ツイン・ピークス The Return
デヴィッド・リンチ監督/カイル・マクラクラン/2017年/アメリカ/WOWOW(録画)
海外ドラマでは十年に一度の話題作じゃないでしょうか。デヴィッド・リンチ本人による『ツイン・ピークス』の新シリーズ。
これはなんともいえない怪作。基本的には前作同様の群像劇をベースにしつつ、オカルト・タッチの作風から『Xファイル』的な超常ミステリへと微妙な方向転換を果たしている。オカルトはオカルトなんだけれど、前作にあった不気味さは薄れて、珍妙な間の困った笑いが全編に満ちている。舞台はツイン・ピークス以外の場所のほうが多いし、ストレートな続編でありながら、内容はちっともストレートじゃない。
とにかくこの作品でもっとも印象的なのは、デヴィッド・リンチの演出による、絶妙な間合いの数々。なんでこの場面でこの沈黙、みたいなシーンのオンパレード。この人独特のこの妙な味わいが好きになったら、もう中毒患者になること間違いなしだろう。まぁ、僕はそこまでいってないけど。
話題作だけあって、テレビ・ドラマとは思えないほど出演者も豪華だ。主演のカイル・マクラクランの続投はもちろん、有名どころでは女優陣にナオミ・ワッツ、ローラ・ダーン、ジェニファー・ジェイソン・リー、アシュリー・ジャド、アリシア・ウィット、モニカ・ベルッチなど。男優ではティム・ロス、ハリー・ディーン・スタントン、ジム・ベルーシ(ジョン・ベルーシの弟さんとんこと)などが出演している。日本からも裕木奈江が出演している。かなり不思議な役どころなので、そうといわれなかったら誰も彼女とは気づかない気がするけれど。
ミュージシャンの出演者が多いのも音楽ファンにとっては重要なポイント。僕の知っている範囲ではナイン・インチ・ネイルズ、シャロン・ヴァン・エッテン(超かわいい~)、エディ・ヴェダー(パール・ジャム)、クロマティックス、スカイ・フェレイラなどが出ている。スカイ・フェレイラは俳優としての出演(謎の脇役)で、あとの人たちははバン・バン・バーでの演奏シーン。モービーもどこかに出ているらしいのだけれど、僕にはわからなかった。
旧作のキャラクターのうち、重要な役どころだったドナとハリー・トルーマン保安官が出てこないのは残念だけれど、でもそれ以外のほとんどのキャラクターがなんらかの形で顔を出してくれている。デヴィッド・リンチ本人が演じるゴードン・コールはあいかわらず珍妙だし、旧作ではクーパーの秘書(?)として名前だけの存在だった「ダイアン」が今回はちゃんと表舞台に出てくる──しかもとても重要な役どころを務めている──のも大事なポイントだ。また、最後のエピソードではローラ・パーマー役のシェリル・リーが思わぬ形で再登場を果たしていたりする。
まぁ、なんにしろ最初から最後までよくわからない──それでいてなんとなくおもしろい──不思議なドラマでした。カイル・マクラクラン演じるクーパー捜査官ならぬダギー・ジョーンズの珍妙な立ち振る舞いがもうこれ以上見られないのかと思うとちょっとさびしい。
(Dec 17, 2017)