2014年6月の映画

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  1. バグダッド・カフェ

バグダッド・カフェ

パーシー・アドロン監督/マリアンネ・ゼーゲブレヒト、CCH・パウンダー/1987年/西ドイツ/WOWOW録画

バグダッド・カフェ ニュー・ディレクターズ・カット版 Blu-ray

 1987年の映画だから、公開されたのは僕が大学生のときだ。
 当時から「おもしろそうだな」と思いつつ、観る機会が作れないまま四半世紀が経過。いまさらながら、ようやく観ました『バグダッド・カフェ』。
 いやしかし、これはマーケッティングの勝ちって気がする。映画の本題にはほとんど関係のない給水塔をポスターでフィーチャーして、『バグダッド・カフェ』というタイトルをつけた人のセンスの勝ち。
 もしもこれが、ポスターがキャスティングを配したりした、もっと映画の内容を具体的にあらわしたもので、タイトルが原題の『アウト・オブ・ローゼンハイム』のままだったら、僕なんかはたぶん、観たいとさえ思わなかっただろう。なんたってもともと英語圏以外の映画は苦手だし。
 とにかく、いざ観てみたら、あのカッコいいポスターから連想するようなクールなところがほとんどない映画なのにびっくりだった(まぁ、主題歌『コーリング・ユー』の使い方はスタイリッシュだったけれど)。
 物語は旅先のアメリカで亭主と喧嘩別れして、ハイウェイにひとり取り残された太っちょのドイツ人の奥さんが、行きずりに身を寄せたモーテルの人々と心温まる交流を繰り広げる、というもの。ただし、序盤は全体的な印象が暗め。ぎすぎすした人間関係ばかりが前に出ていて、なかなか盛り上がらない。
 それがいったん彼女が人々に受け入れられるようになり始めてからは、一転してハッピーで楽天的な雰囲気であふれかえってしまう。序盤の暗さはどこへやら。なんでそうなるのって感じ。そこがすごく意表をついていておもしろかった。
 この辺のギャップ――暗めの生真面目さが妙な楽観性と同居している感じ――ってヴィム・ベンダーズにも通じるところがあると思う。ドイツ人に特有のセンスなんでしょうかね。よくわからない。
 なんにしろ、最初はなんだかなぁ……と思っていた太っちょの中年女性の主人公が、おしまいのころにはとてもチャーミングに見える。そこがこの映画の出来栄えのよさの何よりの証拠だと思う。
(Jun 10, 2014)