2015年3月の映画

Index

  1. グランド・ブダペスト・ホテル
  2. ザ・ロイヤル・テネンバウムズ
  3. バックドラフト

グランド・ブダペスト・ホテル

ウェス・アンダーソン監督/レイフ・ファインズ、トニー・レヴォロリ/アメリカ、ドイツ、イギリス/2014年/WOWOW録画

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 今年のアカデミー賞で美術賞ほか4部門受賞のコメディってんで、うちの奥さんのアンテナに引っかかった作品。
 僕にとっても、ずいぶん以前から気になっていたにもかかわらず、いまだ一本も観たことがなかったウェス・アンダーソンの監督作品だということで、ではいい機会だから観てみようということになった。
 で、観てみればこれが期待通りのおもしろさ。彩り豊かな絵作りに、テンポのいい演出、とぼけたブラック・ユーモアのセンスがとても魅力的。感覚的には、タランティーノの毒を薄めたというか、コーエン兄弟をもっと可愛くしたというか。もしくは『アメリ』的世界観からフェミニンな感覚を取り除いたとでもいったような印象を受けた。
 とにかくウェス・アンダーソンという人が独自の世界観を持っているというのは、これ一本観ただけでよくわかる。それもきちんとした映像的美学とユーモアがあって、温かな感触のもの。そこがとてもよかった。
 そんな監督の作風に惹かれて人が集まったのか、この映画のキャスティングは豪華きわまりない。主演のレイフ・ファインズをはじめ、ジュード・ロウ、エドワード・ノートン、エイドリアン・ブロディ、ウィレム・デフォー、ジェフ・ゴールドブラム、ビル・マーレイら、それぞれ主演俳優級の大物が大挙して出演している。そのほとんどが脇役ってところがすごい。
 あとで確認したところ、さらにハーヴェイ・カイテルやトム・ウィルキンソン、ティルダ・スウィントンらの名前を発見してびっくり。ティルダ・スウィントンにいたっては、死亡した老貴婦人役だと知ってなおさらびっくり。なんとなくどこかで見たような顔だなとは思ったんだけれど、まさか彼女でしたか……。
 わが家的におもしろかったのは、ここに出てくるそんな豪華俳優陣のほとんどを、うちの奥さんが識別できないこと。とくにジュード・ロウとエドワード・ノートンは彼女の「顔が見分けられない俳優リスト」の1位、2位を争う人たちなので、そのふたりが一緒に出ているというのを知った時点で、観る前から大笑いだった(で、実際に観てみても、その人たちってわからないから、なおおかしい)。
 僕が映画の中でいちばん笑ったのは、ナチに殺人の容疑をかけられたレイフ・ファインズがいきなり逃げ出すところ。いやぁ、おかしかったです。
(Mar 15, 2015)

ザ・ロイヤル・テネンバウムズ

ウェス・アンダーソン監督/ジーン・ハックマン、アンジェリカ・ヒューストン、ベン・スティラー/2001年/アメリカ/WOWOW録画

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 ということで、もう一本、ウェス・アンダーソンの作品を。
 こちらは、もう何年も前から僕が直感的に「この映画はおもしろいんじゃないだろうか」と思って気にとめていた作品。
 たぶん最初はグウィネス・パルトローが出演しているってんで注目したのだと思うけれど、いまとなると彼女が出演しているからといって、とくに観たいとは思わなくなっているので、最初に興味をもったのは相当前のことだろう。それこそ十年来とかになるんではないでしょうか。
 で、そんなに長いこと気にしていた作品が、いざ観てみれば、これまた期待を裏切らずおもしろい。いやぁ、ウェス・アンダーソン、いいじゃないですか。いままで知らないでいたなんて、もったいないことをしてしまった。
 物語はジーン・ハックマン演じる変わり者の父親のせいで家庭崩壊した天才一家が、その父の老年の心がわりをきっかけに家族の絆を取り戻してゆくという話。出てくるキャラがそれぞれくせもの揃いの群像劇で、ちょっとジョン・アーヴィングを思い出させる。
 そういや、『グランド・ブダペスト・ホテル』もそんな感じだったし、モノローグを多用した年代記的な語り口や、マイルドなブラック・ユーモアの感覚、家族や人の絆を描く姿勢、ホテルなどの箱モノへの執着など、この人にはジョン・アーヴィングに通じる部分がけっこうあると思う。
 まぁ、アーヴィングに比べると、セックスについての言及は控えめだけれど、それでも前の作品の主人公がカサノバ・タイプだったり、この映画ではグウィネス・パルトロー演じるマーゴが思春期から奔放な性生活を送っていたりと、多彩な人間模様を描く上で避けて通れないテーマとして、セックスにもきちんと向かい合っている。それも下手にシリアスになったり、下品になったりすることなく、適度なユーモアを込めて描いてるところがいい。
 ということで、この二作でもって、ウェス・アンダーソンは、いまさらながら、わが家で現在もっとも注目される映画監督となりました。いずれは全タイトル、コンプリートしたい。
(Mar 15, 2015)

バックドラフト

ロン・ハワード監督/ウィリアム・ボールドウィン、カート・ラッセル/1991年/アメリカ/WOWOW録画

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 仕事先でお世話になっている女性(関西出身、年上)が酒の席で映画の話をしたときに、「『バックドラフト』が好きなんですわ~」と言っていたと思ったら、たまたまその数日後に放送があったので、これもなにかの縁だろうと思って、いまさらながら観てみた。
 公開当時に大ヒットしたのは知っているけれど、なるほどと感心してしまうほど、派手な映画だった。消防士の話だから、もっと普通のヒューマン・ドラマかと思っていたら、とんでもない。「敵はファイアー!」とばかりに、炎と戦う男たちを描くダイナミックなアクション映画。ドラゴンも魔法使いもテロリストもターミネーターも登場しないのに、ここまで派手な映画って、ある意味貴重な気がする。
 主役のウィリアム・ボールドウィンはアレック・ボールドウィンの弟。ボールドウィン家は四人兄弟で全員俳優をやっているそうだけれど(ウィリアムは三男)、不思議と僕が観る映画にはアレック以外の人はほとんど出てこないので、この人の出演作を観るのはこれが初めてだと思う。でも顔を見れば、なるほどアレック・ボールドウィンの弟だってわかるから、血のつながりっておもしろい。
 彼の兄の役がカート・ラッセル。この人とも僕はあまり縁がないけれど、後年の『デス・プルーフ』でのサイコ野郎ぶりが強烈だったせいで、どうも悪い人のイメージを持ってしまっているようで、ここでのキャスティングはいまいちぴんとこなかった(すいません)。
 あとはロバート・デ・ニーロが脇役で出ていることと、ヒロインが『未来は今』や『イン・ザ・カット』のジェニファー・ジェイソン・リーであること、レスター博士的な放火魔の役どころでドナルド・サザーランドが出演してるってあたりが見どころかなと。
 とにかく観ているだけで火傷しそうな熱い映画でした。
(Mar 22, 2015)