2013年10月の映画

Index

  1. ONE PIECE THE MOVIE オマツリ男爵と秘密の島
  2. ONE PIECE FILM Z
  3. アベンジャーズ

ONE PIECE THE MOVIE オマツリ男爵と秘密の島

細田守・監督/2005年/日本/WOWOW録画

ワンピース THE MOVIE オマツリ男爵と秘密の島 [Blu-ray]

 『サマーウォーズ』の細田守監督が手がけていると知って観てみることにしました、『ONE PIECE』劇場版の第6弾。
 僕は『サマーウォーズ』を観たときに、そのキャラクターの作画の手抜き感にがっかりしたのだけれど、今回これを観て、それが勘違いだったのがわかった。べつにこの人は手を抜いてキャラを雑に描いているわけじゃないらしい。キャラクターを描く線が微妙によれていたり、着色が単調だったりするのは、あえてそういう作風を狙ってのことだってのが、これを観てわかった。
 とにかく、背景やその他の部分の表現に関しては、とても緻密で美しい。これだけの動画が作れる人が、もっとも重要なキャラクターの作画で手を抜くわけがない。つまりあれは確信犯なわけだ。
 たしかに緻密で手の込んだ背景の上で、あの手抜き気味な印象のキャラが動き回るところには、一種独特のおもしろみがある。少なくてもテレビ版をそのまま持ってきたようなその他の作品とは一線を画した個性がある。あぁ、これはこれでありだなと思った。そのアニメーションとしての質の高さにはとても感銘を受けた。
 ただ、それでいて残念なことに、シナリオは弱い。徹底的に弱い。いやんなっちゃうくらいに不出来だと思う。
 なんたって、最終的に麦わらの一味がクライマックスでは誰ひとり活躍していないんだから。そんな話がおもしろいわけないでしょう? 序盤こそそれなりにおもしろかったけれど、最後のほうはもうシラけまくり。なんでこういうことになってしまうんだか、不思議でしょうがなかった。
 これは僕が理屈っぽいせいかもしれないけれど、クライマックスでのカタルシスのなさは、物理的なディテールのいい加減さに負うところも大きいと思う。
 ネタバレ失礼で書かせてもらえば、たとえば最後にルフィが矢で射られるシーン。矢のもととなった巨大な植物(?)のボリュームからすれば、ルフィは木端微塵になって当然な気がするのに、実際には何十本か背中に刺さったくらいで終わってしまう。ルフィがその前にその巨大植物を倒す場面にしてもそう。両者のサイズの違いを考えれば、いくらなんでもあれはないでしょう。
 原作でも物理的法則を無視したシーンは少なくないけれど、それは基本ギャグシーンであってこそだ。いざいここぞのバトルがあそこまで極端なサイズの差で描かれたことはないと思う。……っていや待て、ギア3なんてめちゃくちゃだな。
 まぁ、なにはともあれ、物理的な法則を度外視しすぎたバトルは興ざめはなはだしいって話。それをギャグとしてやっている分にはともかく、シリアスなドラマとして演出しちゃうところに、僕は違和感を覚えずにいられない。
 なまじアニメーションとしての技術的な出来映えがいいだけに、それに相反するシナリオのいい加減さ、幼稚さが気になってしかたない。とてももったいない作品だと思う。
(Oct 13, 2013)

ONE PIECE FILM Z

長峯達也・監督/2012年/日本/WOWOW録画

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 3年前の『STRONG WORLD』につづき、ふたたび尾田栄一郎が総合プロデューサーとして名前を連ねているので観た『ONE PIECE』劇場版最新作。
 前作は劇場にまで足を運んだけれど、残念ながら物語としてはいまいちだった。尾田栄一郎が製作にかかわっても、作り手がべつの人ならこんなものなのかと思ったので、今回はテレビ放送を待った。
 でも内容的には、今回のほうが(まだ)おもしろかったと思う。作画は劇場版というだけあってきれいだし、敵役のゼットもいい味だしている。原作のファンとしては、海軍脱退後の青キジが大きくフィーチャーされている点も見逃せない。
 それでもやはり、この映画は『ONE PIECE』本編のおもしろさには、遠く及ばないと思う。残念なのは、ゼットの復讐というシリアスなテーマをメインにしているため、全体的に笑いが少ない点。そしてゼットが世界を滅亡させようとする、その動機づけが弱い点。
 とくにゼットの復讐のエピソードは無理やりな感がある。どんだけ海賊を恨んでいようと、どんだけ海軍に絶望していようと、だからといって、一般人まで巻き込んで私怨を晴らそうなんて非道な男に、あそこまで人望が集まるはずがない。脚本家もなにもわざわざ世界を破滅させなくたってよさそうなものだ。
 思うに、ワンピース本編で尾田くんがやっているような、回想シーンを絡めた起承転結のあるドラマチックなエピソードを二時間の映画のなかでやろうと思うことに、どだい無理があるんじゃないだろうか。劇場版だから、原作に負けないすごいドラマを見せないといけないという気負いが、シナリオとしての質の低さにつながっている気がする。
 ディテールの破たんした感動のドラマなんていらないから、どうせなら本編のフォクシー海賊団との対決のような、馬鹿らしくも軽妙で笑えるだけのエピソードを劇場版でも観たいと思うのは、僕だけでしょうか?
(Oct 20, 2013)

アベンジャーズ

ジョス・ウィードン監督/ロバート・ダウニー・ジュニア、スカーレット・ヨハンソン/2012年/アメリカ/WOWOW録画

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 アイアンマン、マイティ・ソー、キャプテン・アメリカ、ハルクら、マーヴェルのヒーローたちが一堂に会したアクション超大作。
 ……といいつつ、僕自身は『アイアンマン』以外は観ていない。本当はそのほかも観てからこれを観たかったのだけれど、マーヴェルのキャラはどれもルックス的に興味を引かれず──って、いや、スパイダーマンにしろ、スーパーマンにしろ、マーヴェルにかぎらず、アメコミ・ヒーローというもの自体に惹かれない気もする。アイアンマンだって、ロバート・ダウニー・ジュニアの演技がいいのであって、キャラクター・デザイン自体にはあまり惹かれるものがない──、全部観るだけの時間の余裕もないので、アイアンマンの続編のひとつと考えて、さっさと観てしまうことにした。
 まぁ、おかげでわからないところもあったけれど、話を理解するうえでは特に困ることなし。そもそもストーリー自体はたいしたものじゃない。
 これ、内容的には、ひとつ前に観たワンピースのアニメと近い気がした。世界が滅びるって大事件をチームで解決するという構造が一緒だし、雷を操るやつがいたり、射手がいたり、ロボがいたり、変身して巨大化するキャラがいたりするってところも、まんまワンピースとかぶる。まぁ、考えてみれば、実写とアニメの違いこそあれ、どちらも少年向けマンガを映画化したものなのだから、似てても当然かもしれない。
 ただし、その映像のレベルは段違い(そりゃ予算がちがうから当然)。加えて、演出の面でも、こちらのほうが断然大人だ。
 少なくてもこの映画を作っている人たちには、自分たちの映画が大風呂敷を広げた馬鹿話だという認識があるのだと思う。だから、クライマックスに至るまで終始ユーモアを絶やさない。その点が不相応にシリアスになりすぎて、結果子供だましな印象を残してしまうワンピース劇場版とはあきらかに違う。このユーモアのセンスがとても大事。
 アイアンマン以外のキャラでおもしろかったのは、キャプテン・アメリカという人が、たいしたことないところ。この人、身体能力が人より高いくらいで、なにが取り柄なのか、よくわからない。空も飛べなければ、手も伸びない。ビームも出ない。ただ単に楯を振りまわしているだけって印象(守備力は高いかも)。下手したら、スカーレット・ヨハンソンよりも役に立ってないんじゃないだろうか(というか、ヨハンソン格好よすぎ)。そのあまり役になってない感じが逆におもしろかった。『キャプテン・アメリカ』、観てみたくなりました。
 反対に気に入らなかったのは、暴走キャラのはずのハルクが、最後には地球のために普通に戦っているところ。ハルクのキャラ設定(アメコミ版ジギルとハイド?)はいいのだから、あそこは最後まで無責任に暴走させておいてほしかった。最後にアイアンマン助けちゃうところなんて、蛇足もいいところだ。
 マイティ・ソーもシナリオ上、重要な役割を占めているわりには、あまりカッコよくなくて、単品で観たいとは思わなかったし、アイアンマンも不自然にパワーアップしすぎの感がある(でもロバート・ダウニー・ジュニアはあいかわらずおもしろい)。結局、ヒーローが大集合したわりには、株を上げたのは、紅一点のスカーレット・ヨハンソンだけって印象だった。でもまぁ、適度におもしろかったです。
(Oct 29, 2013)