ONE PIECE THE MOVIE オマツリ男爵と秘密の島
細田守・監督/2005年/日本/WOWOW録画
『サマーウォーズ』の細田守監督が手がけていると知って観てみることにしました、『ONE PIECE』劇場版の第6弾。
僕は『サマーウォーズ』を観たときに、そのキャラクターの作画の手抜き感にがっかりしたのだけれど、今回これを観て、それが勘違いだったのがわかった。べつにこの人は手を抜いてキャラを雑に描いているわけじゃないらしい。キャラクターを描く線が微妙によれていたり、着色が単調だったりするのは、あえてそういう作風を狙ってのことだってのが、これを観てわかった。
とにかく、背景やその他の部分の表現に関しては、とても緻密で美しい。これだけの動画が作れる人が、もっとも重要なキャラクターの作画で手を抜くわけがない。つまりあれは確信犯なわけだ。
たしかに緻密で手の込んだ背景の上で、あの手抜き気味な印象のキャラが動き回るところには、一種独特のおもしろみがある。少なくてもテレビ版をそのまま持ってきたようなその他の作品とは一線を画した個性がある。あぁ、これはこれでありだなと思った。そのアニメーションとしての質の高さにはとても感銘を受けた。
ただ、それでいて残念なことに、シナリオは弱い。徹底的に弱い。いやんなっちゃうくらいに不出来だと思う。
なんたって、最終的に麦わらの一味がクライマックスでは誰ひとり活躍していないんだから。そんな話がおもしろいわけないでしょう? 序盤こそそれなりにおもしろかったけれど、最後のほうはもうシラけまくり。なんでこういうことになってしまうんだか、不思議でしょうがなかった。
これは僕が理屈っぽいせいかもしれないけれど、クライマックスでのカタルシスのなさは、物理的なディテールのいい加減さに負うところも大きいと思う。
ネタバレ失礼で書かせてもらえば、たとえば最後にルフィが矢で射られるシーン。矢のもととなった巨大な植物(?)のボリュームからすれば、ルフィは木端微塵になって当然な気がするのに、実際には何十本か背中に刺さったくらいで終わってしまう。ルフィがその前にその巨大植物を倒す場面にしてもそう。両者のサイズの違いを考えれば、いくらなんでもあれはないでしょう。
原作でも物理的法則を無視したシーンは少なくないけれど、それは基本ギャグシーンであってこそだ。いざいここぞのバトルがあそこまで極端なサイズの差で描かれたことはないと思う。……っていや待て、ギア3なんてめちゃくちゃだな。
まぁ、なにはともあれ、物理的な法則を度外視しすぎたバトルは興ざめはなはだしいって話。それをギャグとしてやっている分にはともかく、シリアスなドラマとして演出しちゃうところに、僕は違和感を覚えずにいられない。
なまじアニメーションとしての技術的な出来映えがいいだけに、それに相反するシナリオのいい加減さ、幼稚さが気になってしかたない。とてももったいない作品だと思う。
(Oct 13, 2013)