2014年1月の映画

Index

  1. 素晴らしき哉、人生!
  2. ダイ・ハード/ラスト・デイ

素晴らしき哉、人生!

フランク・キャプラ監督/ジェームズ・スチュアート、ドナ・リード/1946年/アメリカ/スカパー!録画

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 フランク・キャプラの映画っておもしろい! と最初に思ったのは、おそらく十年くらい前のことなのに、なぜだかいままで一度も観る機会がないままできてしまった、キャプラの最高傑作との呼び声だかい『素晴らしき哉、人生!』──iMDBでは本日現在26位──を去年のクリスマス・シーズンにようやく観た。
 この映画、なにやらファンタジー系の作品だという話は知っていたけれど、なるほど、いきなり冒頭から神様と天使の会話で始まる。
 ──とはいっても、実際に神様と天使が出てくるわけではなく、映像上は星空で星どうしが会話をしている、みたいな演出。それがまた、現代人の感覚からすると、学芸会レベルって印象で──まぁ、第二次大戦終戦の翌年の公開って時代性を考えれば、それも当然かもしれないんだけれど──最初からちょっと出鼻をくじかれる。
 その後、映画は主人公ジョージ・ベイリーの幼少期から、彼の半生をひも解いてゆく。この前半のあたりも、僕としてはそれほどおもしろいと思えなくて、本当にこの作品のどこがそれほどの傑作なんだろう? って感じで観ていたのだけれど……。
 いやぁ、きました。主人公が苦境に追い込まれ、冒頭の天使のエピソードと本編との絡みがはっきりしたところから、物語は俄然{がぜん}おもしろくなる。前半に捲いた種を次々と刈り取ってゆく終盤のパラレル・ワールド的な展開には、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の原型ともいうべき味わいがあると思った。そして物語は感動のクライマックスへ──。
 いやぁ、恥ずかしながら、泣かされてしまった。話としては、あまりに単純でベタすぎる気もするけれど、僕はこの映画の楽天的なヒューマニズムを否定できるほど、シニカルじゃない。
 フランク・キャプラの最高傑作にして、『三十四丁目の奇蹟』とともに、アメリカのクリスマス・シーズンの定番だという話も大いに納得の逸品。
(Jan 12, 2014)

ダイ・ハード/ラスト・デイ

ジョン・ムーア監督/ブルース・ウィリス、ジェイ・コートニー/2013年/アメリカ/WOWOW録画

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 この『ダイ・ハード』のシリーズ第五弾、前評判がよくないなぁと思っていたら、なるほどって出来だった。
 悪辣なテロリスト相手にはみ出し刑事が挑むというこのシリーズのパターンは、あくまで主人公がテロと戦う立場にある人だから許されるのだと思う。
 ところがこの映画のジョン・マクレーンはそうではない。ロシアで裁判にかけられている息子に会うべくその国を訪れた彼は、息子ジャックが深くかかわったテロ事件に巻き込まれて、交通パニックを引き起こすほどの大暴れをしてみせる。
 でも、ちょっと待て。あなた、その国では異邦人ですよね? なんの権限があって、そんなことを? それって大変な国際問題なんじゃないでしょうか?
 ──てな具合に、マクレーンの行動にてんで納得がゆかないものだから、観ていて、すかっとした気分になれない。 アクション映画でこれは致命的。
 『24』の最終シーズンもそうだったけれど(やはりこの両シリーズは似ている)、現代劇においてヒーローがなんの権限もないくせして、犯罪者まがいのアクションを繰り広げる話って、説得力がなくておもしろくないと思う。
 この作品の場合、既存シリーズのフォーマットにのっとろうとして、無理してしまった感も強い。マクレーンが休暇中に事件に巻き込まれたり、知的な政治犯だと思っていたテロリストが実は金目当ての俗物だったり、爆破から逃れるためビルから飛び降りたり、というシリーズで繰り返し描かれるお約束の設定が、まったくうまく機能していない。
 たとえば、マクレーンが「とんだホリデイだぜ」と愚痴るシーンはシリーズを通じての定番だと思うのだけれど、今回の彼は息子の窮地を救わんと異国を訪れているわけだから、もともとそんなホリデイ気分とは縁遠いはずだ。この映画にはまるでふさわしくない。
 ビルから飛び降りるシーンだって、今回はあまりに描写がおざなり。地上5階とかにいるのに、窓の外を確認することもなく、打ち合わせもせずに、いきなり飛び降りる親子っていったいなんですか? ワンピースじゃないんだからさ。ふつう死ぬぞ。
 そもそも、テロリストが裁判所を爆破して被告を連れ出そうとするってオープニングからしてもうめちゃくちゃ説得力なし。なんでそんな派手なことしなきゃいけないのか、僕にはさっぱりわからない。
 仲たがいしていたマクレーン親子が難事件を解決するために協力しあって和解するという泣かせどころの展開もまるで感動を呼ばないし、この映画はほんと、いいところを見つけるのが難しい。『ダイ・ハード』の屋号を引き継ぐには、力不足の感あまりある最新作だった。
(Jan 24, 2014)