2015年2月の映画

Index

  1. ビフォア・ミッドナイト
  2. ウディ・アレンの夢と犯罪

ビフォア・ミッドナイト

リチャード・リンクレーター監督/イーサン・ホーク、ジュリー・デルピー/2013年/アメリカ/WOWOW録画

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 『ビフォア・サンセット』で再会を果たしたジェシーとセリーヌのその後を描くシリーズ第三弾。
 『ビフォア・サンライズ』での出逢いから18年。あのカップルにもういちど会えると言われれば、これはもう期待せずにいられまいってもので。最近の続編ブームのなかではもっとも地味ながら、もっとも楽しみにしていた作品だった。
 ただ、徹底してふたりの会話だけを描くことで極上の恋愛映画たりえていた前二作と比べると、今回はいささか分が悪い。ともに暮らすようになり、いまや子供もいるふたりの間には、幾多の問題が横たわっている。
 そんなふたりの現状を象徴するように、この映画は前半のうちは二人きりのシーンを描かない。そこのところが、ほとんどがふたりの会話だけで成り立っていた旧二作とは基本的に違っている。結婚して家庭をもったからには、そうそう二人きりになんかなれないぞって。そんな夫婦生活のリアリティをこの映画はつきつける。
 そしてようやく二人きりの時間ができたと思ったら、そこでの会話の饒舌さは昔のままながら、そのほとんどが夫婦喧嘩に終わってしまうという……。この第三弾のテーマはずばり、夫婦喧嘩なんじゃないかって内容になっている。
 まぁただ、そこはあの二人のこと。こうやって喧嘩をしながらも、この先も一緒に年を重ねてゆくんだろうなって―─それも主にジェシーの気配りによってだけれど(その点、セリーヌにはとても分が悪い)──、最終的にはそう思わせてくれる。そこんところが救い。喧嘩するほど仲がいいっていうけれど、まさにそんな感じの最新作だった。
 どうせならば、これで最後なんていわず、ふたりの老後を描いた第四作も観てみたい。老夫婦がパワフルな会話を繰り広げるなんてのも楽しかろう。15年後に期待してます。──って、あ、そのころには俺が生きてないかも。
(Feb 08, 2015)

ウディ・アレンの夢と犯罪

ウディ・アレン監督/ユアン・マクレガー、コリン・ファレル/2007年/アメリカ、イギリス、フランス/WOWOW録画

ウディ・アレンの夢と犯罪 [DVD]

 ひさしぶりにウディ・アレンの映画が観たくなって、HDDレコーダーに録画されているうち、いちばん古いやつってことで選んだのがこれ。ユアン・マクレガーとコリン・ファレルが兄弟役で主演するサスペンス・スリラー。
 本当はコメディがいいんだけれどな、と思いながら観はじめたのだけれど、これが思いのほか笑えた。物語自体はとくべつ笑える内容ではないんだけれど、主人公兄弟が欲得がらみで汲々としながら仕方なく犯罪に手を染めてしまう、その小市民的な救われなさがどうしようもなく笑いを誘うのだった。
 そう、ウディ・アレン作としてはこのふたつ前の作品『マッチポイント』、あれと同系列の笑いがある。ただし、結末はまるで正反対。あちらは、おいおい、それでいいのかいって感じだったけれど、こちらはあぁ、結局そうなっちゃうのかって無情感の漂う、ある意味すごく納得のゆく終わり方をしている。ウディ・アレンってこういうのを描かせても天下一品だ。素晴らしい。
 キャストでは、ギャンブル中毒ながら善良で憎めない弟役を演じるコリン・ファレルがとてもいい。この人の映画って『フォーン・ブース』しか観たことがないと思うんだけれど、業界人を演じたあの映画とは対照的な駄目男っぷりがいい味を出していて、とても感心しました(まぁ、あの映画の役も情けなかった気がするけれど)。この映画の成功は彼の演技に負うところが大きいと思う。
 競演する女優さんはあまり有名でない人ばかりだけれど、みな作品の雰囲気によくあっている。あと、ふたりの伯父役でトム・ウィルキンソンが出ているのもポイント。この人の駄目っぷりもコリン・ファレルに負けず劣らず印象が強いので、あいだに立つユアン・マクレガーが割を食っている感がなきにしもあらず。
(Feb 15, 2015)