2018年1月の映画

Index

  1. ストレンジャー・シングス シーズン2
  2. ホビット 思いがけない冒険
  3. ホビット 竜に奪われた王国
  4. ホビット 決戦のゆくえ
  5. マーベラス・ミセス・メイゼル

ストレンジャー・シングス シーズン2

ザ・ダファー・ブラザーズ制作/ウィノナ・ライダー、デヴィッド・ハーバー/2017年/アメリカ/Netflix

STRANGER THINGS 2 (A NETFLIX ORIGINAL SERIES SOUNDTRACK) [2LP] ('UPSIDE DOWN INTER-DIMENSIONAL' BLUE COLORED VINYL) [Analog]

 Netflixの大ヒットSFホラーの二シーズン目を正月休みイベントのひとつとして観た(全九話)。
 今回は前シーズンのラストで姿を消したエル(ミリー・ボビー・ブラウン)がどういう形でこの世界へと戻ってくるのかがポイントだったわけだけれど、ダファー兄弟はその点をじつに見事に解決してみせた。しかも単に呼び戻しただけではなく、そこから派生させて、某人物とのあいだの疑似親子関係を築くことで、ドラマにさらなる奥行きを与えることに成功している。この部分の設定が今シーズンのもっともすぐれた点だと思う。
 もうひとつのポイントが、『ロード・オブ・ザ・リング』で主人公を助ける気のいい脇役サムを演じていたショーン・アスティンの起用(この人がじつは『グーニーズ』の主演の子役だったと知ってびっくり)。
 最初に見たときには、ウィノナ・ライダーの恋人役がこの人って、そりゃないんじゃないのと思ってしまったのだけれど(大変失礼)、でもそんな彼だからこそ、よくも悪くもここでの役柄──見た目は冴えないけれど、とことん善良なる凡人──が非常にはまり役だった。彼の演技があまりによかったもんで、つづけて『ホビット』と『ロード・オブ・ザ・リング』計六作を一気に観てしまったくらいに好印象だった。
 子供たちは新しい仲間も増えてあいかわらず楽しげだし──前シーズンはあちら側の世界に捕らわれていてほとんど出番がなく、今回もかわいそうな運命は避けられないだろうと思っていたウィル少年(ノア・シュナップス)があまり悲惨なことにならなくてよかった──、高校生たちの三角関係も進展を見せていて、いろいろと見どころの多いセカンド・シーズンだった。制作が予告されている残りの2シーズンでどんな展開を見せてくれるのか、つづきが楽しみだ。
(Jan 13, 2018)

ホビット 思いがけない冒険

ピーター・ジャクソン監督/イアン・マッケラン、マーティン・フリーマン/2012年/ニュージーランド、アメリカ/WOWOW録画

ホビット 思いがけない冒険 (字幕版)

 大作なのでなかなか観るタイミングが作れなかった『ホビット』シリーズ三部作を正月休み企画として一気に観た。かつてドラゴンに国を奪われたドワーフの王様ご一行が、魔法使いとホビットとともに王国を取り戻す旅に出るという三部作の第一弾。
 『ロード・オブ・ザ・リング』ほどの高評価は受けていないようだけれど、この映画も十分におもしろかった。というか、両者を見比べたいまとなると、僕個人はもしかしたらこっちのほうが好きかもしれないとさえ思う。
 なんといっても、いちばんの好ポイントは主人公ビルボ・バギンズ役のマーティン・フリーマン。人のいいホビットという種族の代表者として、この人がとてもはまり役。
 『ロード~』ではイライジャ・ウッド演じる主人公のフロドが指輪の魔力に影響されて常に深刻な状況におかれているために、ホビットの善良さや陽気さがいまいち伝わらなかった感がある(イライジャ・ウッドの見た目が常人離れしているってのもある)。サムらの脇役がその分を補ってはいたけれど、でもやはりそこは脇役。ドラマ自体の壮大さも手伝って、あの三部作でのホビットは多種族入り乱れる戦争のなかで右往左往する小さな人たちって感じだった。
 それに対して今回の話では、同じような旅と戦争の話ではあっても、旅の道連れはホビットと同じサイズのドワーフたちだ。
 ドワーフってのはあれですよ、白雪姫と七人のこびと。あのこびとですよ。まぁ、あちらと比べると、こっちのこびとは見た目も行動もやたらとうっとうしいけれど。でも小さい、ゆえにコミカル。前作とは違って、彼らの旅には珍道中と呼んでもさしつかえないだろうってものがある。
 ただ、コミカルとはいっても、ここでのドワーフは仮にも戦士の集まりだ。そんな中にホビットがひとり混じることで、根っからの平和主義者であるホビットの善良さがなおさら際立つことになる。そんな善良なるホビットの役には、いかにも弱腰で人のよさそうなマーティン・フリーマンはまさにうってつけだなぁと思った。
(Jan 13, 2018)

ホビット 竜に奪われた王国

ピーター・ジャクソン監督/イアン・マッケラン、マーティン・フリーマン/2013年/ニュージーランド、アメリカ/WOWOW録画

ホビット 竜に奪われた王国(字幕版)

 『ロード・オブ・ザ・リング』と違って、この作品に関しては原作を読んでいないので、僕はドラクエよろしく、竜との戦いが三部作の最後を飾るクライマックスになるものだと思っていた。当然、旅もそこまでつづくものだと。
 ところが、そんな僕の思い込みに反して、ビルボたちはこの第二作で目的地に到着してしまう。でもって、ドラゴンも出てくる。しかもそのドラゴンが口をきくという(それもやたら饒舌)。そんな予想外だらけのシリーズ第二弾。
 予想外といえば、『ロード・オブ・ザ・リング』とこの『ホビット』のシリーズのあいだには十年近いインターバルがあったってのも、なにげに意外だった。でも時間がたった分だけCG技術も進歩しているので、映像的な面では確実にグレードが上がっている。
 クライマックスとなるドラゴンとの対決シーンなんかもそうだけれど、なかでもとくに印象的だったのが、ドワーフ一行の戦闘シーン──というか逃亡シーンの数々。崩れそうな石段を敵と戦いながら逃げてゆくシーケンスや、川下りの戦闘シーンなどに見られる、ぎりぎりセーフのクリティカルなアクションの連発はまるでテレビゲームを見ているかのよう。
 ──というか、考えてみれば、ドラクエ等のRPGって、基本的にこの手のファンタジーの世界観をベースにしているんですもんね。その本家本元であるトールキンの世界を映像化したいまどきの作品がテレビゲーム風のアクション満載で描かれるのは、ある意味当然なのかなと思ったりした。
 とにかく今回の三部作の中では、この第二作がいちばんアクション色が強くて、コミカルで、ドラマチックだ。個人的にはこれがいちばん好き。
 そういえば、キャスティングにベネティクト・カンバーバッチの名前があったので、どこで出てくるんだろうと思ったら、なんとドラゴン役だった(気づくはずがない)。つまりマーティン・フリーマン演じるビルボとおしゃべりな竜とのあのやりとりは、『シャーロック』の主演コンビの競演なわけだ。それはまた一興。ちょっと『シャーロック』が観たくなった。
(Jan 13, 2018)

ホビット 決戦のゆくえ

ピーター・ジャクソン監督/マーティン・フリーマン、イアン・マッケラン/2014年/ニュージーランド、アメリカ/WOWOW録画

ホビット 決戦のゆくえ(字幕版)

 前作で旅が終わったこともあり、最終章のこの作品ではドワーフの王国再建をめぐる戦闘がほぼ全編を締めている。それゆえに前作にあったユーモアはほぼ皆無となり、話も殺伐として、終わりよければすべてよしでは済まないところが、なんとなく残念な完結編。
 『ホビット』は『ロード・オブ・ザ・リング』の前日譚なので、多くのキャラクターが共通している。ガンダルフ役のイアン・マッケランはもちろん、不死だか長寿だかのエルフ族を演じるケイト・ブランシェット、ヒューゴ・ウィーヴィング、オーランド・ブルームはまったく同じ役で出ている(『LOST』のエヴァンジェリン・リリーがこちらではエルフのひとりとして出演しているのも要チェック)。ビルボの老け役のイアン・ホルムや、白の魔法使いサルマン役のクリストファー・リーも一緒。
 あとで『ロード~』を見たら、オーランド・ブルームの演じるレゴラスはやや設定が変わっているような気がしたけれど、あとの人はだいたいそのままの印象だった。
 それよりすごいなと思ったのは、この映画で描かれている伏線が『ロード・オブ・ザ・リング』でけっこう回収されていること。とくにこの第三作でビルボがトーリン(リチャード・アーミティッジ )にもらった鎖帷子が『ロード・オブ・ザ・リング』に出てくるのにはびっくりした。これ見てないと話わかんないじゃん!
 ということで、『ロード・オブ・ザ・リング』を観たことのない人は、どうせならば『ホビット』を先に観ることをお薦めします。どっちかというと、こちらのほうがホビット、ドワーフ、エルフ、オークなどの種族の違いがわかりやすく描かれているので、これを観てから『ロード~』を観たほうが、中つ国に関する知識が深まって、より深く物語の世界に没頭できる気がする。
 ただ、映像的には後発のこちらのほうが新しいので、その点がやや難儀かなと。『スター・ウォーズ』をいちばん古いエピソード4から観るべきか、それとも物語の時系列どおりにエピソード1から観たほうがいいかという問題と同じ悩みを感じる。
(Jan 13, 2018)

マーベラス・ミセス・メイゼル

エイミー・シャーマン=パラディーノ監督/レイチェル・ブロズナハン、マイケル・ゼゲン、アレックス・ボースタイン/2017年/アメリカ/Amazon Prime Video(全8話)

マーベラス・ミセス・メイゼル  シーズン1 (字幕版)

 主演のレイチェル・ブロズナハンがゴールデン・グローブのテレビ・シリーズ、コメディ・ミュージカル部門で最優秀主演女優賞に選ばれたというので、どんなもんかと思って試しに一話と観てみたら、これがおもしろく。勢いでシーズン全八話を一気観してしまったAmazonオリジナルの連続ドラマ。
 五十年代末のニューヨークを舞台に、裕福な家庭の主婦だった主人公が夫の浮気をきっかけにスタンダップ・コメディアンを目指すようになるという話で、Amazonの紹介文を読むと、コメディアンになるのが彼女の夢だったみたいに書かれているけれど、実際にはそうじゃないところがミソ。第一話目でコメディアンを目指しているのは主人公のミッジではなく、彼女の夫のジョール(マイケル・ゼゲン)だし、彼女が最初にステージに立つのも泥酔した勢いであって、べつにそれが目的だったわけじゃない。
 でもライブハウスの経営者(なのかな?)のスージー(アレックス・ボースタイン)がそんな彼女の毒舌にコメディエンヌとしての才能を見いだしたことから、彼女の人生は徐々にそっちの方へとシフトしてゆく。でもって、やがて彼女自身も本腰を入れてその世界へと足を踏み入れてゆこうとする──のだけれど。お笑いの道はそんなには甘くなくて、彼女のまえにはいくつものトラブルが待ちかまえているのだった。
 夫との別居生活を始めた主人公のミッジが体験するさまざまな事件がステージのネタとなって各エピソードのクライマックスを飾るというのがだいたいのパターンで、そういう意味では連続ドラマにはうってつけの題材だと思う。
 もちろん、クライマックスが漫談なわけだから、ヒロインの話術の冴えは必要不可欠。その点、レイチェル・ブロズナハンの饒舌ぶりはじつにみごとだ。なるほどゴールデン・グローブの受賞も納得のコメディエンヌぶりでした。さっさとつづきが観たい。
(Jan 28, 2018)