ビッグ・アイズ
ティム・バートン監督/エイミー・アダムス、クリストフ・ヴァルツ/2014年/アメリカ/WOWOW録画
ひとめ見たらそれとわかる大きな目をした少年少女の絵を生涯にわたって書きつづけているという女性画家、マーガレット・キーンの波乱の半生を描いた伝記映画。
ティム・バートンの監督作品だけれど、いかにもこの人らしくもあり、らしくなくもあり……という作品だと思う。
らしいなと思うのは、マーガレット・キーンの絵が好きだというところ。極端に目元をデフォルメした彼女の作風は、かわいい中にもちょっぴりグロテスクな感覚があって、ティム・バートン自身の作風に通じるところがある。バートン氏が好きだというのがよくわかる。
で、一方らしくないなと思うのは、その映画の出来栄え。
これってこれまでにティム・バートンが撮ったなかでも、もっとも普通の映画だと思う。僕はティム・バートンの特徴は、どこかが極端にデフォルメされた結果で生み出されるいびつな味わいだと思っているのだけれど、この映画にはそういういびつさがない。
クリストフ・ヴァルツ演じるマーガレットの夫、ウォルターの性格こそ歪んでいるけれど──この人の徹底的に自分本位な世渡り上手ぶりがこの映画の肝──、あとはいたってまっとう。ほかの監督の作品だといわれたら信じてしまいそうな出来になっている。
主人公マーガレットの終始受け身で控えめな性格をエイミー・アダムス(しばらく前のニコール・キッドマンみたいな雰囲気)が好演しているけれど、その控えめなところにもティム・バートンらしからぬ印象を受けてしまう。
ということで、とてもおもしろい作品ではあるんだけれど、いつものティム・バートンらしさが薄い分、なんとなくものたりなく思ってしまうという。そんな自分をちょっとごめんなさいって謝りたくなるような好作品だった。
まぁ、このところ無駄なアクションを盛り込んで失敗をしている印象が強かったティム・バートンなので、そういう意味では最近では一番いい作品ではないでしょうか。
(Feb 21, 2016)