マグノリア
ポール・トーマス・アンダーソン監督/ジェレミー・ブラックマン、トム・クルーズ/1999年/アメリカ/レンタルDVD
群像劇というのは普通、なんらかの共通事項ですべての人が結びついているものだと思う。同じホテルに泊っているとか、同じ船に乗りあわせているとか、離ればなれの家族どうしだったりとか。少なくても、僕が知っている映画ではそう。
ところがこの映画の場合、群像劇であるにもかかわらず、そうした「共通事項」が見えにくい。おそらく、エピソードのひとつである長寿クイズ番組──もしくはその関係者──に、全員がなんらかの形でかかわっているんだと思うけれど、そのテレビ番組が特別、物語の中心に据えられているわけではないので、構造的にそのことがわかりにくいのだった(そもそもタイトルだって意味不明だし)。
ま、わからなくても映画を観るうえではとくに困らないから、気にしなくてもいいぞ、と。作り手としてはそういうつもりなのかもしれない。実際、それでも十分おもしろかったから、それはそれでいいんだろう。なんたって、3時間を超える長さがまるで気にならなかったし。それだけでもよくできた映画だと思う。
それになんたって、この映画は出演者が豪華。トム・クルーズ、フィリップ・シーモア・ホフマン、ジュリアン・ムーア、ジョン・C・ライリー、ウィリアム・H・メイシーと、僕が知っているだけでも、これだけ芸達者で個性的な俳優たちが集結していて、なおかつ、それぞれが別々のエピソードに顔を出しているんだから、そりゃ見ごたえがあるのも当然(──といいつつ、ジュリアン・ムーアについては、この人、誰だったっけとか思ってしまったけれど)。
なかでも僕は、ジョン・C・ライリーの演技が好きだった。彼の相手役のメローラ・ウォルターズという女の人もいい感じだったし(うつ病気味のジャンキーの役だけれど)、このふたりのエピソードはとてもよかった。
とはいえ、こういう悲喜劇的エピソード満載の映画を観て、結局はそういうオプティミスティックな恋愛劇に惹かれてしまうあたりに、自分の甘っちょろさを感じないでもない。
(Nov 10, 2010)