ラスティン:ワシントンの「あの日」を作った男
ジョージ・C・ウルフ監督/コールマン・ドミンゴ、アムル・アミーン/2023年/アメリカ/Netflix
60年代のアメリカ、公民権運動のさなかに、百万人を超える人たちが集結したワシントン大行進を企画・運営した黒人社会運動家、バイヤード・ラスティンの半生を描く伝記映画。
ワシントン大行進というと、僕の知っているところだと、スパイク・リーの『ゲット・オン・ザ・バス』や、リチャード・パワーズの『われらが歌う時』でも描かれていたけれど、この映画はその実現に至る裏事情を取り上げている。
ラスティンは黒人であると同時に同性愛者でもある。彼の同性愛者としての(いささか乱れた)恋愛事情を、社会運動家としての活動と並行して赤裸々に描いているのもこの映画の特徴だ。ポリコレが叫ばれる現代を象徴するような作品だと思う。
様々な面で差別を受けながら、肌の色を超えて多くの人たちが団結しあい、世紀の一大イベントを実現させてゆくまでを辿るこの映画はそれゆえになかなか感動的。
監督は『マ・レイニーのブラックボトム』のジョージ・C・ウルフで、主役のコールマン・ドミンゴはその作品につづく出演だった(まったく記憶にない)。彼やキング牧師役のアムル・アミーンという俳優さんはあまりメジャーじゃないけれど(僕が知らないだけ?)、脇役にはコメディアンのクリス・ロック(去年のアカデミー賞でウィル・スミスに殴られていた人)や、ジェフリー・ライトが出演している。
クリス・ロックがまったく笑いのない、黒人グループのいちばん偉い人の役を演じているのが、なんかいい感じで新鮮だった。
(Apr. 13, 2024)