2017年8月の映画

Index

  1. スリーパー
  2. ヘイトフル・エイト

スリーパー

ウディ・アレン監督/ウディ・アレン、ダイアン・キートン/1973年/アメリカ/DVD

スリーパー [DVD]

 ウディ・アレン演じる主人公が200年後の未来に冷蔵睡眠から覚めて、さまがわりした世界で大騒ぎを巻き起こすというドタバタSFコメディ。
 このごろはウディ・アレン作品のうち、観たことのない作品を新旧かわりばんこに観ることにしているのだけれど、こういう初期の作品って、コメディ・タッチがあからさますぎて、いまとなってはいささかつらいものがある。ウディ・アレンがロボットに変装したり、空を飛んだり、風船スーツで水上を爆走したり、巨大バナナを食べたり。なんやかやといちいちB級すぎて、苦笑せざるを得ないってタイプの作品。
 でもまぁ、ダイアン・キートンがウディ・アレン監督作品で初めてヒロインをつとめているという点では、それなりに大事な作品なのかもしれません。
 それにウディ・アレンって音楽(ジャズ)の使い方が上手いので、どんなに馬鹿バカしい内容でも、観ているうちになんとなくこれはこれでありかなと思わせられてしまうところがある。これまでにも何度も思ったことだけれど、これなんかとくにそう。どれだけ音楽に救われているかわからない。
 しかもこの映画の音楽はウディ・アレン自身のクレジットで、演奏しているのはニューオーリンズの伝統工芸的な名物バンド、プリザベーション・ホール・ジャズ・バンド。たまたまこの映画を観た直後に彼らの来日公演があることがわかったので、これもなにかの縁だろうってことで、ビルボードライヴ東京まで観に行ってきた。なかなかいいライヴでした。
(Aug 21, 2017)

ヘイトフル・エイト

クウェンティン・タランティーノ監督/サミュエル・L・ジャクソン、カート・ラッセル、ティム・ロス、ジェニファー・ジェイソン・リー/2015年/アメリカ/WOWOW録画

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 タランティーノの最新作は前作『ジャンゴ』につづいてまたもや西部劇だった。
 もともと西部劇に苦手意識があり、とくにタランティーノのファンというわけでもない僕にとってはいささか食指の動かない作品だったのだけれど。
 いざ観てみればこれが素晴らしかった。タランティーノってやっぱりすごい。
 この映画、西部劇とはいっても舞台がずっと雪山ってあたりで、すでに西部劇の既成概念を裏切っている。それは『ジャンゴ』同様、黒人を主役に据えている点も同様。まぁ、今回は「八人の嫌われ者」というタイトルどおりで、サミュエル・L・ジャクソンがひとりで主役を張っているわけではないけれど。
 でもこのタイトルがなにげに重要。主要な登場人物が八人以上いるので、その八という数字が意味するところがよくわからないのが、じつはクライマックスへの重要な伏線になっている。
 吹雪の雪山でハグレ者たちがひとりふたりと行きずりの駅馬車に乗り合わせてゆく序盤こそゆっくりとしたテンポだけれど、いざ目的地に到着して主要キャラが勢ぞろいしてから先は、癖のあるキャラどうしの丁々発止のやりとりでまったく飽きさせない。そして最後は怒涛の大どんでん返しから、この人の代名詞的ともいうべき血みどろのクライマックスにいたると。もう文句なしにタランティーノ節全開。すんごいおもしろかった。
 あいかわらず血みどろすぎて、大好きといい切れないのが珠にキズだけれど、でもこの出来のよさは否定できますまい。いやぁ、タランティーノって映像作家としてやっぱり一級品だなぁって。あらためてこの人の才能を再確認させられた一編。
(Aug 26, 2017)