2014年2月の映画

Index

  1. レ・ミゼラブル
  2. フランケンウィニー
  3. アメイジング・スパイダーマン

レ・ミゼラブル

トム・フーパー監督/ヒュー・ジャックマン、ラッセル・クロウ、アン・ハサウェイ/2012年/イギリス/WOWOW録画

レ・ミゼラブル 〈ブルーレイ・コレクターズBOX(5枚組) [Blu-ray]

 超豪華なキャスティングに、実写にCGを巧みに加えた重厚な映像、原作のおもしろさは世界中の折り紙つきとなれば、これはもうどう転んだって失敗作になりようがないって作品だと思うのだけれど。
 で、実際最後には、ほろりとさせられたりしておいて、こんなこと言うのも気が引けるのですが。
 なぜかいまいち絶賛する気になれないのは、おそらくこの映画があまりにまっとうすぎるがゆえ。
 これだけ金をかけて、30年以上の長きに渡ってロングランをつづけているミュージカルを映画化すれば、そりゃおもしろくなって当然。では、どのくらいの出来栄え? という部分でこの映画にはほとんど驚きがない。
 まぁ、ヒュー・ジャックマン、ラッセル・クロウ、アン・ハサウェイらの思わぬ熱唱にはけっこう感心したけれど、それにしたって、やはり俳優でこれだけ歌えりゃすごいやって話であって。その歌声に感動して、彼らの歌手デビューを望むかとかってレベルの話ではないし。
 正直、僕にはこの内容で2時間40分というのは、やや長すぎた。オリジナルの舞台がほぼ同じ長さのようなので、脚本とスコアに忠実につくるとこの長さになるのは避けられないのかもしれないけれど、どうせならば映画ならではのテンポのいい演出で、もうちょっとコンパクトにまとめてくれていたら、よかったのにと思わずにいられなかった。
 そもそも、この映画を観て僕は、いったいこの内容をどうやって舞台で再現しているのだろうと、そっちの方が気になってしまった。舞台を観てみたいと思わせてしまった時点で、映画の負けなんじゃないかという気がする。決して出来の悪い映画ではないと思うけれど、いまいち楽しみ切れなかった。
 それにしても、最近ヘレナ・ボナム・カーターって、どの映画でもキャラ作りが同じなのがすごい。魔女とか悪女とか演じさせるとなったら、もう彼女以外にはあり得ないって感じ。どの映画も彼女が出てきた途端、ティム・バートン作品みたいになっちゃう。その徹底ぶりがとてもおもしろい。
(Feb 03, 2014)

フランケンウィニー

ティム・バートン監督/2012年/アメリカ/WOWOW録画

Frankenweenie [DVD] [Import]

 ティム・バートンが長編監督デビュー前に撮った実写のショート・フィルムを、お得意のストップ・モーション・アニメーションでもってリメイクした作品。
 ティム・バートンが手掛ける同種のアニメとしては、『ナイトメア・ビフォー・クリスマス』、『ジャイアント・ピーチ』、『コープス・ブライド』につづく四作目とのことだけれど、CG技術の進歩も手伝って、動きの滑らかさはすでに全編CGとしか思えないレベル。どこまでが実写でどこからCGか、僕にはまったくわからない。
 というか、この映画の場合、モノクロにしてしまったことで、なおさら実写とCGの区別がつきにくくなっている気がする。本当にストップ・モーションで撮ったのだとしたら、よっぽどの手間だったろうに、その手間のすごさが十分に伝わってこないのは、ややもったいない。
 内容的なところでは、物語の中心となるブルテリア、スパーキーはとてもかわいいし、グロテスクな容姿の子供たちもティム・バートンならではで(ほんと美形キャラ不在)、ほかにはない見事な個性だと思うのだけれど、ただシナリオはいまいち過ぎる。とくに終盤、モンスター・パニック映画化してしまうところがいただけない。過去のモンスター映画へのオマージュなのかもしれないけれど、僕には物語がうすっぺらに思えてしかたない。ペットのハムスターが復活する部分のギャグなんて空回りもいいところでしょう。
 ティム・バートンの最近の作品は、その唯一無二のセンスに反する月並な脚本のせいで失敗ばかりしている気がする。あぁ、もったいない。
(Feb 16, 2014)

アメイジング・スパイダーマン

マーク・ウェブ監督/アンドリュー・ガーフィールド、エマ・ストーン/2012年/アメリカ/WOWOW録画

アメイジング・スパイダーマン [DVD]

 『(500)日のサマー』のマーク・ウェブ監督、売出し中の若手俳優アンドリュー・ガーフィールド主演によるスパイダーマンの新シリーズ。
 サム・ライミ監督による前の三部作がとてもおもしろかっただけに、この新シリーズはどうなんだろうと思っていたのだけれど、こちらもとてもいい感じに仕上がっている。
 前作とのいちばんの違いは、主人公ピーター・パーカーのカッコよさだと思う。
 前三部作でトビー・マグアイアが演じたピーターはとても冴えない高校生で、そんな彼が超人的身体能力を身につけて、ヒーローになるというミスマッチが物語としてのおもしろさのひとつだった。
 ところが今回のアンドリュー・ガーフィールドは違う。優等生で、運動こそできないって設定なのかもしれないけれど、少なくても最初からとてもモテそうな好青年だ。スタイルはいいし、マスクも甘い。弱いものいじめを見逃せない勇気と正義感も持っている。これでモテないほうがどうかしている(まぁ、あのルックスでモテない役が様になっていたトビー・マグアイアもある意味すごいけど)。
 そんな彼が前作同様、遺伝子操作により突然変異した蜘蛛に刺されて特殊能力を身につけてヒーローになる。でも、今回のピーター・パーカーはいともたやすく恋を成就させてしまうし──お相手はエマ・ストーン――、思わぬ気楽さで自らの正体を明かしてしまう。そのあっけらかんとしたところが、意表をついていておもしろかった。
 なんにしろ、今回のスパイダーマンは前作よりも格段にヒーロー然としている。『アイアンマン』なんかと違って、主役が高校生だけに、青春映画としての色も強い。カッコいい男の子が恋して悩んで戦ってという、あまりネガティブなところのない青春ヒーロー映画。少年マンガ的にすっきり明快かつ痛快で、僕はこれ、もしかしたら旧シリーズよりも好きかもしれない。
 唯一惜しむらくは、今回は敵役がいまいち魅力不足だったこと(トカゲの再生能力を身につけたからといって、人の手が生えたり引っ込んだりするという設定はあまりに説得力がない)。そういう意味では、よりパワーアップした敵と戦うことになるだろう続編が楽しみだ。
(Feb 16, 2014)