プロフェッサーXらの若かりし日々を描くX-MEN新シリーズの第二弾。来月次回作が公開されるとはつゆ知らず、たまたまこのタイミングで観ることになった。
僕はこの映画の内容をまったく知らなかったので──それこそ誰が監督かも、誰が出ているのかも知らなかった──、いざ観始めてからやたらと驚いてばかりいた。
そもそもこのシリーズがマーベルの作品だってことさえ忘れていたので、オープニングのマーベルのクレジットにさえ、えっとか思う始末(『アベンジャーズ』に出てこないから、べつの会社の作品かと思っていた。だせー)。
さらに本編に入れば、いきなりパトリック・スチュアート、イアン・マッケラン、ヒュー・ジャックマン、ハル・ベリーら、旧シリーズの主要キャラクターが勢ぞろいしている(アンナ・パキンも出ているらしいのだけれど、僕はまったく気づかなかった)。えっ、これって新シリーズじゃないの?
──と驚いたものの、その謎はそのあとすぐに解ける。
冒頭の舞台となるのは、人類の生み出した対ミュータント用人型最終兵器によって、ミュータントが絶滅の危機に瀕している近未来。悲劇的な状況を打破すべく、その兵器が開発されるきっかけとなったとある事件(ミスティークによる政府要人の暗殺)を食い止めようと、未来のミュータント仲間(なんとエレン・ペイジだっ!)の超能力によってウルヴァリンがベトナム戦争当時のアメリカにタイムトラベルする……というのが今回の物語の発端。
つまり前作ではわずかワンシーンしか出番がなかったウルヴァリンが、今回はずっと出ずっぱりなのだった(これも予想外)。それも本来ならば出会っていないはずの若き日のプロフェッサーX(ジェームズ・マカヴォイ)やマグニートー(マイケル・ファスベンダー)と協力して、ミスティーク(ジェニファー・ローレンス)の暴走を食い止めようとするという話。
設定的にはやや力技な感があるけれど、物語としてはとてもおもしろかった。
この作品で僕が特にいいと思ったのは、戦うのが基本的にはX-MENの主要メンバーだけというところ。地球を滅ぼすような尋常ならざる強敵が出てこないで、X-MENの主要キャラのあいだの軋轢だけで話が進む(まぁ、少なくても過去のパートに関しては。未来の敵はちょっと不自然に強すぎるけれど)。そこがなにかと敵キャラのインフレ化の激しい昨今の作品とは違って、とてもいいと思った。
その後もなんだかんだと話は進み──そういや、途中で出てきておいしいところを持ってゆく瞬間移動青年は、『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』に出てきた双子の弟と同じキャラらしいです。彼が活躍するシーンはとてもよかった──、物語は当然のごとくハッピーエンドを迎える。それも極上の。
そしてその感動の大団円のあと、エンド・クレジットで監督の名前を見て、僕はふたたび驚くことになった。
えぇっ、これってブライアン・シンガーが監督だったのか!
──あぁ、だからこそ、こんなにも豪華絢爛な旧シリーズのキャストが惜しげもなく出ているのかぁと、その時点でようやく納得。
要するこれはあれだ、旧シリーズの完結編の監督を降りたことで、シリーズ全体のイメージに致命的なダメージを与えてしまったことを悔やんだシンガーが、その落とし前をつけた作品なのではないかと思う。
タイムパラドックスでもって、悲惨な未来をハッピーなパラレルワールドへと転換することによって、ブライアン・シンガーはこの作品のみならず、なんと旧シリーズの結末までも見事にリセットしてみせた。それがなにより素晴らしい。
いやはや、シンガーさん、いい仕事っぷりでした。次回作もこの人が監督らしいので、この調子なら大いに期待してよさそうだ。
(Jul 25, 2016)
【追記】エレン・ペイジは『X-MEN:ファイナル・ディシジョン』に出てたんですね。『JUNO』よりも前だから、まったく気がついていなかった。