キャッチ・ミー・イフ・ユーキャン
スティーヴン・スピルバーグ監督/レオナルド・ディカプリオ、トム・ハンクス/2002年/アメリカ
スピルバーグが監督をつとめた実話をもとにした映画。でもってトム・ハンクスが出ていて、空港を舞台にして……というこの映画の構成要素は、考えてみるとかなり 『ターミナル』 とかぶる。でも出来はこちらのほうがいいと思う。少なくても僕はこっちの方が断然好きだった。なのに 『ターミナル』 はリリース当時にDVDを買っていて、これはいままで観たことがなかったというのは、われながらちょっと間違っている気がする──なんて話は、まあどうでもいいとして。
で、おもしろかったと言いながらこういうのもなんだけれど、この映画、冷静に考えるとけっこうおかしいと思う。主人公のフランク・アバグネイルは十代ですでに何億ドルって金をだましとった天才詐欺師だ。それって、つまり年よりも老けて見えたってことなんじゃないの? とても十代には見えないくらい落ち着いていたからから、人々が信用して小切手を受けとったり、パイロットや医者としての偽装を見破れなかったりしたんじゃないかと思う。失礼ながら、Wikipedia にあるご本人の写真からすると、あまり美少年だったようには見えないし。
でもこの映画の設定はまるで逆。二十代後半のディカプリオが、じゅうぶん十代に見えるという点は詐欺師っぽいけれど、かといってこんな若々しくてハンサムな優男がそんな風にあらゆる人の信頼を勝ち取れるっていわれても、おいそれとは信じられない。要するにこれは、実話をもとにしたといいつつ、キャスティングからしてすでにリアリティを無視しているんだった。
ただ、そのおかげでこの映画はある種のおとぎ話のような雰囲気になっている。ディカプリオがやっていることは本来卑劣な犯罪のはずなのに、あまり悪いことをやっているような印象を受けない。最終的に主人公が更正することもあって、罪のない子供のいたずらを見たくらいの感じで、あと味の悪さがない。きっとなかには彼に騙されて人生に失敗した人だっているだろうに、こんな能天気な話でいいのか──という気がしなくもないけれど、でもこの気持ちのいい楽観性こそがスピルバーグの持ち味だという気がする。
(May 17, 2010)