アンブレラ・アカデミー シーズン4
スティーヴ・ブラックマン制作/エリオット・ペイジ/2024年/アメリカ/Netflix(全6話)
『アンブレラ・アカデミー』の最終シーズン。有終の美を期待していたのだけれども、残念ながら出来映えはいまいちだった。
おそらくナンバー・ファイヴ役のエイドリアン・ギャラガーくんがすっかり成長してしまったため、今回は前作から六年後という設定になっている。
前作の最期で超能力を失った一同は、現在はそれぞれ普通に――ではないかもしれないけれど、とりあえず一般人として――生活している。
ルーサー(トム・ホッパー)は男性ストリッパー、ディエゴ(デイビッド・カスタニェーダ)はライラ(リトゥ・アルヤ)と家庭をもち、アリソン( エミー・レイヴァー・ランプマン)は芸能界に復帰(でも売れてない)、クラウス(ロバート・シーハン)はアリソン家の居候、ナンバー・ファイヴはCIA捜査官として活躍中、ベン(ジャスティン・H・ミン)は詐欺で刑務所に入れられ、でもってヴィクター(エリオット・スミス)は兄弟から離れてカナダでバーを経営しているといった具合。
そんな兄弟たちが、ディエゴの娘たちのバースデイ・パーティーとベンの出所をきっかけに再会して、あれこれあったあとで、昔の力を取り戻す。
――のだけれど。それは第二話に入ってから。
つまり第一話の時点ではこのシリーズをヒーローものたらしめている主役らの力は封印されたままなわけで。全六話と全体がこれまでよりも短いのに、そのうちの一話をそこまで引っ張らなくたっていいじゃんって思ってしまう。
残りの五話で描かれるのは、ジーン&ジーンという中年カップルに率いられたカルト教団絡みの事件と、ナンバー・ファイブとライラが異世界へとつながる地下鉄に乗り込んで迷子になる話。そしてベンがジェニファーという女性と恋に落ちたことで、またもや世界が滅びる騒ぎが持ち上がる。この三つを中心に物語が進んでゆく。
このシリーズの最重要キャラはナンバー・ファイブで、セカンド・シーズンではライラが登場して徐々にその存在感を高め、シーズン3ではベンが異次元チームのリーダーとして、それまでとは違うポジションを得た。
今シリーズがその三人を中心に展開するのにはとくに文句はないのだけれど、おかげでほかのメンバーの存在感が薄まってしまっているのが残念なところ。エリオット・ペイジなんて、いったいなにをしていたのか、ほとんど印象に残っていない。
ナンバー・ファイブとライラが地下鉄の世界に閉じ込められるエピソードは文学性さえ漂わせていて、本シリーズ屈指の名エピソードだと思うけれど、そのあとのカタストロフはいささかヤケクソ気味で、シリーズの締めとしてはいまいちだと思った。結果として不完全燃焼感が残ってしまった。
これで最後というのならば、もうちょっといい終わり方をして欲しかった。残念。
(Sep. 01, 2024)