょい厳しいけれど、4位に入って天皇杯で川崎が優勝してくれれば、ACLに出られる。
まぁ、なんにせよあとはすべて勝つのが大前提。調べてみたら、なんとこの日の広島から最終節に対戦する仙台までの5チームは、すべて今年鹿島が勝っていないクラブだった。単純に鹿島の勝率から計算すれば、前回勝てなかったんだから、今回は勝てる可能性のほうが高いはずなんだけれど。さてどうなりますか。
泣いても笑っても残りあと4試合。できれば最後は笑って終わりたい。
(Nov. 04, 2021)